明日は初釜か。
先生たちの行かれる家元初釜は17日あたりだろうか。
煙草が吸いたくなって、煙草を置いてきたことを思い出す。
とりあえず夕飯の用意をするか。
…何食おう。
コンビニ行くか。
近くのコンビニでから揚げ弁当を買ってついでにバージニアの小さい箱を買う。
1本か2本しかどうせ吸わないからこれがいい。
水色の箱。
帰宅して、吸いつつ食う。
あー、たしかに女が好きそう。この煙草。
明日会社においてこよう。誰か吸ってくれるに違いない。うん。好かん。
眠くなったので寝てしまえ。
翌朝、出勤。
社員もお客もまったく仕事をする気と言うものもなく。
ただ初釜に噛んでいる料理屋のみ忙しそうにしている。
普段どおりに仕事を終えて、シャワーを浴びる。
着替えて先生のお宅へ。
到着。
荷物を置き直接水屋に入る。
先生の指示に従い動き、席入りの用意を手伝った。
朝の水屋の方々は凄く大変だろうといつも思う。
ベテランの方が多く、教えていただくことが沢山ある。
水屋見舞いに、と持ってきた鉄火巻を置いておく。
これはいつの間にか毎年消えてしまう。
誰が食べてるかは知らない。
しばらくして濃茶の点て出しをするが、私は茶碗に抹茶を仕込む係り。
4人分ずつ、掬い入れ隣の方がお湯を入れ、各人練る。
その間に後炭の用意を整え、先生、平田さんと確認する。
飲み終わられたお茶碗を回収し、後炭。
水屋ではお干菓子や薄茶の用意に取り掛かる。
今年のお干菓子も可愛らしくほほえましい。
干菓子が回される間に茶碗に薄茶の分量を点々と仕込む。
濃茶と違ってこれは人数分茶碗があるが、うち数碗はお点前される方が点てられる。
お薄を立てて、順次出して、返ってくる茶碗を洗って拭いて洗って拭いて。
あ、誰だ油性の口紅。
後回しね、これ。
拝見がそろそろ終りそうだ。
先生のご挨拶があり、生徒さんが帰って行かれた。
水屋に先生方が戻ってこられて。
「お疲れ様でしたね、みなさんこちらへ」
と水屋のものを茶室に。
先生から濃茶を一服点てていただいた。
美味しいなぁ。
その後、先生からのお礼とお干菓子を頂き散会。
私は居残って後始末を手伝う。
「山沢さん。お薄点ててくれないー?」
「いいですよ、八重子先生はどうです?」
「ああ、私も貰おうかね」
水屋で炉から下ろして来た釜からお湯を取って点てる。
自分の分もで3つ。
「あぁおいしいわねぇ」
お釜のお湯を抜いて、炉にかけて乾かし、その間に茶碗を濯ぐ。
先生にこの口紅べったりはどうするかと聞けばリムーバーで落としているとのこと。
いつもこうだからこの方のはそういう扱いをするお茶碗らしい。
ふき取って普通にスポンジで中性洗剤で洗ってよい茶碗だそうだ。
なるほど、ちゃんと読んでるんだ。
茶室も片付けて茶碗も仕舞い、居間で落ち着く。
先生もすっかりお疲れだ。
余った花びら餅をいただいているうち、肩に重みが。
昨日は寝られなかったのかな。
八重子先生もうとうとしている。
「お二人とも、着替えて寝てこられたらどうです?晩飯は適当に俺やりますよ?」
はたと起きられて、そうする、と着物を脱いで。
「着物、衣桁にかけときますからもうそのままでどうぞ」
といえば二人ともに寝巻きに着替えて部屋へ戻られた。
着物や帯を掛けて紐類を片付けていると、来客。
玄関に行くと環さん。
「あら、山沢さん?お母さんは?」
「疲れて寝ておいでですよ」
「じゃあ絹」
「同じく寝ておいでです」
「お客さんほっといて…?」
「ははは、どうぞ」
居間にお通ししてお茶を出す。
まだちょっと残っているので片付けていると、胡乱な視線。
玄関のほうからただいまーと律君の声。
「あれ?おばさんきてたの?」
「今来たのよ。なんであの二人はお客さんほっといて寝てるの?」
「ああ、山沢さん?」
「こんばんは、律君。お疲れでね」
「二人とも昨日あまり寝れなかったって朝言ってたからそれでじゃないの?」
「だからってお客様ほっといて」
「山沢さんはいつもこんなカンジだよ、ご飯作ってくれたり」
「まぁまぁ、好きでやってるので気になさらず」