翌朝、出勤すると客が少ない。
やはり凍結等で来られない、配達よろしくと言うところがあった。
仕事を終えて帰宅する。
昼飯を食って一服。
今日は久しぶりに三味線を触ろうか。
ゆっくりと、いくつか弾いて見ると暫く弾いてない所為か手がうまく動かない。
それでも何度か弾いてるうちに滑らかに弾けて時計を見れば夕飯の支度すべき時間だ。
何食おう…面倒くさい。
焼肉でも食うか。
先生とは行けないしな。
ふらりと食べに出てガッツリ食う。
だが昔に比べれば量は減った。脂身は苦手になった。
帰宅してウーロン茶を飲む。
気休めでもいいんだよ…。
帰宅して布団にもぐる。外寒すぎ。
腹も朽ちて布団の中は暖かく、すぐに寝た。
さて本日も雪模様。
こりゃ週末にお出かけと言うのは少なくて料理屋が動かないな。
うぅ、寒い。
客が来ないと余計に寒いぞ。
今頃先生は起床した頃か。布団から出たくないだろうな。
ご飯の支度して、お稽古の用意をしている筈。
朝の方々は上級だから先生方もそれなりに気が張るんだろうし。
今頃焦っておられたりして。
そんなことを考えつつ、仕事を終わらせれば帰宅してシャワーを浴び着替えて移動だ。
先生のお宅についてご挨拶。
お食事に入られてその間に昼からの水屋の用意を済ます。
暫くすると昼イチの生徒さん。
時間になるまでお待ちいただいてお稽古開始。
今日は時間通り稽古がすすんで中々具合がよろしい。
夕方、最後の生徒さんを送り出して、さて俺のお稽古。
行之行、円草各2回。前回よりは怒られずにすんだ。
じゃ水屋よろしく、と先生はご飯拵えに台所に行かれ、俺は一人片付ける。
しまうものは仕舞い、茶室に雑巾をかける。
ご飯よ、の声が聞こえたので手を洗って食卓に着いた。
今日は筑前煮か、うまそうだ。
律君は大学生になった割にはお母さんとよく話す。
律が目を合わせてくれないの、とは言うが大学生の男の子だからそれくらいは普通、
他の家では家を嫌って出て行ったり暴言食らったり色々ありますよ、そう答えている。
そうそう、今日は…。
食事の後先生を部屋に連れて行く。
ちょっと八重子先生の前ではね。
鞄からコンドームを10種類ほど出した。
先生はなんだか苦笑している。
「これ、つぶつぶラムネ」
とディルドに被せてみせる。
「つぶつぶはわかるけどラムネって?」
「匂いがラムネです」
くん、と嗅いで納得の表情。
「でこれは脱落防止加工のみの。こっちはゼリーがついててスムーズにというもの。
これ、光ります。こっちはミントの刺激つき。グレープの匂いのもあります。
ピーチにストロベリー。これはオレンジ。あとこれは敢えて分厚いもの」
「い、色々有るのねぇ…」
「先生に使ってるのは普通のどこにでも売ってるやつですけどね。
舐めてもらおうとか思ってない分。それに外れて困るということもないでしょ」
「そ、そうね」
頬を染めていて可愛い。
からかっているとお母さん、と部屋の外から律君の声。
と同時に襖が開いて、手を出してなくてよかったとほっとする。
が、先生と律君がなんとも言えない顔を。
あー、そうか、まだ仕舞ってなかった。ディルドは片付けてあったけれど。
「律君、彼女いたっけ?」
「い、いや居ませんけど…」
「おや残念。じゃこれ君のご友人にでもあげてくれるかな」
「…山沢さん、何を言うの」
「いや、どうせネタに持ってきただけで使う予定もないわけですし。
だったらいざそういうときに持ってるのと持ってないじゃ違いますでしょ?
相手の女の子が。持ってないけどしたいからする、それで出来た、ではね」
「それはそうだけど…」
「丁度いい、律君。彼女出来たら勢いのままにしたりしないこと。
コンビニにも売ってるから。500円か1000円で。つけ方わかる?」
後頭部をバシッと先生にやられた。
「つけ方によってもれたり外れたりしますよ?」
「わかるけど…私の前でそういう話は」
「…ああ母親の前でする話では確かにないですね。
律君、つけ方は友達に聞いて練習するといいよ~」
「ところで、なんで呼びにきたの?」
先生は拳骨を落としつつ律君に問う。
「ええっと、おばあちゃんがお菓子食べないかって、頂き物が有るみたいで」
「山沢さんちゃんとそれ片付けて頂戴」
「はい、どうせ餡でしょうからどうぞ先に」
ん、と律君とともに部屋を出て行った。