俺はそそくさと部屋に入り下帯を締めた。
やっぱなんとなく落ち着かん。
居間に戻って先生の横に座ると八重子先生がお茶を入れてくれる。
ちゃんと最近はぬるい。
「お夕飯のお買物、そろそろ行かなきゃねえ」
「なんにしようかねえ」
「山沢さん、泊まってくでしょ?」
「よろしければ」
「ね、そういえば何でいつも白ばかりなの?柄物売ってるでしょ?」
「え?」
「下帯」
「ああ、売ってますね。ただ古い晒の在庫が沢山ありすぎるので、今。消費中です」
「もっと可愛いのにすればいいのに」
「豆絞りとか手拭の古いので作ることもありますよ」
「そういえば昔は皆六尺や越中だったけどねえ。物がない時代は古い浴衣解いたりね」
「六尺はちょっと面倒で。たしかに針も糸もいらないから急のときにはいいんですが」
「そうなのねえ」
「今は褌だとズボン穿いててもすべて脱がずに穿きかえられると言うので自衛隊とか、
暫く風呂に入れない状況が続く人にも人気だそうですよ」
「へぇ。意外だねえ」
「ああいう人たちはズボンの上からブーツも履いてるでしょう、
脱がないでいいのは凄いメリットらしいです」
「確かにそうねえ」
「それより何にする?ご飯」
「山沢さん何食べたい?」
「ん、そうですね」
「何でもとかじゃダメよ」
「…ほうれん草の胡麻和えとか、白和えとかどうでしょう」
「メインは?」
「メイン、って俺に聞いたら肉しか言いませんよ」
「ほんっと毎日考えるのが邪魔臭いのよね」
「でしょうね。青椒肉絲とかどうですか」
「ピーマン沢山だからいいねえ」
「じゃあ買う物は…」
とメモに書き出していく。
「俺、行ってきましょう」
「一緒がいいわ、他にも買いたいものあるし」
二人で買物に出る。外は相変わらずの寒さだ。
あれやこれや買って戻って、夕飯を作る。
ご飯が炊けた頃、律君が帰ってきた。
「あれ?今日月曜日だよね」
「こんばんは、律君。そう、月曜日。休み前だからね。
先生がご飯食べさせてくれるって言うから来たんだよ」
「山沢さんほっとくと野菜食べないから」
「青汁じゃだめですかねえ」
「ちゃんと食べた方が良いに決まってるじゃないの」
律君が笑っている。
「環姉さんも昔よくおばあちゃんに言われてたわよ」
「今は言われないんですか?」
「会社に住んでるくらい家に帰らないのよね。開兄さんが作ってるみたいよ」
「へぇ開さん料理できるんですね」
「一人暮らししていたのよ、だから出来るんじゃないかしら」
もしかして三食カップめんとかじゃなかろうな。