洗い終わって戻るとお買物行きましょ、と先生が仰る。
「近くだからそのままでいいわよ、コート着てらっしゃい」
上着を羽織って玄関へ。先生もコートをきてショールもして完全防備だ。
先生に連れられて近所の呉服屋に行く。
「浴衣地をいくつか見せていただけますかしら」
「こんな季節にですか?」
「ええ、この子が襦袢代わりにいくつか作りたいと言うので」
「じゃ採寸などは」
「自分で縫うと言いますから」
そう先生が言うと奥からいくつか浴衣地が出てきた。
藍染のものばかりだ。
襦袢地にするならそれがいい。
いくつか見て5反ほどこれがほしいと言うものがあった。
先生もいいと思うものがあったようだ。
あわせて6反を購入し支払う。
帰宅すると針箱を八重子先生が出してきた。
「裁ちあわせ出来たかねえ?」
「どうでしょう、ま、失敗したところで寝巻ですし」
「それもそうだね、じゃどれからする?」
んー、まずはこれかな。立湧。
「私はこれがいいわ、桜」
決まったので裁ち落とす為に物差で計りつつしるしをつけつつ。
着物と同じ、と言うわけではなく対丈だから寸に悩む。
「3尺半くらいでいいんじゃないかねぇ」
「まだ若いから胸の分1寸取った方がいいわよ」
褄下の寸のとり方などを教えてもらいメモに控えつつ裁断。
裁断が一番難しい。
なんせ後は8割はまっすぐ縫うだけだ。
八重子先生はおこたに入ってしまわれた。
先生とちくちくと縫う。
時たま俺が針を指に刺し、先生が心配そうな顔をする。
先生は流石に突いたりしない。
お昼の時間になり八重子先生が簡単なものを作ってくださる。
三人でいただいた。
食後、縫い物を再開。
ひたすら直線縫いである。
「うっ」
「あら、大変」
親指の爪に刺さってしまった。
と言うか爪を貫通して身までいった。
「大丈夫です、これくらい」
と針を縫い、針先をぬぐってまた縫い進める。
「私もうすぐ衿だから手伝いましょうか?」
「いや、一つの着物を二人で縫うのはいけないと言うじゃないですか」
「そうだねぇ、昔はそんなこと言ったねえ」
黙々と縫い先に縫い終えた先生が炬燵に入る。
八重子先生がお茶を入れて、先生がお茶請けを出して居る。
「あなたもちょっと一息入れたら?」
「後もう少し、ここ縫えたら頂きます」
ちくちくちく…。
よし、後は衿だ!一休みだ。
伸びをし立とうとしたらよろけて先生に笑われた。
へへ、と笑って炬燵に入る。
ううー、あたたかい。ぬるめのお茶と、お干菓子をいただいて暫く休憩。
しばし談笑し、先生方は夕飯作るわ、と台所へ。
私は衿付けをする。