「髪、確かに短くなりましたね」
「でしょ」
「でもセットするとよくわからないな」
「あなたもそろそろ切らなきゃだめよ? ほら、目に入りそうよ」
「あー、後ろに流してるとわからないんですよね」
つんつんと前髪を引っ張られる。
確かに長くなってた。
「今度切ってきます」
くしゃくしゃっと頭を撫でられてキスされた。
「もう一度したくなったな」
「ダメよ、そろそろ戻らなきゃ」
「いやだ」
「お夕飯のお買物行かなきゃいけないもの」
「あー…」
「あなたも食べてから帰る?」
「八重子先生にお願いしてもうちょっと抱かれてくれません?」
「外寒いんだから風邪引いちゃうわよ、お母さんが。
そうなったら暫くこんなこと出来なくなるわよ?それでもいいの?」
「うぅ…仕方ないな」
「もうちょっとしたら戻りましょ」
あきらめて暫く先生の立てるまで寄りかからせたまま話す。
「そろそろ立てそうだから着替えるわ」
そろっと私の肩に手をかけて立ち、襦袢とって頂戴、と仰る。
肌襦袢や襦袢、長着を着るのを手伝い、帯を締める。
先生が髪を直す間に俺も着替えて。
ベッドを整えて、シーツを回収する。
明日洗うわ、と仰るが洗濯乾燥機も買ってきておけば良かっただろうか。
一旦お宅に戻り、夕飯の買出しに行く。
今日は肉じゃがだ。
…なるほど、肉じゃがも豚肉なのか。
切り干し大根と五目豆と肉じゃがとかぶの炊いたん。
こういうメニューはすきだな。
帰宅すると既に八重子先生が切干と五目豆を作っている。
かぶと肉じゃがを作るだけである。
ジャガイモの皮をむいて、玉葱を切って。
かぶの皮もむいて葉は刻んだ。
それを先生が煮炊きする。
美味しそうな匂いが段々してきて孝弘さんが台所に来た。
先生が戸棚から饅頭を出して渡し、居間で待っててと言っている。
さすがに長年の付き合いで操縦に長けている。
肉じゃがが煮えて、ご飯が炊けた。
そろそろ律君も帰ってくるかな。
「ただいまー、あー寒かったー」
丁度良く帰ってきたようだ。
「律ー、手洗ってきなさい、もうご飯できてるから」
配膳を終えて八重子先生も座り、後はご飯を入れてもらうだけだ。
いつだったろう、お茶碗とお箸が客用じゃなくなったのは。