月曜の朝、起きてテレビを見ると山梨が凄いことになってるとか。
タブレットで電車の状態を確かめる。
うん、動き始めている。
会社に連絡を取り、出張はそのまま行くことにした。
どのみち東京駅まで行かなければ新幹線に乗れないので一旦会社に寄り、
書類などを受け取る手はずを整える。
朝は今度は塩ラーメン。
いろんなのを買っておいて良かった。やっぱり同じのは飽きるからな。
脱出する準備を整えお暇を告げた。
「あら、もう行っちゃうの?」
「ええ。そろそろ行ったほうがいいでしょう、きっと遅延しますでしょうから」
「私もそこまで行くわ、スーパーになにか入荷してるかもしれないし」
「じゃ八重子先生。お邪魔しました。また木曜に参ります」
「気をつけてお帰り」
外は重機が入り流石に除けられては居るが日当たりの悪い所は雪が沢山に残っている。
「俺が戻る頃にはこの雪もないんでしょうね」
「そうねえ、そうなって欲しいわ」
バスも復旧し、間引き運転だが動いている。
乗って駅前まで二人で。
先生は俺の手を握っている。それを袂で隠して。
駅に着き、先生と別れる。
「気をつけてね、本当によ」
「先生も帰り道、気をつけてくださいね」
そういって別れて電車に乗る。
やはり延着、遅延。
なんとか会社に戻ればやっと帰れたか、とほっとした表情。
出張に必要なものを受け取り、一度帰宅。
鞄などを整え、着替えて一路京都へ。
腹は減るものの、駅弁は途中の駅で買うしか有るまい。
静岡で買い、食べる。
米原、そろそろ降りる用意をするか。
京都に到着して下車。
さて。
まずは家に帰るか。
タクシーに乗り込み自宅へ。
家に入ってストーブをつけてあたたまる。
流石に火の気のない家は寒い。
少し温まったので昼寝。
やはり人の家というのは疲れる。
先生もうちに滞在すると疲れるのかな。いや体力と言う意味じゃなくて。
うとうとして夕方、腹が減って目が覚めた。
食事に出ようか。
電話。
先生からだ。
京都駅に着いたらしい。
迎えに行きます、と言ってストーブを消し着替えを持って駅に向かう。
駅近くの喫茶店を指定しておいたのでそこに向かい先生を確保する。
宿に連絡をする。一応のためだ。
ちゃんと予約は取れていて、二人で一緒に向かう。
「飯、食いました?」
「ううん、まだよ」
「じゃ、チェックインしたら食いに行きましょ」
今回取った宿はホテルだ。
普通のダブルの部屋。
衣桁を二つ、組み立ててセットし、その下に敷きたとうを置く。
先生の持ってきた、明日お稽古で使う紋付を掛けて広げた。
「ね、あなたは明日どうするの?」
「仕事終わったらすぐ着替えて向かいます。昼の最初に間に合えばいいとは思いますが」
「わかったわ、先に行ってるわね」
部屋を出て降りる。
レストランはどこが空いてるだろう。
日本料理にまずいってみよう。
幸い空いていて、二人お願いして席に着く。
懐石の一番高いの、と思ったらすっぽんが嫌だと仰る。
ワンランク落としたものを頼んだ。
酒は、と言うといらないと。
炊き合わせも焼き物も美味しくいただいて最後の水物まで綺麗さっぱりお腹におさまる。
「お昼もラーメンだったから幸せ~」
「ああ、まだあちら流通が?」
「そうなのよ、私が買物出た頃には早朝に入った分すべて売り切れちゃってたの」
「こっちはこれこのように、と言うようですがでも値上がりはしてますね」
ふうっと一息ついて部屋に戻る。
先生は沢山食べてお腹が苦しい、と敷きたとうの上で脱ぎ、衣桁にかける。
肌襦袢を脱いで寝巻に。
…おいしそう。
食欲を感じ取られたのか急に目をそらされた。
うん、まぁもう少しお腹がこなれたらね。
「意外と早く来ましたね、明日になるかと思ってましたよ」
「お母さんが、いけそうなら早く行ったらいいって言うから」
「まぁ明日の予定を考えればそのほうがいいでしょうね」
「それに、心配だったから」
「心配?」
「その…あなたこっちに馴染みの方とか…」
「あーそういう心配ね。昨日も大丈夫って言ったでしょう?」
「それでも気になるものなのよ」
「そうみたいですね」
「怖い空気出さないで頂戴よ」
ちょっと引いてる肩を掴んで強引にキスする。
「…もうっ」
ふふっと笑って抱きしめた。