冷蔵庫に入った雛あられのチョコがけを取って居間に戻る。
「お皿」
はい。
気がつきませんでした。
お皿にあけて、お茶のお菓子に。
「やーねー、絹ちゃん。あんた」
「なぁに?」
「旦那を尻に敷いてる奥さんみたいに見えるわよ」
ぶっ。思わず笑ってしまったじゃないか。
「あらー、そう?」
「ただいまー、あぁ寒かった」
「おかえり」
「おかえりなさい」
外は昼前なのに寒いようだ。
「お母さん、おかえり、待ってたのよ」
「あら斐、どうしたんだい」
「それがねぇ…」
身内の話になりそうなので居間から自室へ。
半襟を付け替えたり足袋をつくろったり。
しばらくして先生が部屋に来た。
「布団敷いてくれる?」
「だるい?」
「うん、そうなの」
布団を敷いてる間に先生は寝巻きに着替えた。
敷き終わったところへ横になる。
「そろそろ更年期かしらねぇ…」
「ああ、早い人は35からって言いますしね。
でもそれならあなたが良いようにしていかないといけませんねぇ、夜」
「夜って?」
「女性ホルモンの量が減るからですよね、更年期」
「そうよ」
「減ると分泌も減るんですよね。
潤いがないのに無理にしたりして膣炎になったりしやすい。だから」
あ、顔赤くしてる。
「してる途中に乾くようならやり方改めないと辛いだけでしょ?」
「ばか…」
あー、枕に顔を伏せちゃった。
ふふっと笑いつつ、繕い物を続ける。
しばらくして寝息が聞こえ出した。
裁縫箱を片付けて居間へ。
お昼ごはんはどうしようかな。
「絹は?」
「お休み中です」
「お昼どうしようかねえ。あの子の分。ま、いいわ、おなかすいたらなんか作るでしょ。
あんたら何食べたい?丼でいいのかい?」
「あー、はいなんでも」
「そうねぇ、お肉有るなら開化丼食べたいわ」
「…開化丼?」
「苦手?」
「いや聞きなれないので。何が入ってるんですか?」
「お肉と玉葱をとじたものよ」
「ああ、なんだ他人丼ですか、好物です」
「他人丼なんて初めて聞くわねえ」
「結構色々名前変わりますよね。中身とか。
私はどこかでカツ丼頼んでソースカツ丼だったのはショックでした」
「それはショックかも」
なんて話しつつ八重子先生とお台所へ。
一緒に作って3人でいただく。
「孝弘さんはいいんですか?」
「私帰ってくるときに出かけてくるって出てっちゃったわよ」
ありゃ。