「あ、司ちゃん来てたんだ?」
「うん、これ晶ちゃんから律に渡しといてって頼まれてたんだけど」
「なんだろ」
ちら、と目をやる。
「……律君。それ円照寺向け案件だと思うな」
「…そうですね」
「司さんって本当、強いな」
「なんだい? それ。ただの箱だろ?」
「八重子先生、ご住職を呼んでいただけます?」
「持って歩かないほうがいいのかな」
「うん、司ちゃんか八重子先生なら大丈夫だと思うけど」
八重子先生が電話してくれて暫く。
住職が来た。
「うーむ、これは。また強烈な」
律君となにやら相談している。
今の内に先生の様子見てくるか。
寝間に入り、先生の寝顔を覗きこむ。
気持ち良さそうだな。
暫く見てたら目が覚めた。
「なぁにー?」
「んー、可愛いなって」
「ばかね。いま何時? お昼済んだ?」
「まだですよ、まだそんな時間経ってません」
「そう? ちょっとすっきりしたわ」
「あ、居間に行かれるんなら着替えて。円照寺さん来て貰ってるんで」
「あらどうして?」
「司ちゃん持込の物品がありまして、どうも律君に不向きみたいですよ」
ふーん、といって着替えだす。
「ちょっとここ押さえてて」
「はい」
帯を締めて鏡を見てちょいちょいっと整えて。
うん、綺麗だ。
後ろから抱きしめようとしたら叱られた。
折角きれいに着れたのにって。
じゃあ、とキスだけして一緒に居間へ行く。
「を、これはお邪魔しとります」
「律がお呼びしたようで…」
「いやいやこれはわしが持ち帰らねば律君にはちょっと」
「じゃお願いします」
「うむ。ではわしはこれで」
住職を見送って、さてお昼の支度をしようか。
下拵えはしてあるのでちょっと手を掛けてお昼ご飯になった。
孝弘さんを呼んできて皆で食べる。
流石に先生と司ちゃんは半分ほどだったけれど、その分は孝弘さんの胃袋におさまった。
いいよね、いつも何も残らないの。
洗い物を片付けて先生方とお茶をいただく。
なんてことのない日常。
日曜日の昼下がり。
「ああ、そうだ。明日のお稽古、山下さん以外お休みだから」
「えぇ?珍しいわねぇ」
「インフルエンザだってさ。だからあんた今から山沢さんと遊びに行ったらいいよ」
「あらそう? じゃどこ行こうかしら」
「うーん、根津は今は刀ですしねえ…畠山がまだ利休やってたような」
「三越は?」
タブレットを取ってきて検索。
「うーん…白金のほうでいいわ」
「ああ、じゃどこか山沢さんに食事つれてってもらって、山沢さんちに泊まっといで」
「それでいい?」
「あ、はい。んー食事、あの辺…懐石でいいですか?」
「うん、いいわよ。心当たりあるの?」
「一応ありますが現地行ってどれくらいかかるかで開始時間とか変わりますし…」
「断られたらどこでもいいわよ」
そんじゃまあ、着替えますか。