「明日…展覧会か花見か行きませんか…それとも寒いだろうからずっとこうしてますか」
「好きにして…」
「そんなこと言ったらずっと抱いてたくなる」
「じゃお花見行きたいわ」
「はいはい。お花見ね。そんなに俺にずっと抱かれてるのは辛い?」
「年考えて頂戴よ…」
「そういう意味か。抱かれるのいやなのかと」
「違うわ…怖いのはいやだけど。優しい久さんは好きよ」
「じゃ特別に優しくしてあげましょう」
ゆったりと優しく抱いて少し声が上がる程度に。
何度か逝かせると満足げな顔で寝息を立て始めた。
たまにはこういうのもいい。
俺も噛まれないし引っかかれないし。
しかしなぁ、怖いのがいやなのにうちに来るのはなんでだろう。
小一時間ほどして起きた時に聞いてみれば、やはり家だと気を使うのが大きいようだ。
「たとえば…家に誰もいなければ家でも良いのかな?」
「ええ? ん、でも何かいやなのよ」
「旅行とかなら良い?」
「そうね」
「じゃ今度また旅行しましょう。5月は無理だけど」
「あら、嬉しいわ。どこがいいかしら」
「ま、気になるようでしたら展覧会を絡めていただければ」
「温泉もいいわねぇ」
「温かくなってから温泉ですか?」
「湯冷めしないもの」
「…俺と一緒だとのぼせるんじゃないですかね」
「やだ、もう」
ちゅっと音を立ててキスして布団から出る。
「さて、夕飯どうしましょうかね」
「久さんが作る開化丼がいいわ」
「いいけどそんなのでいいんですか?」
「食べたくなったんだもの」
「じゃ、付け合せの希望は?」
「お味噌汁。海苔の」
「野菜がないですよー」
「別にいいわよ」
「じゃお買物行きますがあなたどうします?もうちょっと寝てる?」
「一緒に行くわ。待ってて」
はいはい。
その間に米を炊く仕込をして振り返ると着替え終わっていた。
俺が着替えてる間に髪を整え軽く化粧をして、さてと買物へ。
冷え込んでいるので先生が俺にくっついてきてて嬉しい。
食材を買い込み、おやつにとプリンを買った。
「あなたといると太るのよね…」
「へえ、そんなこと言うならカロリー消費させますよ」
「えっやだ、そんなつもりじゃ」
「二人で散歩とかね」
「もうっ」
「で、太ったってどの辺かなぁ、この辺?」
と着物の上から胸を揉んだら怒られた。
「ご飯、作るんでしょ」
「はいはいはい作ります」
出汁を作って肉と玉葱を煮て、卵とあわせてさっさと作る。
アオサで味噌汁をして。
パパッと作ったものだけど、先生がおいしそうに食べてくれた。
「汗かいた後って山沢さんの作るの、美味しいのよねえ」
「あー…塩分だ、そりゃ。味付けじゃなくて」
「そうかしら?」
お茶を先生がいてくれてまったりとした土曜の夜。
不意に先生が俺を見た。
「ね、しなくていいの?」
「あぁ、つい見とれてた。ドラマ見たいんじゃないんですか?」
「見たいけど…」
「見ながらでもいいんですか? 集中できないでしょ?」
「うん…」
「なら後で。いいからいいから」
ごろり、と先生の横に転がって先生の足に顔を寄せて寝る。
そのままうつらうつらとまどろんで。
次に起きたときは先生が俺の髪を撫でていた。
「起こしちゃった?」
寝返りを打って先生の腿の間に顔を埋める。
んー、いい匂い。
くすくす笑い声が聞こえて。
そっとお尻をなでまわしてると吐息になってきた。
「ベッド、行きましょうか」
「うん、そうしましょ」
テレビを消して戸締りをして。
電気を消してベッドに入る。