翌朝、先生にとっては少し寝過ごした時間に目が覚める。
既に朝日が差し込んでいた。
ぼんやりとしてる先生もいいなぁ。
だけどそろそろ布団から出て朝飯の支度をしなきゃな。
昨日の味噌汁があるから麩を足して。
鯛を焼いて食っちまおう。
ホウレン草のバター炒めでいいや。
ぼんやりと作って用意したら起きてきた先生にセンスがない、と言われてしまった。
なんで鯛を焼いたのにバターなの?と。
味・匂いの強いものと一緒に出したらダメだと叱られた。
「勿体無いじゃないの」
「まぁそうですけど」
ちょっとしょんぼりしてたらキスされた。
「いいわ、食べましょ」
ご飯をよそって渡す。
いただきます。
ホウレン草をメインに食べてたら苦笑されて。
「ちょっと待ってなさい」
そういって冷蔵庫から何か取り出して焼いてる音?
ん?この匂いは。
「そっちの鯛頂戴、私が食べるから」
ベーコンエッグが出てきて、菜の花の漬物が先生の手に。
俺洋食、先生和食になってしまった。
「このほうがいいでしょ?」
「はい」
乾通りの公開がニュースで取り扱われている。
「あら、ね、今日のお花見。あそこ行かない?」
「いいですね」
「あ、でも着物、そういう着物じゃないわ」
「俺の、どれでも着れるでしょ? 一つ紋位でいいんじゃないですか?」
「じゃそうしましょ」
「でも随分並ばないといけないと思いますが」
「…でももしかしたら今回限りかもしれないじゃない」
あ、たしかに。
ごちそうさまをして、洗い物をする。
「お風呂に入ってくるわ、あなたは?」
「俺は昨日のうちに入りましたよ」
「あら。いつの間に」
先生が脱衣所で脱いで、風呂に入る気配。
覗きたくなって突撃した。
「お背中流しましょう♪」
「あっ、もう。だめよ」
泡をたっぷり付けて先生の胸を弄って。
そぉっと股間に指を伸ばせばそれなりに濡れている。
きっちり逝かせてくたり、と俺にもたれかかる先生を洗ってあげた。
髪も俺の膝の上でゆっくり洗って。
気持ち良さそうにしてる。
かわいいな。
「ハイ、終りましたよ」
「ん、顔洗うわ」
泡たっぷり立てて洗ってる。
さすがに洗顔中は手を出せない。
鼻の中に泡が入ると辛いからなぁ。
洗い終えたので全身にシャワーをかけて。
ん、綺麗な身体だなぁ。
「どうしたの?」
「綺麗だな、と思って」
「あら。たるんできてるわよ、こことか」
「じゃ若いころはもっといい身体だったんだ。見たかったなぁ」
「そりゃ17,8のころとは違うわよ。あなたも若い子がいいの?」
「若い身体もいいけど…いまのあなたの身体が好きですよ」
キスして。
あ、だめだ、またしたくなる。
「お花見行くんでしょ」
ちょっと叱られて風呂から出て着替える。
髪を乾かした先生が念入りに化粧をして着替えている。
つい笑顔になってしまう。綺麗で。美人さん。
俺を上から下までじっくり見て、少し手直しされた。
タクシーで近くまで行き列に並ぶ。1時間半ほどかかるとか。
「凄い人ですねぇ」
「そうね、やっぱり日曜だもの」
ゆっくり流れる人の波にそって進むとボディチェック。
時間かかってるのはこれか。
花を楽しみ、先生との会話を楽しむ。
「こういうものいいわねぇ」
「そうですねぇ。職場の花見はカラオケと仮装とドンチャン騒ぎなので」
「あら面白そう」
「遠くから眺める分には面白いですよ。中の人になるのは御免です」
人が一杯だなぁ。押されて先生が俺に寄りかかる。
写真は一枚撮ったら進んでくださーい、と警察の方の声。
「先生も写真撮りますか?」
「いいわよ別に」
「いいんですか?」
「だって私が撮るより綺麗な写真集、あるもの」
「じゃ俺が先生撮りたい」
くすくす笑っていいわよー、と仰るものの人の波。
撮れそうにない。
「後でどこか良い桜があったらそこで撮りましょ」
「はい」
中で30分ほどか。桜と皇居を楽しんで乾門を出た。
「さて、そろそろお昼ご飯の時間ではありますね」
「お弁当買って皇居東御苑で食べない?」
「いいですね。でもどこか売ってるのかな」
丁度いいところに警察官が通りがかったので聞いてみる。
残念ながら中で売っている弁当は売り切れの由。
靖国に流れて近くでランチを取る人も多いという。
どうします?と先生に聞けばそれでいいとのことでお礼を言って移動する。
笑顔で気持ちよく挨拶を返していただいた。
先生の残念そうな顔にほだされたのかもしれない。
そのまま靖国方面の人の流れに載ることにした。
ま、いい食事処がなければ三越とか。
先生を連れて歩くと視線がそれなりにある。
見せびらかしたいような、見せたくないような。
靖国の桜も増して見事で近くの方が桜をバックに写真を撮ってくださった。
先生が帰られるときに印刷して渡そう。
「夫婦…に見えてるんでしょうかねえ」
「多分そうよね」
「孝弘さんとも昔は行ったんですか」
「行ったわ…色々行ったわよ」
「今は花より団子ですからねぇ」
「そうなのよねー」
もうちょっと風流を解する男に育てられなかったんだろうかと思う。
無理か、環境からしたら一番いいもんなー。
ゆっくり桜を楽しんで、神社から出る。
まずは九段下付近にお店はいくつかあるだろう。
が、しかし…どこも1時間待ちとやら。
「三越行って見ます?」
「そうね、そうしましょ」
三越についてレストランエリアへ上がる。
「イタリアンがすいてるみたいですが」
「あら和食のお店は混んでるの?」
「8人待ちですね」
「じゃイタリアンでいいわ」
席へ案内してもらってメニューを選ぶ。
俺は一品多いプランを。
組み合わせを伝えて食前酒を頼む。
あ、そうだ。
「作陶展やってるみたいですが後で見ますか?」
「勿論よ」
食前酒の口当たりもよく先生も笑顔だ。
美味しい食事をいただいて、満腹になってデザート、コーヒー。
「あなたねぇ甘やかしすぎよ? こんなにおいしいものばかり食べさせて」
「太る?」
「そうじゃないわよ」
「好きな女と美味しいものを食べるのも幸せなんですよ。私を甘やかしてます」
「ばかねぇ、もう」
食後会計してそのまま美術フロアに流れる。
先生は茶碗など眺めてうっとりして。
そのまま晩のご飯も買って帰りましょ、と言われて地下へ。
サラダやメインになるものなど買って帰った。
「あぁ疲れちゃったわー」
「はいはい、鞄とコートもらいましょう。脱いできてください」
「ん、よろしく~」
ぽいぽいと脱いで浴衣を着て出てきた。
ベッドにごろり、と寝転んでる。
俺はその脱いだ着物を片付けて自分も着替えて先生のそばへ。
あれ、既に寝息だ。
結構疲れたらしい…。
ま、いいけどね。俺も少し横になろう。
夕方起きて二人でご飯を食べる。
自堕落な生活。
「今晩のうちに帰るんですよね?」
「ううん、明日の朝帰るわよ」
「いいんですか?」
「そういってあるもの」
「じゃ…後で抱かれてくれます?」
あ、頬染めてる。可愛い。
「いいわよ…」
ニッと笑って食事が進む。
「あ、でもその前にお風呂入りたいわ。結構汗かいちゃったもの」
「はいはい。一緒に?」
「入りたいの?」
「ええ」
「いいけどえっちなことはだめよ」
「そいつぁ残念」
ぺち、と額を叩かれた。