翌朝も雨、梅雨は嫌いだ。
出勤しても客もやる気がない。
俺もやる気がない。
社長も今日はあまりやる気がないようだ。
しかしながら昼になるにつれ雨がやんできた。
まだ空は曇っているが予報はこれから晴れ間もありらしい。
お稽古に行こう。
お宅に着いてお稽古の準備を整えた。
先生も何か気だるげなのは気のせいだろうか。
それでも水屋を片付けるまでは何とか気力が持った様だ。
台所ではなく先生の部屋に呼ばれた。
暫く俺の懐に。
八重子先生が呼びに来てやっと離れて食事へ。
夕飯を食べた後も物憂げだ。
どうしたのだろうか。
「…おばあちゃん」
「なに?」
「明日お稽古お願いしていいかしら」
「いいけど?」
「山沢さん、家行っても良いわよね?」
「ええ、かまいませんが」
「じゃ用意してくるから待ってて。あ、律。ちゃんとお勉強するのよ」
「はいはい」
「はいは一回」
「はーい」
そういうことで支度をした先生を連れて帰宅した。
「…掃除してないでしょ」
「明日する」
「しておいてあげるわよ」
「いいですよ」
「暇なんだもの、あなた帰ってくるまで」
「すいません」
先生はぽいぽいと着物を脱いで寝巻きになった。
「早いけど一緒に寝て頂戴」
「はい」
俺も着替えてベッドにはいる。
「今日はしないでね。寝たいだけだから」
「いいけど。どうしたの?」
「なんでもないわ」
「そう?」
言いたくないなら仕方ない。
緩く抱きこんでゆっくりと背をなでた。
少しずつ穏やかな息になり、寝息に変わる。
肩に入っていた力が抜ける瞬間。
それを見届けて俺も寝た。
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