帰り道、普段の薄化粧も素敵だけどしっかり化粧をしている先生も綺麗だ、
と褒めると照れていた。寝化粧はするのかな。
お宅に着くと大先生はお客様の様子、早速のご注進が来ている模様。
「絹さんが男とホテルに…」とか聞こえる(笑)
絹先生と顔を見合わせて笑う。部屋をとらなくて良かった。
部屋の外からそっと声を掛ける。
「八重子先生、ただいま戻りました。」
「ああ、おかえり、どうだった?」
「いやぁさすがに諸津さんですね、すごく良かったです。」
お客様にも軽く挨拶したところ、目を白黒されている。
そりゃホテルに連れ込んだ男本人が八重子先生と話しているんだから。
「絹は?」
絹先生は普段着に着替えに行ってしまっている。
お客様はそそくさと帰ってしまった。ああ、誤解を解いてないのにまだ。
打掛けが素敵でしたよ、などと話していたら絹先生戻って来た。早いな。
「ところでホテルって?」
「ああ、お昼の時間だったんでランチを食べに入ったんですよ、
前に行ってうまかったんで。八重子先生も今度一緒に行きますか?」
「おいしかったわよ。山沢さんにおごってもらったのよ」
デートだし。
「そうそう、今度京都で1日講習会があるんだけどね
日程がうちのお稽古日にぶつかるから絹しか行けないけど
あそこは一人だと不安になるからあんたらで行ってこないかい?
山沢さんもそろそろいいだろ?」
いつだか伺うと、うん、仕事には影響はない。しかも連休だ。
「ほかの方はどうなんですか?」
「みんな家庭があるからね、泊りがけは難しいよ。」
絹先生は微妙な顔をしている。多分泊りがけに引っかかってる。
日程をメモる振りして懐紙に"前日にHなことはしません"と書いて見せた。
それで決まったようだ。
書いただけかもしれないのにやはり素直な人だ。
「定宿はありますか?ないなら手配します。」
例のホテルを取れたら良いな。会場までちょっとあるけどタクシー使えば問題ない。
タブレットからささっと調べると空きがあるので手配を掛ける。
夕食はつけてもらおう。食べに出るのは面倒だろう。
朝御飯は…
「講習会は何時からでしょう?」
ゆったり食ってたら間に合わないとか可能性もある。
どうやら朝食は時間が無理そうだ。
初日夕・当日無・出立日朝で手配をかけた。
実はその部屋は茶室付きの和室だ。
茶道具もセッティングされているので気になっていた。
講習の後、実践するにも良い環境だろう。
連休だが、まったく予約が入ってないところを見るとあまり知られてないのだろうか。
「当日ですが宿から会場までのルート確認とかするのなら早めに行きますか?」
3時にチェックインなら昼前に乗れば十分につく。
昼は駅弁かな。新幹線や駅弁の手配なども引き受けた。
茶懐石のあの店のお弁当にしてやろう。駅弁じゃないけど。
あ。
「当日私も着物のほうが良いのでしょうか」
「そのほうが良いね。ああ、この間の着物でどうだい」
男着物で出席ですか、そうですか。家元臨席講習会なのに良いのか。
もういっそお茶は男着物で通してやろうかしらん。
後は待ち合わせ時間や場所など細々と決めて夕方になったので辞去した。