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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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お腹がすかなかったようで先生が起きたのは夜の9時を過ぎた頃。
「何か食べられるもの、ないかしら?」
「あぁ起きた? 欲しいのはご飯? 甘いもの?」
「ご飯。お茶漬けでも良いわ」
「んーリゾットとか食べます?」
「作ってくれるの?」
「簡単バージョンでよければ。和風かトマトどっちが良い?」
「そうね、トマトが良いわ」
「んじゃもうちょっとごろごろしてて」
冷蔵庫からしめじと玉葱を出して刻み、ツナと炒める。
水、出汁、トマト缶に塩を足して炊いた。
昔は米を炒めることに違和感があったんだけど。
しっかり白くなるまで炒めたら意外とうまかった。
15分ほどして先生が台所に出てきて水を汲んで飲み、俺の手元を覗き込む。
「味見して良い?」
「どうぞ」
少し塩胡椒を足された。
「チーズ入れるけど良いの?」
「あ…ま、いいわ」
火が通ったので盛り付けして出した。
俺はそれに更にポークソテー。
「いる?」
「一切れ頂戴」
「もっと食ったら良いのに」
「太るわよ」
「この時間に食べる自体やばいでしょうに」
「だからよ、一切れで良いの」
笑いつつ一切れを先生に。
食べてる内に先生は段々とリゾットの味の濃さがつらくなってきたようだ。
「お腹、ある程度膨れたならやめたらどうです?」
「ん、でも…」
「食わんなら下さい」
「じゃ食べて」
残ったのを平らげ、洗い物に立つ。
「ねぇ明日どこか行かない?」
「何か行きたいところあるんですか」
「根津、どうかしら」
「金継ですか。いいですね」
「違うわよ、秋の取り合わせ。見たいの」
「あぁ。なるほどね。そうそう、次の連休は何か予定入ってます?」
「今の所まだ入ってないわよ」
「それなら京都、どうです? 来ませんか。茶道資料館とか大西とか」
「あらー、いいわね。お母さんに言ってみるわ」
お茶を入れて先生に出す。
「一度あなたの家、行ってみたいわ」
「あっちのマンション? 散らかってるだけですよ」
「片付けてあげるわよ」
「いやぁ、先生見たら帰っちゃうかも」
「そんなに酷いの?」
「えぇまぁ。汚くても死にゃしない、なんて」
べしっと額を叩かれた。
「掃除しなさいよ」
お腹も膨れて落ち着いた先生は歯を磨きに立った。
湯飲みを洗って手を拭いて、洗面所に行く。
歯を磨く先生を後ろから抱いて、胸に手を這わすと腕を叩かれた。
怒ってる、かな。これは。
結局は口をすすぐから離せ、と言うことのようだ。
離してあげてしばし待ち、俺も歯を磨く。
「触るの好きねぇ、でも駄目よ。あなただって嫌でしょ?」
そういいつつ俺の乳を揉んできた。
先生だって触るの好きだよな。
口をすすいでからベッドに連れ込み、丹念に抱く。
先生は幸せそうな顔をして寝始め、俺も眠気を感じて寝た。
朝、ふと目を覚ますと先生がいない。
台所かと思ったら風呂を使っているようだ。
俺も一緒にと思って脱ぎ、入る。
「あ、おはよう。起きたの?」
「おはよう。洗ってあげますね」
「もう洗っちゃったわよ。出るとこ」
「何だ、残念」
浴びてたシャワーを止めてタオルで水気を拭い、先生が出た。
しょうがない、俺もさっさと洗って出るか。
ざっと軽く洗って出ると先生はドライヤーを使っていて、既に浴衣を纏っている。
「暑くない?」
「ちょっと暑いかも…」
スイッチを入れ、通気を図る。
風呂場乾燥もかねて。
俺は冷めるまで裸でごろごろしていたら先生が戻ってきた。
「襲うわよ?」
そんな冗談を言われて着替えた。
「何か買って来ようと思いますが」
「ちょっと待ってね」
先生が冷蔵庫の中を覗き込んでる。
何か作ってくれる気かな?
「そうね、朝御飯は昨日と同じようにでいいかしらね。お昼の材料買ってきてくれる?」
「パンは何が良いです?」
「おいしそうなの。お願いね」
「はーい」
デニッシュを3種、安納芋と和栗、アーモンド。
チェリーのボストックがあったのでそれも。
どれか一つくらい先生が食べるのあるだろう。
スープは今日は人参とグリーンピース。
持って帰ると先生が妙な顔をした。
「人参、ポタージュになるのねぇ…」
「ごぼうがなるくらいですからね」
絶句してる。
「おいしいのかしら」
「さあ…一度買ってみましょうか?」
「そうね、今度お願い」
結局先生は和栗をチョイス。
女の人は芋栗南京って言うよね。
本当は芝居浄瑠璃芋蛸南京だけど。
グリーンピースのスープは先生が、人参は俺がいただいた。
その後、先生が俺の買ってきたものを点検して献立を理解したようで下拵えしはじめた。
昼前、先生が早めのお昼にしよう、ということでご飯を炊いて食べ、支度する。
根津へ。
先生は秋草の付け下げ、胴抜きの着物。
残念ながら単衣の秋らしい模様のは先生には似合わなかった。
でもこれは映える。
俺は紬で羽織をつけて。
先生にとっては丁度良い気温だったようだ。
じっくりと取り合わせを観覧され、それから金継や絵などを見てまわられた。
俺は先生から説明を受けお勉強。
「あら、飯嶋さん。こんにちは」
「あらあら、お久しぶり」
「こちら旦那さん? こんにちは」
「ちがうのよ、これうちの弟子で今日はお勉強」
「宜しく、山沢といいます」
「三輪です、飯嶋さんとはいつも勉強会でご一緒してるの」
「渋谷の方でお教室されてるのよ」
先生方の行くような勉強会はそういう方沢山いらっしゃるんだろうな。
「今度この子も勉強会に連れて行こうと思うんだけど中々ねえ」
「連れてらっしゃいよ」
「お仕事してるから日が合わないのよね」
「それは残念ねえ」
場所を移してカフェでコーヒーをいただきつつおしゃべり。
「お茶会ももっと連れて行かないと、と思ってるんだけど」
「難しいわよ、お仕事してる方は。日曜は休養日だし」
「それじゃいけないのよね」
「あなた山沢さんでしたっけ、一度お茶会いらっしゃいよ。大寄せで良いから」
「そうですねぇ」
女の長話が終って先生と庭園を楽しむ。
折角のデートなのに他人がいるのはつまらない。
美術館を出てタクシーを拾う。
車中の人となった途端、頭を撫でられた。
「ん?」
「我慢してたでしょ?」
「顔に出てました?」
「三輪さんにはわかってなかったと思うから良いわ」
「ならよかった」
そのあと家に着くまでずっと俺の手を握っていて、少し照れくさい。
ふと気づく。
「あ、今日のうちに帰るんですよね?」
「明日一緒に帰るわよ」
「朝稽古、良いんですか?」
「生徒さん、朝来ないのよね…最近」
「あなたがサボるからじゃないですか。みんなきっとあなた目当てなんですよ」
「そんなことないわよ」
「少なくとも俺はそうです。だから今日は夕飯食べたら」
「帰れって言うの?」
「送ります。お稽古は休まないで下さい。じゃないと旅行、言い出しにくい」
いじけてるみたいだ。
「わかった、今日だけですよ。ちゃんと次からは休まないで」
「休んじゃ駄目?」
「八重子先生の負担、やっぱり大きいでしょう?」
「あ…そうよね」
どうやら失念していたようだ。
「一応、一年目は大目に見るとは言っていただけましたけど。もう一年、過ぎましたから」
「叱られちゃうかしら」
「かもしれませんよ」
ちょっと脅したころ、家についた。
先生は少ししたらご飯食べに出ましょ、と言う。
どこが良いか聞くとステーキハウス。
予約を入れてる間に先生は着替えられた。
油はねしても気兼ねのない物に。
ステーキはおいしく、先生はワインも飲まれた。
満腹、満足。
帰宅して寝巻に着替えてくつろぐ。
「あなた明日早いんでしょ?」
「ええ、休み明けですから」
「眠くならない? ホットミルクいるかしら」
「ふふ、そんなのいいからおいで」
引き寄せてゆぅるりと先生の体をなでる。
「う、私のほうが眠くなっちゃうわ」
「それで良いんだよ。あなたの寝息が一番の子守唄だ」
静かに先生の呼吸が遅くなるのを聞きつつ、耳元で囁く。
「好きだよ、絹。ずっと手元に置きたいくらい」
先生はびくっとして呼吸が少し速くなった。
「寝なさい、お休み」
また呼吸が落ち着くまで撫でて。
寝息に変わった後ベッドにもぐりこんだ。
おやすみなさい。

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