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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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土曜は忙しく、流石に連休だ。
客先からまだ届かないなど電話が入り、手が空いた時には私も配達に出た。
それでも昼過ぎには仕事が終わり慌てて帰宅し整えて先生のお宅へ。
既に稽古が始まっていて、遅刻を詫び、混ざった。
やはり今日は数人お休みらしい。連休だもんね。
先生と協力して早めに終らせると水屋を片付ける時間が出来た。
俺が片付けてる間に先生が旅行の荷物を玄関へ出し、着替え始める。
俺も終わり次第着替え出立の用意が出来た。
八重子先生に挨拶して荷物を確認、すべて持って移動を開始した。
「せわしないけど仕方ありませんね」
「お稽古日だもの」
荷物を忘れないように、乗り継ぐ。
新幹線で駅弁を購入して広げた。
俺は牛すき重、先生は野菜たっぷり弁当。さすがだ。
食べ終わって物足りなく思っていたら車販が来た。
サンドイッチを貰ってコーヒーと温かいお茶を買い、先生にお茶を渡す。
くすくす笑いつつ先生もお弁当を食べきって満腹な様子。
俺もサンドイッチを平らげ、ごみを捨てに立った。
ついでに温かいお茶を自販機で買い、戻る。
っと先生が車掌と話している。
切符の改めか。
近寄って懐から出して見せ、確認は済んだ。
にこっと先生が車掌に微笑む。
俺は少しむっとする。
座ってそう言うと笑われた。
「ばかね、他の人から見たらただのおばさんよ」
「美人さんですから。ただのとは思ってないかと」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
うふっと笑う。可愛い。
ゆったりと喋りながら夜が更ける。
すっかり暗くなり先生が眠くなった頃、到着しタクシーで宿泊先に移動した。
「あなた、ちゃんと良い宿知ってるのね」
「今回はキャンセルが出たそうで幸いですよ」
荷物を片付け、明日の用意をしたら早速シャワーを浴び、着替えてベッドに潜り込む。
「ねぇ…しなくていいの?」
「今日したらあなた明日資料館とか無理でしょう?」
「そうね」
暫く撫でていたが突然先生が起きた。
「あ、忘れてたわ」
寝る前のトイレか。
戻ってきて俺の胸を枕に寝始めた。
よしよし、可愛いな。安心しきっている。
先生のぬくもりと寝息に引き込まれ、寝た。
翌朝、食事をして支度し、出る。まずは定番の資料館。
丁度名碗展を開催していた。
白鷺、広沢、三宝に小原木など名器と呼ばれる茶碗だ。
楽しんだ後西陣織会館へ。
少し買物と目の保養をして、楽美術館。
やっぱり楽は良いなぁ。
欲しくなる。
見終わった後どこかでお昼をいただこう、となり職員にお勧めを聞いてみる。
ここから二筋下がった町屋とのことで先生と歩く。
危なく普通過ぎて通り過ぎるとこだったが先生に引き止められてわかった。
入ると古書店でもあるらしい。
先生はカレー、俺はガッツリ系を予想したプレートを頼んだ。
しかしながら出てきたものを見て先生がそっちが良いというので交換。
肉だけ半分くれた。
ま、ね。プレートの中身は俺の苦手とするものが多かったから良いんだけど。
一旦宿に戻り小用を済ませて午後は岡崎エリア。
大西へ行き、泉屋と野村を回る。
もう3時半、そろそろとタクシーを上七軒に回してもらった
4時前に入場して席に着く。
ブザーが鳴り、静かになると真っ暗になった。
開幕。
晒し三番叟であけて子の日。
おさん茂兵衛。
駆け落ちもので有名だ。
先生が俺の手に触れてくるのは自分の現状と重ね合わせてるのだろうか。
休憩時間に先生がトイレに行き、俺は一服。
〆は枕獅子。
鏡獅子の元になったやつだね。
しかし当時の人も傾城物を大奥に持ってくるなんて大胆なことをしたのか。
すっかり鏡獅子が有名になって枕獅子は見なくなった。
番組が終って千秋楽、良い会だった。
先生と腕を組み歌舞練場の裏へ出て歩く。
少し寒そう。
俺の羽織を着せた。
「暖かいわ…何度目かしら」
「ふふ、今日は冷えますよね」
手を握って料理屋さんへ入る。
「どうも」
「あ、いらっしゃい、どうぞ」
仲居に従って部屋に通され、席に着く。
「お酒はどうされますか?」
とメニューを貰って冷酒を二つ頼み、待っていると酒が来た。
まずは乾杯。
暫くして芸妓が一人、来た。
「へ、おおきに、おまっとうはんどした」
「やぁお久しぶりですね」
「へぇへぇ、そうどすな、一年はお顔見せてもぅてまへんな、
 忘れはったんちゃいまっしゃろか、ゆうてたんどっせ」
「いやぁ仕事とか習い事とかでね、時間が作れなくて。こちらうちのお茶の先生」
「へ、よろしゅうおたの申します」
「あ、はい、こんばんは」
随分年寄りが来たとて驚かれてしまった。
「このお人は割りと古くからこっちで芸妓されててね」
「へぇそうどすな、さすがに戦前はよう知らしまへんけど」
「勝喜代はんやったらよう知ってはるんやない?」
「今年は会も出たはらへんのえ」
「あぁ、もう随分なお年やもんなぁ」
先生が目をぱちくりさせてる。
「うん、何で呼んだかといいますとですね、娼妓がいるところってイメージだったでしょ」
「え、あ、うん」
「ここ上七軒は芸妓本位の街で娼妓を置かない街だったんです。それをね」
「まだ赤線やらあった頃はよぅよぅ知っとりますよって」
「ここは置かなかったんですよね。基本」
「祇園町には150年前はいはったそうやけどね、太夫。歌舞練場は駆黴院の痕やそうどす」
「くばいいん?」
「性病の治療する病院どすな」
「こっちの街にはないんですがそれもその筈、戦前でたったの3人ですからね」
「今はどこの花街も体を売らはるようなことさせたらしまへん。自由恋愛ですわ」
「まぁ自前で着物やら支度やら、足りなくてパトロンを持つことはあるようですが」
「他所さんの事はそんなゆうたらあかしまへんけど、こっちは昔から芸妓本位どすよって」
「まぁ娼妓本位はわが地元、島原ですね。娼妓以外が殆どいなくてもう営業できなくて」
「えっ、島原ってあの?」
「はい、吉原か島原か、の。もうお茶屋組合すら解散しちゃいました」
「歌舞練場ものうなりましたなぁ」
「さびしいですよ、小さい頃そこでお餅つきしてたのに」
「本当にそこが地元なのねぇ」
「小さい頃はね、あたりから清元が聞こえたりね。友達が禿したり」
色々と喋って先生のこだわりをほぐして行く。
ご飯もいただいてすっかり気持ちのほぐれた先生を連れてホテルへ戻った。
俺に少し寄りかかって暫くいる。
「疲れた?」
「うん。…脱がしてくれる?」
帯締めに手を掛けて帯を解いて行く。
腰紐を外しつつ問う。
「風呂? それとももう寝る?」
「ん…寝るわ」
長襦袢まで紐を抜いて、浴衣を出して渡した。
「ほい、立って」
よっこらしょ、と俺に掴まって立った。
べろん、と全部抜いてさっと着せ掛ける。
一瞬の寒いぼ。
軽く首筋にキスし伊達締めを渡してボストンを漁る。
コールドクリーム。と湿った吸水スポンジタオル。
このコールドクリームは先生のと同じメーカーだから肌荒れの心配はない。
ベッドに寝かせ、股の間に先生の頭を落としこんで丁寧に先生の化粧を落とす。
途中で寝息が聞こえてくる。
拭き取り化粧水で二度ばかり拭き取れば先生の肌の感触が凄くよくなった。
髪をほどいてやり、枕を当てて布団の中に入れた。
俺も手を洗い先生の着物を片付けて寝る用意を整え、横にもぐりこんだ。
おやすみなさい。

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