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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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翌朝、仕事をしていて何の気なしに荷物を持ったら魔女の一撃だ。
社長に言うとすぐに帰れ、と湿布を渡された。
帰宅して引き出しを漁り腰痛ベルトをしてから食事を取った。
うーん。
やばいね、これは。
先生のお宅に電話してお稽古に伺えない旨と家に来ないようにと言うことを連絡した。
食後に飲んだ鎮痛剤が効き出し布団に潜る。
参ったなぁ。
10年ぶりだろうか。
鎮痛剤の影響からかうつらうつらとはするものの、身じろぎで痛み困る。
夕方、目が覚めたので鍼屋に行くことにした。
携帯を手にとれば着信数件。
すべて先生からだ。
メールも入っていてこちらに来るとの事。
困ったな…。
返信しようとしたら玄関で物音、遅かったか。
先生を迎え入れて鍼屋に電話した。
「大丈夫? 一緒に行くわ」
「有難う、でも来るなと言った気がしますが?」
「聞いたわよ。ほっとけるわけないじゃない」
脱ぎ易いようなものを着てそろりそろりと歩いて鍼屋に向かう。
先生が鞄を持ってくれた。
心配そうだが病気じゃないからなぁ。
鍼屋に着いてなんとか診療台に上がり、脱いだ。
鍼医者が背中に腰にと触れ、先生が心配そう、というかちょっと嫉妬してそう。
気のせいだろうか。
何本も刺されてほっとかれる。
先生が手を撫でてきた。
ええい、なんぞしたくなるからやめてくれ。
暫くして鍼が抜かれた。
座って、と言われて座る。うん、随分楽だ。
「明日また来て下さいね」
「はい」
お支払いをして先生と二人帰る。
「随分違うわねぇ」
「ん、そうですね。まだ痛みはしますが」
家に帰って先生に軽くキス。
「そんなわけで今日は抱けませんよ」
「あのねぇ…」
片手で頭抱えてる。
「冗談ですよ、それより腹減りませんか?」
「作ってあげるわよ。寝てなさい」
「…おかゆは遠慮します」
「あら? 嫌いなの?」
「というか病気じゃないですから。普段のものでいいんですよ」
「そう? ま、いいわ。ほらベッド行きなさい」
「はい」
ベッドに転がると立つよりは楽で、しかし寝返りは難しく。
台所の音が何か心地よくて少し寝てしまったようだ。
ふと目が覚めると先生がベッドの横に座って食事の支度をしている。
「ん、リビング、行きますよ」
「あぁ起きたの? 出てこなくて良いわ。背中、クッション入れてあげるから」
病人のように扱われて自分で食べるといってるのに、あーん、などと。
「先生、世話焼くの好きですよね…」
何とか食べ終わりお茶を頂いてる間に先生が片付けてくれている。
散らかった部屋も。
てきぱきと掃除や洗濯物を片付けて行く。
流石に長年主婦をしている人は手早くて凄いと思う。
「あ、そうそう。今日泊まるから」
「じゃ和室に布団敷いてくださいよ」
「どうして?」
「我慢できなくなるから」
「ばか、こんな状況で何言ってるのよ」
「可愛いな」
「寝なさい!」
頭をペシッと叩かれた。
笑いながら布団に潜り込む。
「もうっ」
怒りつつも俺を頭をなでている。
優しくて、可愛くて、綺麗で。
そんな女が俺のものになってくれている幸せをいつまで享受できるのだろうか。
先生から軽くキスしてきて寝かしつけられる。
満腹感と先生の甘い匂いに包まれてしばしの眠りについた。
次に目が覚めたのはすっかり夜で先生は今でテレビを見ながらお裁縫をしている。
俺の襦袢に半衿をつけてくれていたようだ。
「あら、目覚めた? ご飯食べる?」
言われて見れば腹が減った。
「いただきたいです」
よっこらどっこいしょと起きてトイレに行き、リビングの椅子に座る。
「先生はもう食べたんですか」
「そうよ、起こしたけど起きなかったもの」
ん? と時計を見れば10時で流石にそりゃ食ってるよな。
「あなた明日仕事どうするの」
「休めって言われてます」
「そう、よかった」
いくつか出された小鉢を平らげてもう少し欲しいなと思っているとプリンが出た。
デザートか。
「お夕飯の買物した時にね、買ってきたの」
「あなたの分?」
「ううん、別に買ってあるわ。だから食べて良いわよ」
「そんじゃいただきます」
先生はそのまま半衿を付けている。
つい見とれていると終られて片付けだした。
「なぁに?」
「ん、いや。そういうのしてる姿も好きだなと」
「変な子ねぇ」
先生はお針を数えて蓋を閉め、仕舞いこむ。
俺は満腹。
「さ、そろそろ寝るわよ。あんたも寝なさい」
「いま起きたところ…」
「ダメよ、ちゃんと安静にしなくちゃ治らないわよ。寝れないなら添い寝してあげるから」
「うーん」
ベッドに連れて行かれて布団に押し込まれた。
横に先生が潜ってくる。
「したくなっちゃうな」
「安静にって言ってるじゃない。良い子だから寝て頂戴」
寝かしつけようと撫でてくる。
お母さんモード?
「あなたが先に寝たほうが俺は眠くなるんだけどね」
「そうなの?」
「寝息、聞いてるの好きなんだよ。あなたも今日は疲れたでしょう?」
「そうねぇ」
あふ、とあくびをしている。
「だから先に寝てくれて構いませんよ」
「だったらそうするわ。あなたもちゃんと寝て頂戴よ?」
「うん」
久しぶりに枕を二つ離れさせての就寝。
手を絡めて。
先生の体温と寝息が心地よい。
眠れないだろうと思っていたのにすぐに眠気が下りてきた。
おやすみなさい。

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