翌日出勤し仕事をして土産を配る。
カニは送った翌朝すぐ買われていったそうだ。
ただ次回出張は一人で行きたいなぁ。
ちょっと疲れたし。
仕事が終わってお稽古に行き、夜は今度こそと思ったが疲れてるからとお願いされた。
まぁ確かに俺も疲れてる。
諦めて抱きかかえて寝ることに。
申し訳なさそうな顔を見てると可哀想になって頭をなでてしまった。
暫く背中をなでているうちに先生が寝て、俺も寝て。
翌朝は一緒に朝ご飯を作って食べてから旅行の荷物を広げて洗濯。
先生の下着や俺の下着も。
それからお土産の箱を開く。
ちりめんの白生地を10反と小物類。
染めも縫いも先生のお知り合いのところに頼まれるそうだ。
重目から軽目まで色々。
八重子先生は軽いのが最近はお好みだそうで。
一番重いのを律君のにしようか、など仰っている。
俺は知ってる染屋というと京都になるので自分の分はそのまま預けてきた。
そんなには着ないから3反だけ。
先生も八重子先生も嬉しそう。
今日の昼から早速染屋に持っていくと仰るが休みではないのかな。
そう言うと既に電話してあるんだそうだ。
ま、俺は荷物持ち兼アッシーだろう。
なんだかんだしていたら時間が過ぎた。お昼ごはんにしよう。
軽いものを作って食べて落ち着いたら先生方と荷物を積んで先生のナビで染屋へ。
色々と先生方が色見本を見せてもらって相談している。
京都とは色の選び方がやはり違うよね。
依頼をして帰宅する途中、夕飯の買出しもした。
なんだか疲れたが先生方はそうでもないらしく夕飯の支度をしている。
俺はちょっとごろ寝。
暫くしてそろそろ出来るから、と起こされたがハーフケットを掛けられていた。
ごろ寝のつもりが熟睡していたようだ。
夕飯を頂いて帰宅し、また寝た。
意外と疲れてた?
翌週は普通の一週間でいつものようにお稽古を手伝い、つけてもらい。
火曜の夜は軽くではあるが抱いて。
そんなこんなで週末。
稽古中に違和感に気づきトイレへ行くとやはり今日からだ。
部屋へ寄って下着を替え、用意をして戻った。
今日はお稽古は無し、と言うことにしていただく。
夕飯を頂くと早く寝るように言われた。
「顔色悪いわ…うちのことはいいから」
あんまり勧められるので先に布団に入らせていただいた。
布団が冷たい。
これなら起きて先生を抱っこしてるほうがなんぼかいいじゃないか。
とは思うもののそういうわけにも行かず。
それなりに布団が温まった頃少し転寝をした。
物音で目を覚ますと先生が寝間に入った音で丁度良いからトイレに立つ。
戻ると先生も寝る準備を済ませて布団に入るところだった。
「うー、さむ」
「寒いわよねぇ」
「抱かせて」
「…早く寝なさい」
呆れられた。
「やだ。却下。抱きたい」
「まったくもう。わがまま言うわねぇ」
仕方なさそうに俺の手を掴み胸に差し入れてくれた。
「冷た…」
「あっ、ごめん。手洗ったから」
ふぅ、と先生が息をついて俺を引き寄せる。キス。
しっかり絡ませて唇を離す頃には少しは温まってきた。
俺を煽るのも最近はお手の物のようだ。
布団の中で静かに、優しく抱いて。
耳元で囁かれるうわ言のような俺を好きと言う声に、より大切にしたくなる。
あそこも舐めて十分に楽しみすっかり満足して横に転がった。
すっかり寒くは無くなってむしろ暑い。
「トイレ行ってくる。何なら先寝てて」
「ん…」
ぺたぺたとトイレに行く途中律君に会った。
「うわっ」
慌てて後ろ向いてる…。
自分のなりを見た。これはいけない先生に叱られる。
ざっと直す。
見なかったことにしてくれと頼み、トイレへ。
とは言え見ちゃったんだろうから見なかったことには出来ないか。
明日叱られそうだ。
トイレから戻ると眠そうにして待っていてくれた。
嬉しくて抱きかかえて寝る。
朝は少し先生が遅れて起きてきた。
俺に炬燵に入るように言ってくれてタッチ交代。
うまそうな匂いが漂ってくる。
机の上を片付けて出来るのを待っていると律君が起きてきた。
「おはよう。あれ?」
「あらおはよう。どうしたの」
「いや今日はお母さんが作ってるんだ?」
「私の具合が良くないと気を使ってくださってね」
「お母さん、出来たわよ。あら、律。おはよう」
「はいはい」
八重子先生が配膳して律君が孝弘さんの分を持って行った。
先生の作る御飯が好きだ。
なんだろう、俺が作るのと何がどう違うんだろう。うまいんだよね。
味わって食べて。
お腹が膨れたので洗い物をと思ったのだが律君がやるからと持って行ってくれた。
「優しいなぁ、律君。良い子に育てましたね」
「でしょ。でも学校の成績はねぇ…」
「まぁまぁ、あの大学には入れてちゃんと続いてるんですから」
「でも今度は就職口があるかねぇ」
「文系は今難しいですからね。開さんと二人であっち系をやるか…」
「それは困るわよ」
八重子先生も嫌がっている。
「ところであんた昨日浴衣羽織っただけで夜中お手洗い行ったんだって?」
「あ、ははー…あんな時間誰も遭わないと思ってました」
「久さん…? もしかして律に見られたの? ちゃんとしなきゃ駄目じゃないの」
二人から責められてごめんなさいをした。
「道理で目をあわさないようにしてると思ったわ…」
まぁ幸い昨日は先生にキスマークもつけられてないし、噛まれてもいなかったし。
「いやでも律君、女の裸に耐性無さ過ぎですよね」
ごつん、と頭に拳が落ちてきた。
「あなたみたいに裸でうろうろしないわよ」
まったくもうっと怒られて。
その手を引き寄せる。
「普通お母さんの裸とか見てて気にならなくなるもんですけどねぇ」
「そんなもんかねぇ」
「だって一番身近な女、でしょ? 母親や女兄弟」
「あんたも?」
「いや私は流石に物は同じもんついてますし。むしろ兄貴のはどうなってるかなとか」
「あ、それはわかる気がするわ」
先生もやっぱり気になった時期はあったようだ。
初夜に大きくなったあれ見て吃驚したって。
お兄さんたちはうまく見られないように処理していんだな。
可愛い大事な末っ子の女の子だもんな。
環さんあたりはうっかり見てそうだ。
「で、なんか初心なまま今に至る、ですか」
「そうねぇ。今はあんたの所為ね」
ぴんっと鼻先をはじかれた。
地味に痛い。
「さてと、そろそろ洗濯物しようかね」
「じゃ久さんは…んー。お茶室の拭き掃除お願いね。ゆっくりでいいから」
「はーい」
「私はおふろ洗ってくるわね」
家事を分担してバラバラに動く。
いつもなら俺が風呂掃除だがアレだから外したようだ。
障子の桟や棚の上など気にしつつ拭く。
最後は畳の目にそってしっかりと。
きょろきょろと見回して掃除のやりのこしがないか確認した。
こんなものかな。
腹減ったな。そろそろお昼か。
台所に顔を出すと八重子先生が何か作ってる。
「なに作ってらっしゃるんですか?」
背中から覗き込んだ。
「ん、今日はね。チャーハンにしようと思ってるよ」
「あら、なにべたべたしてるの?」
先生も作業が終ったらしい。
「人聞きの悪い。スキンシップです」
「ほら、手が空いてるならそのハム刻んで頂戴」
先生が包丁を取ってハムを切り始めた。
「何入れるんです?」
「普通のだよ。卵とか。あんた高菜大丈夫なら高菜も入れるけど」
「あ、大丈夫です」
「はいはい、それじゃ食卓片付けてきて頂戴」
「はーい」
ぱたぱたと台所から出て食卓をきれいにしていると先生たちの会話が微かに聞こえる。
何かぼやいて、たしなめられてるみたいだ。
微妙にだけど先生嫉妬してたよね。その辺かな。
炒めてる音がしている。良い匂いだ。
孝弘さんも出てきた。
「もう少しみたいですよ、待っててくださいね」
「律は?」
「10時頃に出かけてくるって出て行かれましたよ」
「できたわよ」
「あ、はい」
台所に取りに行って配膳する。
孝弘さんのは大盛だ。
おかずより米が良いとかいいつつ、おかずがうまいと上機嫌なんだよな。
そんなわけで付け合せの大根のさっと煮がうまい。
飯がうまいのは幸せである。
食べ終わったら洗い物を引き受けて台所へ。
片付いたらコーヒーを淹れて。
4人でコタツの住人だ。
のんびりした日曜が過ぎる。
うつらうつらと気づけば孝弘さんも俺も寝ていた。
いかんいかん。
目が覚めたのを見計らって先生からお夕飯の買物に誘われる。
コートを羽織ってお供した。
「さむーい」
「ですねー…これからもっと寒くなるんでしょう」
「いやねぇ」
「ほんっと嫌ですがしょうがない」
先生が袖口に手を引っ込めちゃったので懐手をして。
「…それはよしなさい」
「じゃ手ぇ繋ぎましょうよ」
「しょうがないわねぇ。ほら」
手を出してくれたので手を握って歩く。
先生はもう気にならないようだ。
色々買って流石に繋いでもいられなくて離したけど。
帰宅してご飯を作って。いただいたら帰る時間だ。
「帰りたくないなぁ。仕事行きたくないや」
「ダメよ。ちゃんと稼いできてね」
「はーい」
軽くキスして別れた。
電車で居眠りしつつ帰宅。
寝巻きに着替えてすぐに布団に入った。
おやすみなさい。