寒い中の一週間が始まり、火曜は先生のお宅でいつものように抱いて。
眠くなってきた頃。
「あ、そうだわ。日曜朝から出かけるのよ。久さんは土曜日帰る?」
「んん?」
「ほら、出来ないのに一緒の布団は嫌とか言ってたでしょ」
「言ってたけど…おでかけかぁ。お友達?」
「そう、お茶の。でどうするの?」
「どうしようかな。考えておく。今すぐ決めろってことじゃないよね」
「土曜までに決めてね」
「OK、じゃ今日は寝ましょう」
軽いキスをして寝かしつける。
木曜の朝、会社から指令があった。丁度良い。
八重子先生に電話して土曜の稽古を休む理由を告げてから稽古場へ行った。
いつものようにお稽古を済ませ、夕飯を頂く。
土曜に来ない旨を告げたら先生は少し嫌な顔をした。
「すいません。ちょっと用がありまして」
「しょうがないわねぇ…」
「まぁまぁ、仕事だって言うんだから仕方ないじゃない」
八重子先生のとりなしもあり、何とか機嫌を直していただいて帰宅した。
忙しき連休前の仕事をこなし土曜の仕事を終えて帰宅する。
昼寝をして夕方、料亭へ。
業者会だ。
「あら、お久しぶり」
「姐さん。お元気そうですね」
宗直さんだ。
「今日はお稽古日だったんじゃないの?」
「やーぁたまには休んでみました」
「不真面目ねー」
稽古の進捗具合を喋って飲んで。男共は若い芸者とはしゃいでる。
今日の参加者で女は俺一人だ。
いつものばあちゃんも今日は息子が代わりに来ている。
話し相手不在になるところだったから宗直さんがいて助かった。
先生から夕飯写真のメールが来た。
姐さんに見られて少し気恥ずかしい。
暫く騒いで業者会がお開きになり三々五々帰宅する。
久しぶりにしっかり飲んだ。
帰りにつまみと明日の朝の分を買って。
ストーブをつけて少し飲み直してから布団に入った。
布団が冷たくて、何でここに先生がいないのかと思う。
少し腹を立てつつも寝た。
翌朝早く、先生から遊びに出た旨メールがある。
折角の連休なのに俺は一人か。
苛立ちのあまり部屋を掃除した。
熱が入ってしまい、昼飯も食わず気づけば外が暗い。
外に食べに出ることにし、着替えて近くの居酒屋へ行く。
ガッツリ食って飲んで憂さを晴らす。
いい加減帰ろう、と思ったのは11時半を過ぎていた。
家に帰ると鍵が開いていて、草履がある。
あぁ、また家に帰らずこっち来ちゃったのか…。
和室を覗けば着物が脱ぎ捨ててあり、ベッドを覗くと寝巻姿で布団に潜り込んでいる。
苦笑して和室の着物を衣桁に掛け、肌襦袢を洗濯籠に入れた。
それからシャワーを浴びて先生の横に潜り込む。
いつもと違いお酒の匂いや化粧の匂いがする。
男の匂いがしないだけマシか。
寝てるの起こすと機嫌が悪くなるのはわかっているがやりたくなって。
熟睡してるから反応は薄い。
途中で目が覚めたようで怒ってる。
それでも構わずに反抗できなくし抱いた。
先生は終った後不満そうに背を向けて寝てしまった。
むかついたので明日いじめてやろう…。
翌朝、9時を過ぎた頃目が覚めた。
先生もまだ寝ている。
腹減った…。
冷蔵庫の中、なんもないんだよな。
ガサガサと冷凍庫を掘り返していると先生が起きた。
「おはよう」
「おはよ、もう早くはないけどね」
「おなかすいたの?」
「なんかないかと思ったけどなんもなかった。買物行くけどどうする」
「そうねぇ、ちょっと待てる? 待てるなら喫茶店行きましょ」
「待ってる。着替えてきて」
先に洗面所を使わせて先生と交代で洗面所を使う。
俺の着替えはすぐ終わるしね。
着替えている先生を見るとむらむら来るが朝からは叱られるしそれより腹が減った。
先生が普段着に着替えて俺も着替え終えて、煙草と財布と携帯だけを身につけた。
トイレだけ行って、外に出る。
先生が俺にくっついてくる。
「寒いわねぇ」
「うん」
近所の喫茶店に入ると暖房が効いてて自然と先生が離れる。
席に着いて先生はホットケーキを頼んだ。
「好きですねえ」
「あんたこそ」
ま、俺もまたカレーを頼んでしまったわけだが。
「昨日、何時帰ってきたの?」
「11時半過ぎてたかな。帰ったら鍵開いてるし草履はあるし。
着物も脱ぎ散らかしてあったよ。どんだけ飲んだんだって思った」
「あら。そうだった? ごめんなさい、記憶がないのよね」
「これで男の匂いでもしたら問い詰めようかと」
「ばか、女の人よ。昨日会ってたの」
「でも飲みにいったんでしょ? そこで何かあったら。記憶ないんでしょう?」
「…記憶はないけどそんなことするような女だと思ってるのかしら」
「あなたからしなくても男からする奴がいてもおかしくない」
「あなたみたいに?」
食事がきたので話は一時中断。
「本当にあなた嫉妬深いわよね」
食べつつ深い溜息をつかれてしまった。
良い女だから取られそうで怖いとも言えず、苦笑をこぼすしかなかった。
食べ終わって夕飯の買出しをしたいというが、させず。
鮨を取る宣言をした。
そのあたりでやっとこれから何をされるのかわかったようだ。
ちょっと引いてる。
「あの、明日お稽古よ? わかってくれてるわよね?」
「ええそうですね。八重子先生にお願いしてあげましょう」
「ちょっと、ねぇだめよ」
「なぁ、俺はあんたのなんなのさ。たまには良いだろ」
先生はうっと詰る。
「でも…」
「なんだよ」
暫く困った顔をしてついに折れた。
俺は八重子先生にお願いの電話をした。
簡単に了承を取り付け、先生に着替えてくるように言った。