夕方になって起きて夕飯の支度をする。
ご飯が炊けた頃先生も起きてきた。
トイレへ行って椅子に座り、ぼんやりしている。
「おなかすいた…」
まだ半分寝てるな?
「もうすぐ出来ますよ」
「うん…」
最後のおかずが出来たので先生の前に並べた。
ご飯をよそい、お味噌汁を掬う。
お箸と共に食卓に並べたらやっとぼんやりとした目がしゃっきりしてきた。
「あ、おいしそう。いただきます」
「どうぞ」
でもまだちゃんとは起きてないようだ。
こりゃ多分飯食い終わったらまた寝るなぁ。
先に食い終わって酒を持って飲む。
「少しちょうだい」
お猪口を出して注いでやるとおいしそうに飲む。
綺麗に食べ終えてあくび一つ。
「もう一度寝たら?」
「ん、食べてすぐ寝たら牛になっちゃう…」
「じゃさ、俺の膝で寝ない程度に横になるのはどう?」
「そうしてくれる?」
「もう少し飲んでて。これちょっと片付けるから」
「はーい」
食べたお皿をシンクにつけおきにしてトイレに行き、床に長座布団を敷く。
ハーフケットを用意して先生を手招きした。
くいっと残った酒を煽って俺の膝枕で転がりハーフケットを自力で被ろうとして。
うまく被れてなくて腹を立てている。可愛い。
一旦頭を下ろしてちゃんと掛けてやり、それから膝に乗せた。
小一時間ほどテレビを眺めて本気で眠くなったようだ。
先生は起きてトイレに行きベッドに潜った。
俺は台所の片付け。
それから俺も寝る用意をして横にもぐりこんだ。
「おやすみなさい」
「はい、おやすみ」
もはや寝息に近いような、微かな声。
背中をなでて寝かせ、俺も寝た。
翌朝、先生がよく寝ているのを尻目に出勤し、休み明けの暇に耐えつつ。
会社の事務員がイルミネーションがどうとか言っているのを小耳に挟んだ。
どうやら女性はそういうものを好むようだ。
神戸のルミナリエやロームは知ってたが、こっち来てからというもの。
気づいたらなんか光ってるなとしか思ってなかったからなぁ。
先生が生理終わったら連れて行ってみようかな。
喜ぶのかどうかはわからないが。
あ、いやでも畠山、明日連れてくと喜ぶか?
帰ったら聞いてみようかな。
流石に帰ったら起きてるとは思うが…。
客からじゃこの良いのを買いに行くと聞いて俺の分も頼み、ついでに唐辛子も頼んだ。
気が向いたら炊こう。
仕事が終わりの時間に近づいて客が帰ってきたのでお金を返す。
鯛を1枚と伊勢えびの弱いのを買って帰った。
「ただいま」
あれ、反応がない。
風呂場で物音がする。着替えがてら覗けば体を洗ってるところだった。
「お帰りなさい。お昼まだなの。ごめんなさいね、さっき起きたのよ」
「ああ、どこか食べに出ようか? それとも鯛があるけど食べる?」
「お野菜ないんでしょ? 遅くなって良いなら外で良いわ」
「はいはい。何食べたいかな」
「パスタがいいわねえ」
「了解。ところで」
「なに?」
「背中洗ってあげようか?」
「…Hなことしそうだからいらないわよ」
バレたか。
寒いから閉めてって言われた。
苦笑して扉を閉め、手を洗って着替えているとざぶん、ざぶっと浴室内から水音がする。
うーん。うっすら見えるからエロい。気がする。
しちゃいけないと思ってるから余計だな。
風呂場から離れてリビングに行き、寝転ぶと眠くなってしまった。
腹減ったなぁ。
ぼんやりしてると先生が風呂から上がり浴衣を着て出てきた。
ふぅっと息をついてる。
「風呂疲れしたんたらなんか買って来て作るけど」
「ううん、食べに行きたいの。おなかすいてるわよね。ごめんね」
「いや、ゆっくりしてくれたらいいよ」
気にしてるようなので俺も風呂入ってくる、と時間を作ってあげた。
体も頭もざっと洗って上がれば丁度髪を乾かし終えたところだ。
俺が頭を拭いている間に外出の支度を整えている。
「ん、なに着よう…」
「近所の店だから普段着で良いよ」
「じゃこれにしようかしら」
「うんそれで」
「あなたも着物着る?」
「どっちでもいいよ」
「んー…これ着て欲しいわね」
「はいはい」
タオルドライを済ませ、肌襦袢や長襦袢を身に纏う。
着物を着て帯締めて。
先生も着替え終えたようだ。
トイレに行ったら羽織を着て二人で外出。
お店へ入ってメニューを眺める。
先生は栗と鮭とキノコのクリーム、俺は鮭とカボチャと小松菜のチーズパスタ。
うまいなぁ、こってり系だけど野菜も入ってて。
おいしく頂いて帰り道は晩御飯の買出しを。
鯛と伊勢えびがあるというとあとは煮物を作る気になったようだ。
「あ、でも青いものも欲しいわね、何しよう…」
「春菊とほうれん草でゴマ和えにしましょうか」
「あらいいわね、じゃそれと人参と」
色々選んで買い、牛肉も少々買う。
春菊少々と炒めるつもりだ。
お買物を済ませてコンビニに立ち寄り、プリンを買った。
好きだよなぁ、甘いもの。
帰ったらちょっと疲れたようだ。
添い寝をしたくなって着替えて一緒に布団へ潜る。
俺の胸にくっついてきてほんの少しの時間で寝息が聞こえる。可愛い。
んー、良い匂い。
柔らかいし。
女の人だよねー。
とか思ってたらなんか噛まれてるし。
痛いけどまだ甘噛だな、これは。
俺も少し寝て、今度は先に先生が起きた。
揺り起こされて食事の支度をする。
というのもギシギシいってる伊勢えびは流石に先生には調理できなかったようだ。
献立どおりに食事を作って先生と二人で食べる。
煮物はちゃんと先生の味でおいしい。
「あ、そうだ。明日。畠山行きませんか」
「ん?何かあるの?」
タブレットを出してみせる。
「ほら、ここ。11時からミニトークって」
気が乗らなさそう。
「明日も一日寝てるほうが良いかな」
「うん、悪いけどそうさせて頂戴」
「じゃ明日、夕方になったら送りましょう」
「一人で帰れるわよ。夜じゃないから危なくもないし」
「俺が、あなたと一緒にいたいんですよ。俺が」
くす、と先生が笑う。
「次の日も会えるじゃないの」
会えるけどさ。
夕飯を終えて洗い物をしてそれから先生を引き寄せ抱き締めながら時を過ごした。
キスだけに止めるのは中々辛いものがあるけれど。
水曜は休みと言うことで朝寝を楽しみ、でもまだ先生のアレは終ってないので何もせず。
夕方になっておうちまで送り届けた。
上がらずに別れ、帰宅する。
土曜にはあちらの部屋に連れて行こう。うまく言いくるめて。
明日我慢できるのかな、俺。
寝るに寝られずジャコと唐辛子を炊き、布団に入って溜息一つ落として寝た。
翌朝仕事が終った後タッパーを二重にして提げて先生のお宅へ行く。
お稽古の後、夕飯に出してもらった。
やっぱりうまいよなぁ。
自分で作っといてなんだけど。
先生の食べてるのを見ているうちむらむらと来てしまった。
困ったな…どうしよう。今日は絶対させてくれない筈。
とりあえず食べ終わって洗い物を律君がしてくれることになり、団欒。
ダメだ、触れたい。
八重子先生がトイレに立った。
思わず先生を脱がしにかかってしまい、抵抗にあうものの。
止まれなくて肌襦袢までも脱がせた。
「静かに」
無理に伏せさせて背中を触る。
気持ち良い肌だなぁ、と思いつつ背中を揉む。
「何してるんだい、こんなところで」
「え、いやぁ。なんとなくマッサージしたくなっちゃいまして」
戻ってきちゃったよ、八重子先生。
「部屋でしなさい、部屋で」
「寒いじゃないですか」
マッサージとわかって先生は力を抜いてきている。
「この子ったら急に脱がすのよ。びっくりしちゃったわよ。あ、もうちょっと右」
「はいはい」
「そこくすぐったいわ」
「まったく…」
八重子先生が呆れてる。
十分肌の感触を楽しみ先生も緩々にしたので着せようとしたが風呂に入るとの事。
かといってそのまま風呂場まで行くわけじゃなく寝巻きをさっと着て行かれた。
慎み深くしとやかな人だ。
俺なら下帯一つで行って怒られるところだ。
脱がせて散らかした着物や帯を片付ける。
「さて、じゃそろそろ帰ります」
「そうだね、もう良い時間だわ。気をつけて帰んなさいよ」
「はい、お邪魔しました。それじゃまた明後日に」
それなりに満足して帰宅する。
先生の焦ってる顔とか好きなんだよね。
でも土曜日はちゃんと抱かせてもらおう。
少しの期待と殆どの諦めを感じつつ就寝した。