翌朝からは仕事の後に納戸の整理をする日々が続き、先生からはたまの電話。
納戸からは色々収集していたものを発掘した。
外側が暑さで解けてしまったバイブとか。
ワイヤ鞭とかゴム鞭。
この間買い換えた鞭が使えるのはいつになるだろうなぁ。
出番なかったりして。仕方ないか。
軽く打つ、なんて却って俺には難しい。
ついやりすぎて痛めつけてしまいそうだ。
気持ちよくなる鞭の打ち方、習いに行こうかな。
冷静に打つ、とか。
あ。古い縄出てきた。汚いなぁ。疲れて投げ込んで忘れたかな。
強度を確かめる。引っ張ったらちぎれた。
捕縄にも使えねぇな、こりゃ。捨てちまおう。
などと仕分けに時間がかかり、新しいのを買う暇がないまま週末を迎えた。
今度いつでも良いから一緒に買いに行く…流石にそれは無理か。
浅草で縄を仕入れなければ。
先日のは流石にカビてはいないから大丈夫だが在庫が少なすぎる。
仕事を終えてから買物へ出た。
7mを10本、それから10mを3本。先生ならこれで十分だろう。
その足で先生のお宅へ車を走らせ、到着。
「こんにちはー」
「いらっしゃい」
たたっと走り出てきて…よろけて俺の腕の中へ。
「どうしたんです?」
「あ、足攣っちゃった」
「それは痛いですね」
治まるまで温めてやる。
ひょいっと抱え上げて居間へ連れて戻した。
「なんだ、こんな寒い部屋にいるからじゃないですか?」
「だって一人だと勿体無いんだもの」
少し温度を上げて温まるまで暫くは先生を懐に。
「風邪引いたら困るでしょう」
「うん…」
「八重子先生は?」
「美容院…」
「ああ。あなたは後で?」
「私は明日の朝よ」
「じゃあ今日はこの髪、崩して良いんだ?」
「あ……今、ここじゃだめ…」
「わかってる」
暫く先生の腕を撫でて、温度が上がってきたのを機に離れると少し寂しそう。
「背中、寒い…」
「あぁ。これどうぞ」
着てきた羽織を背にかけてやる。
「じゃなくて…その…」
「ん? どうした?」
何か先生が言おうとしたら八重子先生が帰ってきて先生が顔を背けた。
「あぁ来てたの。綺麗にできたろ? ほら」
正直違いが良くわからないがそうなんだろう。
「さて、お昼食べに行こうか」
「あれ? もう食べられたんじゃなかったんですか」
「美容院行ってたからね」
なるほど。納得して立ち上がる。
先生の羽織とコートを取りに行って戻ると俺の羽織を返してくれた。
冷えないうちに先に着せてそれから俺も着る。
「どこ行くんですか」
「そこの喫茶店。軽食やってるから」
「ああ。あそこのカレー好きです」
先生が笑った。
「相変わらずねぇ」
「そりゃあ変わる方がおかしくないですか?」
「病気したら変わるけどね」
「あー肉が食えなくなったりね、しますね」
喫茶店に入り席に着く。
先生は悩んだ挙句エビピラフを選び八重子先生は野沢菜ピラフを。
俺は勿論カレー。
先生はちょっと呆れてる。
サラダと飲み物のセット。
ちょっと先生方は多かったようだ。
残すのは冥加に悪いと思われるのか無理しようとしてるのを貰って食った。
丁度満腹、ご馳走様。
カツカレーにしなくて正解。
紅茶を飲んでまったりとした午後。
「そろそろ…」
はいはい、と立って会計をして帰宅した。
居間でゆったりと時を過ごす。
先生がさっきから俺の膝に手を置いたままだけど。
寂しかったのだろうか。
そんなわけないか、一週間じゃ。
「あ。久さん、買物行かない?」
「いいですよ」
家を出ると買物じゃない方向へ行こうとする。
「ん?」
「あっちの家、ちょっとだけ…」
珍しいこともあるもんだな。少し驚きつつ新鮮だ。
部屋は寒くて慌てて暖房を入れる。
ストーブの傍に座らせると俺にくっついてきた。
「あの、したいんじゃないの。こうしててくれる?」
「なんだ、したいのかと思った」
「違うわよ。ちょっと恋しくなっただけ…」
可愛いとこあるなぁ。
「お母さんの前でこんなこと出来ないでしょ、だから」
ほんの30分ほどで良いらしい。
ゆったりと撫でられるがままになっている。
暫くして落ち着いたらしい。
「いい加減買物行かなくちゃ怪しまれるわね」
「その前に髪を整えたほうが良い。乱れてるよ」
「あら? あらら、やだわ」
パタパタと洗面台の前に行って直している。
ストーブを切って玄関の草履を整えておいた。
珍しく脱ぎ散らしてあったから。
先生が俺の着付けを直してくれて、それから買物へ。
「何する予定ですか?」
「筑前煮をメインにするつもりよ」
菊菜のおひたし、あとは肉を焼いて白ネギを付け合せに。
「あなたいると高いお肉沢山買えて良いわ」
「いつもはそんなに買わない?」
「律はそんなに食べないからちょっとだけって買いにくいのよ」
「あぁ。確かに少しだけってなるとスーパーでついでに買っちゃいますね」
「そうなのよね」
あれやこれやを買って重いものは俺が持つ。
「っと危ない」
先生の横を自転車がすり抜けた。
あー、スマホしながら乗ってやがる。事故起こすぞ、あれ。
「吃驚したわ…」
「大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫よ。帰りましょ」
俺の腕握ったままなの自分で気づいてなさそう。
信号待ちをしているときに荷物を持ち替えようとし、やっと気づいたようだ。
慌てて離して荷物落としそうになって。
笑ってたら怒られた。
「両方持ちますよ。ほら」
太腿をちょっとつねられたが両手に荷物で帰宅した。
「おかえり」
「ただいま」
「戻りましたー。もう支度しちゃいます?」
「そうしてくれる?」
先に台所へ行ってごぼうとレンコンの下拵えをする。
こんにゃくもちぎって塩で揉み、水が出てくるのを待つ間に湯を沸かし里芋を剥いた。
里芋をゆで、別の鍋でこんにゃくを湯がくその間に椎茸を戻す。
後は細々と切っていると先生がやってきた。
「どう?」
「そろそろ里芋、良いかも」
「じゃ炒めましょ」
切ったものから順次先生が炒めて、俺は菊菜を洗うことにした。
段々おいしい匂いがしてくる。
洗い終えるとあたり鉢とゴマを渡された。
二人いると手際がよくなるな。
律君のお嫁さんが来たら三人に。捗りそうだ。
それとも日々交代か。
後は肉を焼くだけになって先生は一旦台所から去っていった。
明日の用意を確認してくるらしい。
ネギを切って肉を焼く。
ん、うまそうな匂い。
「ただいまー」
律君も帰ってきた。
「手を洗ってらっしゃいよ、もうご飯だから」
先生の声が聞こえる。
ご飯が炊けた音がして先生が戻ってきた。
交代し、お櫃に入れて出す。
台所と往復し、先生が盛り付けたものを食卓に並べた。
「おいしそうだねえ」
「ですよねー」
「めし」
「もうちょっと待ってくださいね」
並べ終えて先生が戻ってきて。
いただきます!
肉うめー。筑前煮うめー。菊菜もうまい。
やっぱり味付けは俺より先生のほうがうまいなぁ。
おいしく頂いてごちそうさま。
洗い物を終り居間へ戻ると先生がいない、
風呂に入ったそうだ。
「一緒に入ってきたら?」
「あ、そうします」
いそいそと風呂に向かいぱぱっと脱いで戸をあけた。
「きゃっ」
「…ん? どうしました?」
「あ、久さん。…吃驚させないでよ」
中に入って閉め、軽くキス。
「ん……だめ…」
「後で少ししましょうね」
「はい…」
先生の体を優しく洗ってやると気持ち良さそうにしている。
少し欲情もしているようだ。
「お風呂、あがったら先に布団敷いて待ってて。戸締りするから」
「わかったわ」
お湯に浸からせてその間に俺もざっと洗う。
濯ぎ終えて先生の入ってる所へお邪魔するとペタペタと手を這わせてくる。
「くすぐったいなぁ。どうしたのさ」
「もうちょっとだけ」
「でもそろそろ出ないとのぼせるよ?」
ふぅ、と息をついて先にあがるわ、と出て行った。
もう暫く浸かって俺も上がる。
ざっと拭いて寝巻きを羽織り、居間に声を掛けると八重子先生が続きに入る。
「あ、先に寝かせてもらって良いですか? 戸締りはしておきます」
「いいよいいよ。じゃおやすみ」
「おやすみなさい。お先です」
その足で玄関やお勝手の鍵を確かめ、居間以外の火の始末をした。
律君に声掛けをする。
年をとると風呂は怖いからね。
それから部屋に入ると明かりを落としてランプのみ点けて先生が待っていた。
「お待たせ。寒くない? 布団入ってたらよかったのに」
「一人で寝たくないもの…」
そういいつつ伊達締めをほどいて俺を誘う。
明日のことを考えると軽くにしておかねばならん。
布団に入れて電気をすべて消した。
求められるままに唇に、乳首にキスを落として行く。
股間に手を差し入れると随分と濡れていて指が中へ吸い込まれる感覚だ。
声が出そうなのはキスで防ぎ微かなうめき声を楽しむ。
シーツを掴んで耐えてるのが愛しい。
「孕ませたくなる…」
ついこぼした声に反応したようで俺の背に腕を回してきた。
「…ほ、しい」
微かに聞こえ、足が絡みつく。
背中を引っ掻き傷を作りつつ二度三度と逝かせると眠たげだ。
「そろそろ寝るかい?」
軽く頷く。
股間を綺麗にしてやって寝巻きを整えて寝かしつけた。
明日のために軽く済ませたから何とかなるだろう。
幸せそうな寝顔を見ているうち、眠くなった。
俺も寝よう。