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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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料亭につき挨拶を交わして席に着く。
宗直さんはいないが古株のお姐さんがいる。
相手をしてもらうことにした。
会合も無事終わり、いそいそと帰宅する。
あれ、先生、来てない。
どうしたんだろう。
電話をしてみた。
「もしもし、先生? 来なかったんですか?」
『それが大変だったのよ~。おばあちゃんが倒れて』
「ええっ! どうなんですか容態っ」
『うん、なんとか意識も戻ったの。それで開兄さんも見つかったって』
「開さんも?」
『それで明日お稽古お休みにするから。あなたどうする? 来る?』
「手が足りないのなら手伝いに行きますよ」
『うん、そうして頂戴』
「とりあえず明日昼にお伺いします」
『いないかもしれないけど鍵もってるわよね』
「持ってます。勝手に入って待ってたらいい?」
『そうしてくれる? あ、ちょっと待って』
後ろで何か会話しているようだ。
『ごめんなさい、込み入った話するから後は明日』
「はい。疲れないように早く寝てくださいね」
『ありがと、じゃまたね。おやすみなさい』
「おやすみ」
電話を切ってみたものの心配だなぁ。
でもできることは何もないので早めの就寝となった。
翌日仕事が終わり次第車で駆けつけた。
やはり先生は居られなくて孝弘さんがお留守番。
律君は開さんの病院、先生は買物らしい。
「はらへった」
「はいはい、お昼は食べたんですかー?」
「くった」
「じゃ何か、そうだな、パンケーキでもいいですか」
「まんじゅうはないのか」
「ちょっと待ってて、あ、いやないみたいですよ」
「仕方ない」
台所へ入って勝手知ったる他人の家、ホットケーキミックスで作って出す。
「開さん見つかったんですってね」
ふん、と横向いた。
やっぱり。
ちょっと悔しそうにしている。
「ただいまぁ。あら来てたのー、ごめんね」
「あ、先生。こんにちは。どうですか、容態」
「これから行くのよ。これほら、入院用の湯のみ」
「それじゃ洗いましょうか」
「お願いね、着替えてくるから。乗せてってくれる?」
「はいはい」
お箸やスプーン、フォーク、コップ、湯飲みに水筒。
これを見ると軽くで済んだようだ。
洗って拭いてひとまとめにして持ち出した。
「久さん、用意いいかしら」
「いいですよ。持っていくものはどれですか」
「この紙袋と風呂敷のもお願い」
「はーい」
車に積み込んで先生を乗せ、指示通り病院に着く。
玄関で荷物を下ろし先生に待っててもらうことにした。
駐車場に止めて急ぎ戻る。
「お待たせしました」
荷物を持って病室へ。
「お母さん、どう? 調子は」
「あぁ大丈夫だよ。今日お稽古の日だけどどうしたの」
「お休みにしたのよ」
「悪いねぇ…」
「こんにちは。お元気そうで安心しました」
「山沢さんも来てくれたんだね、ありがとう」
「いえ。どうですか、ご気分は」
「もうねぇ、早速リハビリさせられたよ。最近はそうなんだねえ」
「ああ、固まっちゃうといけませんから」
てきぱきと先生が荷物を片付けている。
「あ、久さん悪いけど売店でティッシュ買ってきて頂戴。忘れてたわ」
「はーい。他何か欲しいものありますか?」
「そうだねぇ、お茶。緑茶があれば」
「絶飲食じゃないならば。看護婦さんに確かめてからですよー」
詰所に行って聞けばお茶は構わないとの事。
炭酸はやめてとの事である。
売店で購入して戻ると覚さんの奥さんが来ていた。
「こんにちは」
「あらあら、まぁ。こんにちは」
俺たちの分も買ってきてたので渡した。
「ありがと」
「あら、いいのに」
部屋から出て待合で待っていると潮さんが来たようだ。
仕事の途中だろうに。
営業ってこういうとき良いよね。
先生の携帯にメールを入れて喫煙所へ。
自販機で煙草とライターを買って一服つける。
寒いがいい天気だ。
少し安心してぼんやりしていると先生から電話があった。
そろそろ帰ると。
煙草を灰皿に押し付けて病室に戻る。
先生は八重子先生といつから稽古を再開するか話し合っていた。
「来月からでいけるかしら。でも…」
「山沢さんに初心者組を任せたらいいよ」
「いいんですか、俺なんかで」
「あら。おかえり」
「あんた一応教えられる資格持ってるんだから。そろそろ慣れなさい」
「はぁ…」
「じゃ段取りが出来たらお稽古再開するわね」
「長く休みにすると生徒さん達に迷惑だろうしねえ」
「そうねぇ」
看護婦さんが来て八重子先生は検査へ。
「じゃ私たち帰るわね」
「はいはい、ありがとうね。気をつけて帰りなさいよ」
「では失礼しました」
二人連れ立って駐車場へ移動し乗車。
「助かるわ。あ、ついでに買物したいの。お夕飯なんにしようかしら」
「んん、簡単に出来るものが良いでしょう? お手伝いしますけど」
「そうねえ」
「さつま揚げと小松菜の煮物とか、牛肉とネギと菜の花の蒸し煮でどうですか」
「菜の花あるかしら」
「そろそろ出てませんかねぇ」
「有ったらそうしましょ。それだけじゃだめだから…」
「鶏と春菊のゴマ梅和え」
「あ、おいしそう」
「鮭あるならおろし和えでも良いかな」
いくつか提案すると献立が決まってきたようだ。
途中のスーパーで買物する。
菜の花もあり、肉も買う。
鮭と玉葱のマリネをする気になったようだ。
それともやしと人参?
カレー粉で炒めるらしい。
帰宅後は先生の指示通りに支度をして帰ってきた律君に孝弘さんを呼んでもらい食べた。
うまいけど一人欠けると寂しい。
先生が特に寂しそうで帰るときに後ろ髪をひかれる思いだった。
本当なら泊まってあげたいんだけど仕事があるから仕方ない。
明日も来る、と約束した。

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