身づくろいを済ませて台所へ顔を出すと八重子先生が支度をしている。
「おはよう。遅かったね」
「おはようございます。風雨の音が凄くて寝過ごしてしまいました」
「絹は?」
「女性は身づくろいに時間かかりますしね」
ってもういいや、一緒に居た前提だな。
手伝ってると絹先生も来た。
「遅くなっちゃったわ~、お母さんおはよう」
「あ、手伝うよりそろそろ孝弘さん呼んできてくださいよ」
「はいはい」
食卓に配膳して行く。
台所に戻ると八重子先生に手招きされて、近寄ると腕にガーゼを貼られた。
噛み痕が袖から見えてみっともないそうだ。
これは朝からしてたのもばれてるのかなあ…。
食卓につき朝ごはんをいただく。メシがうまい。
メシが終わったら嵐のあとの片付けだな。
きっと庭が枯葉で凄いことになってるだろう。
食事の片付けをして絹先生が洗濯に忙しくしている間に庭掃除をする。
やっぱり枯葉に枯れ枝が随分吹き込んでいるな。
洗濯物を干す絹先生に見とれて手が止まっていたら八重子先生に叱られた(笑)
さっさと片付けよう。
洗濯だけは手伝わせないのは下着の存在の模様。
私もいつも持って帰って洗ってるからなあ。
特に律君は嫌がりそうだ。
さて濡れ落ち葉は燃やすと煙ばかりで始末に悪い。
晴天だからしばらく纏めておいて置くか。
しかし裏が山だし木造だから焼却炉置いたほうがいいと思うんだけどなあ。
ま、今は律君がやってくれるからいいんだろうけど。
休日のゆったりした空気っていいなあ。
「お昼は何にしようかねえ」
なんて会話も仕事している日には聞けないし。
ここに来ない日は食わずに寝たりするし。
「お母さん、ちょっとー」
おや、この声は…環さんかな。
「あら、お客さんだったの?」
「いやこの子はいいんだよ、どうしたんだい?」
「姉さん、どうしたの?」
「開の事なんだけど…」
お茶を出して、部屋に控えていることにする。
というか畳にごろ寝。
秋の空だなあ。
うとうとしてたらお昼ご飯と呼びに来た。
無意識で引き寄せる。
「キャー!」
ん?慌てて起きたら環さんだった。
「すいません、寝ぼけました!」
「なんなの!?」
「どうしたんだい?」
あー、八重子先生いいところに。
「いや声が似てて…」
「はいはい、ご飯できてるから早くおいで」
ハイ。
環さん怖いんだよなあ、俺。
というかなんで環さんが呼びにくるんだ。
そそくさと食卓に着いたがずっと睨まれている。
とほほ。
気まずいままお昼ごはんをいただいて。
すぐに環さんは帰っていった。
台所で片付けをしていると絹先生が来た。
「さっき姉さんと何かあったの?」
「…間違えたんですよ。声。
それに部屋まで来るのは八重子先生か絹先生と思い込んでましたし」
「そんなに似てるかしらねえ、声」
「口調でわかりますけどね。寝ぼけてたんでご飯しか聞こえなくて」
「やあねえ」
くすくす笑ってる。
片付け終わったその手で先生の頬に触れる。
「冷たいわ」
おっとそりゃすいません。と思いつつキスをする。
「山沢さん!あんたするなら部屋でしなさい!」
ぎゃっ!八重子先生いたんだ!?
絹先生は慌てて台所から逃げた。今日は調子が出ないなぁ。
「すいません、つい」
「なんでそんなにしたいのかねえ、あんたは」
何でっていわれてもなあ。
「付き合いだしてすぐってそういうもんじゃないでしょうか?」
納得されたようだ。
居間に戻ってお茶をいただく。
「絹。あんた今から山沢さんの家に行きな。山沢さん、いいだろ?」
「お母さん? どうして?」
「かまいませんが…?」
「いいから、泊まっといで。明日の稽古は良いよ。土曜の稽古に間に合えば」
えーと、それはそのー、3泊でしまくっていいという?
絹先生、顔、赤い。
「ほら、早く用意しといで」
パタパタと用意をしに部屋に戻られた。
「あの、いいんですか?」
「孝弘さんに見られるよりは良いだろ」
なるほど。
見られたところで多分孝弘さんは問題ないと思うが、絹先生がなあ。
「それに…やっぱりこの家は人出入りも多いからね」
でも覚さんや開さんなんかは理解有りそう。孝弘さんの中身知ってるし。
先生が戻ってきた。それでは先生をお借りして。
すっごく先生が恥ずかしそうなのにそそられつつ電車を乗り継いで我が家へ。
途中、食材を買い込む。
うわーなんか楽しい。同棲してる奴ってこういう楽しさがいつもか。
買物袋を提げて自宅へ。先生を部屋に上げて食材を冷蔵庫にしまった。
もう3時半だ。
先生にお茶を入れて、一服。