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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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数日後、仕事を早めに切り上げて帰宅し、風呂に入る。
すっきりして風呂から上がると既に荷物を持って先生が来ていた。
「早いですね」
「だって遅れたら困るもの。あんたも早く支度しなさいよ」
「はいはい」
ざっと髪をタオルで拭いて着替えた。
「さて、じゃ行きますか」
「乾いてないじゃないの、もう」
なんだかんだいいつつ荷物を担いで駅へ。
グリーン車。なんたって指定席とちょっとしか変わらない料金。
グランクラスはさすがに取れなかった。
それでも新車はいいものだ。
「今度金沢まで乗りたいですね、グランクラスで」
「あら嬉しいわ」
「たしか金沢も茶道人口多いんでしょう?」
「そうよ、よく覚えてたわね」
さっそくながら駅弁を広げる。
「相変わらずお肉ばっかり」
「あなたはやっぱり野菜多いんですね」
「おいしいじゃない」
あ、と先生が手を止める。
「お茶買ってきてくれないかしら。温かいの」
席を立って自販機を探す。…ない。
自販機がない、というと困っている。
「一応、常温の水でよければ持って来てます。あと車内販売回ってくるかと」
渋々、という顔だ。
「すいません、サーチ不足でした」
「仕方ないわねぇ」
俺の水を一口飲んで、駅弁を食べ進める。
「ん、おいしいわぁ」
「こっちもうまいですよ」
食べ終えた頃車内販売が来た。
サンドイッチとお茶とコーヒーを頼む。
「まだ食べる気?」
「勿論」
「ほんと相変わらず良く食べるんだから」
先生のお茶を開封してあげてからサンドイッチに手をつける。うまい。
暫くして先生がトイレに行った。
一人は時間をもてあます。
すぐに戻ってきた先生は俺にトイレに行くように言う。
なんだ?
催してはいないが行って見ると…便座が自動開閉する上にウォッシュレットになっている。
なるほど驚く、これは。
戻って先生と凄いすごいと言っていると後ろの席の人も気になったようで見に行った。
「進化してるのねぇ」
「ですねぇ」
「でももうちょっと広いともっといいのに」
「あー…下手に広くするとそのー、しちゃうやつが」
「なぁに?」
「sex」
あ、黙った。
ベシッと俺の額を叩く。
「バカ、もう。そういう事いわないの」
「したいけどね」
目をそらして窓の外を眺めだした。
かわいいなぁ、こういうところ。
そのうち目をつぶって日差しを楽しんでいるようだ。
綺麗だな。
旅行、久しぶりだ。
ゆっくりと楽しみたくはあるが…。
強行軍かも知れず、また雨に降られれば面倒な事になる。
携帯で天気予報を確認しつつ。
先生のハンカチが手から滑り落ちた。キャッチ。
どうやら寝てしまったようだ。
疲れてるんだろう。
俺も眠いが時計を見るとあと40分ほど。
寝過ごさないかな。
しかし眠気に負けてうつらうつらとしていると揺り起こされた。
「次、降りる駅でしょ」
「んー…? え、もう?」
あわてて降りる支度をする。
駅に着いた。
とりあえず改札を出て時計を見た先生はまだ早くない?という。
「チェックインはあと1時間ありますよ。だから車借りて善光寺行きましょう」
「タクシーでいいじゃない」
まぁそういうなら、と荷物をホテルに預けてタクシーに乗る。
先生は帰りは歩こう、といっている。
みやげ物やらいろんな店が気になるようだ。
運ちゃんが色々と説明してくれる。
もうちょっと時期が早ければ御開帳だったとかで惜しいね、と。
「でも回向柱はあるからね、触っちゃうといいよ」
あ、終わったら護摩にするんだと思ってた。
違うのか。
どうやら歴代の回向柱もあるらしく、自然のまま朽ちさせているそうだ。
「次、御開帳の時に来たいですね」
「それじゃ元気でいなくちゃ」
「余裕でしょう? たかが7年じゃないですか」
「それもそうねー」
タクシーを降りて二人物珍しそうに巡る。
「一度来て見たかったのよねぇ」
「機会なかったんですか?」
「お教室してるでしょ、なかなか休めなくて」
「あー。一人旅は面白くない、と。お友達は?」
「お休みが合わないもの」
俺もあんまり休みはあってないんだが。
先生は何か長いこと願い事をしているようだ。
俺は極く簡単に幸せでいれますように、と願ったが。
「何をお願いしたんです?」
「色々とね。あなたのことも」
「聞きたいな」
「ナイショ」
「夜にね、聞いてあげる」
「ばか…」
照れててかわいい。
手を握ってぶらぶらと参道を歩く。
いろんなものに先生が目移りしてお土産を買っている。
早くもひと荷物になってしまった。
ホテルで発送掛けよう。
門前を外れさすがにお店は少なくなってきた。
「ねぇ、なにか甘いもの食べたいわ」
とはいえ見回しても何かありそうな気配はない。
地元っぽい人に聞いてみる。
左手へ行くとお茶屋さんがあり、そこの抹茶ソフトがお勧めとか。
5分ほど歩く。どこだろうかときょろきょろしつつ。
あ、本当にお茶屋さんだ。
たしかに張り紙もしてある。
先生は気負いもせずにごめんください、と入っていかれた。
抹茶ソフトを頼むとカップか聞かれ、二つ頼んだ。
出てきたのは茶碗?に盛られた抹茶ソフト。色が濃い。
一口食べた先生がおいしいとうれしそうだ。
俺も食べてみる。ん、甘い。
冷えた頃に温かいお茶がまたうまい。
小豆は先生に食べてもらって。
ふと売り場を見ると抹茶チョコなどが並んでいる。
それと東京ではあまり見ない茶園のお茶。
お勧めを聞いて買った。
帰ってから飲んでみよう。
先生は温かいお茶をおいしそうに飲んでいる。
「そろそろ行きましょうか」
「そうね。おいしかったですわ、ごちそうさまです」
お店の人にも先生は愛想を。
そういうところが好きだ。

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