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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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いつもの時間に目が覚める。
さすがに習慣だ。まだ疲れは抜けてない。
行きたくないなぁ。こんな日は。好きな女も横に寝ていて。
それでも支度をする。
整えて出勤したが暇で早く帰りたい気分だ。
缶コーヒーを消費しつつ昼近くになりやっと帰れた。
「ただいま」
あ、草履がない。
帰っちゃったのか。
寂しいな、と思いつつ風呂を浴び、着替えた。
和室には昨日の着物がまだある。
持って帰らなかったのか。
居間に入る。あれ、昨日の荷物そのまま?
もしかして、と寝室のドアを開けると先生が寝息を立てていた。
「先生? 起きて」
「うぅん? ん? あらお帰りなさい」
大あくびと伸び。
「ただいま。帰る支度しないともう11時ですよ」
「あら、そんな時間?」
先生は風呂へ飛んで行った。
シャワーでざっと流して戻ってきた先生は髪が乾かない、と慌てている。
とりあえず着替えをそろえて出してあげた。
「落ち着いて。車の中でお昼を食べたら間に合いますよ」
「あ、うん、そうよね」
それでも気が急くようで却って着物の着付けがうまくいかないようだ。
「ほら、焦らない。手伝いますから」
何とか着替えて化粧も済ませ、トイレに行かせた。
俺は荷物を用意して先生の草履を出す。
着物に合ってないけど仕方ない。
先生が出てきたので戸締りを確かめ、乗車した。
途中、軽いお弁当を買って先生に食べさせる。
「ゆっくり食べたらいいですよ」
「ごめんね、私だけ悪いわ」
「ついたら俺も食います」
少しスピードを出して先生のおうちに到着。
ちょうど朝のお稽古が終わった後らしい。
「あぁ、お帰り」
「ただいま、遅くなっちゃってごめんなさい」
「楽しかったかい?」
「戸隠、すごかったわよ」
「で、山沢さんは?」
「まだ車なの。荷物があるから」
「ああ、そうそう。何か届いてたけど」
「たぶん旅行中のだわ。久さんが送ってたもの」
「じゃ後で開けたら良いかねぇ」
「そうしましょ。お母さんご飯は?」
「食べたよ、あんたは?」
「車の中でいただいたの。時間がなかったから」
「山沢さんは食べたの?」
「まだなのよ。だからお稽古、支度終わったら食べてって言ってあるわ」
「そう?」
しゃべっている間に山沢さんが来た。
「こんにちは、八重子先生」
「はい、こんにちは」
「先生、トイレ行きましたか?」
「あ、まだ。行ってくるわ」
先生がトイレに行って、俺は持ってきたお土産の一つを八重子先生へ。
「美術館、良いところでしたよ。涼しくて広くて、景色も良くて」
「へぇ、そう? 今度一度行ってみようかねえ」
「そうですねー、出来たら次の善光寺の御開帳がいいでしょうね」
「あんた何年後だい、それ」
「七年に一度だそうです」
「その頃まで元気でいられるかねぇ」
「いてくださいよ」
さてそろそろ支度をば。
水屋に入って帳面を繰り、今日のメンバーを確認して用意。
駄目だ、炭する人はいない。
久しぶりに炭をついで、各々の道具をそろえた。
暫くして先生が茶室に入って炭の様子を見る。
「久さん」
「はい」
「下手ねえ」
「…すいません」
先生が手直しをしてくれた。
「お湯、沸いてるの?」
「はい今入れます」
先生が動線を避けて定位置につかれる。
半分を切っている釜にやかんから湯を足す。
「それくらいでいいわ」
「はい」
くぅ、と腹が鳴った。
先生は笑って食べてきたら? と仰るがもう少しで終わるからと支度を済ませた。
それから先生が一服点ててくださった。
うまい。
「あ、ごめんなさい、お菓子出してなかったわね」
「いえ、どうせご飯食べますから良いです」
やっぱねぇ、自分で点てるより先生のはおいしいんだよ。
なんでだろうなぁ。
「もう一服どう?」
「いただきます」
流れるようにお茶をたてる。美しい。
「ねぇ、実は…」
何か言い出そうとしたとき、生徒さんがいらっしゃった。
「また後で…聞いてちょうだい」
「はい」
「こんにちは、飯島先生、山沢さん」
「はい、こんにちは」
「あ、山沢さんいいなぁ」
「ははは。こんにちは」
飲みきって器を返す。
「じゃ、ちょっと」
「行ってらっしゃい」
「あれ? お稽古一緒にされないんですかぁ?」
「お昼まだなんですよ」
「あー」
納得したようだ。
台所に行ってさっきのお弁当を温める。
俺にはちょっと少ない。
「あんたそんなんじゃ足りないだろ」
八重子先生がそう言いつつ台所に来て、冷蔵庫から2品出してくれた。
助かる。さすがに勝手にあさるのはどうかと思っていたから。
食べ終わって居間で旅行の話を問われるがまま話す。
戸隠の奥社は八重子先生は無理だろうという話になった。
「そういえばあの子、草履で上ったの?」
「いや、地下足袋ですよ。草履に見せかけた」
「そんなのあるの?」
「地下足袋に鼻緒つけるだけなんですけどね。私が使おうと思って」
それを山道は想定外という先生に貸したわけだ。
白でも紺でもなく柄つきなのを見て女心を刺激されたらしい。
さて、食後の一服もすみトイレに行ってから茶室に戻る。
三人目の生徒さんが稽古している。
茶碗や茶巾を清め、水指に水を足した。
先生はにこにことお稽古をつけていらっしゃる。機嫌は良いようだ。
そのままいつものようにお稽古が終了。
見送りに立つのに先生が俺を呼び、杖にした
「今頃筋肉痛きちゃった、いたた…」
「あら先生、大丈夫ですか?」
「ええ、多分…」
「じゃあ、ありがとうございました、また来週お願いします」
見送って戸が閉まったのを見て抱き上げた。
「あ、ちょっと」
「歩くの辛いんでしょう?」
「そうだけど、やだ、ねぇおろしてちょうだい、恥ずかしいわ」
「転んだりされちゃ困りますから。暴れないで」
トイレに行きたいそうなので連れて行って、着物をたくし上げた。
しているところを見ているとすごく顔が赤くて恥ずかしそうで良い。
おならも。
「聞かなかったことにして…」
「寝てるときにしてるの聞いてるから」
「やだ、してる? 本当?」
「みんなしてますよ、普通です」
始末をして、立たせて着物を下ろす。整えるところまでして。
居間へ抱き上げて連れて行く途中、律君が帰ってきた。
「ただいま…ってお母さん? 何!?」
「お、お帰りなさい、あのね、これは違うの」
「違うって何が?」
「おかえり。君のお母さん、今酷い筋肉痛で立てないって」
「あっ、あぁそうなんだ。でもなんで山沢さん?」
「トイレ行きたいっておっしゃったからね、ふふふ」
そのまま居間へ入る。
「なんだねぇ、騒がしいと思ったよ」
下ろして座らせた。
「昨日の今日で来るなんてまだまだ若いですよね」
「本当にねえ」
「じゃ、後始末してきますね」
先生はほっとした顔で汗をぬぐっている。
今晩は先生を抱けないのは残念だけど明後日は抱けるだろう。
その時にいじめてやろう。
不埒なことを考えつつ後始末を終わり、おいしそうな匂いに引き寄せられた。
「山沢さん、あんた絹の横。食べさせてやっとくれ」
「ちょっとお母さん、自分で食べるわよ」
「お茶も飲めないくらいなのに無理してどうするんだい」
「おお、腕まで来ちゃいましたか。そりゃ大変だ。今日はお風呂も入れて差し上げます」
「ちょっ、もう。久さんも悪乗りしないで」
「まぁでも寝るまではいますよ」
「そうしてやって」
先生を食べさせつつ、自分も食べる。
照れくさげなのが可愛い。
いつもより少なめでもういらないという。
夜食を用意しておこう。
食事の後は旅行の土産を開封。
あれやこれやを出して土産話もともに。
暫くして先生がもじもじとしだした。
「トイレ?」
うん、とうなづく。
抱き上げて連れて行く。すごく恥ずかしそうだ。
二人きりの時よりも親や息子の前ではやっぱり恥ずかしいんだろう。
拭くのも体制が辛いようなので拭いてあげた。
ついでに軽くなぞる。
「ひっ…だめ」
「そうだね、こんなところじゃね」
キスをして舌を絡める。
「ばか…」
それから着物を整えて居間へ連れて戻した。
風呂が沸いたので先生はどうするか?と聞いた。
「来る前に入ったから一日くらいいいわ」
「そうですか? 丁寧に洗って差し上げますよ?」
「すぐそうやってからかうんだから」
みんながお風呂に入った頃先生があくびをした
「もう眠い?」
「やっぱり疲れたのかしら」
「じゃ寝ますか。部屋行きましょう」
抱き上げて俺の部屋ではなく先生の部屋へ。
「どうして?」
「俺、今日は帰らなきゃいけないから。抱きたいけど…」
「そう、そうよね、明日平日だったわね」
「明日も来ますよ。きっと動けないでしょうから」
「ありがとう、そうしてくれると助かるわ」
座らせて布団を敷き、先生を脱がせる。
「何か変な気分ね」
「そうですね」
笑いあって寝巻きを着せて、先生を布団に入れた。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
口付けを落として、少し撫でているとすぐに寝息になった。
暫く寝顔を楽しんで、居間に戻る。
「じゃ八重子先生、私もこれで失礼します」
「ん、そうかい。ご苦労さん。明日は来るの?」
「来ます。お昼は先生と食べます」
「はいはい、用意しとこうかね」
「あればうれしいです。お願いします」
「じゃまた明日。お休み」
「おやすみなさい」
別れて車に乗り込み、走らせる。
帰宅して布団に潜ればすぐに睡魔がやってきた。俺も疲れていたようだ。

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