さてさて出勤。
魚、ほとんどないなぁ。
流石に台風。
こちらのほうに対して影響はなかったものの、波が高く出漁してないようだ。
客いわく野菜も駄目みたいで高いそうだ。
昨日の当てが外れた分、今日買わなきゃいけないほどの事もないようで売れない。
暇じゃないか。
仕事を終えて帰宅したが疲れてないから眠くもなく。
かといって外を散歩するのは暑い。
先生の家のあたりはもっと涼しいからなぁ。買物も行けてたけど。
少し縫い物繕い物を片付けるか。
それと掃除もしようか。
とりあえず繕い物をしなきゃ。ズボンの裾がほつれてるんだよな。
ミシンが使えればこんなものは一瞬なんだろうけど。
そう思いつつ絎けて。
縫い物する気力も掃除する気力も丁度失せた。
針をきちんと片付けてベッドに潜り込む。
お昼寝しよう。
あまりよく寝られずうつらうつらと。
何かだるい。
先生からメールがきた。
お夕飯の写真。
今日はだるくて素麺です、とある。
先生もどうやら具合がよくなく、早めに寝るそうだ。
明日早めに行けるようなら行った方が良いな。
俺も何か食って寝よう。
冷蔵庫を漁って常備のおかずで食った。
ベッドに潜り込めば先生がお風呂から膝の写真……なんで膝?
なんとなく、だそうだ。
良いけど。十分萌えられるし。
おやすみなさいの挨拶を交わし、先生よりは早く寝た。
翌朝は少し荷物が回復してきてはいるものの…少なくはある。
ハモが売れ残りそうなので数本持っていくことにした。
早めの帰宅、それから移動。
車で先生のお宅に着いて台所へ置いた。
居間でくつろぐ先生方に挨拶。
「それで土間に発泡の箱があるんですが絶対触らないでくださいね。噛まれますから」
「何持ってきたのよ。噛まれるって」
「ハモですよハモ」
納得された。
「で、体調どうです?」
「まだだるいのよね。お母さんも」
「生徒さんもそうみたいでキャンセル3人だよ」
「やっぱり台風の影響でしょうかね、気圧が一気に上下しましたし」
「そうなのかしら」
「やりくりしたから今日は3時くらいにあんたのお稽古して、仕舞うからね」
「あ、はい。そんじゃそのあと飯の支度、俺やりますよ」
「ご・は・ん。よろしくね」
「あー。…はい」
八重子先生が微笑んでる。
とりあえず支度をして先生を待つ。
若い方は流石に元気だが若くない方は夏の疲れもあるのかな。
茶杓を取り落とされたりふらつかれたり。
お稽古は軽め軽めに流して行くことに。
俺へのお稽古も復習程度だ。
さっさと水屋も片付けて着替え、食事の支度に台所へ入る。
先生方は遅い昼寝。
指定のメニューの下拵えをしてそれから土間の箱を外で始末する。
噛まれないよう〆て神経抜きで一本ずつおとなしくさせた。
シンクでかねたわしを使いぬめりを取り、板の上で一本ずつ開いて腹をあけ背骨を外す。
うん、まだ綺麗な色をして身も蠢いている。
すべて処理してナイロン袋に生ごみを密封した。
板を一度よく洗い、それから骨切りをする。
串を打ち、七輪へ乗せた。
細いハモは湯引き用に切ってある。
焼ダレを持ってきた箱に入れ、刷毛をセットした。
待つ間に今日の料理をして行く。
なぜか豚汁。
暑いときは熱いものを、なのかな。
他にいくつか作ったころ下焼きが出来た。
たれを塗っては焼くこと3度。
ん、良い感じだ。
9割方仕上がってご飯も炊けた。
食卓を片付け先生を起こして配膳する。
あとは湯引き。
律君と孝弘さんも出てきたようだ。
お櫃と湯引きの皿を持って出る。
先生は…ぼんやりしてる。
八重子先生はまだ寝てるか、しょうがない。
かわりにお櫃からご飯をよそって渡す。
「あ、ありがと…」
半分寝ぼけつつご飯を食べてる先生と言うのも結構可愛くて好きだが多分消化に悪い。
暫く食べているうちに先生が煮豆を取り落とした。
お箸を持った手を机に置いて止まっている。
「…寝てきます?」
「あ、ごめんなさい、食べるわ」
「お母さん寝たら?」
「変な時間にお腹すいちゃうじゃない」
「食べさせてあげましょうか」
ビクッとして慌ててる。
「良いわよ、自分で食べるから」
ちょっと目が覚めたようだ。
それでも食べている口が止まったり、お箸が止まったり。
「もうご馳走様にしたらどうです?
どうせ八重子先生もお腹すくと思いますから一緒に食べたら良いじゃないですか」
「んー…そうするわ」
お箸を置いた。
「律君、ちょっと布団敷いて来るから」
「あ、はい」
急いで布団を敷いて先生を呼びに戻ると床に崩れてる。
「ありゃ」
「お母さん、布団で寝てよ」
「ぅーん…」
ひょいと抱え上げて寝間へ連れて行って布団に押し込める。
「ん、キスして」
「はいはい」
軽くキスをして寝かしつけて食卓に戻った。
あぁ…いない間に俺のお茶碗のご飯まで食われてるし。
「ごめん山沢さんっ。止めたんだけど」
「いいよ、いいよ。どうせもう一度炊くから」
「ハモって結構おいしいんだね」
「これついさっきまで生きてたからね」
「え、そうなの?」
「うん、八重子先生には触らないようお願いしてあったんだ」
「おばあちゃんじゃ料理できない?」
「じゃなくて噛むんだよ。コレ。もれなく化膿する」
「ええっ」
マジマジと見てる。
「結構魚って毒があったり噛んだり刺したり。だから手がね、傷だらけになるんだよね」
「道理で…」
ご馳走様をして台所を片付ける。
先生方の分は取り置いてあるから問題なし。
ご飯を3合炊く。明朝の孝弘さんのオヤツに消える予定。
さて、居間に戻ったところで俺一人か。
とりあえずコーヒーを入れた。
ぼんやりとしていると眠い。
身を起こして戸締りを確かめ火の始末をする。
いつ寝てもいいように。
律君達が風呂に入り、呼びに来た。
入っておくか。
軽く汗を流して出てくると八重子先生がおきていた。
「お腹、すいちゃってねぇ」
「ちゃんと取置いてありますよ」
ご飯をよそっておかずとお盆に載せ持ち出した。
並べる。
「うなぎ?」
「ハモです」
割としっかり目に食べられて、それからお風呂へ入られた。
一応出てこられるのを待って寝間へ引き上げた。
先生の寝息。
気持ち良さそうだ。
横にもぐりこむと先生が寝返りを打ち、俺の胸を枕にした。
髪が触れて少しくすぐったいが眠気に負けた。
おやすみなさい。
夜半先生が起きた。
「どうしました?」
「どうしよう…お腹すいちゃった」
「まだご飯あるよ。食べる?」
「こんな時間に? 太るわ」
「でもおなかすいたままでは寝らんないでしょう」
うーん、と悩んだ挙句やはり食べることに決めたようだ。
先生が先ほど手をつけそびれたおかずを並べる。
「あら、ハモ? おいしそうね」
うふ、とか笑って食べてる。
「そういえば。お母さんは食べたのかしら」
「あ、俺が寝る前に」
ギシギシと廊下が鳴る。
「電気ついてると思ったらこんな時間に食べてんの?」
「だってお腹すいちゃったんだもの。あんたもなんか食べる?」
「いらない…水飲みに来ただけだし」
そういって台所に行って部屋に帰っていった。
「ごちそうさま」
「お粗末さまでした」
暫くゆっくりしてから寝間へ引き上げることにした。
先生が歯を磨いてきて俺の懐に潜り込みキス。
かすかに歯磨き粉の味。
何かしようか、と思った途端のあくび。
「ごめんね、まだ眠いの」
諦めて再度寝かしつけた。
朝になって先生はゆったりと俺の懐で眠っている。
見ていると幸せな気分だ。
安心しきって俺にすべてを預けているようで中々に気分が良い。
もう少しこのままでいよう。
暫くしてもぞもぞと先生が動く。
あ、目を開けた。
「何時?」
かすかに唇が動く。
「6時ですよ」
「あら、もう起きなくちゃ」
先生が身づくろいしている間に先に台所へ。
さてと朝ご飯を作ろう。
うざく、じゃなくてハモと胡瓜の酢の物。コレは俺のだけ茗荷なしで。
…あじの南蛮出すつもりだったの忘れてた。
魚の酢の物2種? うーん。
先生が出てきたのでどうするか聞く。
あじは昼にまわすことにした。
先生が冷蔵庫を見てあれこれ指示を出すのに従って朝食を作った。
「律ーごはんよー」
八重子先生が律君を呼んで、律君がお父さんを起こしに。
おいしくいただいたら今日は平日、家事をせねば。
風呂も洗い、茶室の掃除に庭掃除。
途中にお昼ご飯をはさんで掃除をする。
明日からは人出入りが多いだろうから居間と客間も丁寧に。
まだまだ手を掛けたかったが先生がそろそろご飯にすると仰る。
配膳を手伝い男共を呼ぶ。
「そういえばさ、律君は海行かないの? 夏だけど」
「いやぁ海ってなんか怖いじゃないですか。色々とね」
「あぁ…色々ね、うん」
孝弘さんも席に着いた。先生がお櫃を持って出てお夕飯。
「お待遠様~」
お、肉だ肉。
俺にだけ。
嬉しいなぁ♪
がっついてると先生がにこやかだ。
しっかりと平らげて明日への体力の保持。
早めに帰宅した。
翌日の出勤はいつもより1時間早く、他の社員たちも同じ時間に出てきて眠そうだ。
盆前と言うことで忙しく気づけば10時を過ぎているがまったく仕事は減っていない。
次から次へと来る仕事をこなして終わったのは3時過ぎ。
やれやれと帰宅した。
絹
お昼を食べて暫くしても山沢さんが来ない。
「来ないわねぇ」
「ん?」
「山沢さん。いつもならそろそろ来るのに…」
「あんたお盆の間は来ないって言ってたじゃないの」
「そういえばそう言ってたかしら? でも今日は木曜よ」
「お稽古がなきゃ来ないだろ」
来ると思ってたから昨日見送りにも立たなかったのに…。
しょげてたら姉さんが来た。
「ただいま。久しぶり。おもて暑いわねえ」
「おかえりなさい。ほんと暑くてお買物とかつらいわよね」
「これお仏壇のお供え。律ちゃんは?」
「学校行ってるのよ」
「お休みじゃないの?」
「なんかあるんですって、しなきゃいけないこと」
「いつも片付いてるわねぇこの家」
「山沢さんが昨日気合入れて掃除してたからかしらね」
姉さんに冷えた麦茶を出しておしゃべり。
「あらあんた掃除もさせてるの?」
「そのかわり私が山沢さんの家掃除したりご飯作ってあげたりしてるわよ」
「今日は来てないの?」
「そうなのよ…」
「お盆だから遠慮するんだってさ」
「おうちに帰られるのかしらね」
「ううん、ずっと出勤ってぼやいてたわ」
「あらー、大変ねえ」
久々に姉さんと沢山おしゃべりして楽しく過ごし、お夕飯を作る。
玄関から物音。
覚兄さんかしら。
玄関に出てみたら山沢さん。
「あら」
「先生…」
がばっと抱きつかれれちゃった。
「ちょ、ちょっと、こら。重いわよ」
危なく押し倒されるところで姉さんが出てきた。
「あんたら何してるのよ」
「うぅ? あーこんにちは、斐さん」
「もうっ暑いから離しなさいよ」
「やだ」
「やだじゃないのっ、ほらっ」
唸りながら離れてくれた。
「この家やっぱ涼しい…」
「今日来ないんじゃなかったの?」
連れて居間に入る。
「昨日帰る前に晩飯のリクエストしたじゃないですか」
「…あらそうね」
お母さんが笑ってる。
「いつもより遅いから…」
「ああ、久々に15時間仕事したもんで。つっかれた…」
「家で寝てたらよかったのに」
「先生のご飯食べたいんですもん」
可愛いこと言うわよね。
「あ、でも来ないつもりだったからリクエストに沿えてないわよ」
「まじっすか」
「まぁ良いわ、なんか作ってあげる」
山沢さんを置いて台所へ。
「姉さん、冷蔵庫に牛肉あるの出してくれる?」
「はいはい、これでいい?」
なにしようかしら。
他のおかずの余ってるもの…大根があるわね。
ピリ辛でいためましょ。
銀杏に薄切りして一緒に炒めれば良いわ。
あとはピーマン1個あるからそれも。
「ねぇ絹?」
「ん?」
「山沢さん、いつもあんなことするの?」
「んー、普段はしないわねぇ。疲れてるとくっつきに来るわよ」
「子供みたいねえ」
「そういうと怒るのよ~」
「ますます子供みたいねぇ」
「私いないとお母さんにくっついてるわよ」
「そうなの? あらー」
「寝ててもしがみつかれるからお母さんは一緒に寝るの嫌なんですって」
「あんた大丈夫なの?」
「私? たまに暑い重いって蹴っ飛ばしてるらしいのよね」
山沢さんが畳の上で寝てたこともあるわね。
多分あれは私が追い出しちゃったんだと思う。
一応布団は譲ってくれてるらしくて。
「山沢さんは別に律でも良いって言うけど」
「さすがにそれは駄目でしょ」
「って律も言ってるわよ」
ご飯が出来たので姉さんに配膳を頼んでお父さんを呼びに行こうとしたら律が帰ってきた。
ついでにお父さんを呼んでもらう。
暫くして律が台所に顔を出した。
「お父さん部屋で食べるって。あ、今晩は」
「はいはい」
「久しぶりねぇ。どう?勉強頑張ってる?」
「えーと、はい」
「はい、これ持って行って」
「うん」
食卓も整ったみたいだしお櫃を持って私たちも。
律が戻ってきて食事。
山沢さんにだけお肉のお皿を。
「あれ、今日精進じゃないの?」
「山沢さんは別なの」
「ほら、まだうちに嫁に入ったわけじゃないからね」
「精進も悪くはないんですが…」
「来年はそうしましょ」
山沢さんがお肉のお皿を平らげたので積極的に野菜を食べさせる。
ご飯のとき幸せそうな顔をするから何か嬉しくなっちゃう。
「こういうの食べたらお盆って感じするわ~」
「そうだねぇ」
「今日はあんた家のほうは良いの?」
「うん、旦那は出張だし晶は合コンらしいから」
「良い人見つかると良いのにねぇ」
「そうねぇ」
「またお見合いの口が来たら言うよ」
「そうしてやって」
「おかわり? はいはい」
「よく食べるわねぇ、うちは晶だけだからこういうの見るの久しぶりだわ」
「みんな小さい頃は食卓は大変だったものねえ」
「あー男の子3人ですか、それは大変そうですね」
「大変だったわよ」
「でもちゃんと絹の分は取らないのよね、皆」
「甘やかされてますね」
「末っ子はそうなるわよね。女の子だし」
「よく環がおこってたよ」
あはは、と笑いあってる間におかずもご飯もなくなった。
ごちそうさまをして洗い物に立つ。
姉さんと二人で片付けて居間に戻る。
山沢さんがいないわね。
「眠そうだから寝るように言ったよ」
「あら」
「ご飯だけ食べにきたのかしら」
「そうなんじゃない?」
姉さんは結局うちに泊まることになった。
山沢さん、どうしよう。
しないでいてくれるかしら。
心配になりつつもお風呂に入って戸締りし、寝間に入って。
気持ち良さそうに寝てるわね。
そっと横にもぐりこむとふわっと腕がかぶってくる。
起きた? 違うみたい。寝息が聞こえてる。
心地よさげな寝息に引き込まれて良く寝て朝になると山沢さんはいなかった。
夜中の間にお仕事に行ったみたいだわ。
何もしなかったのねぇ。
お化粧をするのに鏡の前に行って気づいた。
キスマーク…。
着物を着たら見えないところに。
恥ずかしいわね。
見られないようにしないと。
身づくろいをして台所へ。
朝ご飯を作ってみんなと食べる。
「あれ、山沢さんは?」
「お仕事行ったみたいよ」
「あ、仕事なんだ?」
「そう」
姉さんたちとおしゃべりしてたら晶ちゃんが司ちゃんと来た。
「途中で晶ちゃん拾ってきたよー」
「あら覚は?」
「代理ー」
「まったくあの子は」
「兄さんはいつもそうよね」
お墓参りもしてお昼を作っていると山沢さんが来た。
「あら? 来たの?」
「うん、あっちいるから」
「わかったけど…お昼は?」
「いらない。寝てるから暇になったら来て」
「はいはい」
山沢さんを送り出して、お昼を食べる。
山沢
アラームの音に目が覚めると先生が懐の中でよく寝ている。
起こすのは可哀想だから胸元にキスを落とし、静かに身づくろいして家を出た。
車を走らせ会社へ。
注文FAXを見て各種取り揃え、水洗いしたり配達の指示を出したり。
9時半頃には電話も鳴り止み、片付けて帰宅した。
風呂に入って一服。
さて、行くかね。
また車を走らせて先生のお宅へ。
玄関から既に客が多そうなのが見て取れる。
丁度先生がいたのであちらにいることを告げた。
まだ、眠い。
蒸した部屋に入りクーラーを入れて快適になったところでベッドに潜り込む。
気持ち良く眠れる。
しかしながら夕刻になっても先生は来ない。忙しいようだ。
腹減った…メシ、どうしよう。
とりあえずメールを打つ。
近所の飯屋に行こうと思っている、と。
暫くして返事が返ってきた。
俺のこと忘れてたみたい。
用意する、と言うのを断って食べに出た。
店で適当に注文して食う。酒も少し飲んだ。
そういえばこういう所へ入るのも久しぶりか。
意外とうまい。
葉唐辛子の炒め物もうまい。
ししとうの辛子天ぷらも意外といける。
長いもの漬物はゆずの風味がする。
野菜の肉巻きはマヨ味噌風味だ。
揚げ物が少ないところを見ると冷凍品をあまり使わない店のようだ。
豆乳鍋を食べた。うーん、満足。
ご飯を投入して締めにする。
ご馳走様でした。
良い店を見つけたようで嬉しくなって帰宅する。
盆中は会えないのも仕方ない、と割り切ってテレビをつけて転寝。
夜更け。
先生が来た。
「遅くなってごめんね」
「別にいいんですよ、忙しいでしょう」
「みんな来てるから抜けられなくて…待ちくたびれた?」
「大丈夫、寝てたから」
軽くキスして抱き締める。
懐に寄せてテレビを見つつ先生のおしゃべりを聞くのが楽しい。
先生が恥ずかしげに聞いてきた。
「あの…しなくていいの?」
「精進でしょ、いいよ。我慢できないわけじゃないから」
「ほんとに?」
「ん、こうしてるだけで良いよ。12時くらいになったら帰りなさい」
「でもそれじゃ」
「どうせ俺また出勤だから。寝てるの見ながら出勤するほうが辛い」
「わかったわ。じゃこのままね」
「うん」
先生の体はしっとりして滑らかで。劣情を誘う。
日曜には出来るからそれまで我慢しよう。
いちゃいちゃしてるうちに12時のニュースになった。
「じゃそろそろ」
「そうね。また明日来るの?」
「うん、多分。今日と同じ感じで」
「わかったわ、ごめんね。構えないけど」
お盆なんだからしょうがない。
キスしてから送り出した。
さて、少し寝ようか。
朝、まだ日の昇らぬうちに起きて職場へ行き、仕事をする。
さすがにお盆の最終日と言うことで。
仕事を終え、売れ残った赤むつを持って先生のところへ。
お精進とは言うが。
直接お勝手から上がりこみ、焼いておいた。
それからあちらの家に行ってクーラーをつけて寝る。
起きたらメールして昨日の店で飯を食う。
今日はブロッコリーとベーコンを炒めたのがうまかった。
ごろ寝をしているとそろそろ時間。
タブレットを開き送り火の中継を見た。
今年は5分早かったそうだ。
夏が終る…。
すべての火が消えてぼんやりとしていると先生が来た。
「寝てたの?」
「いや、起きてました」
「姉さんたち、帰ったから。遅くなっちゃったわね」
「おいで」
帯を解いてすっと俺の懐に来た。
うん、いい匂いがする。
暫く抱いていると寝息が聞こえてきた。
疲れてたようだ。
脱がせて一緒にベッドに入る。
気持ち良さそうに寝ている。可愛いなぁ。
頬をなでて出勤までしばしまどろむ。
アラームの音に目が覚めると先生も起きたようだ。
「あら? やだ、寝ちゃってた?」
「うん、そのまま寝てたら良いよ。日が昇ってから戻りなさい」
「ん、そうするわ」
ぽふっと枕に頭が落ちた。
可愛くてついキスをしてしまう。
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「はい」
先生を置いて出勤だ。
手早く着替え、部屋を出る。
やっぱりちょっとさびしくて振り返ったり。
先生は眠気に負けてはや寝息を立てているようだが。
鍵を閉めて車に乗り込んだ。
Uターンの時期ともあり、早朝でもそれなりに車が出ている。
会社に着き、流石にあまり注文もなく。
だけどある程度の時間までは待機の必要がある。
暇になれば先生は今頃何をしているだろう、とそればかり考える。
よし、時間になった。帰って風呂浴びたら先生に会いに行こう。
今日は電車のほうがよい。
Uターンラッシュに巻き込まれたら車では帰れなくなりそうだ。
帰宅すると電気がついて鍵が開いていた。
「おかえりなさい、暑かったでしょ」
「先生。来て下さったんですか」
「うん、うちじゃゆっくりできないでしょ、あなた」
「嬉しいな。ちょっと待ってて、シャワー浴びてきますから。メシ一緒に行きましょう」
「ステーキ食べたいわ」
「わかりました。待ってて」
いそいそとシャワーを浴びて、出てきてすぐランチの予約を入れた。
髪をタオルで拭いて着替え、先生の手を取ってホテルへ。
神戸牛らしい。
先生と外食もなんだか久しぶりで楽しい。
幸せだなぁ。
「お精進ばっかりだったから余計おいしいわねぇ。あ、昨日お魚ありがと」
「台所、誰もいらっしゃらなかったものですから」
「お墓参りいってたのよ」
「なるほど」
先生が食べ終わられて、デザートをいただく。
うまいね。
あとのコーヒーもさっぱりしてよろしい。
ホテルを出ると暑くて先生がぼやいた。
「本当に都心って暑いのねえ」
「廃熱の多さでしょうね、ただまだこのあたりは風がありますから」
少し道を入ると途端にだめだけどね。
クーラーの効いた部屋に戻って先生が息をついた。
「着替える? 風呂はいる?」
「とりあえず脱いでから考えるわ…」
俺の前でしゅるしゅると帯締め、帯枕をほどいていく。
「…ストリップじゃないんだから和室で脱いできてくださいよ」
「ばかなこと言わないの。暑いじゃない」
ああ、そういうことね。あっちクーラーつけてなかった。
見てると抱きたくなるからベッドに寝転んだ。
「…んー。シャワー借りるわね」
「はいはい」
汗がべたついたらしい。
別にそのままで良いのに。どうせまた汗かくだろうし。
暫くして浴衣を着て風呂から上がってきた。
肌がピンクに染まっていて綺麗だ。
「あー涼しい」
クーラーの直撃するところに陣取って涼んでる。
綺麗だなーとぼんやり。
暫く涼んでた先生が立ち上がってベッドに来た。
引き寄せてキス。
伊達締めをほどいて先生の素肌を楽しむ。
白くて滑らかで。しっとりしている。
お尻をなでる頃には先生の息も荒くなってきていて興奮しているようだ。
ちろりと乳首を舐めると声が出た。
恥ずかしそうにしている。
可愛い。
ひっくり返して沢山に弄ってあげた。
あんまりにもやりすぎたものだから先生はちょっと苦しそうだ。
涙目になっているのも可愛い。
先生はどうしてこうも俺のいじめたいというツボを刺激するのだろう。
ほんの少し落ち着くのを待って更に責める。
可愛らしい声だったのが悲鳴に変わって行くのもゾクゾクする。
悲鳴が途絶えた頃やっと落ち着いた。
先生の足が痙攣している。
ゆったりとマッサージをして先生の体を緩めていく。
先生はされるがままで少し涙を浮かべている。
苦しかったんだろう。
ほぐしているうちに寝息が聞こえてきた。
念入りに整えて、肌掛け布団を着せて俺も一緒に寝た。
夕方痛みに目が覚めると先生が俺の乳首に爪を立てている。
「どうしたの」
「お手洗い。連れてって頂戴」
どうやら立てなかったらしい。
少し声がかすれてる。
可愛くてキスしたら噛まれた。
「連れてかないよ?」
「殴るわよ」
それはちょっと遠慮したい。
脅されたので抱き上げてトイレへ連れて行って座らせた。
「外で待ってなさい」
「その声、ドア越しじゃ聞こえませんよ」
「壁、叩くから。出てて」
「はいはい」
暫く待つと流す音、それから壁を打つ音。
入って抱え上げ、ベッドに連れる。
「たった4日開いただけなのに…どうしてこうなのよ」
「たまにはいいじゃないですか。腹減ってますよね、何が食いたい?」
べちっと鼻を叩かれた。
「お腹すいてるけど、そうじゃなくて。やりすぎないで」
その手を取って舐めると乳首を掴まれてしまった。
「聞いてくれないなら後でひどいわよ」
うーん。それはこわい。
手を離してあげた。
「了解、気をつけましょう」
ふう、と溜息つかれて。
「お鮨取ってくれる?」
「はいはい、いつものところのお任せで良いかな」
「うん」
電話して頼む。
それから先生に洗ってある浴衣を着せて、俺も着替えた。
暫くして持ってきてくれたので支払いをして机に広げ、先生を座らせる。
俺にもたれて食べるしかなく、先生は不満そうだ。
「食べさせてあげようか」
「いらないわよ、自分で食べれます」
「怒って食べたら消化に悪いよ?」
「じゃ怒らさないようにして頂戴よ」
「そりゃ難しいな」
「努力しなさい」
「はい」
くすくすわらってると先生も微笑んだ。
先生が食べ終えて一服し、暫くしてベッドに連れ戻す。
「あんたも食べてきなさい」
「ええ」
軽くキスして食卓につき、俺の分を食べた。
桶を洗って表に出す。
ふー、満腹。と共に眠気が。
先生の寝転ぶ横に潜り込んだ
「ん、眠いの?」
「ちょっとね、眠くなっちゃいました」
「悪いけど寝る前にもう一度お手洗い連れてってくれる?」
「あ、はいはい」
連れて行って、連れ帰る。
「私ももう寝るわ。電気消してくれて良いわよ」
「ん、一緒に寝ましょうね」
「手は出しちゃ駄目よ」
「キスはいいでしょう?」
「いいわよ」
ふふっと笑ってリビングの電気を消し、寝室の電気も消した。
横にもぐりこみ、懐に抱く。
キスしておやすみなさい。
翌日は仕事だから先生を起こす。
眠がっているけれどトイレをさせてもう一度寝かせた。
昼近くまで帰れないからね。
漏らすのは可哀想だ。
どうせ漏らすなら俺の目の前が良い。
出勤して仕事をする。
いつもに比べれば暇だけど、休みでなまった体にはダルい。
その上暑い。
げんなりしつついつもより遅くに帰った。
「ただいま」
電気が消えてる。
寝室を覗くとよく寝ている。
苦笑してシャワーを浴び着替えて先生の横に侵入した。
「…ん? あら、おかえり」
「あぁ起きちゃったか。ただいま。トイレ行く?」
「そうね…連れてってくれる?」
軽々と持ち上げてトイレへ。
待っても壁がならないので声を掛けた。
「寝てます?」
「もうちょっと待ってて」
あ、大きいほうかな。
暫くして水の音と壁が鳴る。
中に入って抱き上げた。
消臭剤が撒かれているようだ。
床に座りたいというので下ろして、昼は何を食べたいか聞いた。
「あ、何か鯛焼きが食べたいわ」
「いや、先生、それはおやつでしょう」
「でも食べたいんだもの。買ってきて頂戴よ」
「他に何かいらんのですか」
「うーん、そうねえ…焼きそば」
「ジャンクなものが食べたい日ですか」
「よろしく」
「はい」
携帯を渡しておいて買物に出る。
お好み焼き屋のミックス焼きそばをご希望だ。
ついでだからと俺は鉄板焼きと牛筋、ゲソも頼んだ。
それからたい焼きを買いに行き、その帰りに焼きそば類を引き取った。
帰宅。
いざって壁にもたれてたようだ。
食卓に食べ物を広げるとにじり寄ってきて、まずはたい焼きにかぶりついた。
「デザートじゃなかったんですか」
「あったかいうちがおいしいのよ」
わからんでもないけども。
お昼ご飯を食べてゆったりと先生の胸を揉む。
先生が興奮しない程度にやわやわと。
やわらかくて気持ち良いなぁ。
先生ものんびりと俺に体を預けてる。
あくびひとつ。ふたつ。
「もう一度寝ましょうか」
「うん」
ベッドに連れて行って二人で潜り込む。
背中をなでて寝かしつけた。
俺も寝た。
夕方起きてメシを作る。
万願寺をとりあえず炒めてしいたけを焼いて。
ピーマンと人参と玉葱とアスパラと肉の炒め物を作った。
少しカボス風味。
ご飯はもうすぐ炊けそうだ。
先生を起こした。
暫く俺の胸に倒れこんでまだまだ眠そう。
「ご飯食べませんか?」
「んー食べるー…けどちょっと待ってー」
暫くして俺の肩を杖にして起きだした。
よろよろとだが歩いてトイレへ。
トイレの扉を挟んで会話する。
「今晩も泊まってったらどうです。その足じゃ帰っても大変でしょう」
「明日の朝になったら大丈夫かしら…」
「俺と一緒に車で行けばいい」
「んー…そうねえ、そうしようかしら。お母さんに電話しておかなくちゃいけないわね」
「そうしてください」
流れる音、ごそごそと身づくろいする音が聞こえる。
ドアが開き先生が俺の肩を掴む。
テーブルにつかせた。
ご飯も炊けたのでよそって渡し、席に着いた。
「いただきます」
「今日は野菜、多いのね」
「あなたとだから」
少し掴みにくそうだ。
先生が三分の一、俺が残りを食べてご馳走様をした。
洗い物を片付けていちゃいちゃすれば後は寝るだけだ。
先生が思い出したようで八重子先生に電話してる。
少し叱られたようで機嫌が悪くなった。
ベッドに入ってから俺の乳首を弄りつつ愚痴を言う。
「いてて、千切れるって」
「これくらいで千切れたりしないわよ」
腫れちゃうじゃあないか。
俺の乳首をひとしきり痛めつけた挙句、眠くなったって背を向けてしまった。
後ろから腕を回して先生の胸を揉む。
「こら、寝るって言ってるでしょ」
「触らせて」
「もう、しょうがないわね。でもえっちはだめよ」
「うん」
揉んでるうちにどちらともなく寝てしまった。
翌朝、起きて置き去りに仕事へ行く。
やっぱり暇!
とっととやることを終えて帰宅。
いつもはメシ食ってから帰るけど今日はあとで。
「先生、ただいま」
「あらお帰りなさい。ご飯まだなのよ」
「先生のおうちで食べませんか」
「そうする?」
「とりあえず帰りましょう、用意して。俺ざっとシャワー浴びるから」
「はーい」
先生が身づくろいしている間にシャワーを浴びて着替えた。
バッグを取って、忘れ物はないか見回す。
後部座席に乗せて先生のお宅へ。
「ただいまー」
「お邪魔します」
あ、まだお稽古されてるようだ。
「今の内に何か作りましょうか」
「そうね、お願いするわ」
台所へ行き冷蔵庫を見る。うーん。
あるもので三人分作ってると八重子先生が戻ってきた。
「あ、おじゃましてます」
「はいはいこんにちは。あんたねえ、あんまり無茶するんじゃないよ」
「すいません」
三人で食卓を囲み、俺は早飯食い。
先生は驚いた顔、八重子先生は渋い顔。
さっさと食べ終えて水屋を整え、用足しをして待機。
暫くして生徒さんが来られた。
今日は台子で薄茶をしたり、貴人をしたり。
台子はみなさんお忘れのようだ。
俺はそのまま行之行を稽古してもらってお終い。
水屋を片付けてるとおいしそうな匂い。
今日は何だろう。
楽しみにして片付け終えて台所に顔を出す。
肉じゃがだ!
豚じゃなくて牛肉の肉じゃが。
嬉しいなぁ。
にこにこして配膳する。
他のおかずもおいしそうで、これだから家で自炊がしたくない。
八重子先生に感謝していただきます!
いいなぁ律君はコレが当たり前で。
孝弘さんに俺のお茶碗を狙われたのを先生が察知した。
「あらお父さん、駄目よ。おかわりしますから」
て先生が言ってるのに俺のを食うなっ。
律君が頭を抱えてる。
先生は先に食べ終えてたので自分のお茶碗によそって俺にくれた。
「足りないでしょ?」
「ありがとうございます」
もう取られないよう左手に持ったまま食べた。
満腹になって先生と洗い物に立つ。
「ごめんね、ご飯」
「ははは、いいですいいです」
片付け終えてコーヒーを入れて居間へ。
のんびり。
順繰りに皆がお風呂に入った。
俺も仕舞い風呂で入り、掃除をして出る。
「ちゃんと服着なさいよ、律が困っちゃうでしょ」
「暑い…」
先生がうちわで扇いでくれてやっと冷めた。
八重子先生もそろそろ眠そうだ。
戸締りをして火の元を確かめ、寝間へ。
寝る前に肌の手入れをしている先生を見ると少しむらむらするが…。
今日は先生を寝かせておこう。
布団に入ってきたので胸や腹を揉みつつ寝かしつけた。
夏バテとまだ回復していないようだからね。
「おやすみ…なさい」
「ん、おやすみ」
すぐに寝息へと変わった。
気持ち良さそうだなぁ、俺も寝よう。
朝起きると先生の伊達締めが解けていて、先生の白い肌が目に毒だ。
夜中に無意識で脱がせてしまったと思われる。
触り心地が良いんだよなぁ。
しばし楽しんだがさすがにそろそろ起きなければ。
軽く寝巻きを直してあげて台所へ。
朝ご飯を作って八重子先生と配膳する。
先生も起きてきた。
二人を呼んできてもらい朝ご飯をいただく。
ニュースで山崩れの報告が相次ぎ、先生も眉間に皺を寄せている。
「うちの裏、大丈夫かしら」
「うーん。危ないな、と思ったらみんなでうちにきてくだされば」
「…みんなじゃ狭いでしょ」
「体育館や教室よりはましかと。取敢えずですよ取敢えず。真夜中でも構いませんし」
「そうねえ。大丈夫とは思うけど」
律君が学校へ行って孝弘さんは離れへ戻った。
八重子先生はお出かけ。
広い母屋に二人だ。
「あつーい…」
「ですねえ」
そういいつつも先生と二人、洗濯や掃除をして過ごし、昼を食べた。
「ねえ。昨日あなた…脱がせた?」
「うーん、多分?」
「多分って」
「起きたら解けてたんでよすね」
「昨日のうちにしたら良かったのに」
「いやバテてるのわかってますしね…」
「まとめてするからじゃないの」
「はは、じゃ後でしますか?」
「いよや、暑いもの」
断られてしまった。
残念。
一服してからも掃除を続ける。
茶室は上から下まで念入りにしないといけない。
汗を掻いて掃除を済ませ先生と買物に行き、風呂に入る。
思わず胸を弄ってしまい叱られて。
やっぱり自宅に昼間と言うのは駄目らしい。
明日のお稽古のあとか、土曜までお預けにされてしまった。
しょうがないね。
お夕飯を作ってる最中に八重子先生が帰ってこられて、律君は今日は遅い。
と言うことでさっさと食べた。
それから別れて帰宅。
明日も会えるだけにあまり切なくはない。
帰宅し、寝た。
翌日出勤したものの、西からの荷物が少なくまたお客さんもまだ盆休みのところが多く。
暇な一日だった。
暑さにくたびれつつもお稽古に行けば生徒さんも消耗気味。
先生には滋養剤を飲んでいただいた。
精のつくもの食べさせたいけど、強いものは却って毒かもしれない。
そう思っていると八重子先生に呼ばれ、代わりに買物を頼まれた。
俺が作るから好きなもの作って良いと言うことだ。
少し考え、豚肉と枝豆炒めとインゲンの胡麻和えにしようと決めた。
トマトのスライスも良いな。いや冬瓜の冷やし煮の方が良いか。
それからデザートはグレープフルーツ。八重子先生だけオレンジ。
よし、そうしよう。
先に決めて買物に出て急いで帰る。
やっぱり外、暑い。
稽古場の声を聞きつつ調理にいそしみ、生徒さん方が帰られた頃できた。
水屋に顔を出して片付けを交代し、先生方は一服。
片付けて料理を配膳し、孝弘さんを呼ぶと律君が帰ってきた。
「お帰り、シャワー浴びたら?」
「そうする」
先に食事を始めて、すぐに律君がさっぱりして戻ってきた。
先生がいそいそとご飯をよそっててほほえましい。
「あれ、なんでおばあちゃんはオレンジ?」
「高血圧の薬とグレフルは相性悪いんだよね」
「へぇ」
「ザボンとか、文旦とかね。HIVの薬とか、偏頭痛の薬もね」
「あなた変なことに詳しいわよねえ」
「高血圧とグレフルは有名ですよ? まだ」
「そういえば橙は食べるなって言われたんだけど」
「グループですね、みかんはOKですって言われました?」
「そういえば言われたような?」
ぺろりとすべて食べ終えてお片付け。
その後、帰る段になった少し先生が引き止めたそうにした。
でも今日は駄目、この時間からは無理。
ちゃんと寝て体力戻すことを心がけてくれ、と別れた。
ま、俺もね、寝ないとね。
ベッドにもぐりこんで先生とメールを交わして寝た。
翌日、仕事を終え今日は予定もなし、昼寝することにした。
先生は今頃…稽古中だな、うん。
夕方までたっぷり寝て買物に出た。
胡瓜と塩昆布、それから梨。
小鯛を造っておいたからもうコレで良いや。
少しの酒とで夕飯にする前に、面性に写メを送る。
先生からも今日の夕飯の写真。
さばの味噌煮かな? 何かのおひたしと筑前煮、胡瓜とこれはちくわかな? 胡麻和え。
うまそう。
ご飯に手抜きがない。
今日は早めに寝るとある。
明日抱くのも軽めにしよう。
疲れたりしない程度に。
暫く飲んでると早々にお休みのメールが届く。
…まだ7時半なんだが。
よっぽどお疲れか。
俺も寝るとしようかな。
ベッドにもぐりこみ、就寝。おやすみなさい。
さて土曜日は流石に少しは忙しく、やや疲れて先生のお宅へ。
でも先生の笑ってるのを見ればやる気も出て来る。
「具合、どうですか?」
「昨日早く寝たから今日はいいわよ~」
「それは良かった」
居間から下がって水屋の用意をして先生を待つ。
今日の生徒さんもバテ気味だ。
軽めのお稽古。
途中で八重子先生と交代して買物、食事の支度。
胡瓜と山芋の梅おかか和え、豚の冷しゃぶなどをメインに用意した。
今日は作り終えて水屋を覗くと稽古をつけてもらえた。
いくつか指摘されて直された。
「疲れちゃったわ…」
「お疲れ様です、あとでマッサージしましょうか」
「お願いできる?」
「ええ。ちょっと横になってたらどうです」
「うん」
そう言いつつも座ったまま片付ける私を見ている。
片付け終えて先生と居間に行けば既に配膳されていた。
「あ、孝弘さん呼んできて頂戴」
「律は?」
「さっき帰ってきたよ」
会話を尻目に離れへ呼びに行くと寝てるようだ。
「ご飯ですよー」
「む? 腹減った」
起きたおきた。
俺も腹減った。
先生にご飯をよそってもらって沢山食べて後片付けをする。
「山沢さんって元気だよねぇ」
「暑いのはなれてるから。こっちのほうが涼しいしね」
夜クーラーなしで寝られるだけ随分楽。
暫く団欒し、順繰りにお風呂に入る。
その後、マッサージするからと早めに二人で寝室に入った。
寝巻きを着せたまま布団に伏せさせゆっくりと揉み解す。
いつしか寝息に変わった。
う、今日は抱きたかったんだけどなぁ。
参ったな。
寝てるところをひっくり返してリンパの流れに沿って流す。
足首からふくらはぎ、太腿。
股関節を開いて。
不純なことをしたくなるけどぐっと我慢した。
気持ち良さそうな表情もそそりはするがおさえて寝巻きを直し、布団に入れた。
俺はちょっと今すぐは眠れず庭をうろついた。
ふと気づけば早くも虫の音。
そうか、もう夜は秋なのか…。
コト、と音がして振り向けば八重子先生。
「眠れませんか?」
「ちょっとねぇ、あんたこそどうしたんだい」
「いや、はは、先に寝られちゃいまして」
「あぁ」
頭をなでられてしまった。
「明日昼から連れて出て良いよ」
「いや、バテるでしょうしいいです」
「まぁ気が乗ったら連れて行ったら良い」
「すいません」
「もう秋が見えてきたねえ」
「そうですね」
リ、リ、リと虫の音。
「あの人ともよくこうして虫の音を聞いたものだけど」
暫くぼんやりと二人でたたずんで、それから各々引き上げ寝た。
朝方、早くに目が覚めた。そろそろ夜明けか。
身じろぎしたことで先生が起きてしまった。
「まだ起きるには早いから寝てて」
「ん、でも…寝れないわ」
「どうして?」
「その…」
そっと俺の手を掴んで股間へ引き寄せた。
「…してもいいの?」
こくりと頷く。
緩く、疲れさせはしないよう気をつけながら丹念に性感帯を弄る。
逝かせたがもうちょっとと言うので更に二回逝かせると寝てしまった。
今から寝て朝ご飯食べるのかなぁ。
そう思いつつ始末し俺は起きて台所へ。
朝食を作っていると八重子先生も起きてきた。
「ん? あんた嫌にすっきりした顔してるね」
「えーと、ははは…」
「朝御飯食べるのかねぇ」
「どうでしょうね」
作って配膳する。
パタパタと先生が出てきた。
「ごめんなさい、寝坊しちゃったわね」
「あ、あぁおはよう」
「昼まで寝てるかと思いましたよ」
「あらどうして?」
「…覚えてないなら良いです」
先生は首を捻ったままごはんをよそってる。
律君が起きてきてお父さんの食事を持っていった。
今日は部屋で食うようだ。
休日の朝御飯は気が急かなくていいね。
先生は食べつつあくびをして八重子先生に叱られた。
俺はそんな先生が可愛いから気にはならない。
食器を洗って片付け、お茶を入れて先生方とまったり。
「こんにちはー、おばさんいるー?」
「あら、司ちゃん。いらっしゃい」
「丁度良いところに来たね、山沢さんに梨をむいてもらおうと思ってたところだよ」
梨ってあったっけ?
「土間のところに箱であるからおいしそうなの選んで頂戴」
なるほど、お勝手の土間の箱、あれか。
席を立って剥きに行った。
3個くらいでいいか、足りなきゃまた剥けば良い。
先生と司ちゃんの話し声が聞こえる。楽しそうで良いなー。
と羨んでたらすこし指を切った。
むっとしつつ、切り分けて皿に盛り、居間に持って出た。
柱にもたれて先生たちがおしゃべりするのを見つつ食べる。
あ、うまい。
梨食うの久しぶりかも。
ふと、帰ろうかという気になって先生に告げて帰った。
珍しく昼前に帰宅して軽く食って寝た。
夕方の先生のメールで目が覚める。
司ちゃんたちと夕飯を囲む写真。
楽しそうだ。
俺も夕飯…面倒くさい。このまま寝てしまおう。
先生だって俺にかまわず寝るんだし、いいじゃないか。
寝返りを一つ打って寝た。