翌朝、特にメールはなく普段のとおりの仕事。
いい魚が入ってはいるものの、今日は稽古日でもなく。
苛立ちをぶつけるためジムに行くものの、混んでいて順番待ちに遭った。
いつものように追い込もうにも休憩が長くならざるを得ず不快。
帰ることにした。
きっと風呂も混んでるだろう。家で入ろう。
帰宅すると草履が玄関に…え?
「あぁお帰り、遅かったね」
「なん…だ、八重子先生。驚きました」
「お昼食べるだろ?」
「あ、はい。ですがお稽古は?」
「言ってなかったっけ? 今日はお休みだよ」
「そうでしたか」
「絹はお稽古だけどね。今日は研究会」
なるほどなるほど、来ないわけだ。でもなんで八重子先生が来るのかな。
味噌汁が冷めないうちに、と汚れたまま食べさせられてそれから風呂。
ふと気づけば洗濯されていて、掃除もされてた。
さすが親子、やることが一緒だ。
でもさ、先生はいいんだけど八重子先生にされるのはちょっと微妙。
風呂から上がると八重子先生が帰り支度している。
「じゃ私は帰るから。明日ちゃんとお稽古いらっしゃい」
「気をつけてくださいね」
「大丈夫だよ、じゃあ」
ちょっと心配なので一応先生にメールを入れた。
稽古中では見もできないだろうが。
どっかりとベッドに転がる。
シーツまでも洗濯されていた。
うーん…。
まぁいいか。
そのまま寝て、夕方起きる。
冷蔵庫を覗くが何もない。何か買いに行かねばなぁ。
と思ってたら玄関から物音。
「ただいまぁ。あぁ疲れたわぁ」
「先生?」
和室へ入ってポイポイと脱ぎ始めた。
「お腹すいちゃった。何か作って頂戴よ」
突然来て何かと思えば。
「何食いたいんです?」
「さっぱりしたの」
「はいはい」
買物に出て物思う。
もしかして八重子先生の掃除と引き換えなのかこの便利使い。
まぁ聞くわけにも行くまい。
取敢えず何を作ろうか。
野菜の南蛮かな。なますと。
あとはマグロの山かけ。
会社へ寄って100gばかり切った。
ついでに冷凍庫から俺用の味噌漬けを出して買物して帰宅。
「まだなのー?」
「はいはい、ちょっと待ってて」
先生は寝巻きに着替えて俺のベッドに転がってた。
おーい。
せかされつつも作って配膳して呼ぶと…完全に寝てる。
少しいらっとした。
飯作らせといて寝るなよな。
冷蔵庫にしまいこみ、飲み屋へ行った。
唐揚、豚キムチ、餃子、揚げ出し豆腐をアテに飲む。
暫くして先生からメールが入る。
冷蔵庫に入れてあるの食えと返した。
飯を食って飲んで帰宅すると先生が不機嫌だ。
「作ったのに寝てるからだろ。そんな顔するならまだ遅くないから帰れ」
「ひどいわ…」
「俺は寝る」
寝間に入ってドアを閉めた。
あーあ、明日稽古行きたくねーな。
サボるか。
酔いもあってそのまま寝てしまった。
翌朝、出勤の支度をする。
帰ったようだ。
と思っていたら草履がまだある。
和室に布団敷いて寝たのか。
まぁ稽古日だし仕事から帰ったらもういないだろう。
サボろうかなぁ…、稽古。
テンション低いまま暇な火曜日、仕事は暇。
昨日のマグロを事務に計上してもらい支払った。
暑さにげんなりして帰宅。
あ、まだ草履、ある。
「ただいま」
「おかえりなさい、お昼もうすぐできるから」
風呂に入る。
涼しくなるまで浴びて上がるとテーブルに先生が色々並べてる。
「昨日はごめんなさい、折角作ってくれたのに」
「もう帰らないといけないんじゃない?」
「ごめんなさい、迷惑だったわよね…」
「いや、稽古。良いのか?」
「えっ、今日お休みよ?」
「八重子先生、昨日稽古に来いって言ってたけど…」
「ちょっと待って」
慌てて携帯で家にかけてる。
「え、あ、そうなの? あ、はい。はい、わかったわ」
電話を切って俺に向き直った。
「お稽古は今日はないわ。ついあなたにそう言っちゃったって」
「なんだ…」
サボろうとか思ってたのにな。
「ご飯食べてくれる?」
「あぁ。いただきましょう」
少しぬるくはなってしまったが久々の先生の作る飯だ。
やっぱりうまいな。
少し機嫌が良くなったのを見計らって先生がもう一度謝った。
「いや、俺も悪かった」
双方謝り、この話は終わったことに。
昼寝したいか聞くと朝良く寝たから別に、と言う。
「あの…し、したいなら、いいわよ…」
顔を赤らめてそんなことを言う。
「食事時にする話じゃないっていつもは怒るでしょう」
「あ、そ、そうね」
まったく。
食事を終えて洗い物をしようとすると私がする、と言い出した。
「いいから。座ってて」
ちょっと気まずそう。
洗い終えてコーヒーを入れて持って出た。
「ん」
「ありがとう」
ほい、と一口羊羹を渡す。
「貰いもん。俺食わないから」
客から箱で貰ったとらやの一口羊羹。
先生がいるなら消費するのは今しかあるまい。
「おいし…」
笑顔になって随分空気がほぐれた。
コーヒーを飲み終える。
「おいで」
「あ…はい」
そそくさと割烹着を外し、帯を解いた。
紐を外そうとする手を取り抱え上げベッドに連れて行く。
「あ、あの、脱いでからじゃいけないかしら」
そのまま組み敷いて何事か言おうとする唇をむさぼる。
着物の上から胸を揉んだ。
少し抵抗されてまた少しいらだつ。
ベッドに座り背を向け、脱ぐように言うと先生は慌てて脱いでる。
脱げたようなので押し倒し、抱いた。
それでも気を抑えて抱いているのにいつまでも身を硬くして怯えてるのがわかる。
何かもう面倒くさくなって寝かしつけて一緒に寝た。
夕方、起きて夕飯の買出し。
二人分だから、と考えつつ買物して帰ると先生が不安そうな顔で俺を待ってた。
「飯、作りましょう」
「うん…」
こりゃ、駄目かな。一度家に帰したほうが良いかもしれない。
そう判断して食事の後、車に乗せて自宅へ送り届けた。
「じゃ、またあさって」
別れて自宅へ戻ると見せかけ、いつもの部屋へ。
流石に疲れた。
ピンクのシーツ、相変わらず微妙だな。
そう思いつつ酒を出しつまみを食う。
ぐいぐい飲んでいると八重子先生から電話だ。
何があったというけれど別に特になく。
どこにいるかと聞かれてここにいると答え電話が終った。
そのまま暫く飲み、寝る。
寝ている間に何か気配がして目を覚ますと先生がもぐりこんできていた。
起きたことに気づけばまた気を使って怯えるか?
ならば知らぬ振りとしよう。
寝返りを打った振りして抱きつくと一瞬びくっとして…緩んだ。
よしよし、寝ろ。
暫くすると落ち着いた寝息になってほっとした。
やっぱりさ、ゆったりとしててほしいわけよ。
イラつくけどさ、怯えられると余計に腹が立つんだよな。
すこしむらっときて抱きたくなった。
起こさない程度に乳をまさぐる。
寝てるときは抵抗もない。
昼もこうだったら…。
もぞもぞと先生の尻が動く。
そろそろ股間に手を伸ばしてもいいだろう。
濡れている。
身体的反応ってやつだろう。
「ん、ぁっ、ちょっ、と…寝てたんじゃ、なかったの?」
「寝てた寝てた。そのままそのまま」
適当にいなして抱く。
「あっうぅ、き、つい、そんなに入れないでっ」
「力、抜いて。締めようとしないで」
いつもより一本増やしただけだから大丈夫だろう。
中をゆっくりほぐす。
入り口が狭い。
いけるかと思ったがこれは無理かな。
指の付け根まで入れるのは諦めた。
息をついたら謝られてしまったのでむっとして指を舐めさせた。
すがるような目つきで指を舐めている。
愛しくなって、それとともに気がついた。
「…そろそろ生理?」
「えっ…あ。今日何日だったかしら…」
「まだ26日」
「あ、じゃ明日からかも」
「なるほどね。俺も多分そろそろだ。あなたの情緒不安定と、俺の苛立ち、多分これ」
「あら…」
「どうして欲しい? このまま寝たい? 抱かれたい?」
「あの…酷くしないなら…抱いて…」
「うん。わかった」
ゆったりと丁寧に抱いてるうちに先生の体もほぐれてきた。
あ、指、入るね。付け根まで。
ここから先は無理だろう、まだ。
「きつくない?」
「ん、大丈夫、気持ち良いわ」
急に揚げるのではなくゆっくりと逝かせた。
眠そうな気配に変わって行く。
体を入れ替えて先生を上に乗せ、肌掛けをかぶせて背を撫でると寝息に変わった。
俺もそのまま寝て翌朝目が冷めると涼しさに先生は俺にしがみついている。
意外と今朝はひんやりしていて肌掛けでは少し寒かったようだ。
何時だろう。
10時半…えらく寝てしまった。
先生を起こすか。
直接股間に手をやり、弄るとすぐ起きた。
「もうっ」
「ふふ、そろそろ起きませんか」
「何時なの?」
「10時半、いや11時前だな」
「あら。寝過ごしちゃったわねぇ」
もう暫く先生の体を楽しんで、昼飯を食いに出た。
けだるげで色っぽい。
店員さんがいるときはしゃきっとしてるけど。
しっかり甘いものを食べた先生は気力を取り戻したようだ。
俺とごろごろして居たいらしい。
涼しくてなんとなくまったりと懐に抱いて夕方。
「ねぇ、今日うちで夕飯食べてくれるの?」
「そうだね、いただこうかな」
「じゃお母さんに言って買物一緒に行きましょ?」
「はいはい、なら着替えておいで。俺が連絡するから」
寝巻きから着替えさせてる間に八重子先生に電話し、化粧を直す間に俺も着替えた。
「さてと。行きましょうか」
「ええ」
玄関を出て歩きつつ会話する。
「何にしましょう」
「青唐辛子の炒め煮が食べたいわ。あなたが良く作ってるの」
「ああ、あれですね。メインにはなりませんよ?」
「んーしいたけの肉詰め?」
「いいですね」
「アスパラが食べたいわ」
「ベーコン巻にしましょうか」
などと献立を決めて買物。
帰宅して二人で台所に立った。
律君も帰ってきて食卓におかずを並べ、食事を取る。
ご飯を終え洗い物をしてから別れ、帰宅した。
明日もお稽古はある。
また逢えるからと。
そして、寝た。
あまりの暇さに溜息が出るような、今日の仕事。
早々に終らせてお稽古へ行ったが生徒さん方も夏ばて欠席。
急に涼しくなったから風邪を引いたり。
先生も昨日の晩からアレでお稽古も早めに終えて別れた。
翌日は金曜と言うのに暇で思いやられる。
まぁ先生も稽古に来られる生徒さんにお休みが多く休養に当ててるそうだ。
遊びに誘ったら却下されてしまった。
やっぱりなぁ。
明日はどうなんだろう。
まだ終ってないからだめ、か?
仕方ないけど。
暇すぎて疲れてなくて眠れない。
涼しいから散歩に出る気になった。
ぶらりと。
寄席、いくか。
行ってみると丁度、太神楽が始まるところだった。
久々に楽しんでゆったりとした気分で帰宅の途中、夕飯を取った
あとは寝るばかり。
先生も夕飯を食べたら寝るとメールしてきている。
こんな調子では明日は望むべくもない。
諦めて寝ることにした。
翌朝も涼しく、もう秋なのかなぁという気候。
涼しいものだからハモが売れない。
何本かを持ち帰ることにした。
マツタケも売れ残ったので回収。
途中、ごぼうを手に入れて稽古場へ。
八重子先生に手を触れないようお願いする。
「今日は何するの?」
「柳川と土瓶蒸です、そのつもりで他のおかずお願いします」
ちゃんと柳川鍋、人数分持ってきたんだよね。
「どじょうはちょっと」
「ハモでやりますからおいしいですよ」
「そう?」
「ええ。じゃ、水屋の支度してきますね」
土曜と言うのにやはり生徒さんが少ない。
今日は俺のお稽古を少し長めにしていただいた。
「山沢さーん、そろそろ作って頂戴」
片付けてると八重子先生が呼びにきて交代。
今日は下処理を済ませてきてあるので前掛けとたすき。
いつも作るように柳川に仕立てて順次熱々を食べていただく。
今日ばかりはそろって食べる、をすると冷める。
最後に先生と俺で食べた。
土瓶蒸もおいしくて、八重子先生の作るおかずもおいしい。満腹で幸せ。
先生も満足そうな顔をしている。
さてそのかわり洗うものは沢山だ。
頑張って洗い物をしていると先生がコーヒーをいれに来た。
「あら。いつもの、もうないわ」
「ありゃ、そろそろ買わないとですね。
取敢えずその緑の、そうそれ。それなら割といけますよ。フルでも」
「じゃいれてみましょ」
お盆に三つ、カップを載せて帰っていく。
暫くして洗い終えた頃先生がカップを持って戻ってきた。
「これもお願い」
そういって洗いあがったお皿を拭いて仕舞い始めた。
ちゃんと手伝ってくれる。いらだったりはすまい。
一緒に拭いて仕舞って、居間へ戻る。
ゆったりと過ごす土曜の夜。
秋だなぁ、虫の音が。
蚊遣りを焚いて思い思いに…。
先生は半襟をつけている。
そういうのを眺めるのも好きだ。
ふとこっちに気づいたようだ。
「あんたのも持ってきなさいよ、つけてあげるわよ」
「いや、いいですよ」
「いいから持ってきなさい」
「すみません」
つけてもらう代わりといっちゃなんだけど、と肩を揉んであげた。
気持ち良さそうにしている。
律君が風呂に入って、八重子先生が入って。
先生と一緒に俺も入った。
アレは終りかけているようだ。
触っていたら怒られた。
舐めようとしたらピシャッと頬をぶたれた。
打ってからしまった、と言う顔をする。
無言で手を濯いで先生の体を洗った。
湯に浸かって膝に先生を乗せ、ゆっくり揉み解すと縮まりこんでいた体がほどける。
怖いなら気をつければ良いのに。
そろそろ、と出して俺も出た。
体を拭いてやって手早く寝巻を羽織らせ、始末をさせた。
それからゆっくりと俺も体を拭いて寝巻を着る。
その足で戸締りをし火の元の確認をして居間へ行き、八重子先生に先に寝ることを告げた。
先生が追随して俺と布団に入る。
俺は背を向けて寝た。
背中に先生の胸が当たり、手が俺のお腹に回される。
「ねぇ、怒らないで…」
「怒ってない」
「でも…」
身を起こした。
「悪いけど…濃茶、飲みたい」
「あ、わかったわ」
「いや、寝てて。自分で点てるから」
「点てさせて頂戴よ。ねぇ」
「ん。ありがとう」
先生と台所へ行ってお湯を沸かし、点てて頂いた。
「うまいな…」
落ち着く。
「飲む?」
半分を残して聞く。
「うん」
先生もおいしそうに飲まれ、置かれた。
「ごめんね、叩いて」
「いや…あなたが嫌がることしたのは俺だから」
ちょっとキスしたくなって軽くすると抵抗もなく俺の懐に入ってくれた。
茶碗を洗って片付け、寝間に戻る。
布団の上に座ると先生が俺の体のあちこちに触れた。
「なに?」
「冷えちゃったわね」
「あぁ。大丈夫、こうしてたら」
先生を懐に抱いてくっつく。
「ほら、暖かくなってきた」
先生が上気して、俺も少し興奮するから体温が上がる。
「さ、寝ましょう」
先生を寝かせて肌掛けをきっちり掛けて、俺ももぐりこんだ。
柔らかな体を撫でて寝かしつける。
心地良さそうな寝息に心が癒されて俺も良く寝れた。
朝になって先生と二人台所に立つ。
玉子焼きにたこさん・かにさんウインナー。
なんとなく作りたくなったらしい。
今日のおかずはお弁当に入ってそうなもので揃えられた。
律君も何で?と言う顔をしている。
いつも和食ばかり作ってるからたまには作りたいのか?
ま、おいしかったけどね。
食後トイレに行くとどうやら始まったようだ。
始末をしてから戻り、先生に甘える。
「どうしたの?」
「なんとなく」
適当にいなされつつまったりと休みを満喫。
律君は食後すぐ遊びに行ったらしい。
若いなぁ。
途中八重子先生によるあんかけうどんをお昼に頂いてのんびりと。
ついつい先生のどこかを触ってしまう。
夕飯の買物に出てる間もつい手を触ってしまって困った顔をされた。
流石にご飯を作っている間は触れなかったが。
食後辞去しようとしたら八重子先生に先生を連れて帰るよう言われた。
「いやお稽古は」
「明日もお休みの方多いから大丈夫だよ」
「しかし…」
「いいからいいから。じゃまた明後日連れてきてやっとくれ」
先生は慌てて外着に着替えた。
今日ずっと浴衣だったしね。
「車ですし着替えなくとも…」
「駄目よ、途中でどこか入りたくなるかもしれないじゃない」
コンビニとかスーパーとか?
明日の朝飯調達かなぁ。
取敢えず後部座席に乗せて発進した。
やはり途中のスーパーに入りたいと言われて駐車場へ入れた。
先生と大型スーパーは初めてのような。
商品を見て微妙な顔してる。
商店街で買ってる奥さんにゃ大型スーパーのものは悪く見えるんだろう。
値段も値段だけどね。
それでも吟味してあれこれ買って帰宅した。
「さてと、風呂入って」
「じゃお先にいただくわね」
冷蔵庫に片付けて、先生の寝巻きを出した。
タオルとバスタオル、生理用品を脱衣所にセットしてアイスコーヒーを作る。
すぐに先生が上がってきた。
「はい、これ」
「ありがと」
交代に風呂に入る。
俺が入ってる間に先生も俺のを用意してくれたようだ。
「すっきりしたわ~」
「さてと」
「ん? え、す、するの?」
「いや寝ましょう」
「良いの?」
「だってあなたまだ終ってないでしょう。それに俺明日仕事ですしね」
ほっとした顔してる。
そういうわけでベッドに連れ込んで寝た。
おやすみなさい。
朝、目が覚めてもっと寝ていたくて。
それでも仕事に渋々起きた。
先生のぬくもりが恋しいまま支度して出勤する。
やる気なく暇な仕事を終え、帰宅。
「お帰りなさい、早かったわねぇ」
「うん、ただいま。暇だった」
「ご飯まだ作ってないのよ」
「どこか行きますか?」
「買物してあるから。今から作るわ、待っててくれる?」
「はい」
風呂に入って温まる。
少し長めに入った。
上がると脱衣所にちゃんと用意してくれてあって嬉しくなる。
着替えてご飯を食べてゆったりしてると痛くなってきた。
ベッドに追い立てられて寝ているが寒い。
先生をベッドに引き込むことにした。
帯だけ解いて俺を抱きかかえて寝てくれる。
多分、子供みたい。そう思っているはず。
小一時間くらいして先生が音を上げた。
「暑~い…」
「あ、風呂入ってきていいですよ」
「大丈夫?」
「うん、そろそろ大丈夫」
「おとなしくしてなさいよ?」
俺の頭をなでて先生が部屋を出て行く。
浴衣が皺になって背中に汗染み。
よっぽど我慢してくれてたようだ。
暫くして上がってきた気配がして冷房の風が感じられる。
流石に暑いらしい。
俺も落ち着いたからもう一度入ろう。
起き上がって先生にそう言うと、その間に少し布団を干すといわれた。
布団乾燥機で良いと言って出せば変な顔をする。
「マットついてないじゃないの」
「あー…これは無しでできるやつですよ。こうやって…」
セットしてスイッチ入れといた。
シャワーに入って出てくると先生がその様子を観察している。
「何やってんですか」
「本当に乾燥できるのか気になって」
冬場、頭のほうから差し込むと足元が暖かくないことならある。
「一時間くらいかかるから。そんなとこにいないでこっち来ませんか」
「あら、やっぱり時間かかるのは一緒なのね」
「だけど手軽で無精者にはぴったりでしょう?」
「やぁね」
あはは、と笑って先生はおやつを用意してくれた。
先生は羊羹、俺には求肥。
甘くてうまい。
お茶を頂いてゆったりとする。
あくび、つられた様に先生もあくびをした。
手招いて床にごろ寝をする。
笑って横に添ってくれた。
うつらうつらして途中で目が冷め、乾燥機を送風にしてトイレへ行く。
また先生を抱っこして寝ていると先生のお腹の音が聞こえる。
…何時だ今。
時計を見れば5時過ぎ、そろそろ飯の支度をすべき時間だ。
そっと寝かせたまま台所に行き冷蔵庫を確認する。
朝の買物で夜の分は買ってあるのかな。
うーん、微妙?
何を作るつもりだったのかがわからない。
一応炊飯器を見るとご飯はある。
取敢えず肉が食いたい。肉。
起こすのもなんだからさっと着替えて肉屋に走った。
ヒレ肉3枚を買い、サラダになりそうな野菜をついでに八百屋で買う。
急ぎ戻ってそっと玄関を開けるとまだ寝ている。
よしよし。
できるだけ静かに支度をして肉を焼いていると匂いで起きたようだ。
「んー…いつのまに起きたのー?」
「さっきの間ですよ。と言うことでステーキとサラダです」
3枚焼いてサラダもたっぷり。
あとはスープ。
定番定番。
机を拭いて配膳し、先生を座らせた。
「おいしそうね、いただきます」
「いただきます」
サラダから食べるから先生は太りにくいんだろう。
んー、うまい。
俺は勿論、肉から。
途中先生がお箸を置いた。
どうしたんだろうと思うと冷蔵庫から何かを出して温めている。
「はい、これ。食べなさい。サラダじゃ体冷えるわよ」
南瓜と大根の炊いたん。
いつのまに作ってたのだろう。
「お昼に間に合わなかったから出さなかったの」
「でも肉と合わな」
「黙って食べなさい」
「…はい」
好き嫌いは許しません、のお母さんモードだ。
サラダも煮物も食べて肉も食べる。すっかり満腹。
煮物がないつもりだったからちょっと多かった。
洗い物を先生がしてくれてしばしくつろぐ。
水仕事を終えて懐に来た。
「ねぇ…していいわよ」
「終った?」
「多分…」
キスして、といわれて軽く。
それからしっかりと。
ゆっくりと脱がせて抱く。
今日はそんなに疲れさせてはいけない。
明日、お稽古だからね。
「一週間くらいうちに居て欲しいなぁ。たっぷりかわいがってあげるのに」
「そんなの、無理よ…死んじゃいそう」
「大丈夫。あなたの限界、もうわかってるから」
ほんの少し超えさせるけどね。
「さてと。そろそろ寝ましょうか」
トイレに行ったり寝床の支度をしたり。
布団乾燥機を仕舞って寝巻きを着た。
ベッドに二人、潜り込む。
「乾燥、ちゃんとしてるのねぇ」
「いいでしょう? 簡単で」
肌掛けにケットを足して寝る。
そろそろ朝方は肌掛けだけでは冷えるだろう。
ワッフルケットが好きだけど、先生は顔に跡がつく、と言う。
年々跡が残り易くなっているとは言うが…。
どうせつけるなら縄の痕を付けてあげる、と言うと困った顔をしている。
「お母さんに見えないようにするの、大変なのよ?」
「見えても良いじゃないか」
「いやよ恥ずかしい」
「可愛いな」
沢山キスをして愛してると言うと嬉しそうだ。
「好きだよ。このまま閉じ込めておきたいほどにね」
頬を赤らめているのがまた可愛らしくて、良い。
でも実際閉じ込めて置いたら先生、壊れる。壊しちゃうからやめておこう。
壊すより清楚なままがいい。
そのまま寝かしつけて一緒に寝た。
先生の寝息が熟睡の気配に変わる頃、そっと股を広げさせ鋏で白髪の陰毛を切る。
根元から一本一本より分けて。
いま瓶を出して仕舞うとばれた時が怖いので紙に包んで引き出しに隠した。
それから暫く先生の股間を舐めていじって楽しんでから寝直す。
朝方起床し、穏やかに寝ているのを見つつ支度を整え出勤。
暇な暇な仕事でやる気が出ないが帰れば先生が待っていてくれる。
そう思えばやる気も少しくらいは沸く。
何とか定時。
帰宅してすぐ先生を乗せてひた走る。
「お腹すきましたね」
「そうね、お母さん何作ってくれてるかしら」
バックミラーに映る先生と会話しつつ、先生のお宅へついた。
「先食べる? お風呂?」
「臭いでしょう?」
「…そうね、先にお風呂入ってらっしゃい」
ふっと笑って風呂を借りた。
手早く濯いで浴衣を引っ掛けて居間に戻れば先生方が食べている。
「おいしそうですね」
「はい、ごはんどうぞ」
先生がよそってくれて、いただきます、と食べた。
うまいなー。
飯を食い終えるがまだ先生は食べている。
さっさと水屋の支度をしてから用を足して着替え、生徒さんを待つ。
いつものように生徒さんが来て先生が入って、スタート。
今日は夏も終わり、と言うことで風炉の平点前を。
基礎大事だからねー。
拝見時の会話などの指導をされた。
皆さんを見送ってから夕飯を頂いて先生方がお風呂に入り、そして就寝。
先生を抱こうとすると鼻をつままれた。
「ん?」
「またここ、切ったでしょ」
自分の股間を指差してそう言う。
「あはは、わかりましたか」
「白髪、有ると嫌なの?」
「嫌じゃないですよ」
さわさわ、と先生の脇をくすぐる。
「きゃっ」
「ここにもあって問題ないですし」
「もうっじゃなんで切るのよ」
「んー、自分にあるとげんなりしません?」
「するけど」
「なので」
なんとなく程度に納得された。
と、言うことで…抱く。
声が出ない程度に気をつけつつ少し責めて。
先生の荒い息が寝息に変わる頃、一度トイレへ行ってから俺も寝た。
一人台所をするいつもの朝。
先生はいまだお休みだ。
いつものように朝食を食べ、今日は草むしりをしっかり目に。
ちょっとサボったものだから酷い有様だ。
汗だくになってお昼、おにぎりを縁側でいただいた。
お漬物と汐吹き昆布がうまい。
麦茶で潤って再開、気づけば先生は買物に出てしまったようだ。
晩飯何かなー楽しみだなー。
先生の作る飯はうまいから期待しつつ、草をむしった。
頑張っていると八重子先生から声がかかった。
そろそろ片付けてシャワーを浴びたら、と。
甘えて片して縁側から上がる。
「洗濯するから頂戴」
八重子先生に脱がされて風呂へ。
気持ち良いー。
汗が冷えるまでに風呂に入るのがやっぱり良い。
さっぱりして着替えて食卓へ。
あっさりと肉のタタキや酢の物などでお夕飯をいただいた。
冬瓜もせめて一切れと言われて食べた。
おいしいんだけどね…。
後片付けをして昨日の服を持って帰宅した。
家に着いて昨日出た時は気づかなかったけど…。
合掛布団に換えられていたようだ。
疲れさせないように、と思ったが全然余裕だったか。
苦笑して布団にもぐりこんだ。
糊のきいたシーツ。俺が帰ってくるまでに干して取り込んだらしい。
うーん。
昨日もうイッパツしとくべきだったな、うん。
取敢えずは寝ることにして布団にもぐりこんだ。
あけて木曜日、暇だなぁ。
仕事をなんとなくこなしてお客さんと喋る。
どこも暇そうだ。
一週間くらい休んでみたいなぁ。
そういうわけにもいかないから仕事をこなして帰宅した。
シャワーを浴びて先生のお宅へ。
いつものようにお稽古をして、飯を食って。
日常。
「あ、そうそう。あんた今度の土日熱海行かない?」
「はい? 熱海ですか?」
「これこれ、いただいたんだよ」
展覧会の券だ。
「先生方で行かれませんので?」
「どっちか残ってないとお稽古あるからね」
「と、仰るという事は先生とでいいんですか?」
「いっといで」
「日帰り?」
「お泊り」
やった!
「ホテル、取ります」
タブレットを出して検索する。
さすがに近日で良い宿と言うのは少ないが部屋露天付を見つけ、部屋を取った。
先生が台所から戻ってきたのでその話をする。
「あら、温泉? いいわねー」
「いやメインは展覧会ですから」
「そういえばあんた前に広島に出張って言ってなかった?」
「あれは別の営業が行きたいって言うから代わりました」
「そうだったの?」
「ええ。先生と一緒なら断りはしませんでしたが」
その後しばしお喋りをして旅行の段取りを決めてから帰った。
翌朝出勤し社長に旅行へ行くと話しを振ると二泊したら? と言われた。
この暇な折、一日くらい何とかなると。
仕事が終わったあと宿に連絡して部屋を一度キープしてもらい、八重子先生に電話した。
部屋も空いてて仕事が休める、と話すとすぐにOKが。
久しぶりに堪能できそうだ。
気分良く昼寝をして夕飯を食べて。
荷物の用意をした。
俺の分は今日のうちに宿へ配達を依頼、先生の分は俺が持てば問題なかろう。
楽しみだなぁ。
楽しみすぎて少し寝つけない。
先生もそう思ってくれてるだろうか。
うつらうつらと寝て、翌朝仕事に向かう。
土曜なのにそんなに荷物は動かない。
連休が控えているから仕方ないが。
カマスが高いなぁ。
9月になったら皆使うから。
高いわ売れないわでどんよりとしつつ仕事を終えた。
帰宅して風呂に入り着替えると先生が来た。
「お邪魔するわよー」
「いらっしゃい。飯食ってきた?」
「まだなの。どうする?」
「時間まだあるし喫茶店でも行きますか?」
「そうね」
近所の喫茶店で軽食を取り、一旦帰ってトイレを済ませて電車へ。
乗車すると先生は俺にもたれて寝てしまった。
昨日寝れなかったのかな。
寝顔、可愛いな。
なんていつまでも見ていたいけど熱海は近い、あっという間についてしまった。
先生を起こして駅から出た。
熱海は以前と変わらない…そんな気がする。
先生がそっと手を組んできた。
ゆったり歩いて宿へつく。
先生は気に入ってくれるだろうか。
部屋に通されて、あちこち見て。それなりに満足してくれたようだ。
早速、と部屋の湯に入られた。
幸せそうで嬉しくなる。
ちゃぷちゃぷと湯面を揺らすさまはなまめかしく、美しい。
夕飯まで結構に時間が有るから海岸へ行こうという話になった。
砂浜に下りるのを躊躇している先生にハイ、と渡す。
「なぁに?」
「履いて歩いてごらん」
見慣れぬ形の下駄を履いて歩くと砂浜に肉球が。
「あらあら、面白いもの見つけてきたわねえ」
「でしょ? どうせ海行くならって思って」
さくさくと踏みしめつつ歩いて適当な所で腰を下ろす。
懐からアルミシートを出して敷いて貰った。
最近手に入れたこれはがさがさしないから重宝だ。
「海なんて久しぶり…」
「俺も」
そっと先生が俺にもたれかかる。
軽くキスをするとこんなところでだめ、と言われた。
だけど逃げようとはしてないのが可愛い。
暫く抱き締めゆっくりとして、それからまた散策した。
足を波にくすぐらせ、楽しげだ。
娘さんみたい。
可愛くてニコニコしてると水掛けられた。
慌てて避けると先生が笑ってる。
そのままじゃれてそろそろ帰ろうか、ということで足を濯いで拭き、元の草履を履かせる。
俺は別に気にならないから濡れた下駄で戻った。
まだちょっと時間がある。
大浴場に先生と行くことにした。
幸い女湯には人影もない。
脱いで風呂に入り先生をくまなく洗ってあげた。
先生も俺の背を流してくれる…ついでに乳を触るんじゃない。
「こら、遊ばない」
「うふふ」
さっさと洗って湯に浸かる。
「うー…」
「そんなに熱くないでしょ?」
「熱い」
「そう?」
ぐいぐいと湯の出口に引き寄せるのはやめてくれ。熱いって。
湯をかき回すなっ。
唸ってるのに楽しげにしてる。
後でいじめちゃうぞ。
湯上り、先生が着替えて汗を拭いてるのが色気があって良いなと眺めてると叱られた。
「ほら、早く着なさい、いつまでも裸でいるんじゃないわよ」
「はーい」
「それとも着せて欲しいの?」
「いや、自分で着ますよ」
ぱぱっと着て、着たらすぐに出る。じゃないと他の人が来るとね。
夕食はやはり土地柄、魚尽くし。
俺は先に言ってあるから白身の魚と肉少々。
豪華さは先生のほうが見るからに。
おいしそうに食べてるのを見るだけでも幸せだ。
お酒を頂いてほんのり酔って部屋に戻れば布団は一つ。ダブルだね。
先生は少し頬染めている。
食後すぐはいやだと言ってたから少しのんびりとテレビを見たり。
良い感じで緊張感がなくなり俺にもたれてきた。
「そろそろ、いいね?」
「はい…」
着たまま、その場でゆるりと乳を揉んだり、太腿をまさぐったりして。
息が熱くなってきた。
「脱ぎなさい」
そっと立って帯を解き、紐をほどき脱ぐ。
「綺麗だ…」
色っぽくて、もうすぐにでも押し倒したくなる。
胸と股間を隠している手を後ろに組ませ、足を開くよう言った。
躊躇しつつも開く。
「いい子だね」
軽くキスしてやり、布団へ寝かせる。
ゆっくり焦らせつつ囁く度に指に先生のものがまとわりつく。
「早く…、ねぇ、お願い…」
「ペニバンでもいいのかな?」
「ぅ、それはいや…」
きゅっと太腿を閉めちゃってる。
「ふふ、持ってきてないよ」
ほっとしたのか太腿が緩んだ。
「あっ」
と言うことで指を入れて玩ぶ。
声が出すぎない程度にいじめて満足して寝た。
翌朝、のんびりと布団の中でまどろみ、朝風呂。
それから朝ご飯を頂いて、身づくろいをした。
きちっと装った先生は綺麗で手を出せない感じがする。
俺も先生に格を合わせて整えた。
「用意、良いかしら。行くわよ?」
「はい」
車に乗って移動し、入館する。
「ねぇ、先生。ここ覚えてます?」
「…覚えてるわ」
「もうすぐ、こうなってから一年経ちますね」
「そうね…こんな関係になるなんて思ってなかったけど」
「色々ありましたね」
「喧嘩も随分したわねぇ。あなた拗ねて出て行っちゃったり」
「最近も…俺が苛々しちゃったりして。ほんと酷い奴だな、俺」
「…でも好きよ」
手を握られた。
嬉しくて照れくさい。
「Hが?」
誤魔化したらバッグの角で叩かれた。
「わっ、暴れない暴れない」
「もうっ、ばかっ」
「拗ねないでくださいよ。俺も好きですよ」
そんな会話をしつつ展示室へ歩き、閲覧した。
先生は絵にはそこまで興味はないらしい。
残念ながら俺もあんまり。春画なら見るが。
まぁそれなりに楽しんでお昼を頂いて。
後はそのまま帰るのも、と仰るので熱海城へ行こうかと思い立った。
ロープウェイの券を買う時気づいた。
秘宝館…これは入らねばなるまい。
往復券とともに購入してロープウェイに乗る。
ぐんぐん上がるロープウェイの中から見る熱海も良いね。
すぐついたけど屋根に秘宝館と大きく書いてあるのがまたなんとも。
そのまま手を繋いで連れて入ろうとしたら抵抗された。
「まぁまぁ、そう仰らず」
引き寄せて連れて入った。
恥ずかしがったりドン引きしたり。
俺にはシュールにしか見えないものに反応してる先生のほうが面白い。
特におみくじは笑えた。
「こんなの持って帰れないわよ、どこかで捨てて頂戴よ」
お願いされてしまった。
「やぁさすが昭和って感じでしたねえ」
「もー、こういうのやめてちょうだいよ」
「うんうん、あなたが可愛かった。楽しかったですねー」
「ばかっ」
「ここ、まだエロくないからいいんですよねー。笑い飛ばせるもの多くて」
ほら、城。行きましょう、と手を引いて連れて行く。
「あら、綺麗ねぇ」
引き寄せてキスした。
「こら、こんなところで…」
「人、いないし」
抱きたくなっちゃって困ってしまった。
さすがにここではちょっとそこまでは出来ない。
気づいた先生が宿に戻ろうと促した。
優しいな。
今度は俺が手を引かれてロープウェーに乗り、バスに乗って戻った。
「お帰りなさいませー」
旅館に着いて部屋に入る。
布団は敷かれてないけれど、脱がせ、抱いた。
一度抱いてしまいさえすれば落ち着いて、先生を部屋の露天風呂に入れる。
「よく我慢できたわね」
ほっこりした先生から頭をなでられた。
「余裕ですね、夜はもうちょっと激しくても良さそうだ」
「だーめよ、うふふ」
もう一度キスして風呂から上がってもらう。
拭いてたら自分からキスしてきた。
「ほんとキス好きですね、あなた」
「ほほほ」
笑って着替えに立っちゃった。
「もうそろそろお夕飯かしらね」
「あ、そうですね」
「じゃあんたも着替えなさいよ、早く」
「はいはい」
さっと着替えて先生と夕飯を食べに行く。
今日もうまそうな食事で、連泊だからちゃんと料理が違う。
安い宿だと同じ物が出るんだよな。
先生の嬉しそうな顔、良いね。
お酒は女泣かせ、またこいつか。
先生がちら、と俺を見る。
この銘柄をと俺が頼んだわけじゃない。
おいしい奴、と頼んだだけだぞ。
食事と酒に満足して部屋に戻った。
「ねぇ、散歩しない?」
「いいですよ」
そのままではひんやりするので、と羽織を着て外を歩く。
また、海岸へ。
さく、さく、と歩く先生の顔が月に照らされて美しい。
「綺麗だ…」
「いい月夜ねぇ」
「あなたがですよ」
先生の頬に朱が差して、恥ずかしそうだ。
「あ、そうだ。重陽の節句、やるんですか?」
「ん?」
「菊酒、被せ綿、菊湯に菊枕。あとは栗ご飯でしたっけ」
「あ、お風呂に菊の花を入れたり、おかずに散らしたりはするわよ」
「やっぱりするんですねぇ」
「それより覚えてる? お花。床の間のお花も菊をいけるのよ」
「そういえばそうだったような…」
「ちゃんと五行に添っていけるの」
「五行…お花にもあるんですね」
「お稽古の日も今度は当たるから御菓子も菊の形のものになるわね」
「いいですね」
「あなたの分のお干菓子もお願いしてあるわよ」
「嬉しいなぁ」
抱きついたら恥ずかしがってる。可愛い。
「体、冷えてきてますね」
「そう?」
「お風呂、一緒に入りましょうか」
うん、とうなづき先生は俺を従えて宿へ戻った。
大浴場は数人先客が。
脱衣所を先生が覗き込み今なら大丈夫と呼ばれ、急いで脱いだ。
それから入って先生の背中を流し、自分も洗って湯に入る。
「あぁ良い気持ちねえ」
そう言いつつ、俺が他の人を見ると水面下でつねる。
おばあちゃんの裸を見たからとつねられるのは勘弁して欲しい。
露天風呂にも入る。
月の下で見る先生の裸身は美しい。
これが外ならばきっと羞恥もあって色っぽくなるに違いない。
暫くして先生がもたれかかってきた。
「ねぇ…」
「ん?」
「他の人、見ないで」
「はいはい」
可愛い嫉妬だ。
そっと湯の中で膝小僧をなでる。
「だめよ…こんなとこで。他の人が見たらどうするの」
「足を開いて」
「そんなの…無理よ…」
くくっと笑いつつ膝裏をくすぐる。
「ね、もう上がりましょ。お願い、やめて」
「騒ぐと注目されますよ」
「でも、やだ…お願い、ねっ、上がりましょ」
「可愛いなぁ、本当に」
笑って引き上げて風呂から上がった。
すっかりされるがままに先生はバスタオルで拭かれてる。
少し股間がぬめっているのも確認した。
浴衣を着せて、それから俺の身仕舞いをする。
先生の手を引いて部屋に連れて入った。
布団が敷かれている。
「ちょっと飲みましょうか」
「そうね」
すぐに脱いでするのはやはり抵抗があるようだ。
軽く飲んでそれから脱がせた。
膝の上に乗せて、先生の手を持って自身の手で胸をなでさせる。
股間も同じように。
「ほら、自分でいいところ探って」
三つの突起を弄るのは何とか出来るようだが指を中に入れるのは抵抗があるようだ。
入れさせて、自分で良い所を探らせた。
自分の指で気持ちよくなる、と言う恥ずかしさに耐えかねて。
抱いて欲しいとお願いされた。
もう少し焦らしても良いけれど俺も焦れているから体位を入れ替えて抱いた。
二度逝かすと満足したのか眠そうだ。
キスを交わし背をなでると寝てしまった。
少し熱が冷めるのを待ち、掛け布団を着せて俺も寝た。
朝になって先生と風呂に入り、朝食を頂いて帰る用意をする。
ニュースを見ていると今日は白露、十五夜らしい。
「今日もうち、来る? 明日にする? お月見する予定だけど」
「行って良いですか」
「勿論よ」
うちで見るよりきっと先生のお宅のほうが綺麗に見えるだろう。
荷物を送ってもらい、宿泊費の精算をしてチェックアウト。
早く帰らねば昼からの稽古がある。
お昼は駅弁だっ。
電車に揺られて先生のお宅へ。
「ただいまぁ」
「お邪魔します」
「あら、お帰り。早かったね」
「着替えてくるわー」
「これ、お土産です」
「はいはい、ありがと。昼のお稽古、一人お休み。1時半からだよ」
「あ、じゃ俺も着替えてきます」
「お昼は食べたの?」
「はい、駅弁で」
部屋に行って稽古着に着替え、小用を済ませて水屋の支度をした。
上級の方ばかりなので俺は見学。
混ぜるな危険。
やはりいつもの日と違い、問答が細かい。
新鮮で聞き入ってしまったり、みとれたり。
いつかこの中に混ざれるのかな、精進しよう。
お稽古も終り、夕飯を頂いてお月見を。
団子を供えて一つはいただいた。
早めに今日は帰宅し、また明日と。
翌朝出勤し、土産を配る。
魚屋だけに魚を土産に出来ないのが難だ。
火曜らしく暇で、半分くらいはお客と喋って今日の仕事終了。
帰宅してお稽古に向かう。
玄関先から既に菊の香りが漂う。
今日は花の稽古はないからと茶室や部屋、玄関にしか飾ってないそうだ。
いつものようにお稽古を済ませ、今日はお風呂もいただく。
菊が入っている。
湯の中で「菊のませ垣、七重八重菊、御所御紋の菊は九重♪」
などと歌っていたら先生が変な顔をしている。
「菊づくしって曲ですよ」
「色んな事知ってるわねえ」
「三味線弾くの知ってるでしょう?」
「あら、そうだったわね。忘れてたわ。最近は弾かないの?」
「あなたのことでいっぱい一杯ですよ」
「やぁねぇ、ほほ」
「さ、背中流しましょう」
「ありがと、おいたは駄目よ?」
「はいはい」
背中を洗ってあげて一緒に風呂から出た。
浴衣を素肌の上に羽織り、腰巻をつけるのを見ていると早く着替えるよう叱られた。
綺麗なものに見とれて何が悪い。
その後、寝る段になって布団へ入り、胸を触ってると先生が寝てしまった。
またか…。
しょうがないなぁと暫く感触を楽しんで諦めて寝た。
翌日はいつものように食事の支度や家事をして夕方帰宅した。
旅行中の洗濯をしなければ。
普段のように何事もなく木曜、金曜が過ぎた。
今朝は連休前と言うことで忙しく、流石に稽古には間に合わない気がする。
電話を入れた。
衝撃の事実、今日はお休みらしい。
言ってなかったっけ、って聞いてないよ。
まぁ気を楽に仕事できるけどさ。
終ったらもう一度電話しよう、逢いに行って良いか。
仕事を終えて帰宅して、でもなんだか気が乗らず動画をDVDに焼く作業を始めた。
ぼんやりと眺めつつ。
画面の中では鞭打たれ、赤くなるどころか青痣を量産していたり、
陰部を縫われ出血している女性たちの姿。
悲鳴が心地よい。
久々に風俗へ行きたくなったものの、行って行為をすれば一ヶ月は先生と出来なくなる。
キスも出来ないとか後悔するのわかってるしな。
少し不満に思いつつ。