お茶をいただいて一服してから洗い物を片付ける。
使ったフライパンなどはちゃんとすでに洗われていて、後始末は食器だけだ。
きっちり洗って拭いて、仕舞う。
そのタオルと台拭きを漂白剤と台所洗剤の混ぜたものに漬ける。
夕飯前に濯いでおけばいい。
手をよく洗ってぬめりをこそぎ落として。
先生の横に戻る。
「そういや朝何時ごろ起きました?」
「うーん、寝過ごして6時過ぎてたわよ」
やっぱり疲れるのかな?
「山沢さんは眠くないの?」
「ん?昨日寝たの10時くらいですよ?5時間寝たら十分でしょー」
「えぇ?そうなの?」
「ああ、でも休みの朝はやっぱり気が抜けるから寝過ごしますね。
先生と一緒に寝過ごしたこと有りましたでしょう?」
あ、頬染めてる。可愛い。
「ねえ、先生。していいですか?」
「ご飯食べたところなのに駄目」
出した手を叩かれて、渋々戻す。
拗ねてたら後ろから抱きしめられた。
ぞわっとしたの半分、温かいと思ったの半分、微妙な心持だ。
あ、トリハダ立ってるわ。
落ち着け落ち着け。
「拗ねてないで一緒にお買物行きましょ?」
それはいいな、うん。
「ほら、着替えてきて?」
「わかりました。帰ったらしていいですか?」
「仕方ない子ねえ」
頭を撫でられて、着替えに立った。
路考茶の紬をざっと着て羽織を持って出てくると先生が少し手直しされる。
羽織をそっと纏う。羽織の紐を結んでもらうときにどうしてもキスしたくなる。
私がそう言うと、先生は立って私の頬に手をやってキスしてくれた。
ついそのまま引き寄せるとくすくす笑っている。
「お買物、行きましょ?」
すっかり手玉に取られてるなあ。
「ところで何を買うんです?」
「お台所のものとか、ちょっと山沢さんのおうちに無いものがあるの」
「鍋釜とかそういうもんですか?なら場外行きますか?」
「そうねえ、ホームセンターなんかよりそのほうがあるかしら?」
というかこの辺にホムセンが無い。
足元が汚れるかもと足袋カバーの防水の奴を履いてもらって、一緒に場外に行く。
うーん、まあ横丁まっすぐ行けば何店か有るからまずはそこからにしようか。
先生をつれて歩くとそれなりに注目される。
いい女がいる、という不躾な視線。
横に立つ私をうらやむような視線。
先生は私の手を握っている。
「年末しか来たことがないからわからなかったけど…」
ん?
「意外と人少ないのねえ」
ああ、普段はね。特に最近市場も暇だからねえ。
お昼時だから飯屋はそれなりに混んでるけど。
とりあえず目的のもののありそうな店へと連れて行く。
いくつかあれこれと選び、支払いを済ませて荷物を持つ。
なるほどこれは俺一人だと使わないから家には無いな。
あと洗剤類をついでに買い足して、帰宅。
帰るなり羽織を脱いで。
ちょっと疲れたっぽい先生を引き寄せる。
「もう、気が早いわねえ」
胸に手を差し入れて揉み解すと息が荒くなって色っぽい。
「わかったわよ、脱ぐから待って頂戴」
そういわれたので手を洗って自分も脱いで、先生が脱ぐのを待…てない。
長襦袢を脱いだ先生を抱きしめてキスをする。
そのまま湯文字の中に手を差し入れてまだ少ししか湿っていないそこに指を這わす。
乳房を揉み、乳首に歯を立てる。触れた時に少し引けた腰を引き寄せて尻をなでる。
少し声が出て恥ずかしそうで、更にこちらの欲情を煽る。
「ここじゃいや…ねえ、お願い」
流石に食卓の横は嫌か?
わかっていながら食卓に座らせて濡れ始めた襞をなめる。
「いやよ、ねえ、こんなの…おろして…」
そういうので降ろして、食卓の上に上半身を伏せさせた。
後ろから舐めて、指を差し入れる。
「ばか、もう、こんなのいやよぉ」
二本に増やして掻き回す。
好い声が出てきて、気持ちよさげだ。
「こんなところなのに気持ちいいんですか?」
意地悪なことを聞いてみた。
いやいやをするがきゅっと中が締まる。
「こっちは気持ちいいって言ってますよ」
更に指を増やす。
気持ち良さそうでせつなそうで。
そろそろ道具を使っても痛くは無いと思うんだけどなあ。
心理的抵抗?だったら事後了承だな。
指をぎゅうぎゅう締めつけてくる。
かといってきついというわけではない。
中を蹂躙していると一際大きく声が出た。
へえ、ここも好いのか。
もう助けて、という声が聞こえるが構わずに擦ると背中を反らして太腿を痙攣させて逝った。
息も絶え絶えな先生を私の胡坐の上に抱え込んでゆっくり胸をなぶる。
「ねえ、今何本入れてたかわかります?」
先生は首を横に振る。
汚れた指を見せて、ほら3本も入ってたんですよ、というと頬を真っ赤に染めている。
「指、舐めて」
というと躊躇いがちにそっと舐めている。
舐めている舌をもてあそんで、指で口の中を犯す。
先生が段々と、淫らな事に順応していくのが嬉しい。
でもちゃんと恥ずかしがっているのが好い。
ああ、だけど自分からしてくれるようになったときも嬉しいんだろうな。
口から指を引き抜く。
もういちど好い声を聞きたい気がして再度指を穴に潜らせる。
角度が変わって二本もきつそうだ。
さっき良かったところはどこだったかな、と探る。
先生は掴むところが欲しい様で私の太腿をつかむやら腕を掴むやら。
胸をなぶる手に先生の指が食い込み、太腿にも爪が刺さるほどの力で。
必死に逃げないように耐えていて、可愛い。
曲げていた足が突っ張って、反らした喉の白さに目を奪われる。
一瞬腰が浮いて、すぐに脱力した。
息の荒さが心地よい。
なだめるように腕や太腿をなでる。
「今回はこれくらいにしましょうか?」
うなづいている。
ああもうめっちゃ可愛い。
「ねえ先生?私ねえ、あなたをこうしているのが一番気持ちいいんですよ。
こうやって抱いてね、好い声を聞いて。しがみつかれたり引っかかれたりしてもね。
あなたが気持ちいいことをしてるときが一番気持ちいいんです」
だから。
「セーフワード、決めましょうね。本当に嫌悪を感じること、恐怖を感じること。
そういうことを私がしたときに止まれるような言葉をね」
「…よくわからないわ?」
「ああ。たとえば。浣腸して排便を見られるとかどうです?」
先生の腕に鳥肌が立った。
「そういうことはお嫌でしょう?嫌といっても勢いで私はしかねません。
だから勢いを殺すための言葉を設定するんです。
あなたが本気で嫌がってるという、そういうことを知らせる言葉を」
「わかったけど、それは絶対嫌よ?お願いだから…」
苦笑。まあするとしたら…私を本気で怒らせた時だな。
「ただし、簡単に使っちゃいけませんよ。じゃないと効き目がなくなりますから」
まあ怒らせたときは喋れなくしちまうだろうから意味は無いが。
「うん。わかったわ」
「なにか効果的な言葉、考えて置いてください」
「あのね…山沢さん、私…たまに怖いのよ。
私がいやっていったときとか…あなたの気配が変わるから」
ああ、ちょっと楽しくなっちゃうからだな。
「それはですねえ…あなたを壊したくなっちゃうからですね。
理性も何もかも奪ってあなたから『犯して』とか言わせて見たい。
そんな困った欲の所為ですね」
そういうと先生は真っ赤になってしまった。
それになーやっぱり独占欲ってあるんだよね。
このまま攫って私しかいない世界で、ずっと抱いていたい。
壊れるまで、いや壊れても。まあ現実は無理なわけだし?
「ふふ、でも先生。あなた自分から言えないでしょう?」
理性はたまに行方不明にしてるようだけど。
「…言えないわよ。そんなの」
「どうしてです?怖いですか?」
ためらって、うなづいた。
まあ確かに?そんな事言われたら三日三晩ずっとしてたくなるだろうしな。
「ま、結構そういうところが好きなんですけどね」
今急に犯してとか壊してとか言われたら吃驚して自分のほうが困るかもしれん。
からかい半分で言われるのはあるかもしれんが。
少し冷えてきたな。
「ストーブつけましょうか」
ふと先生が時計を見上げる。
「うーん、そうね、それにそろそろお夕飯の支度しないと」
ん?もうそんな時間か。
「もうちょっと抱き合って居たいなあって思っているんですが」
くすくす笑っている。
「明日も私、ここにいるわよ?」
「それでもですよ、もうね、24時間くっついていたいくらい。
あなたが好きなんですよ。だからもうちょっとこうしてたいな。駄目ですか?」
「うん、駄目。お洗濯取り込まないと雨降ってきちゃうもの」
がくーっとなった。洗濯物に負けた。
苦笑して先生を離すと頭を撫でられた。
「いい子ねえ」
子供じゃないんだから、それはないよなー。
浴衣を羽織って物干しに出た。取り込む。
先生も浴衣を着て、持って入った洗濯物を畳み始めた。
その間に私は漬け置いていた布巾を濯ぐ。
結構きつい液だから女の人の手指に優しくない。自分で濯ぐべきである。
何度も水を替えて濯ぐ。手はぬめる。皮膚が分解されるからなあ。
ちなみに結構布地が傷むので気になる人は薄い目に液を作るらしい。
絞ると繊維が切れる音が必ずするが私は漂白できてるかよくわからないより、
清潔なものを使って新しいものに入れ替えるほうが好きだ。
真っ白になった布巾を干して、洗濯物と格闘する先生とチェンジ。
私の仕事着は3Dデザインとかで畳みにくいんだよね。
てろんてろんとしたストレッチウェアとかもあるし。
これはもう折り目とか考えずざっくり適当に折るしかないが、
やはり初めて畳もうと思うと折り目縫い目正しくとか考えてしまう。
どうせT/Cやポリなので折り目は残らないので気にしなくてよかったりする。
ひょいひょいと先生が畳めなかったであろう物を畳んで箪笥へ。
シーツをベッドにセットして、と。
台所に向かう。
「何か手伝うことありますか?」
「そうねえ」
いくつか頼まれて、やる。
終わってやること無くなった。暇だ。
先生を見ると今は包丁も火も使ってない。よし。
近寄り、抱きつく。
「もうっ、邪魔よ」
笑いながら叱られた。
割烹着の上から胸をなぞり、耳を食む。
先生は胸をなぶる手をぎゅっと掴み、抵抗しようとしている。
「ん、駄目よ、ご飯作るんだから。ね、離して? あとでさせてあげるから」
先生をこっち向けてキスしたら、胸をつねられた。
「駄目。怒るわよ?あとで。ね?」
しょうがない、開放。
テレビをつけて天気予報など。
渋谷などが映し出される。
と、外から雨音。
「間に合ったわねえ。良かったわ」
洗濯物ね。
さて明日の天気は…雨か。一日中家の中かな?
今日は早く寝よう、うん。
「ねえ、さっきのセーフワードって普通はどういう言葉を使うの?」
先生は台所で料理をしながらそんなことを聞いてきた。
「え?ああ。そうですね、興醒めになるような言葉が多いですね。
まったく今の状況に合致しない言葉、たとえば動物のや物の名前。
目一杯限界の人が「明日は雨」とか有り得ない物を選ぶパターンと、
あとは、そうですね、先生なら『おじいちゃん助けて』とかですかねえ。
他にも喋れなくなってることが多いから相手の体を3回叩くとか」
「決めてなかったから今までやめてくれなかったの?」
「違いますね、まだあなたの限界じゃないと思ったからです。さっきも…、
まだ余裕ありましたよね?」
真っ赤になってる。可愛いなあ。
「…いつも限界だと思ってるわよ?山沢さんが止めてくれないだけで」
「いつも少しずつ乗り越えてますでしょ? 無理はさせてないと思ってますが」
おや、眉をひそめてる。
「たまにするくせに…」
たまにはね、うん、たまには。
「私の場合、理性無くなるとどうなるかご存知でしょうに」
それに比べれば格段に逃げ場を残しているはずだけどなあ。
「それはそうだけど…」
納得いかないご様子。
手を拭いて割烹着を外して、置き、こちらに来た。
ん?という顔をすると、あとはご飯炊けてから、と言う。
気配を変えてひょいと距離を詰めると先生は半歩引こうとしたが、残念ながらそこは壁だ。
「無理をしてみましょうか?」
そういってキスをする。
逃げようとしたその肩を脱がせ、キスマークをつける。
うん、今だ、今こそ恐怖を感じてる。
快感じゃない、とわかってるこの感覚。
「い…や……」
歯がカチカチと鳴って。
「ほら、これがあなたの限界の一つだ」
私はすっと引いて胸の合わせを直してあげた。
「あ……、怖、かった…」
食卓の横に座り、おいで、と呼ぶ。
そろり、と私の横に先生は座る。
「いつもはちゃんと加減、してますでしょ?」
というと凄く頷いてる。
「これそうなら私の膝に来てください」
ちょっと躊躇したが気を決めたのか膝の上に来た。
緩く抱きしめる。
背中を撫でて、先生の気をほぐすように。
力の入った肩の力が徐々に抜けて落ち着きを取り戻したようだ。
ご飯の炊けるいい匂いがして、先生と私のおなかが鳴った。
「やだもう」
ぷっと先生が笑ってご飯の用意に戻った。
ご飯の支度が整い、食卓を片付けておかずを出す。
あら煮とお造りと白菜とかぶの炊いたんとほうれん草のおひたしだ
…俺だけだと多分お造りだけで食ってたな。
ご飯をよそってお茶を出して。
さあメシだ。
うまいなー幸せだなあ。
そしてちょっとだけ塩が濃くなってるのは…先生も疲れたと見える。
汗結構かいてたもんなあ。
お造りに醤油のほかに塩を渡す。
「お塩でもおいしいのねえ」
「でしょう? まあ食卓塩じゃないというのもありますが」
一応お造りに合う様選んでいる。
白菜のおかずがうまい。幸せ。
あら煮もうまい。おひたしはなるほど関東だ。
これはこれでうまい。
綺麗に食い尽くしてしまった。
「足りなかったらまだあるわよ?」
「いや満腹です。うまかったです。幸せですよ」
にっこり微笑んでくれたのをみて嬉しくなりつつ、私は洗い物を引き受ける。
先生が何か悪戯を思いついたようだ。
後ろに立つや、私の背中に抱きついた。
振り払えんし困ったな。
と思ってたら先生が私の乳を揉み出した。
「これ。いけませんよ」
まあこれくらいなら我慢してやってもいいか。
そのうち浴衣の中に手が入ってきた。
「やめなさい」
と言ってるのに乳首を摘んだりする。くすぐったい。
先生の手が裾を割って入ってきた。
「なにするつもりですかね、あなたは」
ふふっと後ろで笑う気配。
下帯をまさぐる指の感触。
「さっき怖がってた人がそういうことしますか?」
指が下帯の中に入ってきた。
水音は洗い物の音でまぎれてわからないが、自分にはわかる。
襞の中を探られる。
「やめなさいといってるでしょう?怖いこと、しますよ?」
指が、入ってきた。
いかん、キレそうだ。
「いい加減にしなさい」
そういってるのに中を探ろうと指を動かしてきた。
もう駄目だ、洗い物をやめて先生の腕をひねり上げる。
「きゃっ」
そのまま壁に押し付けて身動きが取れないようにする。
「やめなさい、といいませんでしたか? 罰を受けたいようですね。
お望みどおり道具、使って差し上げますよ」
「ひ、いやよ…」
「まずは縛って差し上げます。それから使ってあげましょうね」
「た、助け…て…」
「誰に助けを求めているんです?」
「あんな、あんな大きいの無理よ、入らないからやめてっ」
……大きい?
ああ、そういえば道具部屋に放置してある奴、ネタで買った極太君か。
面白いから怖がらせておこう。
「あなた子供生んだことあるんですから大丈夫ですよ。入りますよ」
いやあれは生んだ直後くらいしか無理だろ。
そう思いつつ言ってると先生が本気で怖がっていて楽しい。
引きずって和室に連れ込みその辺にある腰紐で腕をまずは縛る。
これは捕縄の遣り方でいくら暴れていても即座に固定できる。
手を固定してしまえば蹴られる心配さえなければ後の縄はかけ放題だ。
さてどう縄をかけてくれようか。
菱か、いや普通に胸縄だけで十分か。
そう思い、道具部屋から縄を取って来た。
「やめて…お願い」
部屋の隅に逃げてそういっているが、やめてで済むならば、ねえ。
きっちりと縄を締め付けて行く。
まあ実際のところ胸縄って大して暴れるのを防ぐ目的としては意味は無いよなあ。
心を折るためには凄く有効だが。
ああ、そうだ。
縛ったところを鏡で見せようといってたんだったな。
縄を掴んで姿見の前に連れて行く。
「よく見てなさい、ね」
座らせて、裾を少しずつ乱していくと首をそむけようとする。
「ちゃんと見ないとお尻の方にアレを入れますよ?」
「勘弁して!それだけは」
そろりと太腿をなぶり、少しずつ翳りに指を近づけると荒い息で。
「まだ触ってもいないのに。もうそんな息を荒くしているんですか?」
首を振っていやいやをする先生の中に指を入れる。
たっぷりと濡れて、やはり視覚効果抜群なのを確認する。
いい感じだ。
中の方は…うん、さっき十分ほぐしたしいけるだろう。
再度道具部屋からディルドをまずは2本取って来た。
痛いと二度と使う気にならんだろうから、細身で小さいSも出してきた。
まずは道具に慣れてもらうのが主眼だったりする。
懐に入れてしばらく体温に近くしておこう。
一応のために念入りに中をほぐして、ローションをディルドに塗りつける。
物が見えないように、まずはSを入れよう。
入り口をなぶると体が硬直した。
「いや…ぁ…そんなの、入らない、やめてぇ…」
うん、あの極太君のつもりでいるんだから入らないと思うよね。
ずるり、と押し込むと簡単に入った。
まあね、指2本入れるより小さいから当然である。
えっ?という顔をしているので鏡に映して見せてあげた。
「太いのじゃなくて残念ですか?」
そういいながら抽送する。
「こんなのいやよ…いや、太いのなんて。いやよ…」
小さいのを抜いてもう一つ大きいサイズのものを取り出す。
先生に見せつつローションを塗る。
「次はこれ入れますよ」
ちょうど平均サイズくらいか、形はややグロテスクだから怖い気がするんだろうな。
押し当てると流石に少し抵抗感がある。
「痛かったら言いなさい」
じっくりゆっくり進めると奥に当たる感触がある。
先生は結構きつそうだ。
ゆっくり引き抜いてまた奥へ当たるまで押し込む。
痛いですか?と聞くと痛くは無いと首を振る。
苦悶の表情だ。きついんだろう。
ふむ。
ああ、中間サイズが確かあったはずだ。
「ちょっとこのまま待ってなさい」
道具部屋をあさる、すぐ見つかったので引き返しす。
入れていたものを抜く。引っかかって抜くのにちょっと大変だった。
これはもっと慣れてからにしよう。
改めて中間サイズを押し当てる。ぬめっと入っていく。
あ、好い声。こいつがジャストか。
何度か出し入れをしていると白く泡立ったものが付いてきた。
なんだいけるじゃないか。
切羽詰った声が出るのに合わせ激しくすると痙攣して逝った。
「道具も気持ちいいでしょう?」
逝ってるけどゆっくり出し入れする。
「ぁ…うぅ…抜いて、ねえ…もういや、こんなの」
「なにがいやなんです?大きいからじゃなくなったでしょう?」
泣いてまで嫌がるその理由は何だ。
中々言おうとしない。
「言わないならこのきついほう突っ込みますよ」
さっきのMサイズを見せると焦った表情だ。
「言いなさい」
「…だって…山沢さんのじゃないんだもの。物で気持ちよくなるなんて」
「物よりはまし、ということですか?」
「山沢さんがいいの。お願いだからもう勘弁して、ねえ」
「ふぅん。でも駄目です。あなた私がやめなさいといってもやめなかったでしょう?」
「ごめんなさい、許して、もうしないから…」
「本当に?」
「お願い、絶対しないから」
「…信じてあげましょう。次のときは最初からきつい奴使いますからね」
ほっとした顔をしているが、まだ抜かない。
まずは腕の紐、胸にかけた縄を外す。
「自分で抜いてみなさい。鏡を見ながらね」
少し引き出そうとして手が止まり、また中に引き込まれてしまう。
「お願い、山沢さん、抜いて…」
動かすと気持ちよくて手が止まってしまうようだ。
ゆっくり引き抜いてあげると好い声で鳴く。
抜いたものについている汚れを見て恥ずかしがっていて、本当に可愛い。
「さて。歩けますか?」
首を振る。
仕方ないな。担ぐか。
先生に手を掛けるとビクッとしている。あ、怖がってるな、これは。
担いでベッドにおろした。使った道具を片付けねば。
手を離すと袖をつかまれた。ん?
「あの、いかないで…」
「怖いんでしょう?」
…しばし無言。
手が離れた。
部屋を立ち去り先ほどの道具を洗う。
ざっと拭いて洗濯機の上に並べる。
そのまま仕舞って乾かなくてカビが生えても嫌だ。
よく手を洗ってから、台所の洗い物の続きをする。
眠くなってきた。
うーん、まあ寝てもいい時間だが。
書置きを作って、明日帰りたければ帰ってよい旨、鍵、電車賃などを出しておく。
こんなものか。
部屋に入ってベッドに腰掛けると先生がびくびくしている。
苦笑して逆側、先生に触れないように布団に潜り込み、すぐに電気を消した。
「おやすみなさい」
「おやすみ…なさい」
先生の返事が返ってきて、私はさっさと寝た。
起床時間。
ベッドから出ようとすると、もう?と先生が聞いてきた。
言葉少なに返事をしてとっとと出勤をした。
会社から帰りたくないなあ。なんて。
帰宅してみると鍵が開いて、おいしそうな匂い。
あ、れ? 帰らなかったのか。
「おかえりなさい」
「…ただいま。どうしたんです?帰らなかったんですか?」
「その…昨日はごめんなさい。怖くなっちゃって。
もうすぐご飯できるからお風呂入ってきて貰えるかしら」
はいはい、とりあえず浴びてこよう。
洗面所で脱ぐ、なにか違和感。
洗濯機の上にタオルが掛けてある。
…ああ。
昨日の道具の上にタオル(笑)
風呂から上がって浴衣を身にまとい、台所に顔を出す。
粗方できているようなので食卓を整えて、出来ている物から出して行く。
うまそうだ。
昨日の残りは朝食べてしまったらしい。
野菜類は朝方買い物に行ったそうだ。
ご飯をよそってお茶を持って先生が来た。
まずはご飯をいただいてから、ということのようだ。
うん、やはりうまい。
先生も何か言いたそうだが何をどう言えばいいのか、という感じなのだろうか。
メシはうまいが、雰囲気は微妙なまま。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまです、うまかったです」
「あの…。居てもいいかしら。書置き…」
「帰れって意味じゃありませんよ。怖いんでしょう?まだ」
「…怖いけど」
「でしょう。だったら帰ったほうが良くないですか?」
「そんなこといわないで…。その…怖くないようにしてほしいの」
うん?
「あの、ごめんなさい。謝るから。優しくして…くれないかしら。だめ?」
「駄目じゃありませんよ。あなたがああいうことをしたから怒っただけで…。
本当はできる限りあなたには優しくしたいとは思っているんです」
先生はほっとした表情になった。良かった。
「私こそ、申し訳ない。嫌がってたのに酷いことをしました」
そっと先生が手に触れてきた。
「次からは道具使わないでくれる?」
「あなたが変な事しなければ、ですね」
「もう懲りたわよ」
照れた表情で食器を台所に持っていくのが可愛い。
私は食卓を拭き、使わなかった皿を片付けた。
暫くして洗い物を終えた先生が来て、私の横に座り寄りかかってきた。
そっと撫でているとキスされた。
「キスはしていい?」
「ええ、キスは良いですよ。
そうですね、懐をまさぐるくらいはかまいません、我慢できますから」
「えぇっ、我慢なの?」
あまり嬉しくはない。密着したいと言うのはあるが。
「そろそろ抱いて良いですか?」
「あ…うん、お願い…」
「ここでいいですかね?ベッドの上のほうが良い?」
「いやよ、ここは……ベッドが良いわ」
はいはい。
「先、部屋いっといてください。手を洗ってきます」
手を洗って部屋に戻ると、ベッドに先生が裸で恥ずかしげに仰向けでいる。
着物は脱いで衣桁にかけてあるようだ。
私は浴衣を脱ぎ捨て、先生に覆いかぶさる。
まだ少し怖がってるようだが…。
「やめましょうか?」
「あの…優しくしてね、お願いします…」
「激しくは駄目?」
耳まで真っ赤にしてる。
「可愛いな。わかりました、優しく心がけましょう」
軽くキスして、昨日の縄の痕、着物で出来た肌の痕、そんなものの上に指を走らせて。
「…………ねえ、山沢さん?
若くはないわねえって思っちゃうからあんまりそういうの、意識させないで」
ぶふっ(笑)
「す、すいません、つい、笑っちまって…ああ、もう。
そんなの俺の前で気にせんで下さいよ。
それに次の日に持ち越してるのは縄の痕だけでしょう?」
「そうなんだけど…」
「縄の痕なんかはね、残ってるほうが俺は嬉しいな」
「どうして?」
「だって俺がつけた痕じゃないですか。…あれ?
あなた今日、朝買物行きませんでしたっけ。これ、どうしたんです?隠せました?」
「ああ、そうそう。山沢さんのシャツ借りたの…黒の。あれ凄く伸びるのねえ」
あーなるほどあれならカバーできるね。コンプレッションシャツ。
「見せ付けたらよかったのに」
「やぁよ、恥ずかしいわ」
「俺のもの、って感じがして俺はうれしいですけどね」
キスをしなおて、胸をやわやわと揉み、乳首に軽く歯を当てる。
わき腹をそっと撫で、くすぐったそうにしているのを楽しむ。
徐々に下のほうに顔を埋めて行き、太腿やお尻を撫でたり揉んだり。
緩く、やわらかく愛撫をしてすっかり濡れそぼつ襞の中へ指をうずめる。
激しくならないよう丁寧に優しくを心がけ、時間をかけて中を刺激すると逝った様だ。
先生が幸せそうな顔をして微笑んでいるのを見て幸せな気分になる。
「ねぇ、もうすこし激しくてもいいわよ?」
「そうですか?じゃあ…」
中の好いところをを少し重点的に。
声が沢山出て。
しがみついてもらえて。
嬉しいなあ。
そのまま幸せたっぷり感じて、寝てしまった
もぞ、と動く感覚で目が覚めて。
あーいい昼寝だった。
先生が起きようとするのを抱きしめて阻む。
「駄目よ、夕飯の支度しないと」
「外に食いに行きましょうよ、もうちょっとこのまま、ね?」
「からだに悪いわよ、いつもじゃ」
「あなたがいるときだけです、普段はしてませんよ。だから。一緒にいてください」
「駄目よ。もうちょっと寝てなさい。支度してくるから」
そういって先生はキスを落として着替えてしまった。
残念。
もう少しうつらうつらとまどろんでいるとおいしそうな匂いがしてきた。
衣擦れの音がして、ギシッとベッドが沈む。
先生がかがみこんできて私にキスをする。
「山沢さん、起きて。ご飯できたわよ」
んー。やってほしかったことをやってもらえた♪
1.キスで起こされる 2.ご飯の声で起きる
ツボを押さえてるが多分これ、わざとやってないと思われる。
目を開けると割烹着のまま、ちょっと残念かな、脱いでたら引き寄せたが。
割烹着じゃ引き寄せたらいかんな。
「起きないと乳首咬むわよ」
うわっ、慌てて起きた。これはさすがに予想外。
「なんちゅうこと言うんですか、あなた」
先生はくすくす笑って浴衣を渡してくれた。
「だってなかなか起きないんだもの」
はいはい、起きましょ起きましょ。浴衣を着て食卓に着く。
今日のメシは昼に持って帰ってきた石鯛メイン。
お造りと青梗菜の胡麻和えときんぴらと…大根葉かなあこれは。かぶ葉?
あんかけで仕立ててある。それとお味噌汁。
おいしそうだなあ。
いただきます!と食べるとあんかけはほんのり生姜風味で。大根葉だこれ。
お揚げさんと大根葉ね。うまいな。
にこにこしてがっついてたら先生もにこにこしている。
「どうしました?」
「作ってて嬉しいわ、そんな風に食べてもらえると」
「あー作ったのに手もつけられてないとかすっごい嫌ですよねえ。
先生のメシうまいってのもありますが、先生が作ってくれてるのも嬉しくて」
「ねえ、先生って呼ぶのやめない?名前で呼んでくれていいのよ」
「いけませんよ、うっかり稽古のときに呼んだらどうするんですか」
「あら…それは困るかも」
「でしょう?普段の言葉って出ますから」
「私と一緒のとき、たまに俺って言ってるわよね、山沢さん」
あー。そういえば言ってるな。
「気をつけます」
「あら、うれしいのに」
ん?
「だって私には素でいてくれるわけでしょ?」
ああ、そういうことね。
「完全に素になったのは見せませんよ。絶対」
「見てみたいわー」
「見せません」
きっぱり!
素はいかん、素は。
先生はいたずらを仕掛けようかなあ、という顔をしている。
「顔に出てますよ。悪巧みしてるでしょう」
「あらやだ、わかっちゃう?」
「わかりますって。駄目ですよ」
さてと。
「ごちそうさまでした。うまかったです」
「足りたかしら?」
「いえ、もう十分腹いっぱいです。足りてないのはこっちですかね」
と先生の手を掴む。
「あらあら。洗い物片付けてからね?」
「はい、あ、俺がやりますよ、洗い物くらい」
「うーん、それより昨日の…道具片付けてくれないかしら。お願い」
ああ。忘れ去ってた。見るのも嫌だろうなあ。
「わかりました、じゃ洗い物頼みます」
台所まで洗い物を運び、それから洗面所に向かう。
タオルをしまい、乾いているか、洗い残しはないか点検。
うん、大丈夫そうだ。
3本とも持って道具部屋に戻りしまいこむ。
あとこの極太君もしまっちゃおう。凶悪すぎる見た目が。
あ、縄。和室に置いたままか。
和室へ行くと隅にきちんとまとめてあった。
…どんな顔で纏めたんだろう(笑)
縄を持って道具部屋に戻って片付ける。
しかし、道具使わせてくれたらなあ…あれ使えばもっと肌を合わせてる気分が出るのだが。
と見るのはストラップレスディルド。
L字になってる短いほうを私の中に収納して固定して長い方でえぐるもの。
まあ、自分も入れるのは苦手なので人のことは言えないが。
とりあえず触らせてみるか。
懐に仕舞い、台所に顔を出すともうすぐ終わるから待っててと言われた。
後ろから手を伸ばし割烹着の上から胸を揉む。
「ね、本当に後ちょっとだから。待って。お願い」
耳を齧ると手が止まった。
先生は泡だらけの手で私の腕を掴んで。
「もうちょっとなの、待って、まだ揉まないで、ねぇ」
「洗い物なんて後にしましょうよ。ほら、手を濯いで?」
「だめよあとこれだけ、なんだから」
ひょいと覗き込むと確かにあと皿二枚程度。
「わかりました、待ちます」
手を離して洗面所で腕に付いた泡を洗い流す。
戻ると割烹着を脱いで畳んでいた。
その腕を取って台所の壁に押し付けてむさぼるようにキスをする。
身八つ口から手を差し込んで胸を揉むとちょっと怒ったようだ。
「脱ぐの、待てないの?」
と先生が聞いてきた。
「うぅ…待ちます、待ちます、脱いでください」
先生の手を引いてベッドのある部屋に連れて行き脱がせる。
もどかしい。
すべてを脱がせ、胸を強く揉みしだく。
「んっ、ちょっと痛いわ」
「あ、すみません」
がっつきすぎた。
「あ、ねえ、山沢さん。後ろ向いて?」
「は?ああ、はい。なんですか?」
先生に背を向ける。
「手をこちらに出してくれる?両手」
後ろに手を突き出す。
「腕を組んでみてくれる?」
柔軟性?
肩硬いんだよなあ。
っておいおいおいっ!
「ちょなんで腕縛ってるんですか!」
「だって山沢さん、今日力いっぱい揉むから痛いんだもの」
だからってなんで縛る!
「次のとき怖いかなーって思いませんか、どうなんですか?」
「んー、そうねー。怖いと思うわよ?でもねえ。
逆に山沢さんがどこまでいけるのかなーとか思っちゃったりするのよね」
「まさかあなた、昨日の今日で手を出すつもりですか?
報復、昨日よりひどくなることわかっていて?そうだとしたら…マゾですね」
「…やめておくわ」
「そうしてください。私とて怖がらせるのは本意じゃない」
「でも腕はこのまま、ね?だってさっき胸痛かったのよ」
「優しくしますから解いてくださいよ」
「駄目よー」
先生からキス。舌を絡めようとしたら離されて。
乳首が口に触れるか触れないかのところに来て頑張って舌を伸ばす。
「なんで焦らすんですか…」
一膝進めてかぶりつこうとするが一膝引かれて。
くっ。縄を解け。
ぎりぎり一杯のところで舌が触れる。
少し舐めているとまた離される。もっと近寄って欲しい。
「山沢さん、腰を下ろして」
言われたとおり座り込むとちょうど翳りのあたりに届きそうだ。
すでにしっとりと湿っているのがわかる。
顔を近づけて舐めると上から好い声が聞こえる。
きゅっと太腿で挟まれていい感じで舐めているとぱっと離れられた。
うー、もっと好い声聞きたい。
「ねえ、腕の。外してくださいよ」
「そうねえ。痛くしない?」
「しませんから、ね?」
「その前に…」
うっ!痛てっ。胸を掴まれた。
「これくらい痛かったのよ」
ついでのように乳首を弄られて勃ってしまった。
「だからって摘むのはやめてくださいよ」
くすます笑いながら腕を縛っている紐を外された。
「乳首、立っちゃったわねぇ。ねえ、本当に出来ないの?」
「なにをです?」
「山沢さんが私にしてるようなこと」
「うー。できなくはないけれど本当に嫌なんで。というかしたいんですか?」
「あ、そうじゃないのよ。そんなにいやだったのねえ」
「あなたを抱くほうが私はいいんですよ。
それとも抱かれるの、嫌ですか? 私にするほうがいいんですか?」
「嫌じゃないわ。でもしてみたいかなーって思うの。だってずるいわよ」
「へ?…ずるい? なんですかそりゃ」
「私ばっかり限界のところまで追い込まれるなんてずるいわよ。
山沢さんも見せて?」
「…嫌です」
「嫌なの?どうして?」
「うぅ…嫌なものはいやなんです」
あ、鳥肌立ってきた。
「そうなの?仕方ないわねえ。無理にすると後が怖いから、いいわ。また今度ね」
「今度はありませんから! もう。素直に抱かれてくださいよ」
唇にキスをしてお願いする。
ベッドに押し倒し。首筋、鎖骨、胸にキスをしつつ揉む。
先生の息が少し荒くなって、頬が上気してきた。
勃っている乳首を執拗に舐め、齧り、扱く。軽く逝った気配。
荒い息に波打つお腹を撫で、翳りへと指を進める。
襞をくつろげずともたっぷりと濡れているその周囲をさわさわと刺激する。
「ん、焦らさないで…」
開けると溢れてきた。
「こんなに濡らして…可愛い人だ」
「恥ずかしいから…そういう事言わないで…」
「そういうところが可愛いんですよ。いたたっ!」
乳首をつねられてしまった。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか。
乳首から手を離しなさい。じゃないとちゃんとしてあげませんよ?」
私の胸から先生の手が離れて。
溢れんばかりのそこへ指を這わせる。
突起を擦り、しごき、潰して嬌声を聞く。
抵抗もなく中指が吸い込まれ、軽く動かすだけで逝っている。
更に薬指も入れて深いところまで刺激するとまたも逝った。
「随分逝きやすくなりましたよね」
いやいやをするのが可愛くて沢山いじめたくなる。
好いところを探しては逝かせて、たっぷり楽しんで。
そろそろ限界が来たようだ。
ギリギリの所をほんの少し越えて、やめる。
息が荒くて、辛そうで。
少し涙目になっていて。
その背に腕を回し、優しく抱きかかえる。
瞼にキスを落として背中を撫でていると段々に落ち着いた息になってくる。
そろそろか、汗が引いたようだ。
布団をかけて撫でていると瞼が閉じられ、寝息に変わった。
やっぱり疲れるんだろうな。
俺も疲れた。寝よう。
って懐に入ってた道具が邪魔だ。枕元にとりあえず置いて。
おやすみなさい。
もう起きる時間だ。
よく寝ている先生を置いて仕事に行くのがつらい。
ましてや今日はお帰しせねばならん日だ。
布団から渋々出ると先生も起きてしまった。
「もうそんな時間?」
「あなたはまだ寝ていて構いません、と言うか寝ててください」
まだ普通の人が起きる時間じゃないし寝不足怖い。
部屋に残して洗面・着替えなどをして書置きを作る。
9時半までに家を出たほうがいいとか、お昼は時間ないだろうから作らなくてもいいとか。
鍵と電車賃も忘れずに。
さて、出勤だ。
ジャンパーを羽織り、靴を履く。
「ねえ、お見送り、させて?」
先生が起きてきてくれた。
「駄目ですよ、行きたくなくなるじゃないですか。離れたくないのに」
寝巻きの先生の唇にキスをして。
「うー……」
後ろを向く。行かねば。
背中に温かみを感じる。
「気をつけて行ってきてね…うちで待ってるから」
「行ってきます」
時間がない。行こう。
玄関を出て、見送ってもらって嫌々出勤する。
出勤すると流石に週末でそれなりに忙しく、ふと気づけば8時48分。
先生は支度しているだろうか。一抹の不安。
電話をしてみる。出ない。もう帰ったのならいいが。
しばらくして先生が電話に出た。
「あぁ山沢さん?どうしたの?」
「よかった、起きてましたか。いや心配で」
「お風呂入ってたのよ、ごめんね、電話に中々でなくて」
「いや、それならいいんです。気をつけて帰ってくださいね」
電話を切る。風呂か。見たかったな。
その後も仕事をしばらくして時間になったので帰る。
食卓に軽い昼飯が。疲れていただろうに作ってくれたのか。
嬉しいなぁ。
手早く食べてシャワーを浴び着替える。
寝室に入ると…あれ、枕元においたはずの昨日の道具がない。
まぁいいか、時間がない。
お稽古の用意をして急いで家を出た。
電車を乗り継ぎ先生宅へ。
「八重子先生、こんちは、お邪魔します」
「ああ、いらっしゃい」
居間へ行くと絹先生が食事中だ。
八重子先生がお茶を入れてくださった。
「長らく絹先生をお借りしまして。ありがとうございました」
「楽しかったかい?」
「ええ、かなり」
絹先生が恥ずかしそうだ。
「今日はどなたでしたっけ。水屋の用意してきますが」
「ああ、安藤さんとあんただけだよ」
そんだけ?
「世間様は三連休だからね。みんな旅行だとさ。今日から律も旅行に出てるよ」
あーそうだった。妙に仕事が忙しいと思ったらそうか、そうだった。
「じゃええと安藤さんは…あ、炉?何します?」
「あんたらが居ない間に炉開きしちゃったからね、久しぶりだから平点前しとこうか」
「ああ、じゃ薄・濃い両方ですか? 炭は熾きてます?」
「下火はあるから炭手前からやってもらったらいいよ」
はいはい、じゃ用意を整えてきましょう。
安藤さんのお稽古も終わり、さてと水屋を片付けるか。
「あんたも稽古したらいい」
「え、まだ一ヶ月たってませんよ?」
「構わないよ。炉になったんだから気分を改めないとね」
ありがたくお稽古をつけてもらう。
私もまずは平点前。
流石にさっき見てたんだから迷いはしないがちょっとぎこちない。
「いつになっても炉・風炉が変わるときは難しいわよねえ」
それじゃいかんのもわかってるんだけどなあ。
まあ、間違いはないままお稽古は終わり、水屋を片付けてお開き。
「さて。お夕飯作るの手伝っとくれ」
お台所に行きまして、と。
お手伝いをしていくつかおかずを用意する。
孝弘さんを呼びに行って食卓について。
美味しくご飯をいただく。
うまいなあ、メシが美味いのって幸せだよなあ。
ごちそうさまをして、お茶をいただく。
孝弘さんは部屋に戻って行かれた。
「あんた連休はどうするんだい?」
「いやー今さっきまで連休だということ自体忘れてましたからどうしましょうか」
「あら、うちにいてくれるんじゃないの?」
「…それでいいならそうしますが」
「いやなの?」
「そういう意味ではなくてですね…八重子先生、笑ってないで」
「用がないなら泊まったら? ただし台所とか居間では駄目だよ?」
「えーと、できるだけ気をつけます、はい」
「それで山沢さんの家ではどうだったんだい?絹」
「もう居る間ずっとしたいって大変だったわ」
ちょ、絹先生そんなこと言わなくてもいいでしょうに…。
「若いねえ」
「ほんとにねえ、昼寝もしないでお仕事ちゃんと行くんだもの」
「一回昼寝はしたじゃないですか」
「でも朝ちゃんと起きて仕事に行ってたじゃないの。私、寝過ごしてばかりだったわよ」
あ、そうだったのか。
「何時くらいまで寝てたんだい?」
「今朝なんて起きたら8時だったのよ、吃驚しちゃったわよ」
「二度寝って絶対寝過ごしますよね。今日は早く寝たらどうですか?」
「うん、もうさっきから眠くて眠くて」
「食後って眠くなりますよねえ。
私、一人でうちに居るとメシ食ってすぐ寝ちゃうんですよ」
「太るよ、そんなことしたら」
「まあ夜そんなに食わないんで、一人だと」
おや、絹先生、大あくび。
「あんたもう寝といで。疲れたんだろ」
「電車移動って結構疲れますもんね、絹先生、おやすみなさい」
「うん、寝てくる。おやすみなさい」
「おやすみ」
絹先生が居間を出て行く。
「で?絹は何をしたんだい?」
「はい?」
「絹が何かしてあんた怒ったんだろ?」
「あー。ははは、中に指入れられまして。それまでに何回か止めたんですが」
「中…って。ええっ?」
「どうも、その、いつもしてもらってるからというのと。
ずるい、というのがない交ぜになったようで…」
「あ、あぁわかるけど、絹がねえ…」
「ちょっと私も驚いたの半分でしたが」
「後半分は嫌悪感だろ、あんたの場合は」
「あたりです。鳥肌だったんですよ、本当に」
「それで泣かせたのかい?」
「すみません、腹が立ってしまいまして。以前から嫌だと言ってた事をやりました」
「はぁっ、まあ仕方ないね、あんたの嫌な事をしたんだからね…
だけどあんた本当に絹にされるのいやなんだねえ…」
「こればっかりは、ちょっと。しないように脅してもみたんですが」
「あの子は脅しても本気に取らないからねえ…」
「そうなんですよね…怖いことをしますよって言ったんですけど効き目なかったです」
「ところで絹は何を嫌がってたんだい?」
「ああ、縄と道具と」
って八重子先生、それ言ったら私が何をしたかわかっちまうじゃないか。
「道具?どんな?」
「すいません、聞かなかったことにしてください」
「まあいいけどね、持ってきちゃいないんだろ? 見せなって言っても」
「流石に持ってきませんよ…」
「さてと。そろそろ風呂入ってくるから。先に寝るなら寝たらいいよ」
「あ、じゃそうさせてもらいます。戸締りしてきますね」
散会、戸締りの確認をして部屋に戻る。
布団を敷いて、寝転がる。一人寝の寒さよ。秋だなあ。
夜半。もぞもぞとした感覚。
先生が布団に入ってきた。
「どうしたんです?」
「寒い」
はいはい、眠いのと寒いので寒い方が勝ったのね。
懐に抱いて先生の冷えた足を絡ませる。
うーん、凄く冷えてるね。
体温を吸い取られてしまうがまぁいいや。
すぐに寝息が聞こえ出した。本当に寒かっただけらしい。
寝よ。
いつも仕事のときに起きる時間に目が覚めてしまった。
懐の中の先生はよく寝ている。
綺麗だ…。
「うぅん…」
もぞもぞ、と寝返りを打ち背中を私にくっつけた。
布団を整えてあげてもう少し寝ることにする。
ぬくいなぁ…。幸せだ。
5時くらいから流石にもう寝られず、ぼんやり。
いつの間にか寝返りをまた打っていたらしく私の胸に顔をうずめて寝ている。
悪戯心も沸くが寝不足だろうからやめておこうか。
20分ほど経ったろうか、先生が目を覚ました。
「ん、…あらぁ?……?」
「おはようございます、夜中にあなたが布団に入ってきたんですよ?」
「えぇ、そう?覚えてないわぁ」
やっぱり無意識か。そうだと思った。
「入ってきたからにはしていいのかと思ったらすぐ寝ちゃうんですもん。
今からしちゃいますよ?」
「えっだめ、だめよぅ」
慌てているのも可愛くて。
笑っていたら、意地悪、と言われた。
「ちょっと待っててくださいね」
身支度してくる、というので布団から先に出て羽織物とスリッパを持ってくる。
寝巻きだし素足だしそのままでは寒いはずだ。
自分は仕事だともっと寒いから気にならないが。
布団のぬくもりが名残惜しそうだ。
さて私も支度するか。
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