そして月曜も引き止められては諦めさせて火曜日になった。
今日は泊まっていくのよね、と何度も念を押されてしまって少し困惑する。
こんなに依存心高かったかな。
いつものようにお稽古に家事や掃除などをこなして寝床へ。
「ねぇ久さん」
「なんです?」
何か言いにくそうにしている。
「あの…。ええと…」
手拭を押し付けられた。
なんだ?
どうやら猿轡をご希望のようだ。なんだそりゃ。
今日は強めにして欲しくて、でも声を立てるのはいやだし。
かといって余り噛みすぎると俺にあざを作るしと。
「ん? あぁ、そうか、生理前か。違います?」
そういうことなら仕方ない。
襖と障子の家では筒抜けだもんね、律君には聞かせたくないよな。
と言うことでここは一つ。
起こしてコートを着せ、律君にちょっと飲みに行く、と声掛けをして外へ出た。
先生はほっとした顔で俺に着いてきた。
あちらの部屋に入ると流石に少し篭った空気だ。
最近来る暇がなかったから仕方ない。
風通しをする間、少し酒を飲んだ。
先生はとっても恥ずかしそうにしている。
そりゃそうだろう、あんなお願いを自分からするのは先生には恥ずかしくて当然だ。
そんな先生が可愛くてキスをした。
そのまま押し倒してと思ったら流石に押しのけられた。
ああ、うん。窓閉めないとね。
窓を締めて先生が寝巻きを脱いでベッドに入る。準備完了。
さてと久々の本気の一戦…ん?
「ちょっと待った。あなた明日お稽古に行くって言ってなかった?」
「いいの、そんなの」
いいのかそうか。
そんじゃまぁ、いただきまーすっ。
とはいえ、俺の方には明日お稽古に行くといってた事実は残っており、
体力を奪いすぎないよう気をつける必要はあった。
多分こんな理由でお稽古休ませちゃったら八重子先生から鉄拳飛んでくるよ。
翌朝、寝ている先生を置いて戻り、朝食の支度など家事をする。
そして適当な時間に先生を起こして軽く食事、着替えさせた。
後は車に乗せて、れっつらごー。
先生は後ろで寝息を立てているようだがまあ大丈夫だろう。
目的地に程近いところで一旦車を止めて先生を起こした。
「ん、あら? もうこんなところ?」
「うん、後15分ほどで時間ですよ。しゃんとしてください」
あふ、とあくび一つ。
人目のないのを確認してキスを落とした。
「こら」
「ふふ、目が覚めましたか?」
「覚めたわよ。もうっ」
恥ずかしがってて可愛いなー。
そんなわけでお稽古に先生が行ってしまい俺は少々手持ち無沙汰。
と言うか眠い。
なんせ昨日は遅くまで色々してたわけで。
先生の携帯にとりあえず一旦帰宅する旨をメールし、少し寝た。
終ったらメールくれるから迎えに行けばいい。
と思ってたのだが熟睡してしまったようだ。
目が覚めたら先生が横で寝てた。
うーん、いい匂い。甘くて苦味…あれ? いつもと違う匂いだぞ。
ハッと目が覚めて先生を揺り起こす。
「ちょっと、絹、おい」
「ん…? どうしたの…」
「誰の匂いだ? これは」
「どうだっていいじゃないの…」
また寝息を立て始めた。
どういうことだってばよ。どうだってよくねえよ。
まさかと思って脱がせて見たがキスマークはないようだ。
だが俺と同じように念を入れている奴ならつけるまい。
膝を開かせようとしたら目が覚めたようだ。
「んー…、するの? いいけど眠いわ…」
「じゃなくて。この匂いは何なんだって言ってるんだが?」
俺の雰囲気が剣呑なのに気づいて先生がやっと目を覚ましたようだ。
「匂い? あ…、これね? 送ってもらったのよ。ここまで」
「誰にだ?」
「お稽古で一緒になる方よ。月島へ行くんですって」
「それだけでこんなに匂いつくのか?」
「車の中、凄い強く香ってたから匂い移りしたのねぇ。あらやだ、嫉妬したの?」
「男?」
「女の人よ、大丈夫。それにそんなことになってたらここに来ると思うの?」
「だったらいいけど」
そう言って足を開かせ、舐める。
「ダメよ、長襦袢が…」
「じゃ脱いで」
つーかすでに皺がひどいんだが。
汚れるのはいやなんだそうだ。
ベッドの横に脱ぎ落として先生は俺を受け入れる。
昨日よりも激しく。
先生が声を立てることも出来なくなったころ、やりすぎたことに気づいた。
外も暗い。いったい何時だ。
23時半…しまった。どうしよう、無断外泊じゃないか。
律君、起きているんだろうか。
慌てて電話するとまだ起きていたようで俺の言い訳を信じてくれた。
しかし…まいったな。
多分明日の昼過ぎて回復するかしないか、だぞ。
八重子先生がいれば夕飯に間に合えばいい程度だがいないしお稽古はあるし。
困惑しつつ考える。解決策は…。
よし! 社長に電話して今から先生のお宅へ行こう。
明日の朝の支度は俺がすればいい。
確か生徒さんもまだ初級、俺でいけるはず。
そう決断して社長に電話した。
社長は俺の状況を知っていてくれたので簡単に許可が出た。
考えなしすぎたよ…。
ちょっと反省しつつ、寝ている先生に寝巻きを着せて担いで車に乗せる。
死体運びをしているようで人に見られては困る状況だ。
ちゃんと先生は暖かいんだけどね。
先生を物のように運ぶのは何度目だろう。
お宅に着いて運び込んで、布団に寝かせる。
寝息を立てていることに安心して俺は添い寝をした。