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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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131 -絹-

翌朝、律を送り出してすぐに電車を乗り継いで山沢さんのおうちへ。
鍵を開けて中に入ると凄く乱雑に散らかっている。
足の踏み場もないわねぇ。と溜息をついてとりあえず洗濯物を拾って、
まずはシーツを洗って、これはすぐに乾くから脱ぎ散らかっているものを洗濯機へ。
シーツを干して、床に落ちている広告や新聞をかため、郵便物はまとめて。
開封はしてあげたほうがいいのかしら。
このガスのハガキは多分引き落とし出来なかったときのよね。
躊躇ってそれだけ開く。今日までの期限で5千円ちょっと。
これだけ払ってきてあげたほうがいいわよね。
きっと見る暇もなかったんでしょうけど…律も一人暮らしさせたらこうなるのかしら。
お買物のときに一緒に払い込みすることにして、まずはお掃除しましょう。
天井に近いところから。あら、はたきはあるのかしら?
あるとしたら掃除機のある納戸よね。
あったけどこの部屋…変なものも一杯あるのよねえ。
鞭、とか。蝋燭、とか。
いつか使われちゃったりするのかしら。
お尻も、っていつか言ってたわね。
ぞくっとして、少しドキドキとして。
慌ててお部屋から出てお掃除にかかる。
まずは窓や玄関を開け放して。
天井に近いところから叩きをかけて埃を落とす。
たんすの上やテレビなどのものの上の埃を落として行き、拭き掃除。
掃除機をかけていると洗濯機が鳴り響く。
表のシーツも乾いたので取り込んで、残りの洗濯物を干して。
寝室のお掃除もしているとエッチな本やビデオが。
こんなの見てるのねえ。
パラっとページが開いた。
やだわ、こんなこと……したいのかしら?
でも、こういう格好。私山沢さんに見せてるのよね…恥ずかしいわ。
Prrrrrrrr.... Prrrrrrrrr...
電話の音にはっとして慌てて仕舞って掃除を続ける。
やだわ、こんな。
欲情するなんて恥ずかしい。
掃除をしているうちにいつしか醒めたけれど。
納戸のお掃除はどうしようかしら…。
もうそろそろ夕方だから。ご飯の支度をしてから考えようかしら。
とりあえずお買物行かなきゃね。
ガスの払込書を持って、お買物に出る。
前に一緒にお買物に行ったから大体のお店はわかるんだけど。
何を作ろうかしら。
コンビニに入って払い込みするついでに山沢さんの好きな銘柄のコーヒーを買って。
椎茸のカナッペ作ろうかしら。
後はお野菜の肉巻きもいいわね。
おにぎりと。
ピラフのおにぎりも美味しいわよね
八百屋さんとお肉屋さんによってあれこれお買物をして。
おうちへ戻って調理するともうそろそろ帰らなきゃいけない時間になった。
洗濯物を取り込み畳んで仕舞って、ご飯が冷蔵庫にあると書置きをして。
缶コーヒーを文鎮にして帰ることに。

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130 -絹-

「山沢さん、お仕事頑張ってるかしらね」
お母さんになんとなく言うと、ふふっと笑われた。
「今週一杯、来ないからさびしいのかい?」
「そりゃそうよ…週の半分はきてくれてたんだもの」
「きっと山沢さんもそう思ってるよ」
「そうかしら?」
晩御飯の支度をして、お父さんを呼んで律は今日も遅くて。
そろそろ大掃除を手伝ってもらいたいのに。
買出しもしなきゃいけないわね。
「あなた、おかわりは?」
「くれ」
この人は、山沢さんとのこと気づいているのかしら。
わからない振りをしてくれているのかしら。
「ただいまぁ」
律が帰ってきたわ。
「お帰り、ご飯できてるわよ、手を洗ってらっしゃい」
律にもご飯の用意をしてお母さんにお茶を入れる。
「ごちそうさま」
ご飯を4杯。お父さんはいつもどおりに食べて部屋に帰って、
入れ違いに律が食卓についた。
「あれ、今日は山沢さんは?」
「あらあんたに言ってなかったかしらね。今週はお仕事忙しいんですってよ」
「へー寂しい?」
どきっとした。
「寂しいねえ、いつもいるからねぇ」
お母さんが代わりに言ってくれた。助かったわ。
「山沢さんって格好いいよね。開さんとは違う意味で。でも女の人なんだよね」
「そういえばあんた、前に山沢さんの胸見ちゃったろ?」
「あぁー有ったよね、そういうこと。あの人気にしてなくて吃驚したよ」
「開に見られても気にしてなかったからねえ」
そういえば兄さんも山沢さんの胸を見たのよね…。
兄さん、山沢さんに手を出したりしないかしら。
私のってわかってて取ったりする様な人じゃないけど…心配だわ。
「お母さん、山沢さんっていくつなの?」
律に聞かれて驚く。
「あら?そうねえ、確か35歳だったかしら?」
「えっ40代じゃなかったの?」
「あの人若く見えないよねえ、でも実は子供っぽいというか」
「そうよね、甘えん坊なところもあって面白いわよねぇ」
「ええっ?そんな風には見えないな」
そういえば若い時は10歳年上の人が凄く大人に見えたわねえ。
自分がその年になるとそうじゃないのがわかるんだけど。
「母さん、なんか食べるものない?」
「あら。開、どうしたの?」
「財布落とした…いま探してるけど。環姉ちゃん今日は帰れないって言うから」
「開さん開さん、山沢さんっていくつくらいだと思います?」
「20代かな?どうして?」
「今ねえ、律は40代って言ったのよー」
はい、とお茶碗にご飯をついで兄さんに渡す。
「で、いくつなの?」
「多分35歳だったと思うわ」
「えっ意外だなあ」
「いやもうてっきり、お母さんと同じくらいの年だから僕に見られても
 大丈夫なんだと思ってたんだよねー」
「ああ、それはそうだな、僕も見たけど普通だったしね」
「よく考えたら開とも年は釣り合うよねえ」
「母さん?」
「おばあちゃん、駄目よ。それは」
「ちょっと年開きすぎてない?一回り違うんじゃないの?」
「あら、昔は一回りなんて普通だったんだから大丈夫だよ。
 山沢さんが開のお嫁さんだったらお教室も続けれるじゃないの」
「それは山沢さんが嫌がるんじゃないかな」
「なんだい?開、あんた山沢さん苦手かい?」
「いやそうじゃないけど…見た目がホモ?」
律が大笑いしてお母さんが考え込んで一旦この話は流れてほっとしたわ。
夜、戸締りをして寝る支度をすませて居間に行くとお母さんが繕い物をしていた。
「明日山沢さんの家に行ってて何かつまめるものを用意してあげたらどうだい?」
「どうせだから洗濯とお掃除もしてあげたほうがいいかしら?」
「そうだねえ、手が回らないだろうから。してあげるといい」
「じゃ、律が出たらうちのことをして、それから」
「ああ、うちのことはあたしがするからいいよ、行っといで。洗濯があるだろ」
「いいの?」
「洗濯物を取り入れて畳むまでやってあげないと取り入れる気力もないとは思うけどね」
「あら、そうねえ。帰るの遅くなっちゃうわ」
「構わないからちゃんとやっといで」

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129

そんなことを考えて眠気をやり過ごす。
家に帰って気がついたら服を着たまま寝ていた。
ベッドにもたどりつけていなかったようで、床で寝ていた。
ストーブはつけたようだが。
ついに30日、今日働いたら明日は会える。
気合を入れ直して、一日頑張ろう!
もうはっきり言って商売の時間は暇だ。
当然ながら料理屋なんかは今日明日は料理してお重に詰める日。
うっかり買い忘れたとかがない限り市場には用はない。
暇なので二人を1時間半ずつ仮眠させて少しでも作業時の負担軽減を図る。
その時間に作業させればいい?場所が空かないと出来ない作業なんだ。
みな今日は疲れているが表情は明るい。
明日休日出勤の当番の者も、今日までのような時間帯に出勤しなくてよい。
昼までに終ってゆっくりできるのだから。
使った道具は翌日の当番が洗ったり始末する。
当日始末するのは無理だからね、体力的に。
冗談も飛ばす余裕が出てくる。
私は先生に明日うかがうメールをした。
会いたい…。
そうは書けない。
こんなに貪欲だったんだなぁ、俺。
先生から待っているとお返事をいただいた。
待っていてくれるんだ、ということを心の支えにして。
ひたすらに仕事をこなして行く。
あっ!半襟!つけるの忘れた。今晩か明日の朝つけるか。
覚えてるといいなあ。
家のお飾りは今朝飾って出たし。
他に忘れてることはないよなあ…。
律君にお年賀の用意くらいか?
作業をしつつ忘れ物はないかとチェックする。
明日焼く鯛もキープしてある。
刺身にする魚も泳がせてある。
はっ!現金をおろしてこなければ。
休憩時間になってすぐに銀行に走る。
初売りを考えれば30くらい財布にあってほしい。
昔、某呉服屋で後日にしたら翌日売れていて悔しかったからなあ。
手付けを打てる金はやはり必要だ。
一旦自宅に寄り、明日持っていく鞄に入れておいた。
スーツにも男の着物にも合う重宝な鞄だが女の着物を着るときには流石に合わない。
持って行く紋付は一応男のなのでこの鞄にしたわけだ。
先生にもしかしたら女の格好をさせられるかもしれない。
だから湯文字だけ入れてある。
また職場に戻って作業を進める。

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128

まぁ、先生の場合初めてのメル友で距離のとり方がわからなかったと。
そういう言い訳が使えると思う多分。
しかし上流の人と離れているとすぐに品性が堕落するなぁ。
正月はうっかり変なことを言わないように気をつけないといけないな、これは。
翌日、作業の合間に買いだしに行く。
ついでに栄養ドリンクを数箱。社員達に差し入れる。
日々みんなの目が死んだ魚のようになっていく。
毎年思うがクリスマスに魚市場を空けるメリットはない。
本当に売れないし、客自体来ないし。
あの日休めば光熱費の点からも休養の面からも助かるんだが。
大体この時期から救急車のサイレンを聞いたり、誰かが倒れたらしいと小耳に挟むんだ。
絹先生からも大丈夫?と言うメールをいただいた。
どうやら半分くらい書いて送ったらしい。昨夜。
そんなこんなで日曜日。特別開場日。
今日明日と仕事を済ませば会いにいける。
早く先生の声を聞きたい、抱きたい。
会わずに我慢できるのはやはり三日だな、三日。
メールの交換をしてもらっていて忙しいから何とか日をすごしているが。
しかし今年の忘年会はまた飲みだろうなぁ。
毎年私は出ないけど。なんでみんなそんな体力あるんだろう。
今年は幸い大掃除しなくて済んだ。
先生が来たりするから日常的に整理整頓していたし、先日は先生が掃除してくれた。
毎年、仕事で出来なくて年明けに掃除してしまうからなあ。
仕事中に先生からメールが来た。
うわ、洋装だ。掃除中の姿。
八重子先生が写真を撮ってくれたようだ。
可愛いなぁ。
そして俺の姿をテレビで見たらしい。
画面の端に芥子粒のように映っていたのを絹先生が見つけたとか。
よくわかったなぁ。
元気そうで安心したと書いてある。
でもそれ多分木曜の取材だ。
あの日は先生の気配を家で感じて、愛されてるという実感で仕事が捗った。
まあそれはメールには書けないから、お会いしたときに耳元で囁くとしよう。
あ。帰ったら襦袢に半襟つける作業が待っている。忘れてた。
思い出してよかった。しかし帰宅するまでに忘れてしまうのではないか。
忘れきってたら31日の朝に慌てて付けるか、先生のお宅でつけるかだな。
紋付の用意をするときに思い出せよ自分。
先生はうちに来てくれるときは刺繍半襟だったりする。
この間は小さいもみじが散っていて、可愛らしい雰囲気だった。
お稽古では白い半襟に静かな柄の小紋や紬姿ばかりで、
茶事くらいしか華やかな姿を見なかった。
だけど俺と一緒にお出かけするときは華やかな着物を着てくれる。
襦袢も綺麗だったり可愛かったり手が込んでいる。
お出かけの予定がないときはシックな紬に派手な襦袢とか、
お洒落で、俺に見られることを思ってそういう格好をしてくれてると思うと嬉しい。
前にそういったら、俺がちゃんと衣桁にかけるのを待つから、着てこれると。
エロビデオみたいに着てるのそのままで体液がついたりするような、
あんなやり方をするなら着てこれないよね、正絹は。
たまに脱ぐの待てないの?と怒られるが。
ああそうか、汚していい正絹の襦袢を作ればいいんだ。
だったら着衣で出来るな、そうしよう。
寸法は今度寝てる間にでも測ってしまえばいい。
柄は…そうだ、八重子先生に相談しよう。

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127

翌朝、八重子先生は何もなかったように振舞ってくださり、
私も何もなかったような顔をして絹先生との別れを惜しんだ。
ばれなきゃいいんだよ、ばれなきゃ、うん。
それからの一週間は仕事中に先生へ朝のご挨拶メールを送ったり、
おやすみなさいのメールを貰ったり。
水曜の夜に帰宅すると冷蔵庫に食事が入っていた。
片手で食べられるものが。
昼に来て、作っておいてくれたようだ。
往復3時間もかかるのにありがたいことである。
丁重にお礼をメールするとお歳暮ありがとうとメールが返って来た。
そういえば年内いつでもいいからいいものが入り次第と言う注文をしたんだった。
今日届いたようだ。すき焼きをしたらしい。
しゃぶ用もあるしステーキも有るが年内に食えるのかな。
サーロインメインでヒレとかイチボとかランプとか入れてくれと言っておいたが。
まあ孝弘さんが食ってくれるだろう。
美味しい晩飯を一人食べて、風呂に入る。
掃除と洗濯がしてくれてあった。シーツがいい匂いしてる。
愛されてるなぁ俺。嬉しい。凄く嬉しい。
さびしいけれど幸せな気分で良く寝た。
正月が待ち遠しいなんて久しぶりに思う。
あ。クリスマスか。今日。ならば会いたかったなあ…。
そう思っているうちに眠ってしまった。
明けて翌日暗いうちから働く。
それでも昨日よりは今日のほうが気分が落ち着いている。
仕事も捗る。
残り一週間もない、頑張れそうだ。
先生は今頃大掃除だろうか。
あ、鏡餅買わなきゃな。
年賀状は今日作ろう、今日。
注連飾りも居るな。
明日は作業の真ん中に買物時間作ろう。
帰宅時間は遅くはなるが仕方ない。
6時過ぎ、いつものおはようのメールをする。
朝、先生から来るメールはそっけない。
夜のメールは色々書いてある。
きっと朝は眠いか忙しいかなんだろうな。
俺は朝のメールのほうが文章量が多く、夜は少なくなる。
二人とも、好きだとも愛してるとも書かないことにしている。
メールを見られて破綻。
そんなのは困るから。
だが、ただの弟子と朝晩メールの交換してるというのも。
なにやらおかしい気がしてきた。
体裁を気にすると彼女に怒られるという話を良く聞くが、
俺らの場合気にしすぎでもいいはずだ。

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