「相変わらず傷だらけだねえ。背中とかひどいよ、あんた」
八重子先生が背中側に回ってなぞるのが、くすぐったい。
「そうですか?自分じゃ見えないんでわからないんですけど」
「これ全部絹がやったのかい」
「う~ん、どうでしょねえ、無意識で自分で掻いてるとかもあるでしょうし」
「ここ、酷い痣になってるよ」
と脇腹。
「そこくすぐったいですっ」
もぞもぞしてしまう(笑)
「母さん、ちょっと。あ。ごめん」
あ、開さん。
今日はなんだかよく裸を見られる日だな。
「開、あんたこれくらい見慣れてるだろ?」
「あー、見慣れてそうですよねえ。彼女何人もいそうな~」
「いやさすがに何人もいたことないから。えぇと…」
後ろを向かんでもいいのに(笑)
腕を浴衣に入れて前を合わせる。
「母さん、何してたの? というかなんで山沢さんだっけ?平気なの?」
「ああ、見られ慣れですねえ。
相手が欲情してなきゃ見られても大してどうとも思いませんね、胸くらい」
「そ、そうなんだ?」
「じゃ、私ゃちょっと着替えてきますね」
「はいはい」
うおお、浴衣ではさすがに廊下が寒い。
部屋に急いで入って着替えた。
ふー。
居間に戻るとただいまの声、先生が帰ってきたか。
「おかえりなさい」
お出迎えしてバッグなどを受け取って着替えを手伝う。
八重子先生と開さんも話が終わったようで居間に出てきた。
「おかえり。長井さん何の話だったんだい?」
「ただいまぁ、もう疲れちゃったわよ。離婚して再婚しろって」
……あ、開さんがお茶こぼして慌ててる。
「ちゃんと断ったんだろうね?」
「当然よ、もう困っちゃう。兄さんは今日はどうしたの?」
「あぁバイトの保証人の件で母さんに用があってね」
「さっき山沢さんの裸見てうろたえててねえ、面白かったよ~」
「母さん!」
「あら~…見られちゃったの?」
「ええ、まあ」
「あれ?開さんきてたんだ?」
「あら律、もう帰ってたの?早かったのねえ」
「そういえばさっき律も山沢さんの裸見たんじゃなかったかね?」
「そうなの?山沢さん今日はよく見られる日なのね(笑)」
「お二人とも反応結構似てますよね。開さんが意外とうぶだったけど。
ちなみに孝弘さんはスルーしますよ。何回か見られてますが」
開さんと律くんは"そうだろうなあ"という顔をしている。
「さて…そろそろ私は失礼を。また明日寄せていただきます」
「もう連休も終わりなんだねえ。明日来るの遅くなりそうかい?」
「多分ちょっと遅れます。出る前に電話入れさせてもらいますが…」
「じゃ、また明日ね?」
名残惜しいが帰る。