2時ごろ、寝るにも飽きた。
ベッドに先生を残して、起きる。
ああ、ちょっと弾きたいな。
そう思って道具部屋から三味線を出す。
調弦。本調子。
さて何を弾こう?
まずは秋の夜でも。
~\秋の夜は、長いものとは真ん円な、月見ぬ人の心かも、
更けて待てども来ぬ人の、音信るものは鐘ばかり、数ふる指も寝つ起きつ、
わしや照らされているわいな。
浮気同士が。
~\浮気同士が、ついこうなって、あぁでもないと四畳半、
湯の沸るより音もなく、あれ聞かしゃんせ松の風。
キリキリっと調子を変えて三下り。
惚れて通う。
~\惚れて通うになに恐かろう、今宵は逢おうと闇の夜道を只一人、
先や左程にも思やせぬのにこちゃ登り詰め、エェエェ山を越えて逢いに行く、
毎晩逢うたら嬉しかろ、ジツどうすりゃ添はれる縁ぢゃやら、じれったいよ
爪弾いていれば先生が起きて、じっと聞いている。
「なんだ、起きていたんですか。うるさかったですか?」
「ううん、山沢さん、お三味線もするのねえ…」
「素人の手慰みですがね」
三味線を置いて先生の横へ行く。
「トイレ、行かなくて大丈夫ですか?」
「あ、もうそろそろ一人で行けないかしら」
そろっとベッドから両足を降ろして立とうとする。
「やっぱりお願い…無理みたい。痛たた…」
「肩を貸すほうがいいですか?抱き上げるほうが良い?」
「足、つくと痛いから」
「はい、じゃあこっちですね」
抱き上げてトイレに運ぶ。
座らせて、にやっと笑って。
「見ていてあげましょうか?」
「もうっばかなこと言ってないで。つれてきてもらうのも恥ずかしいんだから」
「ばかなことじゃありませんよ、私の趣味です」
「えっしてるの見るの、趣味なの?」
「あなたを恥ずかしがらすのが、ですよ。知らん人の見てどうするんですか」
真っ赤になってて、大変可愛らしい。これがいいんだよこれが!
「まあでも、見てたら出来ないでしょうから外にいますよ」
「そうして頂戴、お願いだから」
外でしばらく待つ。流す音がして呼ばれて。
抱えあげてベッドに座らせる。
ベッドに防水シートを敷いてオイルを用意した。
「マッサージしてあげましょう。脱がしますよ?」
帯を解いて脱がせてシートの上に伏せさせる。
背中には厚目のバスタオルをかける。寒くないように。
手でオイルを温めつつ垂らして。
足指、足の裏、ふくらはぎ、太腿、臀部。
ゆっくり丁寧にやわらかく揉む。
遠いところから順に心臓に向けて。流す。
「はい、仰向けになって」
手を貸してあおむけにする。
やはり上側にはバスタオルを乗せて、足指側から中心に向けてマッサージ。
鼠蹊部をマッサージすると少し声が出てしまい恥ずかしそうだ。
「ここはあとでしてあげますよ」
お腹にもオイルを落とす。
腕や胸もついでに。マッサージというか、流すように。
気持ち良さそう。
体中がほのかにピンク色になってきた。
「シャワー、浴びましょうね」
服を脱ぎ捨てて、先生を抱き上げて風呂に入る。
ボディソープで先生の体を撫でて、オイルを落とす。
すすいでバスローブを着せる。
リビングのお座布の上に座らせ、膝掛けをかけてベッドのシートを片付けて。
先生のそばへ戻ると三味線を興味深そうに見ている。
「弾いてみますか?」
「えっいや、いいわよ」
「そうですか? 晩飯、出前にしようと思ってますがなにが食いたいですか?
それと食材買ってきて何か作りましょうか?」
「作ってもらうのも悪いわねえ」
「んじゃなんぞ取りましょうね。
まあその方が私もあなたとくっついてる時間が多くていいわけですが」
こんなことくらいで頬を染めている。
「体、あったまってる間に布団に入るほうがいいですね」
抱き上げてベッドに連れ込む。
バスローブの紐を外して乳首をまさぐる。
「また…するの?」
「したくない?それでもするのが私ですよ」
「そんな…」
「酷い人なんでしょう?俺は。嫌ならこんなのとは別れておくべきでしたねえ」
「嫌じゃ、ないわ。山沢さんのこと、酷いけど、好きよ」
「………」
「どうしたの?」
「いや、今初めてあなたから好きだといってもらえた気がします」
「あら?言ってなかったかしら。やだわぁ」
どさり、と横に転がる。
「いつからです?」
「いつから…って難しいわねえ。好きじゃなかったらえっちなんてしないわよ」
「俺ばっかり好きなんだと思って、ついむちゃくちゃしたりしてたのに…。
ごめんなさい、酷くて。でも俺、酷いことが好きなんでこれからも多分します」
「あんまり酷くしないでほしいけど…」
「大丈夫、少しずつ慣らせば!なんとかなります!」
「だ、だめよぅ?」
「あ、血塗れとかスカトロみたいに汚いのはあまり好きじゃないんで多分しませんよ」
「スカトロってなぁに?」
「大小便系です。食ったり塗ったり飲ませたり」
「絶対しないで!」
「衛生的にもどうかと思いますしね」
「山沢さんがどこまでしたいのか、さっぱりわからないんだけど…」
「あー。あとでビデオ見せます、そこで絶対無理なこととか擦り合わせしましょう」
じゃないとトラウマになったりする行為もあるし。
「えぇと、ほとんど無理だと思うわよ?」
だろうね。