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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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27

翌朝ちょっと二日酔い、仕事が捗らねえな。
グダグダしつつ仕事を終え、帰ってひたすら寝たが、体調は今ひとつだ。
次の日の午前中盛り返しはするが気が乗らない。
お稽古へ行くと快晴好日、人が多い。
水屋要員をすることにしてサボる。
人に使われていることの気楽さを満喫。
なぜか最近入会された若い生徒さんに手を握られ名刺を渡された。
ご連絡お待ちしてますって…これはナンパなのか?
取敢えず後で八重子先生にご報告だな、注意しとかないと。
しかし最近の女性だなあ、電話とメールとLINEのアカウントだけ書いてある。
お稽古が終わり、絹先生が山沢さん泊まっていくでしょ?と仰る。
かったるさも吹き飛ぶお誘いだ。
とはいえ、別に何も出来ないわけだが。
夜、絹先生が風呂に入ってる間に八重子先生に申し上げる。
しばらく様子見と決定した。
八重子先生に気取られぬようしつつ風呂から上がる絹先生に目を細め、
それなりの時間になったので寝間へ。
夜半、絹先生の部屋に忍ぶ。
誰かが来ても按摩と言い抜けられる程度にボディタッチ。
声が出そうになって、我慢する姿はなんとも色っぽい。
煽るだけ煽って逝かさず、部屋に戻って寝た。
自分でしただろうか、できるようには思えないが…(笑)
翌朝、絹先生に会うと恨めしげだ。
可愛いな。
昼から律君は大学の友人と約束があると出て行き、
八重子先生も所用で二・三時間戻ってこないという。
昨日仕立てが終わった袷を絹先生に見せていたら着付けてあげる、と仰る。
脱いで真新しい袷を羽織る。
前合せを正しくしてもらい、帯を締めてもらう。
先生の頬に手をやると、じっとして、と言われてしまった。
いやだって膝を突いて上目遣いって何というかエロいんだよ。
立って襟などを少し整えられる。
「昨日はひどいわ…」
「なにがです?」
わかってるけど聞いてみた。頬を染めて何も仰らない(笑)
軽くキスする。そっと着物の上から太腿をなでると色っぽい声が聞けた。
続きをして欲しそうだが、身を離す。
口には出さないが恨めしそうにしてる。
「二階、上がりませんか?」
あそこならわざわざ孝弘さんが来ることもないだろう。
絹先生は頬を染めてうなづいた。
上にあがり襖を閉めるとしなだれかかってきた。
「ねぇ、おねがい…」
「なんでしょう?」
あえて何もしないでいると困った顔をしている。
ああもう駄目だ、いじめるのはヤメだ、抱いちまえ!
裾を割り、まさぐる。
先生はぎゅっと私にしかみつき、押し付け、声が漏れないようにしている。
「んんっあ、はぁっ、もう駄目…」
逝ったようだ、ガクガクしている。
事後の顔も色っぽくてもう一発やりたくなる。
が、まあなんだ、邪魔が入ると非常にまずいことになるからなあ。
手拭で後始末をしてさしあげていると、上気していた頬が一気に青ざめた。
どうやら孝弘さんは在宅だったことを思い出したらしい。
「もう一度、しましょうか」
わざとそう言うと「ひどいわ、わかってる癖に」と詰られた。
しばらく抱きしめて落ち着ついたところで喉が渇いたからと居間に戻ることにした。
お茶をいただいて一服、先生は眠そうだ。
「ちょっと寝ますか?」
お座布を枕に先ほど脱いだ長着をタオルケット代わりに掛け寝かす。
気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。
昨日煽ったから寝れなかったのかな…可愛いな。
ゆったりした時間が流れる。
あ、八重子先生戻ってきたかな、玄関の開く音だ。
「おや、寝てるのかい?」
「ええ」
起こしますかと聞くといいと仰る。
お茶を勧められて、頂く。
「山沢さん、あんた、…」
え、なんだろ。
「……この間の休んだ日、踊り見てきたんだって?どういう演目だったんだい?」
そ、そっちか、はははは…。
「一つはお茶に関する曲ですよ。歌の中に茶壷やら竹台子やら出てきます。
 前半お茶、後半お香で全体的に恋愛の曲ですね。
 二つ目は重陽、三つ目は楠公、四つ目は確か秋の曲で虫の音や雨音、恋。
 それと棒縛りです。」
「そんな曲があるんだねえ、お茶のかい」
「一説には二代目川上不白の作詞とも」
「江戸千家のかい?」
「ええと…四代目のお家元ですか」
「そんな曲なら寂びた感じなのかねえ?」
「江戸らしくてそういう感じじゃありませんねえ。出は良いんですけど」
おやどこぞで七つの鐘をついている。もうそんな時間か。
絹先生が起きた。
ぼんやりしている。まだ頭の中は寝てるようだ。
「お茶のむかい?」
という八重子先生の問いかけにうん、とだけ答えて。
珍しく寝起きが悪い。
「さて、そろそろ…」
帰らなくてはならない。
「うわっ」
先生に抱きつかれた。だー、寝ボケだ!
「もう夜まで寝かしちゃったらどうですか?部屋お連れしますよ?」
八重子先生にそういうと苦笑いしている。
抱え上げて絹先生の部屋まで連れて行くと八重子先生が布団を敷いてくれた。
布団に転がして寝かしつける。
私の長着はしっかり握ったままだから置いていくしかないな。
部屋を出て居間に向かう。
八重子先生は何か言いたそうだが言わない。
また明後日のお稽古にうかがうといい、辞した。

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26

翌日のお稽古。
早くつきすぎてしまった。
まだ午前の生徒さんが稽古している。
朝の生徒さんはレベル高い人多いんだよな。
先生との会話聞いててもさっぱりわからん悔しいな。
早く自分も余裕かませるくらいになれれば、なあ。
八重子先生がおいで、という。真之行を見学せよということだ。
今日とってもカジュアルな格好なのですが…。
皆さんちゃんと五つ紋、その中にこの格好はちょっとまずくないですか、
そう聞くと今日は偶発的な見学だから、と正客に。
うーわー…見てるだけでこれ次覚えるのかと。
落ち着いて、すべてを丁寧にやればいいお点前だから出来る様になる、という。
先に見せた理由は心構えだと。
なるほどつまり必要な知識は自習して来いと。
陰陽五行八卦、皆具の違い、まあ色々今は自力である程度はわかるな。
精進します。
でもそれより前回みたいな心の乱れを点前に出さないようにしないと駄目だな。
午前の部はそれでお開き、皆具を片付けて昼の部の用意を手伝う。
用意が終わったところで先生方はお昼ご飯。
私は庭先を借りて喫煙。
外で吸わないと折角の炭に仕込んだ香が煙草の匂いに負けてしまう。
口と手を清めてから先に茶室に戻った。
本日は四ヶ伝の日。
上の方のお点前をするための割り稽古だ。
点前手順は入ってて当然にならないと上に進んではいけない。
道具を見ながら頭の中でざっとさらう。
おおよその流れは思い出したぞ。イメトレイメトレ。
30分前になって絹先生が稽古場に戻ってきた。
すでに先生モードだ、というか今日は厳しい稽古になる予感。
相違せず微妙な角度、持ち方、細かく指導を受けた。
そして今日は私の後に来る生徒さんのお稽古を指導する稽古だ。
人に教えるほど難しいものは無く、自分の中で消化できてないと出来ない事はなはだしい。
結果惨敗、先生からツッコミがすごく来た。
教えてもらったとおりに教える、それが難しい。
結局夕方までみっちり教える稽古や他の方のお稽古の客をして終了。
今日は仕事の都合のため、夜はこちらに居れない。
なぜ居れないかは八重子先生のみぞ知る。
絹先生には絶対知られてはならないのだ…。

まぁつまり、あんなことのあったあとでのお座敷遊びなのである。
同業の集まりでメシと芸者、半玉を呼んで騒ごうというもの。
たとえエロ要素皆無でもまた嫉妬されてああなるのは避けたいものだ。
直接指定の料亭へ移動する。
すでに何人かは来ているそうだ。
今日のお姐さんは誰が来るのか聞くと、大きいお姐さんばかり、ホッとする。
あいてるところへ適当に、というのでいつもの人の横へ座る。
同業としては仲の良い人で、そろそろ80が近い婆さんだ。
火種を借りて一服つけるとぞろぞろと他の連中が到着した。
乾杯して芸者衆の歌舞を楽しむ。
若い連中はトラトラや金比羅で遊んでいる。
宗直姐さんがこちらに来た。
「今日はなにお稽古したんです?」
四ヶ伝、怒られ通しだというと怒られるうちが花、と慰められた。
この方芸者だが同門茶名もち、お茶の話題で盛り上がる。
まあ盛会のうちにお開き、明日も仕事だから皆よそへ行かず帰宅となった。

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25



---絹

母が台所に来た。
「お母さん。明日山沢さんのところ行ってくるわ」
「ああ、話、ついたのかい?」
「ええ」
支度ができて食卓へ。
今日は私と母の分だけと甘鯛の酒蒸しを山沢さんが作ってくれた。
お父さんと律にはサワラの西京焼、これも山沢さんがたまに持ってきてくれる。
甘鯛があっさりしているのに甘くておいしい。
「そういえば山沢さんって煮物はしないよね」
あらそういえば焼いたりお刺身はしてくれるけど煮物は手伝ってくれないわね。
「苦手なんだってさ。それに家によって味が違うからって言ってたよ」
そうなのねえ…。


---山沢

帰り際、先生が明日うちに来るといってくれた。
部屋を掃除せねば!
勢いで連れ込むなら少々アレでもいいが半日あるんだから目に付くところだけでも。
明日は駅まで迎えに行けばいいことになっている。
帰宅後すぐ玄関から片付け始める。夜2時、なんとかなった。
翌日10時過ぎ、風呂に入って身支度して先生を迎えに行く。
1番出口を指定しておいた。エレベーターであがれるから。
先生が出てきた。私の姿に驚いている。
ポロシャツにチノパン姿はそういえば初めてかもしれない。
先生は紬の普段着姿…いつもはしない口紅が良い。
拾って連れ帰る。
玄関の鍵を閉めてすぐ、抱きしめてキスをした。
たまらん、もう無理だ…。
「今すぐ抱きたい…」
そう言うと先生は頬を染めて体を預けてくれた。
ベッドのある部屋に連れて行き、帯締めを解くと背の太鼓がほどける。
それだけで色気を感じ、また先生も恥ずかしくなるらしい。
帯・着物を脱がせて衣桁にかける。
長襦袢姿もやはり好い。
襲い掛かりたくなるのをぐっと我慢しながら優しく緩やかに、と心がけて。
長襦袢、肌襦袢を脱がせて後は湯文字一つ。
上気した柔肌をそっとなで、キスを落としてゆく。
腕に青あざ、先日掴んだときにできたようだ。
くっきり手の形になっている。申し訳ない。自己嫌悪。
今日は特に丁寧に、嫌がったらできるだけやめて意思を尊重しよう。
壊れ物のように大切に。
二度ほど逝かせた後、先生のおなかが鳴った。
ああ、もう昼すんでるじゃないか。
「メシ、どこか食いに行きます?それとも何か取りましょうか?」
動けなさそうなので鮨を取った。
届いた後先生を呼ぶと素肌に長襦袢をまとっている。
もう一戦やりたくなった。
まあでも取敢えずメシ食うか。
ちゃんとした鮨屋の桶なので結構良いネタを使っているのだ。
やっぱりウマイなあ…と食べているのは実は卵だったりするが。
食後、酒を出して先生に飲ませると少し酔ったようだ。色っぽいぜ…。
襲い掛かりたくなる。
そういう思いが伝わってしまったようで照れて背を向けてしまわれた。
そっと後ろから抱きしめる。
何度しても恥ずかしがるその姿がぐっとくるんだよなあ。
ベッドに連れ戻して再戦3度。
疲れて寝てしまわれた。
手を洗って長襦袢を着物ハンガーにかける。
この手触りはポリではないなあ。半襟も白じゃなく刺繍半襟か。
長襦袢の柄行も普段には着てこないような柄で…。
私に会うためなのに、手の込んだものを…嬉しいじゃないか。
寝顔を眺めているうちに私も眠りに引き込まれた。
夕方、目が覚めた。先生はまだ眠っている。
疲れさせてしまったようだ。
先生のお宅に電話するか。晩飯一緒に食ってから帰らせると。
電話を取り八重子先生に連絡する。
絹は?と聞かれたが今コンビニに、とごまかした。
食事の件は普通にOKが出た。
電話を切って、どこに食いに行こうか考える。
いつもいく割烹で良いかなあ。
ああ、起きたみたいだ。
シャワーを浴びるようにすすめる。
風呂場の外から晩飯の希望を聞くと、任せるといわれた。
割烹で良いかと聞くとそれで言いという。
席が空いてるか電話で確かめ予約する。
風呂から出て肌着を着け、長襦袢をまとい、長着を着る。
美しい。
ドキドキするじゃあないか。
私も身づくろいをして格を合わせる。
外を二人並んで歩き、割烹に着く。
大将が目を細めている。どうだ、好い女だろう!
食事を美味しくいただいて、先生を駅まで送って行く。
別れ難いが明日お稽古だからまた会える。
手の甲に軽くキスして別れた。

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24

---絹

「どうしたんだい?なにかあったのかい」
食後、居間でお茶を飲んでいると母に見咎められた。
「山沢さんに何か言われたのかい」
「その、山沢さんをちょっと怒らせちゃって……怖かっただけで…」
思い出したら涙が…。
「お風呂、入ってくるわ」
慌てて居間から出てお風呂へ。
お母さんが呼んでるけど理由を聞かれても困るから。


---山沢

うーん、やはり怖かったまま帰してしまったかな。
八重子先生にバレるの覚悟で抱くべきだったか。
取敢えず明後日になるまではわからない。
ああ…明日熊野神社に行って誓紙を貰って来よう。
信じられぬというならば起請すればよかろう。
ああいや待て、起請誓紙を遊女のものだと思われていたら怒るか。
参ったな…。

稽古日。
一応熊野誓紙を鞄に入れて来た。
先生は…出てこられない。
動揺してしまった。八重子先生の指導だが簡単な点前を間違う始末だ。
稽古が終わり居間へ呼ばれた。
「山沢さん…この間いったい何があったんだい。絹は何も言わないんだよ。」
「すみません、カッとして怒鳴りつけてしまって。あの、絹先生にお会いできますか」
表から一番遠い奥の部屋にいるという。
そんなに怖かったのか。フォローが足りてなかったか。
八重子先生に断って奥へ行く。
襖を開けると驚いた顔をされた。入って閉めると後ずさり。
「…私が怖くなりましたか」
「あ…」
無意識の行動だったようだ。
「この間は乱暴にしてすいませんでした。
 二度とああいうことはしませんから、どうか嫌いにはならないでもらえませんか」
「嫌いじゃないわ!…怖くて」
私が一膝進むと、一膝下がられる。
「うぅん…それは…。あなたからなら近づけますか?」
先生は少しずつ、近寄ってくる。
私はできるだけ動かないようにしている。
手を動かせば捉えられるほどに近くまで来た。
「私はあなた以外誰も欲しくはない。あなただけが好きです」
懐から熊野誓紙と筆ペンを出し、誓文を書き、小刀で親指を切り血判する。
それを先生に渡した。
「これを、持っていてください。私の思いです」
それから…。
「あなたがお嫌なら、芸妓と手を切りましょう。二度と会いません。
 もう一枚誓紙を書いたって良い」
「山沢さん…」
「それでも信じられぬというのならこの指落としましょう」
左手の小指に小刀を当てる。
先生がその小刀を慌てて取り上げた。
「信じる、信じるわ、だからやめて」
鞘を、というので渡すと収めて遠いところに滑らされた。
先生は私の手を取り親指の傷を舐めてくれた。
血の赤さで彩られた唇は扇情的で、思わずキスをしてしまった。
「駄目…ここじゃ…」
「今なら誰も来ませんよ」
それでもやはり気になるようだ。
「やっぱりうちに来ませんか…あなたを抱きたい」
懐に引き寄せてそういったがお稽古日だから途中で生徒さんに会うと気まずいという。
困ったなぁ。
そのまま懐に抱いたまま小半刻。日が暮れてきた。
ほぅ、と先生の息が聞こえた。
「まだ、怖いですか?」
そう聞くと、もう大丈夫という。でもあんな風にされるのは怖い。
「私が嫉妬したからだけど…」
まあ悋気を起こさせた原因は私だからなあ。
「まったく嫉妬されないのもそれはそれで微妙ですけどね。気をつけます」
ん?そろそろ夕飯の支度しないで良いのかな。
そういうと慌てた顔をして支度しないとっていうので手伝うことにした。
台所でパタパタと立ち働き、夕飯を作る。
生徒さんたちも引けたようだ。作るだけ作って今日は帰ることにした。

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23

次のお稽古のときに今週末のお稽古を休むことを言った。
珍しいわね、とおっしゃるが秋のおどりの会を見に行かねばならない。
お稽古日じゃなければ先生をお誘いするのだが…。
羽織を返してもらって帰宅した。

久々に京都へ戻る。
おどりの会を楽しみ、その後は得意先の料理屋に馴染の芸妓を呼ぶ。
久しぶりだと皮肉を言われつつ芸を楽しんだ。
店への支払いは現金で済ませ、ビジネスホテルに泊まる。
自宅に戻っても良いのだが長くあけている分、錆水とか面倒くさい。
寝るだけならビジホが楽だ。シャワーを浴び、寝た。
翌朝、東京へ。
新幹線の中で携帯が鳴った。珍しいな、先生からだ。
「どうしました?」
展覧会が今日までらしい。行けないかというお誘いだった。
時間を聞くと家に寄る時間はなさそうだ。
降車駅を変更して、シャツ売ってるところ探してシャツだけでも着替えるか。
降りるまでにどこにあるか調べると、駅直結のところにシャツ専門店があるようだ。
駅について慌しく売り場へ向かう。
おおよそのサイズで買いその場で着替える。
鞄に着ていたシャツを押し込んで急いで乗り換えた。
予定の車両に乗れた。一息ついてスーツを確かめ、きちっと体裁を整える。
整髪剤と手拭きを出す。ささっと櫛で整え手についた整髪剤を拭取る。
うーん駅についたら手を洗おう。

駅に降り立ち、手を清めてタクシーに乗る。
現地についてみるとすでに先生が待っていた。
「お待たせしてすいません」
「ううん、急にごめんなさいね、今日までだったの忘れてたのよ」
今日も綺麗だなあ。
手を取って入館し、観覧する。
あらかた見終わった頃。
「昨日はどうしてお休みだったの?」
「秋の温習会の時期でして花街の踊りの会を見に行ってたんです。
 それと顔つなぎですね。」
「…馴染の方と、会ってたのね」
つねられた。
手を取るとその手を払われた。
怒ってるのか。可愛いじゃないか、おい。
退館してタクシーを待つが触れると手を振り払われる。
ムカっとしてきた。
タクシーに乗車し、先生が駅までというのをとどめ、あるホテルを指定した。
いわゆるラブホだ。
下車し、腕をしっかり掴み引きずるように部屋に入れる。
「いや…怖い…」
少し涙声だ。知るか、犯してやる。
「脱ぎなさい」
恐々と脱ごうとしている。
「早くしないか!」
ヒッと息を呑んで慌てて脱いで行く。
湯文字一つになった先生の腕を掴み、ベッドに投げ出した。
「胸に歯型でも付けてやろうか?コラァッ!」
私の迫力に押され、本気で泣いてしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさい…」
泣く様子に我に帰る。まずいな、ブチ切れてた。
そっと手を取ると震えている。
「芸妓と会ってたくらいで嫉妬しないでください。
 その人とはそういう関係じゃないんですから。私はあなただけなんです。
 乱暴にしてすみません。」
そういって先生の涙を拭き、唇にキスを落とす。
まだ怖いみたいだがゆっくり優しく愛撫するうちに震えも落ち着いてきたようだ。
耳朶を甘噛みし、好きです、と囁いて力を入れず抱きしめる。
「ん…」
青かった顔色にも赤みがさしてきた。
このまま抱いてしまおうか。
逡巡、時計を見る。駄目だ時間ががが…。
ふうっと息を吐いて身を離す。
「帰りましょう。着物、着て下さい」
いいの?と言うが時間がなあ。
フロントに頼んでタクシーを呼んでもらった。
先ほど乱暴に脱がせた着物を着てゆくのを見る。
さすがに本職、着るのは早い。そして美しい。好い女だなあ。
タクシーに乗り駅ではなく直接先生のおうちへ向かってもらう。
ここからなら時間は変わらない。
だったら余人を交えず一緒に居たいじゃないか。
タクシーの中で先生の髪の乱れを整髪剤で撫で付ける。
うん、こんなもんだろう。
「うちへ帰ったら洗髪して下さいね」
手拭きを3枚くらい使ってやっと拭取れたほどの強い整髪剤だからね。
「今度、うちに来ませんか」
返答できないようだ。
手を握って無言のうちについてしまった。
先生を降ろして私は最寄の駅で下車し電車で帰宅した。

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