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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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(絹目線)

ええ?なんで降りるの?山沢さん!?
追いかけようにも電車は出発してしまった。
家に帰ったら電話してみなきゃ。
切符を見るとちゃんと最寄り駅まで買ってあった。
大人げ、なかったかしらと鬱々としていると乗換駅に着いた。
乗り換えて最寄り駅に向かう。
タクシーに乗って家まで帰るとお昼ご飯の匂いがする。
「ただいまぁ」
「あら、おかえり。大変だったね。着替えといで。あんたも食べるだろ?」
着替えて、お昼ご飯を済ませたら気が緩んで眠くなった。
「寝るなら部屋で寝といで」
居眠りしてたみたい。
「そうするわ…」
部屋に戻って寝て、起きたらもう夜になっていた。
そういえば山沢さんは…と思って居間に出て来て時計を見ると、
人の家に電話をしても良い時間とも思われず。
どうせ明日はお稽古日、来るわよね。
おなかがすいたので軽いものを食べて、もう一度寝なおした。
翌日のお稽古、山沢さんが来ていない。
疲れたのかしら、気まずいから?
次のお稽古も、その次のお稽古も来ない。
お母さんがお家に電話をした。
…この電話は現在使われておりません。
「どうしたんだろうねえ」
さようならって、もう来ないということだったのかしら…。
心配しながらテレビを見ていると…。
「……先ほど発見された自殺者は京都市右京区の山沢久さんの遺体と判明し、
 現在遺書などの捜索に当たっています」
「ええっ!山沢さん!? 嘘!」
「嘘だろ!?」
なんで…どうして…。
「飯島さーん、書留でーす」
玄関から郵便屋さんの声がする、慌てて出ると速達の手紙が一通。
差出人は…山沢久!
「お母さん!山沢さんから手紙!」
すぐに開いて読むと…。
「……これが届く頃に私はいないことでしょう。
恐らくは原因などの捜査でこちらにも問い合わせが来るかと思います。
もし、私の体面を慮ってくださるのであれば、
"違法物品の売買に関して5千万の損失を受け、それに関する金策ができなかった"
警察にはその程度のことを伝聞としてお話いただければ済むと思います。
飯島先生にはご迷惑をおかけして申し訳ありません」
などと書いてあった。
「絹、あんたあちらにいるときにそんな話とか聞いてたかい?」
「そんな…してなかったわ、そんな話…」
私が拒絶したから?そうなの…?
受け入れたら、良かったというの……?


Fin

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g2

先生は頬を染め、袂で顔を覆っている。
あまりにも可愛く、つい手が出た、出てしまった。
「先生…」
肩に手をやり、こちらに向ける。
「やっ…」
唇にキスを落とす。先生はビクッとしている。
抵抗しようとする手を掴み、首筋にもキスをする。
「んッ…いや…お願い…」
「………聞けません、無理です」
そっと胸に触れる。

先生の抵抗する手が膻中に入って、私が悶絶した隙に逃げられた。
あいたたた…。
先生は緩んでしまった打ち合わせを直されている。
「うぅ…すいません。頭冷やしてきます」
大浴場の水風呂でも入ろう。
「山沢さん…なんで嫌って言ってるのにしようとするの…?」
「…どうやったら嫌じゃなくなるってんですか。合意の上でとかありえないでしょう?」
「それはそうだけど…」
それはそう、なのだなぁやっぱり。
のっそりと起きると、先生が困った顔をしている。
「ラウンジ、行ってきます」
煙草一式持って出ることにした。時間潰さないと二人きりは無理だ。
「あ、はい…」
先生を置いて部屋を出る。
ペッタペッタと草履を鳴らしてラウンジに行く、先客がいるようだ。
何かコニャックかアルマニャックを、と頼むとレミーマルタンが出てきた。
定番だな。ストレートでいただく。飲み過ぎないように気をつけないと。
一口、二口、うまいなあ…。足音。
「山沢さん…」
うわっ、なんで?どうして追いかけてくるんだ…。
スタッフが来て飲み物は、と聞かれた。
「同じものを…」
先生も飲むのね、洋酒。まあレミーマルタンなら飲めるよね。
でもストレートで飲めるのかな、あ、むせた。
私のグラスに移して、スタッフに水割りをひとつ頼む。
「無茶をしないでください」
それきりしばらく会話もなく飲んでいる。煙草を取り出す。
「吸ってよろしいですか?」
「ええ」
煙管に葉を丸め入れ、ライターで着火する。
一服、二服、三服、灰皿に灰を落とす。
先生がこちらを見ている。
「吸われますか?」
「ううん、私、吸わないから」
くいっとグラスに残った酒を飲む。煙草とブランデーの混ざった味。
おかわりを頼もうか、どうしようかと思っていると、
「お部屋、戻りましょ?」
と先生が言う。
「はい」
さらっとサインしてラウンジを二人で後にした。

部屋に戻り、なぜ追いかけてきたか聞いた。
ミニバーからマーテルVSOPのミニボトルを取りグラスを出す。
私が落ち込んでいるように見えたから、追いかけてきたという。
「でもどうしたらいいかわからなくて…」
う~ん。
「私とする気がないのでしたらとっとと寝たら良いんじゃないですか。近寄らずに」
ちょっとムッとされたようだ。手首を掴み、引き寄せ、
「それとも、私としてくれますか」
飲みながらそういってみると平手が飛んできた。
唇が切れたようだ。
手を放して、部屋を出る。
ぐだぐだだな、私。
そのまま、人の来ないエリアに移動する。
さすがに追いかけては来ないだろう。
ふと外を見ると雷雨、今の気分には合うが…。土砂は片付いてくれるのだろうか。
明日にはここを出たいものだ。もう無理だ。
瓶を持ってきたままだ。呷る。しみた。唇切れてたんだった。
馬鹿らしくて笑っちまう。
飲みつつぼんやり眺めているうちに深夜1時、そろそろ寝てるか。
部屋へ戻ろう。夏だから和室で転がっても風邪は引くまい。
そっと静かに入り、様子を伺う。寝息。よし。
座布団を枕に転がった。すぐ眠りに落ちた。

翌朝起きると先生がいない。
大浴場に行ったようだ。
私に羽織をかけてあった。あんなことがあっても気遣いの人だな。
取敢えずは道路状況の確認をするか。
…確認したところ電車は復活したようだ。チケットを予約する。
先生が戻られた。
伏し目のまま無言だ。怒ってるか、仕方ない。
挨拶をして洋服を持ち大浴場に向かう。
先客がちらりとこちらを見る。
どうでもいい。
しばらくして風呂から上がり、洋服に着替えてフロントへ行く。
駅までのタクシーの手配を頼む。
11時半の予約なので10時半に呼んでもらう。意外と混むからな、あの道。
支払いもお願いし、待っているともう食事の時間らしい。
先生が来たが私とは目も合わされず食事の場所に案内してもらっている。
後姿を見送り、支払いを済ませる。
そして案内されて先生の向かいへ座り、食事を取る。
終わりがけ。
「10時半になったらここを出ますから10時までに着替えを済ませてください。
 その頃に戻ります」
そういうとほっとした顔をされた。
食後、部屋に戻る道から私は逸れてヒーリングルームへ。
一時間くらいすぐ過ぎるだろう。
秋の気配の庭を眺めつつ寂寞とした思いにとらわれる。
もはや10時か。
部屋に戻る。あえて音を立てて入室する。
先生はすでに着物に着替えられ、化粧も整えられている。
私はそれをまぶしげに見て、目をそらす。
さっと私は荷物を片し、金庫から財布を出して手渡した。
これで良し、見渡して忘れ物がないか確認する。
ミニバーも私が持って出たマーテルしか減ってない。これは支払い済み。
先生はずっと無言だが、「出ますよ」と声をかけると、「ええ」とのみ返ってきた。
フロントにつくと車がすでに来ていた。
先生を後部へ、私は助手席へ。
駅に着き発券してもらい、乗車。
先生に窓側と通路側どちらでもというと窓側に座られた。
乗車中、私は財布から万札とタクシーチケットを出し、
切符・指定席券とともに先生にお渡しする。
えっという顔をされた。
立ち上がり、さようなら、といって私は降車する。
先生は追いかけることもならず、発車した窓から私を見ておられた。

私は乗り換えて一路京都へ。
京都タワーを見ると帰ってきた、と思う。
バスに乗り、自宅へ戻る。
狭く、本だらけの自室は出たときそのままだ。
さあ机を片して手紙を書こう。

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end2

「絹さん…」
いつもの部屋で私は先生を抱こうとしている。
この部屋は他の部屋より離れているから荒々しくしない限り家のものには聞こえない。
スリルと、衝動。
布団に倒してキスをする。
ガラッ!
「きゃあっ」
「山沢さん、明日…」
うわわっ!八重子先生!
「あー…明日の稽古から袷でおいで」
パスッと襖を閉められてしまった。
え、あれ?どういうこと?
先生と顔見合わせて八重子先生を追う。
「あの、八重子先生…すいません…」
「ああ、わかってたよ、しってた」
ちょっ知ってた?マジで?
「秋口にはそうだったんだろ?」
は、はぁ…。実は夏頃でしたが。
「そのー、良いんですか?」
「生徒さん達にわからないようにしてて、孝弘さんも何も言わないから。
 絹が良いなら良いか、と思ってねぇ。ただ律たちには気づかれないようにしとくれよ」
あ、先生も来た。
「お母さん…」
「ところでなんでこうなったんだい?」
間違えてしちゃったこと、その後の未遂、旅行で襲ったことなどをぼかしつつお話しする。
「あんたら二人とも大人だからね。上手にやんなさいよ」
おぅふ公認。

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g

今日は稽古だ。
少し早めに家を出た。
呉服屋で着物ハンガーを買う。
いろいろ見せてもらったが最近のものは小さく畳める物があるようだ。2本買った
ついでに湯文字を買った。紅花染と、白晒。一度試してみたかったのだ。
鞄に仕舞えたので身軽に稽古場に着いた。
先生があわてた様子で玄関に居られる。
「こんにちは、どうしたんですか?」
声をかけると先生は、私の腕を掴んで
「ちょうど良かった、ちょっと一緒にきて!」
とタクシーに乗せられてしまった。


どうやらお知り合いのお茶会の水屋メンバーがインフルエンザで半減、
手伝いを急遽頼まれたそうだ。
私でも使いっ走りくらいにはなるか。
お茶会の裏方とか、経験したことがないしこれも稽古と思えば良い。


って結構遠いぞ、どこまで行くんだろう。
小一時間かかった先で裏方を手伝っているうちに雨が落ちてきた。
結構裏方って大変だ。
お客さんたちも帰られたころ、雨脚が強くなってきた。
茶室や水屋の片づけを終え、お礼を言われて帰ろうとタクシーに電話をするも繋がらない。
繋がったと思ったら行き先を言うと無理ですといわれてしまった。
どうやら土砂崩れで電車・道路両方通行不能とのことだ。
宿泊の手配をしたほうが良いとまで言われてしまった。
先生に報告し、宿泊の手配をする。
確かこの近くに前に泊まったことのあるホテルがあったな…まずはそこに賭けてみるか。
「キャンセルが出ましたので空いています」
おっラッキー。
二人で、と依頼し先生にホテルの手配がついたと報告した。
さてそこまでどうやって行こう。
先生は着物だからこの雨の中歩くのはちょっといただけない。
すると、茶会を開いていた席主の方の息子さんが車を出してくださるという。
ありがたく乗せていただいてホテルに着いた。
先生をロビーに残しチェックインの手続きをする。
部屋に案内されると、前に泊まった部屋と同じタイプだった。
露天風呂つき和洋室というやつだ。
ここの露天風呂はちゃんとシャワールームが別になっている。
浴槽に洗い場の汚れが入らないつくりだ。


仲居さんがお茶を入れて、カードキーや食事の時間などの説明を受けた。
夕食は30分後のようだ。ここは部屋食ではない。
仲居さんが出て行った後、少し落ち着いて財布を金庫に突っ込み、
状況確認にテレビをつけた。
来る来る詐欺みたいだった台風が勢いを増して直撃したようだ。
「あっ、おうちのほう連絡されてませんよね。電話、どうぞ」
私もまだしてないが携帯あるからメールでいいや。
連絡が終わったところで良い時間になったので、食事に立つ。
私は以前泊まってるので場所を知っているということで先生を先導して行く。
料理は決まっているので日本酒を少し頼む。
先生もそれで良いというので違う銘柄を1合ずつ。
「あらぁ」
ここの食事はおいしいのだ。そして沢山有りすぎるのである(笑)
先生はちょっと困ったような顔をされつつ、おいしそうに食べておられる。
「太っちゃうかしら」
私も前はそう思った。でも意外と体重は増えないんだよね。きっと魚が多いからだな。
ちょっと最後のほうは入らず最後の方の料理をパスしてデザート、ドリンク。
ほろ酔い加減で部屋に戻り、テレビを見て状況を確認した。
明日も一日閉じ込められそうな感じなので一応フロントに連泊できるか聞くと、
快諾だった。
先生にお風呂を勧め、大浴場とどちらが良いか聞くと部屋でよいとおっしゃる。
そのまま、私の前で帯を解かれ…
あっちょうど着物ハンガー買ったんだった。
鞄から取り出し、広げて先生の帯を通し、するりと落とされた長着をハンガーにかけて
鴨居につるす。
長襦袢をはらりと脱がれ…私は慌てて目をそらしてしまう。
うぅーやばい。襲ってしまいそうだ。
そう思いつつ、長襦袢もハンガーに掛ける。
先生はくすっと笑ってシャワールームに向かわれた。
風呂にバスローブがあるけど寝間着の浴衣の用意をしておこう。
先生は多分Mサイズのままでいけるはずだ。私は先にいって男物を用意してもらってある。
布団の上にストレッチ足袋と浴衣と帯のセットを置いておく。
晩酌用の日本酒も用意しておこう。
ふと見ると露天風呂に先生が浸かっておられる。
綺麗だ。
そろそろ出てこられるだろう頃になって湯文字の存在を思い出した。
シャワー室の前まで行き、先生に替えの湯文字は必要かお伺いを立てる。
幸い本日買ったものがありますが、と。
ありがたく、とおっしゃるのでバスローブとともに置いておいた。
自分の分の下着は、先ほどフロントで買ってあるから問題はない。
風呂から出られたので、代わりに私が入る。
ざっと汗を流し、露天風呂に浸かり外の大雨を眺める。
外は涼しく、湯負けしない程度に温まった。
シャワー室で成分をすすぎ、先生がドライヤーを終えて化粧室を出られたのを確認し、
バスローブを羽織り、化粧室に出て下着を着けた。
先生はすでに浴衣に着替えられてテレビを見ておられる。
あの下は湯文字一枚か…。
ドキッとしつつ、私も浴衣に着替えた。私は晒で胸を巻いてからだが。
先生の対面に座り晩酌を勧める。
ほんのり桜色に上気して、可愛らしく、また美しい。
「ねえ、山沢さん。あなた付き合ってる人とか好きな人とかいないの?」
うわ参った、これ聞かれるとか。ないわー。
「付き合ってる人はいませんが好きな人ならいますよ」
「あら、どんな方?」
「ははは、そりゃ言いづらいですねえ」
「聞きたいわぁ」
ええい、ままよ!

「あなたですよ、先生」

あ、先生、止まった。
そっと杯を持つ手を取り、軽く引き寄せる。
「あ、あの、山沢さん?」
困惑しているようだ。
「冗談、よね?」
「本気だといったらどうしますか?」
おお、顔が赤い。耳まで赤い。
手を離しさっと机から離れて横へ行き改めて手を掴んだ。
「好きです」
そういいながら己のほうへ引き込んだ。
脇息が倒れ、私の胸に引き寄せられた先生は慌てている。
「だ、駄目っ、駄目よ」
さすがにこの状況、何をされるかの見当はついたみたいだ。
がんばって抵抗しているようだがさすがに腕力では私に負ける。
畳の上に引き倒してしまった。
「いやっやめてっ山沢さんっ 放してっ」
本気で嫌がっているがもう遅い。
ここまできたらやめてもやっても一緒だろう。
どうせ気まずいだろうし破門だろう、ならばやるしかない。
乳房を揉み、乳首を舐め、しごき、潰す。
「やめてっねぇっ」
刺激に反応して乳首は立ってきたがまだ抵抗は当然強い。
こう、本気で嫌がられるのは悲しいものではあるが。
焼き付けるかのように触れて舐めて。
二度とないだろうから。
足も。足指の先まで。暴れるが腕力任せだ。
ふくらはぎ、ふともも。体をよじって逃れようとする。
そしてそこに到達した。
「もうやめっ…あっ」
ぜんぜん濡れてない。想定内だ。
そっとくつろげてクリを舐めると、声が涙声に変わった。
「そこはだめっひっいやっ」
がっちり腰を掴んで舐める。
まだ包皮に隠れているクリを吸い、舐め、転がす。
充血してきた。そっと包皮を剥く。
そのまま愛撫を加えていると多少濡れてきた。
これは受け入れてるからというものではなくただの反応だ。
わかっている。
先生はまだがんばって抵抗しているから。
ときたま、「あっ」とか「うっ」とか色っぽい声は聞こえるが。
ちょっと体はビクビクしているけど。
音が出るように舐めると抵抗が少しだけ弱まる。
膣口に舌を割りいれるとまた抵抗が強まる。
「入れないで…それだけはよして…」
泣いているが構うものか。
十分濡れたところで中指をじわじわと入れる。
ゆっくり抜き差ししたりさぐってみたり。
そっと薬指を足す。
中で蠢かすごとに声が漏れる。
擦ると抵抗が薄くなるポイントを見つけた。
クリに刺激を与えながらそこを擦ると力が抜けていく。
「ぅぅっ」
っという声が聞こえてガクガクとした。
中逝きタイプだったのか。
息が荒い。
そのまま中を堪能していると押し殺しているが甘い声が聞こえる。
唇にキス、首筋、鎖骨、胸、あちこちにキスを散らしているが
先生は私の入れてる手の方を握り締めているだけでどうすることもできないようだ。
2度ほど頂点に押しやったころ、抵抗もなくなった。
弛緩している。
汚した股間を拭き清め、浴衣を調えて抱きかかえ、布団へ。
ひどい、と呟いたきりなにも声を発されない。
掛け布団をかけて照明を消し、私は後始末をした。
酒がまだ残っている。
縁側に寄り雨を眺めて飲むことにする。
おそらく明日は顔も見たくない、といわれるだろう。
どうせどう告白したところで出入りできなくなるのだから、と
こんな方法を選んでしまったが女にしてみれば最悪の事態だ。
そうこうしているうちに寝てしまった。

ふと物音に目が覚めると朝になっていた。
風呂に入っている音のようだ。
もう少し寝た振りをすべきか、起きて謝りにいくべきか。
外はまだ雨がひどい。道はどうなっているのだろう。
起きてフロントに聞こう。
………問い合わせたところまだ不通、開通は明日以降となるそうだ。
もう一室、部屋はないかと聞いたがどこも満室。ほかのホテルもご同様らしい。
しょうがない、同室はイヤだといわれたらロビーに行くか。
先生が風呂から出る音がする。
どうしようか。とりあえず土下座するか?
「山沢さん。」
「は…。」
先生が膝をついて目の前に。
バシッ!
いってぇ…平手だ。
あ、だけど先生も痛かったみたいだ。
その手を思わず取ってしまった。
先生の体が逃げた。
ハッとして手を放して控える。
先生は自分の手を懐に握りこみ、私に叱責を始めた。
お腹立ちだ。そりゃそうだよな。
ちら、と視線を上げると首筋にもキスマークが残っている。
叱るにも疲れたようで話題が変わった。
「それでさっきフロントにかけてたようだけど…」
「は…現在まだ交通機関・道路状況が良くなく、開通は明日になるようです。
 この部屋はあさってまでキャンセルが有るので泊まれるそうですが、
 ほかの部屋は空いておらず、またよそのホテルも部屋はないそうです。
 申し訳ありませんが、同室願います」
「仕方ないわねぇ…昨日みたいなこと、しないでちょうだいよ」
目を合わすと、視線を外された。私は黙って目を伏せた。確約しがたい。
「さっき叩いただけじゃ足りなかったかしら?」
「いや、あの…すいません」
ふぅっ、と溜息をつかれた。
「とにかく、こういうことはもうしないでね」
黙っている私。
というか身じろぎされたときに浴衣の裾から足が見えてしまってつい注視してた。
「あのねぇ、山沢さん?…どこを見ているの」
あ、バレた。
先生はさっと足を隠された。
あきれた顔つきである。
「そろそろご飯の時間だから、顔洗ってきなさい。」
立って洗面所へ向かう。
洗顔・歯磨き、整髪を済ませ、部屋に戻る。
先生はすでに肌襦袢などの上から浴衣を着直して羽織を着ていた。
「はい、これ」
私の分の浴衣を手渡してくださる。
ささっと着て羽織を引っ掛けると先生から駄目だしを食らった。ははは…。
ちょいちょいと直されて、食事処に向かう。

朝食は和食。料理が並ぶ。
「こんなに沢山食べられるかしら…」
昨日も多かったから無理だろうなあ。
それなりにいただく。沈黙が辛い。
お茶を頂いていると仲居さんが来た。
エステが空いているらしく、どうかという。
先生にお勧めしたが決めかねて、部屋に戻ってから連絡することにする。
部屋に戻る。
「お財布にそんなに入れてきていないのよ」
先生はそうおっしゃる。
「私が支払いますから」
謝罪の足しにならんかなぁ…。
というか気まずいので長時間二人というのは辛い。
「あなたはどうするの?」
私は…あ、ここジムあったな。
「ジムにいきます。終わられる頃に戻るようにします」
そういってエステの予約を入れた。
小一時間ほど時間がある。中を散策して腹ごなしをしようということになった。
大浴場、プール、売店、外の食事処、他施設などをぶらりと見る。
「色々有るのねえ」
化粧品を少し買う。泊まる予定じゃなかったのでスッピンだから。
支払いを済ませるとそろそろ時間だ。
受付に告げ、先生をエステに送り出す。
2時間後、ということで私はジムへ。
ジム受付で色々借りる。宿泊者は無料で借りれるのだ。
トレッドミルやマシンを利用する。
そろそろ時間が近いな。
さっとシャワーを使い戻ることにする。
エステの近くで待っていると先生が出てきた。
大変にリラックスされているようだ。良かった。
だが部屋に帰る道で手の甲をつねられてしまった。
どうやら昨日散らしたキスマークが残っていたらしい。
それは申し訳のないことを…。
部屋に戻り、お昼はどうするかとたずねたが、全然空かないという。
やっぱりなあ。
「ちょっと眠くなっちゃったわ」
エステの後はリラックスするからだろうか。
部屋は先ほど出ている間に清掃が入ったのでシーツも清げなものに変わっている。
「どうぞ、寝てください…ええと、私が気になるようでしたら出ていますが」
時間潰すにはカラオケもボウリングもある。
「そうねぇ…なにもしない? だったら部屋にいても良いわよ?」
「ははは、まぁとりあえずは風呂行って来ます…」
ちょっと自分に自信がない。
いってらっしゃいの声を受けて私は大浴場へ。
湯船に出たり入ったり、ぼんやりとする。
ここは基本他の人と一緒ということがない。部屋風呂がすごく良いからなあ。
そろそろ部屋へ戻るか。ちょっと眠いな。
音を立てないように部屋に戻り、寝室を覗くと気持ち良さ気に眠っておられる。
睡魔に襲われる…抗い難くもうひとつの布団に入り眠った。
テレビの音がする。
ふと目を覚ますとすでに隣の布団に姿はなく、先生は座卓でお茶を飲んでおられた。
身づくろいをして布団を直し出て行く。先生の横に座った。
テレビはこのあたりの土砂災害についてのリポートだ。
「やはり明日の早朝くらい、ですか…」
「えっ、ええ、そうねっ」
ん?と思うと何か顔が赤い。
そのままお茶を入れようとして湯呑をひっくり返された。
あわてて手拭で拭取る。ぬるくてよかったけど先生の浴衣が大惨事。
「脱いでくださいっ」
着替えてもらわねば、と思ってそういったのだが先生は真っ赤になっている。
「あっ…あの、ええと、すいません、浴衣出してきます。見ないようにしますんで!」
あわてて新しい浴衣を渡し、部屋の外へ出た。
しばらく部屋の外にいると、入って、と中から。
「ごめんなさいね、ちょっとぼんやりして…」
いえ、と答えて手拭などの始末を手伝う。
手が触れた。
二人ともはっとする。駄目だ二人して意識してる。
先生は後ろを向いてしまった。
思わず抱きしめた。
「駄目、駄目よ、山沢さん」
しばらくそのままでいたが、落ち着いてきた。
先生も落ち着かれたようだ。
腕をぽんぽん、と叩かれたので放した。
「すみません」
「落ち着いたかしら?そういえばそろそろご飯の時間ねえ」
あ、たしかに腹減った。
先生は今日買った化粧品でサッと化粧をされている。
私はその間に身づくろいをした。
今日の食事もたっぷりだ。
お酒は、俺はやめておこうと思ったが先生が頼まれてついで下さった。
少しいただいた。
部屋に戻り、おなかがこなれたら、と大浴場をお勧めする。
折角だからということで小一時間程して入りに行かれた。
一人いると、昨夜のことを思い出す。
随分手荒くしてしまったな。
一発叩くだけで済ますというのは大人な対応だ…。
だけどさっき…赤面してたのは先生も思い返していた?
そうしているうちにいやがりつつも耐えかねて漏らす声などを思い出してしまった。
先生が戻られた。
湯上りに上気した顔が美しい。
先生は私の視線が胸や腰のあたりにまとわりついているのに気づかれて、
慌てて後ろを向かれた。
「どこ、見てるの…」
1.犯す 2.謝る どちらにしよう。逡巡。
うおっ!なんだ携帯のメールか驚いた!
「すいません」
メールを見ると発注かけろという連絡だ。
鞄からタブレットを出して操作する。
発注をかけていたら先生が覗き込んできた。
見慣れないことをしているからだろう。
それはいいのだが先生の体温が…。近くてドキドキしてしまう。
発注を急いで終え、タブを閉じると前回閉じ忘れていたサイトが映った。
「きゃっ」
先生が横を向いた。私は慌ててブラウザを閉じる。
折悪しく緊縛M字の大画面である。

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endイメージ

バレて出入り禁止になったあと、山沢は隣の市の先生についている
女性らしく着物を着て髪を伸ばして。
今の先生は飯島先生とはお知合いだが、なぜ移籍したのかはお知りではない。
山沢は男の点前を封印し、女のお点前をのみお稽古している。
真面目で物静か、お点前の覚えもよく上手な生徒、無口という印象だ。

そんなある日の稽古。
上のほうの先生が出張稽古に来られた。
そう、講習会の講師の先生だ。
こちらを見て首をひねっている。
「君。確かいつだったかの講習会で飯島さんと一緒にいた方だね?
 なに?こっちに移ったの?」
「はい」
それ以上は何も聞かれず、移籍はよくあることらしい。
お稽古が始まった。
私の番が来る。
「山沢さんは男で行之行、濃茶、拝見」
講習会でやったやつだ。
色々と思い出してしまうが、スムースにお茶を点て、出す。
照りもよい。上の先生が一口飲まれる。
すぐに茶碗を返された。
お仕舞いの挨拶があり拝見もなく仕舞う。
次客に座る先生は何で?という顔をされている。
すべてを水屋へ仕舞っていると、先生が上の先生にお伺いを立てている。
「なにか不都合でもございましたでしょうか…」
上の先生は苦笑する。
「湯の温度も練りもよろしい。点前もよろしい。問題ありませんよ」
稽古場は少しざわついたままお稽古は進む…
見学の場に戻ると、「今日は帰りなさい」と上の先生がおっしゃる。
すぐにお先に失礼します、と先生宅を出た。

練ったお茶には精神状態が出る。
どんなに綺麗に点ててあるように見えても、あのお茶ではわかる。
山沢は山に分け入る。人が来ないところで落ち着きたい。

そう、山沢はまだ絹に心を残している。
風の便りに噂を聞いては落ち込み、茶会へ行けば来ては居られぬかと探してしまう。

山沢は稽古場ではできるだけ真面目にお稽古をしているつもりだ。
だが今回のように思い出されてしまうことがある。
これまではそんな状態で点てた茶でも、飲む人は生徒さんで気づかれなかった。
さすがに上のほうの先生にはわかってしまうようだ。
少し開けた岩場につき、風呂敷を広げて座る。
バッグから喫煙具を出し、一服つけようとするが火がなかなかつかない。
山沢は苦笑し、あの日のことを思い出していた。


その日は展覧会を見に行く予定だった。
先生宅に一度寄ってから二人で行く、そういう予定であった。

「おはようございます」
そういって玄関を開けると八重子先生が出てきた。
「山沢さん。来なさい」
なんだこの緊迫感…。
居間につくと絹が青い顔をしている。
まさか…!
「説明してもらうよ。絹と何をしていたんだい?」
私も一瞬で青くなる。
「ええと、あの、なにをといいますと…」
言った瞬間、顔を張られた。
「絹とsexするなんてふざけた事をしておいて、何がはないだろう!?」
やっぱりバレか!
「も、申し訳ありません!」
平身低頭、これしかない。
「どういうきっかけでそうなったんだい」
酔ってほとんど意識のない状態を襲ったこと、その後は脅したこと、
すべて主体は私で絹先生からそういうお誘いはなかったことなどを話す。
完全になかったとはいえないが、そこはそれ。
俺が無理を押したことにするほうが角は立たない。
ああ、八重子先生怒ってる。どうなるんだろ私…。
「山沢さん、あんたは出入り禁止だよ! 絹、あんたは外出禁止!」
つまり会うなってわけですか。
デスヨネ。
山沢は追い払われるように先生宅を出た。
絹先生は見送るのも禁止され、叱言を食らっていたようだ。


思い出すだに、折檻を食らってでも続けたかったあの日々がつらく悲しく、懐かしく。
そして会えない日々を暮らしている己が情けなかった。
山沢にもう少しの思い切りがあれば駆け落ちをしただろうか……。

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