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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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182

「ね、俺とするの、いやですか?」
「いやじゃないわよ…兄さんに聞こえたら困るって言ってるのに」
「聞こえないようになら良いの?」
頬を染める。
「恥ずかしいから今日はよして。お願い」
「仕方ないな。今日だけですからね。明々日はしますよ?」
「抱き締めるだけじゃ駄目なのね…」
「というかむしろ抱き締めてるとしたくなって困るというか」
「だったら別の布団」
「は嫌ですね。困るけど別の布団で寝るくらいなら我慢するほうがましです」
ぽふぽふと先生に布団をかぶせて抱き込む。
ぬくい。寒いときは人肌最高!
軽くキスして、おやすみなさいと言えばおやすみなさいと返って来る。
髪をなでればすぐに寝息。
いつも寝つきが良くてうらやましい。
俺はいつも先生の胸や尻を触りたくなって悩ましく寝つきが悪いから。
それでも良く寝て朝になり、朝御飯の支度をして食事をとる。
そろそろ帰ろうかと言う開さんを引き止めて、このあたりに部屋はないかと聞く。
ワンルームでいいから防音。
明日会社に戻ったら探しておいてくれるそうだ。
もしなかったら施工もありと言うことで近場の部屋もピックアップを頼んでおいた。
そのまま一緒に外出する。
このあたりの煙草屋に刻み煙草を求めて。
4,5件回るがどこにもなく、昼過ぎに戻るとお昼が用意されていた。
あーきつねそばだ。甘きつね。うまい。
昔きつねそばを頼んで刻みきつねが出てきて、困ったことがある。
「外寒かったでしょう? あったかい物がいいかと思って」
「ありがとうございます。また寒波とか言ってますよね」
「これからまだ寒い2月が待ってるかと思うとぞっとするね」
「確かにいやですね。仕事も昔から二八の月はお客さんが来なくて余計に寒いです」
「へぇ客商売はそういうんだねぇ」
「寒いと買い物行くの、嫌になるでしょう?暑いといやになるでしょう?」
「ああ、たしかにそうだねえ」
「明日はあったかいといいですねえ。
 皆さん寒い外に順応した格好なさるから暖房難しいですよね」
「炭の熱気もあるからねえ、今日はあったかいうちにお帰り」
「そうね、夜はもっと寒いわ。風邪引かないようにね」
「はい。名残惜しいですが早めに帰ることにします」
玄関に出る前にディープキスをして、では明日と別れた。
電車に乗って帰宅して、寒々しい部屋に暖房を入れる。
結局軽く一度しただけの連休だった。
また、うちにつれてこなきゃな。

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181

「ふぅん」
八重子先生が浴衣を出してきた。
「山沢さん、これ、開に持ってってやっとくれ。私ゃもう寝るよ」
「もう寝るの?」
「なんだか眠くてね」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「じゃちょっと持って行ってきます」
「お願いね」
ひたひたと廊下を歩いて風呂場へ。
「開さん、これ浴衣です。八重子先生がお渡しするようにと」
カラリと開けて言うと飛びのかれた。
ここ置いときますね、と風呂場から出てすぐの籠の上に置き、戸を閉めて戻った。
「兄さんが出てきたら私たちも寝ましょうか」
「あ、じゃあ戸締り確認してきます」
勝手口、よし。玄関、よし。
庭側の戸締まりを調べて戻る。
開さんが浴衣を着ていて、寸が足りてない。
「へぇ、怜さんより少し大きいんですね、開さん」
「そうみたいね。山沢さん、男の人が入ってるお風呂の戸を開けちゃだめよ」
「吃驚したよ」
「ああ、失礼しました、つい。まぁ、おあいこと言うことで」
「……ああ、前そういえば見たっけ」
「さて、先生。寝ましょうか」
あ、そこで顔を赤くするなって。
「そ、そうね。おやすみなさい」
あーあ、自室帰っちゃった。
「邪魔してしまったかな」
苦笑。
「飲みますか?酒」
「あー、いや、いいよ。僕も寝るから。絹のところ行ってやって」
「すみません。ではお先に。おやすみなさい」
「おやすみ」
先生の部屋へすすみ、何も言わず襖を開けた。
ぎょっとする先生の腕を取り引き寄せる。
「俺の部屋、行きましょ」
「兄さん知ってるのに…恥ずかしいわ」
「知られてるのだから乱れればいい。聞かなかったことにしてくれますよ」
「いやよ…」
「それともこの部屋でしますか?俺はそれでも構いませんよ」
「いや…」
「部屋においで。聞こえない程度にしてあげるから」
首を振る。
ええい、面倒だ。抱き上げて俺の寝間まで連れて行く。
なじられつつも布団に下ろした。

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180

台所を片したら後は初釜の細かい打ち合わせだ。
明後日だからね、色々と用意がある。
細々と動いて話し合って。
俺は朝は来られないから。
電話。
律君からで友人宅に泊まるとか。
孝弘さんは離れかな。
何合炊くか変わるから後で確認しよう。
連休と言うのにゆったりとも出来ず、抜け落ちはないかなど確認して。
さぁそろそろ晩御飯を。
孝弘さんは…いない。
「先生、離れにおられませんよ」
「あらそう? どうしようかしら」
なんて会話をしていると電話があり、ご飯不要、どこかに泊まってくるとのこと。
「あらあら、じゃ何食べましょうね」
「手の込まないものでいいですよ、俺は」
「んー、とりあえずお野菜洗ってくれる?」
「はい」
ご飯を炊いて野菜を洗って渡すとササッと炒め物。
お漬物と、ポークチャップとつけあわせ。
美味しく晩飯もいただいて。
お風呂に入る。
風呂上り暑くて胸元を広げてくつろいでると開さんが来た。
「しまいなさい、胸!」
絹先生に叱られた。
そんなに慌てなくともいいのに。
「どうしたの?兄さん」
「家の鍵落とした…」
「なんかよく落としますね。この間も何か落としてませんでしたっけ」
「あー財布?」
「でしたっけ?」
「で、母さんうちの鍵持ってない?」
「ちょっと待って、探してみるわ」
「姉さんは?」
「仕事で帰ってこない」
「会社にとりに行けばいいんじゃないの?」
「姉ちゃんの会社まで遠いんだよ」
引き出しの鍵の中から探しているがどうやら見つからないらしい。
「泊まっていい?」
開さんはがくーっとしている。
「いつもの部屋で寝るの?お布団敷いてくるわよ」
「頼む」
絹先生が布団を敷きに行き、俺はそろそろ熱気も冷め炬燵に入る。
「やーほんと外寒いねえ」
「この辺やっぱり山が近いだけに寒いですよね。風呂まだ湯抜いてないからどうですか」
「ああ、そうしなさいよ。お父さんの浴衣出してあげるから」
「そうするよ」
開さんが風呂に行かれた後、絹先生が戻ってきた。
「あら兄さんは?」
「お風呂ですよ」
「お湯まだ抜いてなかったの?」
「ええ、あとでもう一度浴びようかと思ってたので」

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179

「じゃあそろそろ山沢さん、煮物、しましょうか」
「う………。はい」
アルバムを片付けて台所へ。
「まずお出汁だけど」
「朝に用意してあります。これ」
昆布を水につけておいたものだ。
「まずは山沢さんの思うように作ってみて頂戴」
「はい」
里芋をまずは洗い、軽く茹でて皮をむき、切る。
出汁を2杯、酒・みりんを1:1、塩を一つまみ入れた。
しばし炊けるのを待ち、風味付けに醤油を落とす。
出来たので味を見ていただく。
「あら?意外と美味しいわね。やればできるじゃないの」
「私、味見してなかったでしょう…それ、私が食べると味が薄くて」
「ええ?そうなの?」
「一つ食べてもいいかい?」
「あら、お母さん」
「どうぞ」
「あぁ美味しいねえこれも」
「私、普段煮物といえば酒・砂糖・みりん・醤油1:1:1:1で炊きますから」
「それは濃そうだねえ…」
「うちだと煮っ転がしとか佃煮かしら?」
「保存食向きだね」
「大体京都って保存食文化ですよ基本的に」
「京料理は?」
「今は新鮮な魚が随分入りますからいいですが、昔は魚は塩干物ですよ」
「そうなの?」
「材料がそういうものだからこそ、より美味しくより美しく発展したんでしょうね。
 今みたいに良い材料が使えれば野菜も刺身も美味しい塩でうまいじゃないですか」
「あら?そうかも」
「山沢さん、かつお出汁のとり方は知ってるのかい?」
「いや、とったことがないです」
「絹がとってるのは見てるだろ?」
「あー、なんとなく。でもちゃんとは」
「じゃ、やるから覚えなさい」
大体1リットル程度の湯に、これくらい、と鰹節を示される。
30gくらいあるかな?
沸騰したところに入れて弱火にして2分待ち、漉す。
それだけだそうだ。
もっと面倒くさいものだと思っていたのだが。
「で、この出汁で…」
同じように里芋を炊いてゆく。
ちょっとずつ分量が違うのでメモをしつつ。
出来たものをいただいて味に納得する。
「明日この分量で作ってごらん」
「はい、そうします」
「そろそろお昼の支度しなくちゃ。この里芋と後は何にしましょうね」
「あ、俺、大根葉食べたいです」
「そんなのでいいの?」
「卵とじにしたらどうかねぇ」
「それいいわね、そうしましょ」
おじゃこと炒めて卵で閉じられた。
配膳して、いただく。
んーうまい。
幸せ。

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178

明けて6時半。
昨日そんなに疲れさせてないのでお休みの日としては、
まぁまぁ良い時間に目が覚めたようだ。
「おはよう」
「おはようございます」
もう少しこうしていたいなぁと思うが二度寝しそうだ。
起きて身づくろいをして朝飯をつくりに台所に行く。
お味噌汁お味噌汁。
今日は何を作る?
茗荷と茄子か。
俺が魚を焼いてる間に先生は俺の分の肉野菜を炒めてくれている。
今日はカレー風味か。
この間はトマト風味だった。ちょっとアレは微妙だったな。
あったかいトマトは。
ご飯が炊けた頃、律君と司ちゃんが起きてきて、律君に孝弘さんを呼んでもらった。
司ちゃんと先生が配膳する。
「あれ…?」
「どうしたの司ちゃん」
「このお味噌汁、具が入ってないけど」
「それは山沢さんのなのよ」
「え、具なし?」
「そうなのよ。あ、その野菜炒めも」
「もしかして凄い偏食…」
「ああ、山沢さんって凄く好き嫌い多いよね」
「そうなのよ、子供みたいでしょ」
「はいはい、子供みたいなやつですよ、と。はい、お茶碗」
カレー風味の肉野菜炒めは美味しいんだが、しかしちょっと量が多い。
孝弘さんが欲しそうなので少し差し上げて完食。
律君たちはこれから遊びに行くそうである。
食器を洗って、台所を片付けた。
居間に戻ると八重子先生がお茶を入れてくれる。
うまいなぁ。
「あ、そうそう」
先生がどこかへ行った。
しばらくしてアルバムを持って戻ってきた。
「前に見せるって言ってたでしょ」
結婚してからのアルバムなら探さなくてもあるから、と。
おお若い。可愛い。綺麗。
「これが孝弘さんの若い頃」
「随分人相変わられましたねぇ…」
「ほら、ここにお父さんとお母さんが写ってる」
「仲良さげでいいですね」
「もうこの頃は随分悪かったのよね?」
「そうだねえ、お薬いただいてたねえ」
「一度お会いしたかったなぁ、生きておられる間に」
「気配はたまに感じるのよ…」
「そうだねえ、夢に出てきたりするね」
いくつか焼き増しして欲しい写真が出てきてお願いする。
ネガが出てきたら、と言ってもらえた。
会えないときには見たいからと。
「山沢さんはアルバムはないの?」
「独り身だと写真って撮らないものですよ。二十歳以降と言うと4,5枚かな」
「えぇ?そうなの?」
「はい。他だとここの初釜や茶会で撮ってる写真くらいじゃないですかね」
「じゃ、写真撮ってあげるわ、折々に」
「別にいいですよ…」
「もっと若い頃の写真ならあるの?今度見せて頂戴よ」
「あー京都の自宅にあったかな。卒アルとか…」
「私も見たいねぇ山沢さんの若い頃」
「ああ、今度京都いったら探しておきますよ」

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