「こんばんわ」
先生のお宅の玄関を開け、声をかける。
今日は土曜日。稽古日だったが、所用で間に合わずすでに
終了時刻より1時間ほどたっていた。
飯時も済んでいるはずだ。
「はい」
先生がおられた。
「あらぁ?あらー、どうしたの?男振りが良いわねぇ、その格好」
そう、本日は着流しに絽羽織である。男の。
先生は浴衣だ。お稽古も終わったから早々に着替えられたのかな。
「いやぁ、本日稽古に来られなかった所用の都合でこのような格好でして。
それで、これ、そのお土産といいますか。お持ちしました。」
京生菓子と伏見の酒である。一升ずつ違う酒にした。
「どうぞ上がって?」
いつもの小上がりではなく奥の部屋に通された。
妙に静かだ。
「あら、良いお酒ねぇ。
ね、山沢さん、この後用事ある?なければお持たせだけど少しどう?」
余裕。超暇。明日は休みだし酒飲んで寝るだけの予定。
「今日はうちのみんな旅行行っちゃっていないの。
一人だと時間が過ぎなくて…。」
そういうことか。珍しい。
「ちょっと待っててね」
先生がお盆に冷酒器と杯とアテ、燗鍋を持ってきた。
「燗鍋ですか?朱盃?」
「あまり飲む人がいないからこんなのしかないのよ。」
でも茶事用の朱盃ではないんだな。
「あの朱盃飲みにくいでしょう?お茶事にはあの方が余り飲まされなくて良いのだけど」
茶事のは浅くて両手で持たないとこぼれるんだよな。
そして熾っている炭を持ってきて火鉢につぎ、酒を入れた燗鍋を火鉢に乗せる。
夏の火鉢の利用法のひとつ。
普通一般の人には夏の炭火とかなんで熾きてんだよ、と思うだろうが
お茶のお稽古の後だ。
お稽古で使った炭がまだ熾きてたのだろう。
冷酒器はガラス製の氷を入れて使うタイプ、2合くらい入りそうだ。
外が暑いからこれは涼しげ良い。
まずは冷酒で一献。
「あら、さすがに京酒ねえ、甘いわぁ」
そして飲みすぎるんだよな。
ついついとおかわりを奨めて冷酒器が空になった。
燗もついたので杯を奨めてつぐ。
「燗にしてもおいしいわね。」
先生、実はいける口か。
燗鍋が軽くなってきたので瓶から継ぎ足す。
なんだかんだすでに二人で5合は飲んでいるが実は私はあまり飲んでいない。
自力で帰らにゃならんからね。飲みすぎてはいかん。
先生がお手水に、というがふらついている。
手を引いてお連れする。
「やだわぁ、恥ずかしい。飲みすぎちゃった」
何度か燗鍋に継ぎ足しているのだが…瓶の感じだと7合は飲んでいるか。
私に寄りかかって部屋へ戻った。
「まぁまぁ、もう少し」と酒を注いだ。
座ったけど軽く寄りかかったままである。
なんとなく肩を抱いたがあらがう様子もない。
火鉢の火も落ちたようだ。
盆などを除けて押し倒したが、先生はぼんやりとしている。
男着物だから旦那さんと間違えてるのかもしれない。
そして、先生の体を頂いた。
浴衣の下の熟れた体は…ごちそうさまでした。
押入れに布団があったので敷布団を敷き、裸にした先生を転がした。
上掛けはタオルケットか肌掛けがあるかと思ったが冬布団だったのでやめておき、
私の長着をかけておいた。
もはや深更、このまま泊まっちまうしかない。
縁側に出て煙管で一服付け、手水に行って先生の隣へもぐりこむ。
目が覚めた。八つ半頃か。
手水に立ち、戻って少し燗酒の残りを飲む。
私の着物を素肌にまとって寝ている先生を眺めつつ。
「うぅん…」
目が覚めたか?
何で裸なんだろう、みたいな顔をしている。
彷徨った視線が酒を片胡坐で飲む私にぶつかる。
長着と私を交互に見て何があったのか気づかれたようだ。
ちなみに私は今、総柄の長襦袢姿である。
先生は青ざめたり、赤くなったりされている(笑)
私の着物で胸を隠すようにしているその素肌の背中に手を触れ、
起きたことは仕方がないですよ、もう少し寝ては、と声を掛ける。
諦めがついたのか、寝巻きがわりに昼の浴衣を羽織られた。
「ねぇ、山沢さん…」
はい?
「今日の事、お母さんには言わないで、お願い」
いや言ったら俺がヤバいでしょそれ。
言いませんよ、と答えると安心したようで布団に戻られた。
「旦那さんと間違えたんでしょう?
ああ、でも私チンコないから指しか入れてませんよ」
あ、真っ赤になった。
「やだ、もう」
あちらを向いてしまわれた。
私も横に転がり、先生の腕に軽く触れる。
少し身じろぎされたが、しばらくして寝息が聞こえ出した。
私も眠った。
朝、目が覚めたが先生はまだ寝ている。
寝過ごしたようだ。7時半か。
顔を洗って手水を済まし、部屋に戻った。
先生も目が覚められて、寝過ごしたことに気づかれた。
先生の身づくろいの間に私は長着をまとい、布団を上げる。
そして昨日使った酒器などを持ち台所に向かう。
しばらくして台所に先生が来られた。昨夜の浴衣をキリっと着ている。
指示を受けて酒器を片付け、朝食の用意を手伝った。