そうこうしているうちに今年も後二日となった。
今日が終れば明日朝に鯛を焼くだけだ。
随分気が楽になって仕事が進む。
半衿は先生にお願いしたことだし、着物も何とか昨日寝る前に支度した。
多分忘れ物は、ない。要る物は全部車に積んだはずだ。
あ、お年賀。そうだ出金しなきゃ。
帰りに餅を取りに行き飾りつけ、門松も立てた。
今日飾らねば一夜飾りになってしまう。
ばたばたとあれやこれやとやることをやって寝る。
翌日、鯛を焼き、皆で軽く乾杯をして味噌漬けなどを車に積んだ。
やっと今年が終る。
一旦帰宅し風呂を浴び、先生のお宅に車を走らせた。
車に乗る予定だったからちゃんと乾杯はコーヒー。うまいけどね。
そっと勝手口から侵入して冷蔵庫や土間に荷物を置き、そっと先生の部屋に忍んだ。
寝てる寝てる。
さっと寝巻きに着替えて寝込みを襲った。
久々の触り心地、いいねぇこの肌。
一人楽しんでいたら目が覚めたようだ。
「ん、おはよう…。お疲れ様」
「ただいま」
キスをし先生を楽しませて、でも声は出させないように。
…先生の上で力尽きた。
「重~い」
「あ、悪い」
横に転がると先生が布団を掛けてくれる。
「もうっ、寝てなさい。朝ご飯してくるから」
そんなにはむさぼれなかったから先生は元気だ。
ぺしん、と額を叩かれて寝かしつけられてしまった。
ふと目が覚めるとうまそうな匂いがしている。
寝巻きのまま台所に顔を出すとどうやら御節の仕込だったようだ。
「あら、起きたの。おなかすいた?」
「うん」
「冷蔵庫にピザあるから食べて良いわよ」
どうやらスーパーで買って有ったらしい。
「足りそう?」
「全部食べて良いのかな」
「良いわよ」
「じゃ大丈夫」
「でも今おやつ時だから晩御飯食べられないようなことしないでね」
「あー…はい」
二つだけ貰ってチンして食べた。
「ああ、あんた起きたの。いやまだ眠そうだね。寝といで」
「はい」
八重子先生が戻ってきて台所から追い払われて布団に潜る。
腹がくちたからまた良く寝れた。
先生に夕飯と起こされてつい布団に引き込んだ。
「こら、だめ。ご飯よ。もう時間遅いんだから起きて頂戴」
起きると本当に遅い。
「先生方はもう?」
「まだなの。早くして」
「はーい」
もそもそと起きると寝巻の上に引っ張りを羽織らされて食卓へつく。
夕飯は軽いものだった。
年越しそばも有るからだろう。
「こんばんは」
「あ、律君。こんばんは」
「ずっと寝てらしたんですか?」
「うん、朝からね」
「よっぽど疲れてたんですね」
「去年もそうだったわよね、はい、ごはん」
「ありがとうございます」
「そうそう、半衿つけてあるから。バッグ勝手にあけたわよ」
「わ、ありがとうございます、助かります」
「半衿?」
「そうよ、お着物着るでしょ。この子はつけてる時間ないから」
「律君は今年着るの?」
「着せるわよー、さっきね、丁度仕立てあがってきたのよ」
「へぇ、おろしたて? いいねぇ」
「司にも振袖着せるよ」
「おお、やっぱお正月は良いですよねー振袖」
軽めの夕飯を食べた後先生と台所へ。
年越しそばの支度。
「えぇと。あなた天麩羅じゃないのよね」
「はい、ここにニシンあります」
「おばあちゃんと私とお父さんと律とあなたと…司ちゃんは起きてからの方が良いかしら」
「伸びますしね、そうしましょう」
5玉とだし、天麩羅などを準備しておく。
まだ食べるのは早いから。
年末の歌番を楽しんで各々風呂にはいる。
それからそばを出した。
除夜の鐘の聞こえる中すする。
んー、うまい。
「京都ってあまりお蕎麦のイメージないけど結構好きよね、山沢さん」
「うーん、そうですね、当初はだしの色と味がね。自分で作れば良いかとなりまして」
「あ、だから山沢さんの、だしが違うんだ?」
「味見したけどおいしかったわー」
「へぇ」
「まだ残ってるわよ」
「じゃ後でちょっと味見させてもらおうかな」
汁を全部飲み干す。
うーん、うまかった。ごちそうさま。
そろそろ年が明けるようだ。
皆も食べ終わったので洗い物に立った。
「久さーん、司ちゃんの作ってくれるー?」
「あ、はーい」
洗い物の手を止めて湯を沸かし、だしも温める
ササッとゆでて温めただしに入れ、天麩羅を盛って居間へ戻る。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
「コーヒー欲しいわ」
「はいはい」
台所に戻って先生の分を淹れて戻る。
「ん。あんたいらないの?」
「洗い物終ってからいただきます」
「あら? いつもと味が違うわねぇ」
「寝る前ですからカフェインレスにしました」
ちょっとつまんなさそうな顔をしている。
台所に戻って洗い物を片付け、鍋も洗い終えると先生が丼を引いてきた。
「これも」
「はい」
そっと背中に手が置かれた。
「ん? 熱ありません?」
おでこをくっつけてみる。
「あ、大丈夫ですね、よかった」
顔を赤くしている。可愛いな。
洗い終えて手を拭いて、居間に戻ると司ちゃんも部屋に引いていた。
「寝ますか。部屋行っててください。戸締りしてきます」
「あ、うん…」
玄関と勝手口、あとは火の始末を確認して部屋へ戻る。
まだそんなに温まってなくて先生は少し羽織を脱ぐのに躊躇している。
そっと紐をほどき、伊達締めを解いた。
キスを求めてきてそれに応える。
冬なのに、しっとりとなめらかな肌が心地良く。
ぐりっと乳首をつねられた。
「…痛い。なんですか」
「なんとなく」
「されたくなかった? なら寝ましょう」
「あ、違うの、ごめんなさい。なんとなくなだけだから」
「そう?」
「うん」
「でもまぁ、いいや。三が日あけてからで」
「いいの?」
「どうしてもしたくなったらあっちの部屋つれていきますがそれはいいでしょう?」
ぱっと耳を染めて頷いてる。
布団に入って先生を抱き締めると温かく、先生も擦り寄ってくる。
シーツが冷たいんだよね。冬は。
そろそろ毛布入れようかなあ。
そういってると先生が明日は入れるという。
寒くなるらしい。
少し喋ってるうちに寝てしまった。