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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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485

朝が来た。
先生はいつものように寝過ごして今日は八重子先生も遅かった。
俺もちょっと眠い。
律君が朝食後遊びに出るというので三人で二度寝と決め込んだ。
お昼の材料もあることだし。
先生を懐に抱いて日の高いうちに先生のお宅で寝るのは何か変な感じだけど。
昼前に俺だけ起きて支度をする。
作るだけ作って孝弘さんの部屋に運び、それから八重子先生の部屋を覗く。
まだ良く寝てらっしゃる。
自然に起きるまで良いだろう。
暇なので庭で煙草を吸いつつ宿へ問い合わせを掛ける。
幸いと言うかなんというか、良いほうの部屋に移れるとのことで。
そのうち八重子先生が起きてきた。
「あぁよく寝た」
「お昼、出来てますがどうされますか?」
「いただくよ、ありがと」
おかずを出してご飯をよそい、持ち出す。
食べてるところを悪いけど聞いてみた。
やっぱり即答でOKが出て宿へ部屋の確保を依頼することになった。
電車も二人席に変更をする。
「お稽古休ませすぎではないですか?」
「まだまだ私が元気な内はね、楽しんだらいいんだよ」
暫くして先生も起きてきたので俺の分とともにご飯を持ち出した。
「あんたまだだったの?」
「先生起きてからにしようと思いまして」
「待たなくて良いのに」
「さ、食べましょうよ、熱いから気をつけて」
味噌汁温めなおしたから。
俺の分はぬるいうちにとって有る。
少し遅めのお昼を頂いてるところに環さんが来た。
「なぁに、こんな時間に食べてるの?」
「いらっしゃい」
「お昼食べたの? まだだったら」
「食べたわよ、とっくに」
先に八重子先生が食べ終わってたので台所に運びがてら環さんにお茶を入れてきた。
「で、今日はどうしたの」
ちらっと環さんが俺を見る。
同席では言いにくい話のようなので手早くご飯を食べ、台所に片付けに立つ。
席を外した途端何か先生方と話されてるようだ。
これは戻りづらい。
幸い煙草も懐にあるので庭に出てまた一服つけることにした。
縁側で吸っていると孝弘さんも出てきて二人で日向ぼっこ。
何かおかしい。
「おい、今度またあの羊羹買ってきてくれんか」
「はいはい、羊羹ですね」
うまかったらしい。
暫くぼんやり煙草を吸って、孝弘さんと話していると帰られた様子。
火の始末をして居間に戻るとちょっと先生がしょんぼりしている。
気散じに、と買い物に連れ出した。
お夕飯の買物と、日用品の買出しだ。
トイレットペーパーは律君も買ってきてはくれるが生理用品は流石にね。
洗剤なども選んで。
そうこうするうち少しは気が晴れてきたようだ
「あ、そうそう。連れてってくれるの?」
「はい、八重子先生から許可でました。温泉ありますよ」
「あらーほんと? 嬉しいわ」
「ただそんなに期待しないでくださいよ。仕事で行く予定だったんで」
「いいの、いいの」
すっかり機嫌が直ったようだ。良かった。
沢山の買物をして積み込み、車を走らせる。
「ね、あっちの家行ってもいいわよ」
「夜するのは嫌ですか」
「だって朝起きれないんだもの」
「OK、じゃ参りましょう」
連れて行って暖房を入れ一服してから脱がせた。
「寒…うぅ、お布団もまだ冷たいわねぇ」
「すぐに暑くなりますよ」
まずはキスして。
サブイボが出ていて滑らかではない肌を丁寧に撫でていく。
つん、と乳首が立っていてつい齧った。
「痛いわ…」
甘噛甘噛、問題ない。
暫く両乳首を弄ってるとサブイボも落ち着いたようだ。
布団も先生も俺の体温で温まってきた。
でもまだ背中が冷えてるな。
手を隙間に押し込んで温める。俺の手は暖かいからね。
目がとろんとしてきた。
「寝そうになってるでしょ」
「あ、ごめんなさい、つい」
「優しく、と思うとすぐ寝ちゃうよね、先生。やっぱり激しいのが良いのかな」
「だ、だめよ。帰らなきゃいけないもの…」
「だよね」
寝ない程度に優しく、やや声が出る程度に抱いて布団が暑くなった。
「お風呂入るわ、汗かいちゃった」
「洗ってあげよう」
「ダメ、そう言ってまたする気でしょ。そろそろお夕飯の支度しないといけないのよ?」
「へーい…」
頬を両手で挟まれてキスされた。
先生は俺の長着を羽織って着替えを持って風呂に入る。
えらいよなー。
俺ならそのまま裸で入って裸で出るぞ。
さてちょっと物足りなくはあるが俺も着直さなくてはなぁ。
もぞもぞと布団から出て下着を替えて手早く襦袢を着る。
長着は先生が脱衣所に持っていったんだっけ。
取りに行くと先生が風呂から上がってきた。
うーん、綺麗だ。
ふっと先生が笑って浴衣を羽織る。
「ね、先生、もう一度だけ」
「だめって言ってるでしょ。着替えるから待ってて」
ちぇっ。
長着をまとって待てば着替え終えた先生が帰ろう、と仰る。
仕方なく共に先生のおうちへ戻ると八重子先生にふて腐れた顔していると指摘された。
苦笑しつつ夕飯の支度をする。
先生は湯冷めしちゃ行けないから居間でゆっくりして貰い、下拵えが終わって呼ぶ。
後は味付けだけだからお任せして俺は居間のコタツに足を突っ込んだ。
「うぅーぬくい」
「明後日のお稽古は来るのかい?」
「あ、はい。水曜から行く予定です」
だから明日帰宅したら荷造りしておかねばならん。
明後日もこっち泊まるし。
「久さん、取りに来て頂戴」
「あ、はーい」
ぬくぬくしてたら呼ばれてしまった。
お盆に載せて運んで。
律君も孝弘さんも匂いに釣られて出てきた。
「んー、おいしそう」
「でしょ? 一昨日テレビでやってたのよ」
なるほど、これがさっきのあれか。
何を作らされてるのか良くわかってなかった。
食うと実際うまい。
綺麗さっぱり無くなってご馳走様をしてお片付け。
それから風呂に入って、まったりして戸締り火の用心、寝間に移動した。
休みって早いよな、時間経つの。
あくびを連発する先生を懐に抱いて寝て気づけばもう朝だ。
今日は流石に先生も早起きで朝食を二人でこしらえ、皆で食べる。
昼までにあちこちを片付けた。
お昼ごはんは八重子先生作。三人だからと丼物。
食べた後先生に荷造りのこと、出発時間とうちに来る時間の話を詰めた。
「結構移動時間かかるのねぇ」
新幹線で京都まで、そこから乗り換えはしだてで宮津。そっからはレンタカーだ。
9時半にうちを出て3時半にチェックインの予定をしている。
但馬空港直結の飛行機でも飛んでたら良いんだが。
「乗り遅れると京都からレンタカーで3時間ですからねー」
「電車のほうが楽よねぇ」
「一応特急ですし、トイレついてますしね。車内販売はありませんが」
「ないの? お昼どうするの」
「乗換えが15分程度ですし、新幹線で買って特急で食べましょう」
ホームが端から端の移動ゆえに危険を冒したくはない。
俺だけなら6分有ればいけるけど。
「あ、でもちょっと待って」
電話を掛ける。
まだ予約できるかと聞いたら今日までとのこと。
一旦電話を切り、先生とタブレットで弁当一覧を見る。
先生は結局400kcal台弁当、俺は仙台黒毛和牛弁当とチキンサンドを頼んだ。
新横浜で車内販売の人経由での受け取りになる。
「お肉の弁当に更にチキンサンドねぇ…」
そういいつつ俺の腹肉を抓む。
「何で太らないのかしらね」
「それなりに動いてますから」
「いいわよねぇ」
「あっ」
「どうなさいました?」
「お茶室掃除するの忘れてたよ」
「しときました」
「え、いつ?」
「当日中に。いつも先生仰ってますから」
「なら良かった。うっかりしてたわ」
「偉いわねぇ」
先生が髪を混ぜ繰り返す。
「セットが乱れるー」
くすくす笑ってセットなんてしてないくせにー、と撫で付けてくれた。
「何で七三ですか」
「なんとなく? うふふ」
夕方になってそろそろ、と別れ、帰宅した。
旅行の荷物を作る。
寒いかもしれないので荷物が大きくなる。
…先に宿に送るか、仕事用の上着とか。予備あるし。
天気予報を確認する。特に荒れそうな気配はない。
送ろう、うん。
荷物を作り、クロネコに持ち込んだ。
そうすると持っていく荷物は少なくなり、先生の荷物を持って歩くことが出来る。
用意を終えて食事に出た。
もう時間は遅いから軽めに焼肉を食べに行って、それから寝た。
おやすみなさい。

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484

「こんにちは」
「あら、いらっしゃい。今日は何かねぇ」
「ツバスにアワビ、それからこれ」
「…気持ち悪い」
「あはは、うまいんですよー」
「そうなのかい? あんたにまかせるわ」
「はい、任されました。先生は食事中ですか?」
「まだ茶室だよ。おぜんざいの番してるから代わってやってくれる?」
「あーー…今日は炉開きですか」
「忘れてた?」
「すっかり」
「あんた初炭だよ」
「はい、…出来るかな」
「絹が横にいるから大丈夫だよ。行ってやってくれるかい?」
「では」
ひたひたとひんやりした廊下を歩き水屋に顔を出す。
「先生」
「あ、いらっしゃい」
「こんにちは。おぜんざい引き受けますからどうぞ、お昼食べてきてください」
「あらそう? じゃ悪いけど」
すっと立って俺の横を通り抜ける。
「この間はごめんなさいね」
かすかにそう言って居間へ行った。
ちゃんと謝るのがいやなのかなんなのか。まぁいいか。夜で。
煮詰らない様、火加減をして待つ。
三々五々、生徒さんが集まりだした。
「あら、良い匂いねぇ」
「ほんとねぇ」
おいしそうなのかな?
暫くしてまずは八重子先生が来た。
そろそろ時間だ。
先生が来る前に集まった生徒さんの前で八重子先生が席を振り割りしている。
少し八重子先生が整理して先生が戻ったところでご挨拶。
「おめでとうございます」
茶人の正月とも言える炉開きである。
お正月の挨拶。
それから初炭に指名されているので私が立ち、諸道具を持って出た。
炉横に羽箒を置き、鐶を膝横、炭とり中心より左に、火箸を羽箒と炭とりの間に置いた。
香合を取り扱って鐶の横に置き、釜の蓋を閉め、鐶をかけ、紙釜敷を置き炉縁まで出る。
肘を膝につけて持ち上げ、肘を上げてから状態を起こし、釜敷に置く。
鐶を一旦釜に預け、一膝左へ向き釜敷ごとずるずると横へ移動させたら鐶を外し、置く。
炉に向き直って羽で炉縁、炉壇を清めたら火箸を取って下火の手前のを奥の五徳右へやる。
火箸を一旦戻して炭とりを移動させ灰器を取り湿し灰を撒いた。
再度羽で清めて炭をつぐ。
一番大きい胴炭は手で入れるので懐紙で拭く。
後は決まった所に良いように炭を置いた。
だけど炭の形によってはちょっと変な置き方をしたりもする。
お湯が沸かないような炭の置き方をしてはいけない。
もう一度羽で清めたらお香をつぐ。
「香合の拝見をお願いします」
正客の所望があったので拝見に出してから斜めに向く。
鐶を釜に掛け、また滑らせてもとの位置に戻し炉に向き直り釜を持ち上げる。
ゆっくりぶつからないように五徳の上に降ろした。
鐶を釜に預けたら釜敷を取り炭とりの上で一弾きして払い懐中する。
釜が斜めになってないか、中央にあるかなど確認したら羽で釜の蓋も清め、蓋を切る。
そして諸道具を持って帰った。
やれやれ、と一息ついてお善哉の支度を手伝う。
香合は順調に生徒さんの間を回っているようである。
暫くして回り終えたようなので戻り、香合の形や窯元、香名などをお答えして持ち帰った。
「はい、よくできました」
「ありがとうございました」
先生と挨拶を交わし、潮吹昆布と梅干を菓子鉢に盛って各人へ。
お善哉を皆にとりわけ、餅はちょっとと言う方は汁だけに。
先生方は朝にいただいたとかで汁のみ。
いただきます、と食べてみなさんほっこりされたところで濃茶の点前。
ベテラン組から大貫さん。
主菓子をまわして濃茶をいただく。
点て出し組の我らは後で頂くんだけど先生と三人でひたすら人数分。
5人1碗くらいで練った。
最後に頂いて。
次はお薄のお点前、これは中堅の中谷さん。
お二方とも安心して見ていられる。
奥で点て出しに励み、先生とともにお運びをする。
生徒さんは大変恐縮されている。
最後に総礼で締めてほうっと皆さん息をついて場が緩まった。
若い生徒さんのお濃茶おいしかったよねって声も聞こえて嬉しい。
次回のお稽古のお知らせなどの話しの後、散会した。
「あ、山沢さん、あなたはお稽古するからお台子出してくれる?」
「えっあっはい? 今からですか」
「ほら、前回できなかったから」
あーなるほど。
「唐金皆具よ、間違えないで」
「は、はい」
ほっとしてたのも束の間、格の重い、献茶式などに使うあの点前のお稽古だ。
塗りの台子を設置し、唐銅の皆具を定位置に。
そのまま真の炭手前をして点前にはいる。
先生の視線が怖い。
何とか叱られもせずに終わり、交代で先生がお稽古された。
流石に流れるようなお点前でうっとりと眺めていると八重子先生から叱責が飛んだ。
柄杓の扱いが違ったらしい。
それ以外は何もおかしいところはなく、きちっとしたお点前で終わられた。
たまには見せていただくものだなぁ。
さて、俺は水屋の片付けに入り先生と八重子先生はお台所に立たれた。
「お夕飯、簡単なものになるけどごめんなさいね」
今日は仕方ないよな。
「そうそう、エビはどうするんだい?」
「あー、あぁ! 忘れてました。お湯沸かしておいて貰えます?」
「…お釜のお湯つかったら?」
「それはいいですが足りません」
「足りない分だけ沸かしたら良いじゃないの」
釜を始末する前に鍋に取り分けて、先生に渡した。
台子を片付けたり皆具を清めていると声がかかった。
「はい?」
「お湯沸いたわよ」
「2匹湯がいてください」
「あんなの触れないわよ、ほら。掃除は明日でいから」
困った顔が可愛くて思わず笑みがこぼれる。
あ、ふくれた。
可愛い。
清めたのを仕舞って、台所にはいる。
味の素を少し落としてからうちわエビを2匹、湯に落とした。
それから後2匹を焼いて、もう2匹は刺身にした。
先生は気持ち悪そうに見ている。
アワビはさっと蒸して柔らかくし、うちわえびとともに盛りつける。
後はもう手助けはいらないから食卓を片付けてご飯の炊けるのを待つ。
「そろそろ呼んできてくれるー?」
「はーい」
律君と孝弘さんを呼び配膳を手伝って席に着いた。
「なにこれ」
「うちわえび。おいしいよ」
「うーん…」
流石に見た目が気持ち悪いからか手が伸びないようでお造りをまずは食べている。
「あ、これおいしい」
「ふふふ、それがそのエビだよ」
「おいしいの? だったら…」
先生が焼いたエビに手を出した。
「あら。ほんと、おいしいわ」
「どれどれ。あ、ほんとだねえ」
「私がまずい魚持ってくると思いますか?」
「ごめんなさい」
よろしい。
笑いつつ、野菜炒めを食べる。
先生が時間がないときは定番になってしまった。
今日は少し塩が強いのは先生がお疲れだからだな。
食事の後の後片付けは引き受けて先に風呂に入ってもらう事にした。
多分あの様子じゃ風呂上がったらすぐに寝るだろう。
台所を片付けて茶室の掃除をして戻ればお二方ともお風呂から上がられていた。
「あんたも入っといで」
「はい。先生、眠ければ先にどうぞ」
「うん…」
既にうとうとしてるのに待たせるよりは。
風呂へ入って汗を流し、戻ってくると八重子先生が舟こいでる。
「風邪引きますよ」
「ん、そろそろ寝ようかね」
「待っててくださったんですか?」
頭をなでられた。
「今日はお疲れさん。あんたも早く寝るんだよ」
「はい、おやすみなさい」
戸締りや火の始末を確認してあくび一つ。
寝間に入ると既に先生が布団に納まって寝息を立てている。
流石に今日は疲れたと見える。
横にもぐりこんでも微動だにしない。
頬にキスして俺も寝た。
夜半、何かもぞもぞと動くので目が覚めた。
「どうした?」
「ん、寝れなくて…ほら、お濃茶飲んだから」
「ちょっとだけでしょう?」
「朝から3回頂いてたのよ…」
「なるほど」
寝付けないなら寝付けないでもいいから、と懐に抱いて撫でて。
先生からキスして来た。
でもそれ以上は無し。
「あ、そうだ。木曜の稽古休ませてください。出張です」
「どこ行くの?」
「間人です」
「…どこ? たいざ?」
「ええと京都です。海の」
「京都って海…あれは琵琶湖よね。あったのね」
「あるんですよねー」
「ねぇ、私も行きたいわ」
「それはうーん、宿がOK出るかと言う問題と、あなたお稽古でしょう」
「お願い」
「明日、八重子先生に交渉してみて下さいね」
「嬉しいわ♪」
頻繁に連れ歩くのは罪悪感があるんだけどなぁ、俺は。
でも八重子先生が甘いからきっと連れてくことになるんだろう。
先生になつかれてるうちに寝息が聞こえてきた。
可愛いよなぁ。
だけどこんなに俺になついちゃって良いのかな。
俺は凄く嬉しいけど。
そのうち眠くなって寝て。

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483

朝は二人して寝過ごして八重子先生に俺のみ叱られる。
ま、先生が寝過ごすのは俺の所為だからしょうがないんだよね。
朝ご飯をいただいた後はお掃除のお手伝い。
だけど今日は軽い作業ばかり頼まれて、少し気を使われてしまってる。
治りきるまではと言うことのようだ。
こりゃ明日あたり鍼へ行くかね。
洗濯、掃除、お買物など終えて居間でくつろぐ。
先生が席を立ち、暫くして戻ってきた。
「アレ、始まっちゃったわ」
生理、今かららしい。
ぎりぎりセーフだ、昨日しておいて良かった。
あ、しかし連休は抱けないのか。
うーん、残念。
少し眠そうなので今日は俺も早めに帰ることにした。
どうせ明日も会えるしね。
帰る道すがら近所でパスタを食べて帰宅。
風呂入って寝るだけだ。
時計を見ればまだ鍼屋は空いてる時間、試しに電話すると今空いてるとのことで行く事に。
「どう?」
「まぁまぁだけど早く治したくなって」
「明日はこれる?」
「今みたいな時間なら」
「じゃ予約しとこうか?」
「うん、お願い」
するすると鍼を刺されてツンッと来る。
響くんだよなぁ。
強い鍼で結構体力を分捕られるけれどかわり治る。
先生が生理終わる頃にはちゃんと抱ける体にしないとね。
そういえば前回の鍼の時、先生が微妙な顔してたなぁ。
嫉妬なのかな。
鍼を抜かれて帰宅する。
痛みは今はないからよく寝れて朝。
仕事もそれなりに動けてとってもいい感じだがここで無理をすると…。
と言うことで控えめにしてお稽古へ向かった。
今日は先生はだるそうなのでサポートに徹して俺へのお稽古はなし。
少し苛ついてもいるようで人目のないところでつねられた。
ちょっと痛い。
まぁぶつけられるほうが篭らせてしまうよりは良いんだけど。
お座布団に座らせて足を俺の懐に入れてあげた。
これが温めるには早いからね。
「何してんの、あんたたち」
「足が冷えたと仰るので温めてるだけです」
「コタツ出そうかねぇ、そろそろ」
ほんのり温まってきたようだ。
「もういいわ」
「まだ早いです。冷えはよくない」
苛々してるのはわかる。
「なんだったらマッサージしてさしあげますが」
「いらない。帰って」
八重子先生も呆れてる。
俺も諦めて辞去を告げた。
「悪いねぇ、ご飯も用意してたんだけどあの調子だろ」
「孝弘さんにでも食べてもらってください。アレのときはわかります、仕方ないです」
「じゃ土曜日、またきてちょうだいね」
「はい、じゃお邪魔しました」
帰宅して飯を食ったら予約の時間だ。
鍼屋に行く。
少し喋りつつ、生理時のイライラの対策を聞く。
残念ながら人それぞれのようだ。
終ると随分すっきりした。
「明日も来た方が良いよ」
と言うので明日は昼からの予約にした。
風呂に入って寝て、出勤すると連休前と言うこともあり忙しい。
少し頑張りすぎて腰が重い気がする。
苦笑して飯を食って落ち着いた後、鍼を受けに行った。
「うん? 無茶したでしょう」
「したみたいですが明日もしそうです」
「明日はこれるの?」
「無理です」
「じゃ、今日は泣いてもらうね」
うっと呻く程度の鍼をガッツリ刺されて帰ったらすぐ寝るように、と開放された。
布団に潜ると消耗した体力を補充するかのように寝てしまい、夕飯にも起きれなかった。
起床時間より30分前に目が覚めて、携帯が光っていることに気づく。
先生からだ。
八つ当たりした事の詫びと、明日のお稽古きてくれるの? と。
どうやら苛々は収まったようだ。
勿論お伺いする旨、返信した。
きっと寝ているだろうけど朝起きた時にでも読むだろう。
支度をして出勤。
土曜の怒濤の忙しさ、ふと気づくと10時を済んでいる。
それでも腰が軽いのは昨日の強烈な鍼のおかげか。
「お前、今日は早く帰れよ」
「でも仕事まだ終わりませんよ」
「んーそうだな、あの残ってるうちわえびと生貝と。ツバス売れたらで良い」
「あ、あのツバス私持って帰ろうかと」
「他のは持って帰らんか?」
「ちょっと多くないですか」
「なんとかなるだろ? はい、それでお前の仕事終わり。帰り支度しろ」
好意に苦笑して支払った。
箱に入れて後りのものは片付けて帰り支度を整え、挨拶して帰宅。
風呂に入り着替えて先生のお宅へ車を走らせた。

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482

朝になって結局先生は俺の腕から逃げれなかったらしく肌襦袢のままだ。
「おはよう。そろそろ起きなさい」
「んー…もうちょっと」
べたべたくっついていたのだがトイレに行きたいらしく。
いい加減に離せ、と言うことだった。
諦めて離すと落ちてた寝巻きを拾って着て行った。
夜中、俺が脱ぎ捨てたようだ。
待ってても戻ってこないのでおかしいと思っていると風呂桶の音がする。
なるほど昨日入り損ねたから入っちゃったか。
幸いこの家は自動だからつまりなんだ、昨日から沸きっ放しと言うわけで。
ガス代が勿体無いと後で先生に叱られるんだろうな、これは。
暫くすると先生が風呂から上がってきた。
うーん、色っぽい。
婀娜な年増ってわけじゃないが。
手招いて膝の間に座らせて抱き締めた。
耳を齧る。
「したくなっちゃったな」
「だめよ。もう朝御飯の時間だもの」
「後で二人で食べに行きましょう」
「まだ腰良くないのにダメ」
ぺちん、と額を叩かれて諦めた。
「早く治さないと抱けもしない。それともまた乗ってもらおうかな」
「バカなこと言うんじゃありません。早く治しなさい」
ぽんぽん、と腕を叩かれて開放すると髪を乾かしに洗面所へ先生は行ってしまった。
うーむ、ぬくもりが冷めて寂しい。
仕方ないから着替えるか。
床に落ちている肌襦袢など拾い集めて着て、長襦袢と長着を着ればそれなりに暖かく。
あ、ドライヤーの音が止んだ。
「あら、もう着替えたの? ちょっと待っててね」
手早く着替えてそれから洗濯物を引き上げて家に戻る。
「ただいまぁ」
「戻りました」
先生は先に洗濯機を回そうと思っているようだ。
俺は一旦台所に顔を出して八重子先生に朝の挨拶。
もうすぐ出来るとのことでお膳の支度をする。
「よく眠れた?」
「あ、はい。もうちょっとと思ったんですが起こされました」
「だってねぇ、寝かしつけるつもりだったのに離さないのよ、この子」
先生が戻ってきてた。
「おかげでさっきお風呂入ったのよね」
「がっちり抱え込んでたみたいです」
「あらら。眠かったんだねぇ」
「もう運んで良いですか」
「そうだね、それより律たち呼んできてくれるかい?」
「はーい」
先生と何か話すことがあるのかもしれない。
呼びに行って戻ると既に食卓には朝食が並んでいて、和やかに朝ご飯をいただいた。
食後、寝てなさい、と促されたが多少は体を動かさないと鈍る。
そう言えば、じゃお散歩しましょとコートと小銭入れを持って連れ出された。
秋の良い天気の中、先生との散歩は気持ちよくて。
「ひんやりしてきたわねぇ」
「秋ですねー。紅葉狩り、もう少ししたらどこか行きましょうか」
「そうねぇ、皆と一緒でも良いかしら」
「そのほうが楽しいですよね」
「ね、あなたお三味線できるんでしょ、なんか弾いて頂戴よ」
「ええっ俺下手ですよ」
「どうせわからないから良いわよ」
「あ、それ酷い」
ほほほ、と笑い飛ばされてお散歩を続ける。
小一時間ほどぶらついて戻った。
そんな調子で日曜はゆったりと過ぎて帰宅して寝た。
月曜、火曜と暇な市場の後、先生のお宅へ。
「あらー。もう大丈夫なの?」
「ええ、ま、なんとか。無理するとダメかもですが」
「じゃ無理のない範囲で」
「はい。用意してきますね」
「用意は良いわよ、してあるから」
「ご飯食べたの?」
「あ、はい」
「じゃお茶飲んでなさいよ」
「すみません」
先生がおいしそうにご飯を食べるのを眺めつつ、お茶をいただく。
ここ数日あったことなんかを聞いたり。
食べ終えたのを見計らい、茶室に先行した。
「こんにちは。あら山沢さん、腰大丈夫なの?」
「はい、こんにちは。もう殆ど良いですね」
「若いわねぇ。私なんかだと一ヶ月は寝込みそうよ」
「そうですかねぇ」
「いらっしゃい、今日は中置きで濃茶しましょうか」
「あ、先生。こんにちは。お願いします」
お稽古が始まり、先生が生徒さんに指導される。
優しく丁寧に。
和やかでゆったりとした空気の中、お稽古が進む。
心地良いからか生徒さんが辞められても新たに紹介で増える。
まぁ居付いてしまった私のようなのも沢山。
夕方が近くなって先生が迷うそぶりを見せた。
「ねぇ、今日、する?」
「えっな、何を?」
「何って…、ちょっと待ちなさい、何を想像したの」
「あ、いやえーと。えーと、長板でどうでしょうっ?」
「まったく。長板はあんたまだ腰がよくないんだから普通のにしなさい」
「はぁ、そうします」
いらぬ汗をかいた。
慌てて支度して、お願いして濃茶で稽古をつけていただく。
真剣に、厳しく指導を受ける。
優しくは、ない。
萎縮はしない程度に稽古をつけてもらい、後片付けを一緒にする。
腰がダメだと釜が辛い。
お茶の先生方はなよやかで弱い気がするが意外とあるのは普段釜の始末をしてるからだな。
そう思いつつ片付けを終えた。
先生から今で寝転ぶよう言われ、ありがたく横になる。
そのまま先生は台所を手伝いに入られた。
ここ、見えないんだよな。
見ていたいのに。
夜、就寝の支度を終え部屋に引っ込んだ後、そう言うと笑われた。
「他の人には見せない姿、久さんには見せてるじゃない」
「でも俺、あなたが主婦してる姿も好きなんだよ」
くすくす笑ってる。
抱き寄せてキスした。
「ダメよ、まだ治ってないんでしょ」
「でも今しないとあなたそろそろ生理だろう?」
「あら? そうね、そろそろだわ」
「だからその前にさせてよ」
「しょうがないわねぇ。腰が楽なようにしなさいよ」
何度もキスをして黙らせる。
先生のスイッチがすっかり入ったようなので布団に連れ込んだ。
白い肌にキスを落としつつゆったりと抱いた。
流石に俺も疲れ、先生の寝息とともに寝てしまった。

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481

夜半起きて支度する。
先生が寝ぼけ眼ながら手伝ってくれた。
「じゃ、行ってきます」
「無理しないでね」
出勤して気遣われつつ、荷物は若いのに運ばせて売る。
売って売って売りまくり利益は結構に出た。
人を一人余分に使ってるからにはいつもより頑張った。
流石に冷えて少し痛む。
帰宅して先生と一緒にお宅へ向かう。
いつもなら先生を座らせて俺が立つのだが今日は俺を座らせようとする。
乗り換えも俺の手を引いてまるでいつもとは逆だ。
なんだか気恥ずかしい。
最寄り駅に着いて先生が少し悩んだ様子。
そのまま手を引かれてタクシーに乗せられた。
「バスにしようかと思ったけど…歩くの辛いでしょ?」
「あぁそれで。有難うございます」
先生のお宅の前で降りて、先生に連れられお邪魔する。
「あら絹先生。こんにちは」
「はい、こんにちは」
「お帰り、早かったねぇ」
「お邪魔します」
「もう大丈夫なのかい?」
「まだよ。だけど一人で家に置いておくの心配だから連れて帰ってきちゃったわ」
「だったら水屋じゃなくて見学だね」
「そうね」
お昼ご飯を食べてお稽古まで寝かされ、先生が支度をしてお稽古が始まる。
水屋に八重子先生が入られた。
「あら、今日はどうされたんですか。珍しい」
「この子腰を痛めちゃったのよねぇ」
「あらら~大変ですわねぇ」
今日は一日そんな話題をしつつのお稽古で。
俺のお稽古はなしで先生が夕飯を作る。
「出来たら起こしてあげるから寝てなさい」
「すみません」
やっぱりじっとしてるのも疲れるようで少し寝てしまった。
気づくと毛布が掛けられている。
「あら起きたの? ちょっと待ってなさいね」
「よく寝てたねぇ」
ゆっくり身を起こすと8時半を回ったところ。
「あー…寝すぎましたね、食事とっくに終られましたよね」
「あんたの分はよけてあるから大丈夫だよ」
「助かります。ありがとうございます」
座りなおすと温められてご飯が運ばれた。
うまそう。
「いただきます」
「どうぞ」
やっぱりうまいなー。
「あれ、今日って先生ですよね、ご飯」
「あらやっぱりわかる? そうよ、それはお母さんが作ったのよね」
「殆ど違わないのにねぇ」
「いやなんとなくですけど」
全部おいしく頂いて、ご馳走様! 箸を置いた。
「足りた? なにかいる?」
「いや満腹です。はい」
洗い物に先生が立って、八重子先生はお風呂へ。
寝転がると再度眠気に纏いつかれてうつらうつらとしてしまう。
「あら。こんなとこで寝ないでよ。あっちの家行きましょ」
「へ? え? なんで?」
「だってベッドのほうが起き易いじゃない」
なるほど。
「ちょっと待っててちょうだいね」
台所で色々と始末する音が聞こえて暫くして先生が戻ってきた。
「さ、行くわよ」
「あのー八重子先生に言わなくて良いんですか」
「あなたが寝てる間にそうしようって決めたのよ」
「なーる。じゃ参りましょう」
羽織を着せられ先生に手を引かれてあちらの家にはいる。
すぐさま先生が暖房を入れ、風呂に湯を張った。
「ほら、それ脱いでお布団入んなさい」
「あなたは? 一緒に寝てくれないのかな」
「お風呂入ったら寝るから。先に寝てなさい」
えー、と不満げにすると仕方ないわねぇと添い寝してくれた。
やっぱり先生の体の温かみとか、匂いとか。
そういうものは安眠に重要だ。
しっかりと巻き付いて寝た。
先生が風呂に入れるかどうかはわからないが。
おやすみなさい。

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