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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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505

休みの朝。
少しばかり朝寝を楽しむが一人でごろごろしてても楽しくない。
支度をして先生に会いに行こう。
軽い朝飯を取って歯を磨き顔を洗い着替えた。
さて。
昨日買ったものを持っていくか。
車に乗って先生のお宅へ行く途中酒屋に入り3本ほど日本酒を買った。
甘口の酒は俺しか飲まないけれど。
先生のお宅へ着いて先ずは台所に酒を持って行って居間へ。
「こんにちはー」
「あ、いらっしゃい。絹、いまあっちの家だよ」
「掃除ですか」
「年末から行ってないから空気を入れ替えてくるって言ってたよ」
年始に俺が一晩寝てたっきりか。
「お酒、買って来ました。それとこれ」
「お干菓子? と。あらー、これ可愛いねえ」
「でしょう。そう思って別に買ってきたんです」
暫くコタツで暖まってると玄関からただいまの声。
「おかえり」
「おかえりなさい」
「あら来てたの」
「ええ、ついさっき」
「買物行くけど一緒に来てくれないかしら。トイレットペーパーとか買いたいのよ」
「はい、待ってください」
さっき脱いだコートを着なおし、買物へ。
先生とお買い物は楽しい。
お昼と夜の分、何しようと迷いつつももち菜やべか菜、ネギに春菊、肉なども買う。
俺はそんな菜っ葉を知らなくて先生に聞くと最近出回っているという。
もち菜は小松菜っぽいものらしい。
べか菜は東京に来てから知った菜っ葉だったな。
こっちでは良く見かける白菜の仲間だ。
夜は鍋か。
んー、たら鍋食いたいなぁ。今度持ってこようかな。
最近魚持って来れてないから。
と先生に言うと今週は却下された。鍋続きは嬉しくないらしい。
色々消耗品を買って家に戻ってお昼ご飯。
もち菜でスパゲティとなった。
サラダに使えるくらいだからこういう使い方もありとか。
やわらかくておいしい。小松菜の仲間とは思えない。
食後は明日の支度を手伝い、それを終えたら茶室の手入れ。
何もせずとも埃は落ちてくるものだなぁ。
やることはやったので後は団欒。
律君達が帰ってきたから夕飯を取った。
先生の隣に座ったものだから肉ばかりと言うわけに行かず結構野菜も食わされた。
ま、良いけどね。健康的で。
食後くつろいでると明日の着付けを依頼する人が着物一式を持ってきた。
先生と別室で確認されている。
紐の本数とか伊達衿とか。
帰られたと思えばもう一組。
その間に律君や孝弘さんが風呂に入られて八重子先生が入って。
「あんた先に入ったら? 待ってたらぬるくなるよ」
「あ、はい。でも」
「いいから」
待つのを諦め風呂に入る。
すぐに先生が来た。
「一緒に入って良いわよね」
「どうぞどうぞ。お背中流しましょう」
ふふっと先生も笑ってる。
髪も体も洗ってゆっくりと温まってそれから先生の背中も拭いて出た。
風呂上りって幸せそうな顔してるなぁ。
居間へ戻るともう律君が戸締りの点検と火の用心をしてくれていた。
「じゃ、髪乾かしたら寝ますか」
「そうね……あなた良いわよね、すぐ乾いて」
「あー。短かいから。ほっといたら乾きますね、湿度低いし」
「ダメよ、冬はちゃんと乾かさないと風邪引くわよ」
「過保護だよねーお母さんって」
律君に笑われてしまった。
あ、ちょっと拗ねた。可愛い。
髪乾かしてくる、と洗面所に行っちゃったが羽織るものも羽織らずだ。
追いかけて着せるとありがとうと言うものの不本意そう。
宥めて髪にドライヤーを掛けてあげた。
「あなたのほうが過保護よね…」
どっちもどっちじゃないかなぁ。
「寝ましょうか、そろそろ」
「そうね」
布団を敷き先生を入れると俺が入るより早く寝息が聞こえてきた。
暫く寝顔を眺めてから俺も寝た。
翌朝は早めに起きて食事の支度をし食べ終えて一服していると着替えるよう言われた。
「手伝ってくれるんでしょ? だったら女らしい格好してくれないと困るわ」
なるほど。
確か会津木綿の長着があった気がする、と言うとそれで良いというので着替えた。
「……あんまり似合わないわね」
「ですね」
暫くして一人目が来た。
先生が着付けて俺は小物を渡したり、帯を締める時に手伝ったり。
良い感じだ。
「これでいいわ。どう?」
「きれーい。良いわねぇ、私も若い頃着たかったわぁ」
お母さんが付き添われていたのだがこの方は若い頃は着られなかったそうだ。
不況とは言え娘には着せたくて頑張ったそうな。
娘さんも嬉しそうだ。
先生が点検をしていると次の人が来た。
「はーい、ちょっと待っててくださいね」
「あら、じゃ先生、ありがとうございました」
先生と挨拶をして次の方と交代。
「あら? 山沢さん?」
おや、中川さんの娘さんか。
「……女性だったのね」
「あ、そっちですか」
先生が大変おかしそうにしている。
指示を受けて肌襦袢やらなんやらかんやら渡しては先生が着せて行く。
今度も綺麗に着せ付け完了したようだ。
「自分で着るのは簡単なのに人に着せるのって難しいのよねぇ」
と中川さんがぼやく。
それには同意する。
先生着せようとしてみたけど大変だった。
お礼を言って帰られて、先生はちょとほっとした顔。
片付けてそれから先生に挨拶。
「え、帰っちゃうの?」
「帰りますよー。俺も部屋の掃除したいし」
「明日してあげるわよ」
「だから…」
「明日まだお稽古ないわよ?」
「…あ。でも家庭のこと優先! ね? 俺だって一人でしたいことが」
「何するって言うのかしら」
失言…。
睨まれてしまった。
小さくなってたら溜息一つ。
「帰って良いわ、今日は。うちの事するわよ…」
「すいません」
「ただし! 浮気はダメよ。許さないわよ?」
「心配性だな。可愛いけどね」
「茶化さないの」
後ろを向いた先生を軽く抱き締めた。
「初釜、いつだっけ?」
「18日…うちのは19日にするわよ」
「了解、土曜日になったら来ますね」
「あら? 持つの?」
「持たせますよ」
耳を舐める。
「こ、ら…。こんなところで」
「あんまり浮気を疑うと次回縛って浣腸するからね」
「わかったわよ、疑わないからそれだけはやめて頂戴…」
脱力してるのも可愛いなぁ。
先生のお尻をぽん、と叩いて着替えてくる、と部屋に戻った。
長着を脱いで衣桁にかけていつものに着替え羽織とコートを手に居間へ。
「あれ? 帰るのかい?」
「はい、洗濯物とかしないといけないので」
「一人暮らしは大変だねえ」
「じゃ、また土曜に」
「はいはい、気をつけて」
「お邪魔しました」
台所から先生がまたね、と言ってる。手を振って挨拶して帰路へ。
危なく車で来てることを忘れそうになったけど。
急ぐ用があるわけではなし、ゆっくりと走らせる。
帰ったら道具の手入れ、しなきゃなぁ。
古いあれやこれ、もう使わない道具は捨てて。先生用に明日あたり買出しに行こう。
今週はそういう時間にしよう。
途中飯を食い、帰宅後納戸に篭り選別をしていると暗くなってきた。
日が落ちる。
飯を食って酒を飲み、風呂に入って寝た。

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504

翌日も先生を置いて出勤。年始は暇だ。
初釜の分を茶懐石の店が発注するばかり。
疲れもせずに帰宅すると先生が風呂から上がってきた。
「あ、おかえりなさい。お風呂今入ったらあったかいわよ」
「ただいま」
脱いで風呂に入ろうとすると洗濯機回すから、と下着を奪われた。
かわりに唇を奪うと早く入んなさいっとピシャリと尻を叩かれ風呂に追いやられた。
「あ、まだ縄の痕、残ってますね」
「若くないもの」
「腕のサポーター要りますね、出かけるなら」
「そうねぇ」
苦笑してる。
縄の痕が嬉しいって女なら居たが苦笑されるというのは何か新鮮だ。
「お湯、冷めるわよ」
「あ、はい」
とりあえず風呂に入るか。
湯を浴びて軽く洗って風呂に浸かると気持ち良い。
さて、上がったら現金を用意しないとな。
のびーっと伸びて風呂から上がりタオル片手に出て行けば先生にバスタオルを渡された。
「裸で出てきちゃダメでしょ。ほら。頭拭いてあげるから」
「いいよ」
「座りなさいよ」
世話を焼きたいらしい。諦めて座ってされるがままになる。
たまにはいいか。
ある程度タオルドライが終って先生は自分の髪を乾かしに洗面所へ行った。
俺は冷めても来たので着替える。
ドライヤーが終ったのを見計らい交代。
「おなかすいてきちゃった」
「百貨店行ったら先ずは昼飯ですね」
「そうね」
先生が着替えてる間に金を用意して財布に入れる。
それから腕のサポーター。
薄手で滑りの良いもの…ってあったかな。
暫く探すと出てきた。
とりあえずつけさせてみる。
フィット感はそれなりで滑りは良い様だ。
先生が化粧をしている間に外出準備を整えた。
「さてと。行きましょ」
「はい」
車で行って百貨店の人ごみに混ざる。
呉服の催し物の会場を確認しつつ先ずはランチ。
昨日は鮨食ったから今日はイタリアン。
先生は意外と健啖家でしっかり食べても大丈夫、と言うことでコース料理。
たっぷり食べて幸せそう。
ご馳走様をしてから催事会場を見て歩く。
「う~ん。これいいわねぇ…高い…」
「ああ、似合いますねえ。買ってあげる」
「もうちょっと他のも見てから」
結局うろついているうちに良い帯と出会いそっちを買うことになった。
後は普段着にするのに反物を見繕って仕立てに出した。
ちらほらと成人式の買物かな、親子連れがいる。
紐が足りないとか足袋のサイズが合わないとかあるんだろう。
先生も当日は朝から二人ほど着付けるそうだ。
つまり、前日手出し禁止と言うわけで。
夕飯用に地下で弁当を買って帰宅。
先生は明日の朝帰るといってるので朝の分も買った。
帰って暫くいちゃついて先生の見たいテレビを見させてゆっくりさせた。
夜は少し恋人のように抱いて、という希望に応えて。
ちょっと面倒だが仕方あるまい。
髪も乱さず衣類も大して乱さずに抱く。
ちゃんと寝る前に整えておやすみなさい。
軽めだった所為か朝はそれなりに早く先生も目が覚めた。
今日は朝食の準備もしなくて良いからゆっくりと布団の中で朝寝を楽しむ。
そのままついもう一戦してしまった。
起きて昨日買ってあったもので朝飯を食べ、風呂に入って着替えて先生のお宅へ送る。
「ただいまぁ」
「あ、おかえり。山沢さんは?」
「今買ったもの運んでくれてるのよ」
ひょいと顔を出して挨拶した。
「こんにちは、八重子先生」
「いらっしゃい。なに買って来たの」
「ホウレン草と白菜とジャガイモ人参玉葱カレー粉…」
列挙しているとカレーを作るつもり、と先生が補足した。
「絹、ちょっと。ここ」
あ、首筋にキスマーク残ってる。
ぱっと手で覆い隠して顔を赤くして慌てて逃げて行った。
か、可愛い。
「にやけてるんじゃないよ。見えるところに…バカだね」
「へへ、すいません」
台所で下拵えをしていると先生が湿布貼って帰ってきた。肩こり肩こり。うん。
「それ…聞かれても顔赤らめてたらバレますね」
あ、ますます赤くなった。
「ばか、恥ずかしい…」
ふふっと笑って先生にジャガイモを渡す。
「忘れるべく剥きましょうか。それとも」
「だ、駄目っ」
「そんなに慌てなくても。ここじゃ何もしませんよ」
キスくらいはするかもしれないが。
にやっと笑ってやるとそそくさと割烹着を着て包丁を取ってきた。
「手元、集中しないと危ないですよ」
「し、集中させて頂戴よ。あっち向いてて」
「はいはい」
暫く剥かせているうちに落ち着いたようだ。
指示が飛んでくる。
従ってカレーを仕込む。
お昼ご飯は冷しゃぶにしておいた。
ソテーしたホウレン草と金時・紫・金美人参をつけあわせに。
カレーに入れると面白くないのでサラダだ。
うまい。
食後八重子先生が洗い物を、俺たちは家の掃除を。
三時ごろ、お茶を入れてくれた。
おやつはカステラ。
ただし文明堂。今度福砂屋かってきてあげよう。そうしよう。
八重子先生に呼ばれて茶室へ行くと特別に稽古をつけてもらった。
メインは先生への初釜準備だけど。
3時間みっちりの稽古の間に俺はご飯を炊きに立ったり、スープやサラダの準備をした。
先生は流石に手前を忘れてたりはせず少し迷いはするもののクリア。
俺は……沢山怒られた。
やっぱり半月以上稽古してないのと先生にかまけてたのと。
良い時間になったので片付けてカレーを温める。
「お父さん呼んできて頂戴」
「はい」
ぱたぱたと離れへ行って孝弘さんを呼ぶ。
「ご飯できましたよ。今日はカレーです」
「ん」
むくりと起きてのそのそと後をついてくる。
「あ、あとでおやつに羊羹貰ってくださいね。渡してありますから」
「この間のあれか」
「そうですあれです」
正月だから奮発した。
戻ってスープを運びカレーを運ぶ。
サラダも出してみんなそろって食事。
「あ。そうだ。先生」
「なぁに?」
「土曜日これません」
「…どうして?」
「十日恵比寿ですので」
「ごめんなさい、意味がわからないわ」
「………えぇと」
何かっていわれるとどう説明したら良いんだ?
「去年も来てなかったの覚えてませんか」
「あぁ。そうそう、そうだったね。来なかった」
「うーんと。あ、そうだ。酉の市のようなものがあるんです」
「お酉さまね、わかったわ」
「こちらでも11月にえびす講ってないですか」
「そういえばそんなものしてたかね。五穀豊穣って」
「お百姓さんのお祭りなの?」
「関東では農業系ですよね」
「あんたのところは違うのかい?」
「商売繁盛笹持って来い! ですね」
「あ、聞いたことある」
「お商売の神様なのねぇ。そう。じゃ気をつけてね」
「日曜は…どうしましょう。月曜は成人式の着付けですよね」
「んー。来てくれると助かるわ。お手伝いして欲しいから」
「はい、じゃあ適当な時間に」
「おかわり」
「はい。律君は?」
「あ、下さい」
今日はお櫃も台所にある。
台所へ立ってお皿にご飯とカレーを掛けて戻り、渡す。
「ありがとう」
「ん」
「久さん、ついでに私、スープ欲しいわ」
「はいはい」
「これ、絹、あんたねえ」
「立ってるものは親でも使えと昔から言いますよねー」
あはは、と笑いつつスープを少し温めて。
「こんばんはー」
玄関から…あれは司ちゃんか。
先生が出迎えてご飯食べたか聞いてる。
「久さん、ご飯まだなんですって。おねがいね」
「はい」
サラダ、足りるか?
足りなきゃ切ればいいか。
カレーも温めて先にスープを出し、ご飯を皿によそいカレーを掛けて出した。
「いただきます」
「どうぞ」
「あ、お肉、豚じゃないんだ?」
「山沢さんが作ったから」
にこにこと先生は司ちゃんが食べるのを見ている。
優しげで、お母さんの顔してて。ほんわかとした気分になった。
さてと、そんじゃそろそろ帰るかな。
先生方のお皿を引き上げて洗ってから帰る旨を告げ帰宅。
お稽古のない暇な木曜、金曜を過ごした。
土曜になり仕事を終えたらすぐに移動して京都へ。
毎年のようにタクシーで近くまで行く。
交通規制と言うか車が入れないようにしてあるから。
人の流れに従って神社へ。
去年の熊手を納め、列に並び祈願して今年の熊手を授与していただく。
裏戸を叩いて出ていつもの鼈甲屋、と思うとシャッターが閉まっていた。なぜだ…。
タクシーを拾い、新幹線に乗り換え会社へ。
熊手を飾って帰宅した。おなかすいたー。
時計を見る。流石にこの時間からでは先生のお宅のご飯に間に合わないな。
だが鶴屋はまだ開いているはず。
車を走らせて求めに行った。
福ハ内と福梅、都しるべを購入してから飯を食いに行く。
肉食いたい、と思ったので近くの店に聞く。
一人くらいなら何とかなるとかで入れて貰った
赤みの多くて柔らかいのを希望したがさてどうか。
…うーん少し脂は多めだったようだ。先生は連れては来られない。
少し軽めに食べることにした。
ご飯を頼んで正解だ。
ロースをメインに7人前を食べ終えて支払う。
そんなに高くはなかった。
車だからジンジャーエール。帰ってから酒を飲もう。
ゆったり運転して帰宅。先ずは部屋が暖まるまでにと風呂に入る。
寒い!
震えつつも頭と体を洗い終える頃には流石に風呂も暖まる。
風呂から上がって酒瓶とコップを取りストーブの前に座って独酌。
体があったまる。
落ち着いたので寝ることにした。お休み。

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503

翌朝良く寝てる先生を置いて出勤。
初市。
マグロは去年より安価だったらしい。
少し酒を入れて帰ってくるとまだ先生は寝ていた。
俺もまだ眠い。
一緒に寝てしまおう。
乳を揉みつつ密着してうとうとしていると寝返りを打たれてしまった。
むぅ。
仕方ない。諦めて寝るか。
昼過ぎまで寝て先生の身じろぎで目が覚めた。
「おなかすいたのよねぇ……」
「動けそうなら寿司食いにいきますか」
「ん、どうかしら」
もぞもぞとベッドから降りようとして…床に座った。
「だめねぇ。とりあえずお手洗い連れてってくれる?」
「はいよ」
軽々と抱き上げてトイレに座らせた。
「出ててくれないかしら」
「見てちゃダメかな」
「恥ずかしいじゃないの」
「だからいいんだよ」
「ばか言って、もうっ」
蹴飛ばされて追い出された。
暫くして流す音。先生を居間へ連れ出す。
寿司を出前してもらうことにした。
「ねぇ? この間から気になってたんだけど」
「はい?」
「あれってなぁに?」
筒状の古びたケースを指差す。
「あぁ。ちょっと待ってて」
納戸から同じ物の新品を持って出る。
「あら同じもの?」
古い方から中身を出すと先生が引きつった。
元は白かった血の染みのある古い使い込んだ鞭。
「あなたにこれ、使いたくないから捨てようと思ってね。新しくしたんだ」
古いのを仕舞って新しいのを出す。
「あの、あの…そんなの…」
「触ってごらん」
恐る恐る触れる。
「ソフトレザーにしたんだ。ハードは無理だろう? 色もやわらかい色にした」
「あの、これで……私…」
「打つかもしれないし、しないかもしれない。あなた次第だ」
先生はそっと鞭をなでている。
チャイムが鳴った。
ビクッと跳ねるように先生が身じろぐ。
「寿司が来たんでしょう」
インタホンに出て玄関へ受け取りに出た。
先生の前に鮨桶を出して鞭を受け取って納戸へ仕舞う。
古いのはごみの日に出そう。
おてしょうを出し醤油。
「いただきましょう」
「いただきます」
さすがに初市の後だからネタは新鮮だ。
「おいしい♪」
先生も嬉しそうだ。
「食べ終わったらもうちょっと良いかな」
「ええ? まだ足りないの?」
「ほんのちょっとだけね」
頬を少し赤く染めて可愛いなぁ。
おいしくいただいて桶を洗っておてしょうを片付ける。
先生は昨日の新聞を片付けていた。
「あら。これいいわね」
「なんですか? あぁ百貨店の広告? 行きますか?」
「…歩けるかしら」
「いつまでやってます? 明日?」
「水曜日までみたいよ」
「明日行きましょう。今晩は寝かせてあげますから」
「本当?」
「本当。だから今、ね」
キス。
抱え上げてベッドに連れて行く。
脱がせて抱いて楽しんで気がつけば夕方になっていた。
「あ、買物行かなきゃ。何食べたい?」
「なんでもー」
「んー。すき焼きは?」
「いやー」
「…白菜のクリーム煮?」
「それおいしそう。それでいいわー」
「はいはい。寝てて下さい」
顔を枕に落として寝始めた。
着替えて重装備で外へ出る。寒い。
先生が食べたいであろう具材を買い、プリンも買って帰宅した。
脱いで部屋着に戻って台所に立つ。
白菜と鮭のクリーム煮のほかにホイコーローを作り、味噌汁を作ってご飯を炊く。
味見してこれでよし。
食卓に出してお皿も配置完了。
先生を起こして寝巻きと羽織を着せ、席に着かせた。
「おいしそう…」
「たまにはこういうのもいいでしょう?」
ごはんをよそってあげた。
「ありがと」
お味噌汁を飲んでご飯を食べる。
「あら? お米、変えたの?」
「変えました。今日から」
さすがにわかるようだ。
食べているうちに先生が幸せそうな顔をしだした。
「おいしいわ。上げ膳据え膳なのもあるけど」
「肉も食わなきゃいけませんよー」
「味が濃いんだもの」
「あ、確かに。あなたには濃いかぁ」
俺がメインにホイコーローを平らげ、綺麗さっぱり食べ切った。
先生をトイレに連れて行き、ベッドに戻して洗い物を。
「久さん、まだ? 眠~い」
「はいはーい、もうすぐ」
急いで済ませて俺もトイレに行ってから先生の横に潜り込む。
「ぬくいなあ」
うふふ、と先生が笑って俺の胸に手を這わせてくる。
「おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
寝かしつけて寝息を聞くと眠くなる。
俺も疲れた。おやすみなさい。

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502

朝になって寝室の細々としたものを片付けていると先生が来た。
「ちょっとー、新聞くらい取りなさいよ」
「あ、忘れてた。いらっしゃい」
「ほらっ。もうっ」
年末から今朝までの新聞がどっさりと押し込まれてたようだ。年賀状も。
「ご飯食べたの?」
「いや、まだ」
「お買物行く? それとも喫茶店?」
「喫茶店行ってから買物行きましょう。俺、ブロッコリー食べたいから」
「じゃ着替えて」
「はーい」
その間に先生が新聞と広告を分けて始末しておいてくれた。
外出の支度をして先生と正月の気配まだ残る外を歩く。
腕を組んで。
すっかり先生は恋人気分のようだ。去年は人目を気にしていたのに。
俺は嬉しいけどそこのところどうなんだろう。
喫茶店で聞いてみるとこの辺りは知ってる人もいないし、と。
なるほどね。
羽を伸ばしてるわけか。
責めさいなまれに来ているのに。
先生はパンケーキ、俺はカレーを食ってから買物へ行き、あれやこれや買って帰宅した。
下拵えを済ませてから先生に寝巻きに着替えるように言う。
少し頬染めて頷き、和室へ行った。
脱いで裸で戻ってきてくれても良いんだが、と以前言ったけどそれは嫌なのだそうだ。
少ししてそそくさと俺の横に座った。
ま、暫くはお茶でも飲んでテレビでも見ようか。
でも先生はテレビより俺の年賀状が気になるようだ。
見ても良いというと可愛いだの綺麗だのと楽しんでいる。
そんな先生が可愛くてキスした。
一度触れると箍が外れてしまってそのまま押し倒しキスを続ける。
少し抵抗された。
身を起こすとそそくさと年賀状を片付け、俺の腕を掴んで寝室へといざなう。
床は嫌だってことらしい。
ま、最初は恋人のように丁寧にして欲しいって前から言われてはいる。
ここで機嫌を損なうとまた喧嘩になるのはわかっているから丁寧に。
耳元で絹、好きだよなどと照れくさいが囁いてたっぷりと甘えさせる。
先生もとりあえず満足したようで本気出しても良いと許可が下りた。
ただし壊れない程度だ。
飢えてるのはわかっているとの事。
お稽古日や初釜の日を確かめる。縄、いけるな。
道具を取りに一度布団から出て戻ってくると先生は俺の雑誌を見ている。
「こら、何見てるのかなー」
「これ前はなかったわよね?」
「……よく覚えてますね」
「だってこんなの、一度見たら忘れないわよ…」
「で、なんか面白いものありました?」
顔を赤くして何も言わないが、開いてたページを見ると成程、入れたまま外出ね。
「したいの?」
首を大きく振った。横に。
そりゃそうか。
「他は? どこ見てたのさ」
後ろから乳を揉みつつ聞くと恥ずかしそうにだがページを見せてきた。
あー。あそこに蝋燭ね。できなくても見ちゃうわけだ。
さっきより濡れてるのはどこか先生は羞恥とか、蝋燭とかに感応しているわけか。
「してあげようか。きっと熱いよ」
「あ、やだ、怖い…」
そろそろいいだろう。
丁寧に縛って珍しく3本も使った。
「綺麗だ…見てごらん」
鏡を見せるとほの赤かった頬や体がぱっと染まった。
張りの出た乳房を指でなぞるだけで喘ぐ。
あちこちをそっと触って行く。
気持ち良さそうに、くすぐったそうにしている。
ついにあそこを弄って欲しいとねだられた。
「だーめ、頼み方、前に教えただろう?」
そんなの言えないとか恥ずかしがっている。可愛いなあ。
「言わなきゃこのままだ」
焦らして遊んでると逡巡しつつも何とか頼んできた。
少し縄を緩めてから中を楽しむ。
途中から先生の言葉が不明瞭になっていくのが楽しい。
縄が軋む。
ペニバンをつけて中を抉ると漏れ出る嬌声。
ほどいて、と微かに聞こえた。
しがみつきたいらしい。
一度抜くと期待の目を向けられたが後ろに回って背後から挿入した。
「鏡見て」
耳元で囁くといやいやをする。
「こんなに濡らして…気持ち良いの?」
湿った音と先生の声と、縄の軋む音ばかり。
痙攣するのも縄に絡め取られた状態だ。
腹に触れる先生の指が冷たくなってきた。そろそろほどいてやるか。
ペニバンを抜いてほどき始める。
擦り傷をつけないよう丁寧に解き終えると満足そうに息をもらして先生がもたれて来た。
「まだいけるね?」
そのまま正常位で抱いてしがみつかれ引っかき傷もつけられたがやっと俺も満足。
先生はぐったり。
後始末をして仮眠を取る。
夕飯の時間になってさすがに先生の腹が鳴った。
起きて飯を作ってから先生を着替えさせ、食卓に着かせる。
座る体勢も辛そうなので後ろから抱きとめて背もたれとなって先に飯を食わせた。
「おいしいわ…」
「良かった。あとはゆっくり寝ると良い。明日俺が帰ってくるまでね」
「帰ってきたら…またするの?」
「さぁ。したくなるかも」
耳が赤い。
そくなとこが可愛いくてたまらない。
ゆっくり食べさせてそれからベッドへ入れた。
食べ終わる時には既に眠そうだった先生は布団に寝かせるとすぐに寝息を立て始める。
幸せそうで良い。
俺も残ったものを食べて洗い物をして先生の横にもぐりこんだ。
おやすみなさい。

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501

朝、俺より先に先生が起きていて着替えようとしている。
「おはよう。良い夢見れた?」
「…覚えてない」
「あら~。初夢見なかったの?」
「そのようですね。ってまだ早いじゃないか。もうちょっと寝ない?」
「しょうがないわねぇ、ちょっとだけよ」
布団にもぐりこんでくれた。
胸を触りつつ先生の初夢を聞き出す。
「小さかった頃の夢を見たの。お母さんに甘えてる夢」
「今も甘えてるところありますよね」
「そうねえ。ん、それ以上はダメよ。したくなっちゃうから」
「されちゃったら?」
「ダメよ。おなかすいたわ」
「残念」
「明後日ね」
軽くキスされて布団から出て着替え台所へ。
お雑煮と御節を詰めなおす。
甘口のお酒も持って出た。
二日目にもなると飽きてくるのでは有るが先生のお料理はうまくて俺は飽きない。
食べ終わったら身づくろいしてお年始回りだ。
去年行ったから大体わかる。
足元が悪いので先生の手を引いたり。
あちこち回って帰ると昼を過ぎている。
「おかえりー」
「ただいまぁ、外、寒いわよー」
「やぁ結構に冷えましたね」
「早く着替えてコタツ入りなさいな」
「そうするわ」
脱いで干して。
先生は裾に跳ねが上がってないか点検している。
「あぁ、だめだわ。出さなきゃ」
「どれ、あ、これはいけませんね」
襦袢姿で二人で覗き込んでたら後ろから声を掛けられた。
「あんたたち何してるのよ」
「あ、あぁ。環さん。あけましておめでとうございます」
「姉さん。あけましておめでとう。どうしたの?」
「おめでとう。あんたたちそんな格好でいるから何かと思ったのよ」
「外、雪だったでしょう。跳ねが上がってないか見てたの」
「なんだ、早く着替えなさいよ」
着替えた後お昼ごはんとして御節を環さんたちと頂いてそれから先生と書初め。
今年は「誠」と書き、先生は「精進」と書かれた。
八重子先生はやはり何か草書で書かれている。
「姉さんも書いたら?」
「え、私?」
「はい、筆」
「うーん…なに書こうかしら」
さらさらっと新春と書かれたが字のレベルは微妙。
先生方と比べちゃうとだけど。
片付けて手を洗い、御節をつまみつつゆったりと更けてゆく。
「姉さん今日は泊まるのよね?」
「開が帰ってくるかもしれないから帰るわよ」
「外、危ないわよ」
「でも」
「泊まりなさいよ、あんた怪我でもしたらどうするんだい」
結局泊まられることになり先生が部屋の用意をしている。
その間に風呂に湯を張りに立った。
りゅうひと棒だらを出してきて晩飯。
食後、八重子先生が風呂に入り、環さんが続き、先生が入る。
ふとトイレに立つとあれが来てた。
八重子先生にあちらの家にいると理由を話して鞄を取りコートを着込んで移動した。
何かと八つ当たりしそうで一緒にいないほうが良い。
それは八重子先生も納得した。
しかし部屋が暖まらない。
布団に毛布を入れて潜り込んだが寒い。
とは言え今更戻るのはなんだかな、と震えていると携帯がなった。
先生から。八つ当たりしても良いから戻って来いと。
正月から喧嘩したくないからどうしてもと断った。
やっと暖まってきた部屋で一人静かに寝る。
こんな日になるなんてしょうもないなぁと思いつつ眠気に絡め取られた。
ふと目が覚めると夜明けの気配。
先生からのメール。
朝食が出来たころに呼ぶから寝てるようにと優しい思いやり。
ひと寝入りして電話で起きる。
着替えて先生のお宅へ戻り、朝ご飯を頂く。
俺の分はちゃんと白味噌で濃さも俺の作ったとおり。
覚えてくれたらしい。
環さんの隣は少々気に入らないが。
食後すぐに布団に追いやられてしまった。過保護だ。
お昼になったら起こすからって言われたけど一人寝は寂しいんだよね。
ぶつくさ言いながらも潜り込んで寝ているとたまに先生が来て頭を撫でていく。
病気の子供じゃないんだから、と苦笑しつつしたいようにさせた。
この人は何と言うか性愛より何より母性愛が強いんだろうな。
うまそうな匂いがしてきた。
八重子先生が呼びに来る。
肉。肉の匂い。
焼肉だ。毎年なのか。
先生が俺に肉をどっさりくれる。
食べた後また布団に連れ戻された。
太る…。
というかヤりたい。食欲睡眠欲の後は性欲だな。
とはいうものの環さんも司ちゃんもいる家でそれは無理だ。
今晩帰って家片付けて明日先生が来るからその時にしないとな。
ふと気づくと夕飯の気配。
寝てたようだ。
腹減ってる。
起きて台所に顔を出すと先生がもうちょっと寝てたら、と言う。
腹が減ってるから眠れない。
そういって食卓を片付けてご飯を待つ。
スパゲティが出た。
先生としてもちょっと和食に飽きた?
おかずとして舞茸チーズ、ほうれん草のソテー。
と言うことは買物いったのか。
ほうれん草にしたのは俺のためかそれともほうれん草くらいしかなかったか。
ブロッコリー食いたい気分だったんだが、ま、明日にしよう。
おいしく頂いた後、辞去を告げた。
「掃除くらいしてあげるわよ」
「甘やかしすぎです。大丈夫ですから。明日待ってますね」
「気をつけて帰るのよ? ほら、そんな格好じゃダメよ」
羽織の上からコートにマフフー、ショールを巻かれてしまった。
厳重な扱いに、バスも電車も乗るんだが、と思う。
環さんは明日朝帰られるそうだ。
別れて久しぶりの自宅へ。
……汚い。
先生の家の清潔さと比べると、年末掃除に来てもらった割には汚い。
移動で疲れた気になってたけどこれはいけないと慌てて掃除を始めた。
うっかり途中でやる気がなくなっても良いようにトイレと風呂から。
なんとか居間の掃除と、寝室のベッドメイキングを終えてやる気が終了した。
もう明日の朝で良いかな。
トイレに行って、寝た。

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