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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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470

休み明けの仕事は暇で早く終ってしまう。
ゆっくりと支度をして先生のお宅へ向かい、稽古の助手。
俺への稽古もつけてもらった後、水屋を片付けていると先生が背中に触れた。
「ん? どうされました?」
「ね、旅行、連れてってくれる?」
「旅行?」
「ほら、連休に京都って行ってたじゃないの」
「あぁ旅行ね、旅行…台風来てるのに?」
「だって13日の夜からって言ってるわよ、京都」
「足が遅くなってるとは聞いてますけど。新幹線止まったらどうするんですか」
「止まったらあなたの家に泊めて頂戴」
「あー…はい。いつから行きますか」
「土曜、お稽古終ったらすぐでどうかしら」
「お夕飯は」
「新幹線の駅弁で良いでしょ」
「じゃ八重子先生に話を通して置いてください」
「ちょっと待っててね、今言ってくるわ」
宿と電車手配しないといけないな。
さっとタブレットで調べてみるとキャンセルがあるようで良い宿が手配できた。
電車の手配もする。
禁煙車のできればグリーン。
余裕で有った。やっぱりキャンセルが多いのかな?
手配を済ませた頃、先生が戻ってきて水屋の片付けを再開する。
「どうでしたか」
「構わないって。水屋も律に片付けてもらうわ」
「いいんですか?」
「そうしないと電車の時間遅くなるわよ」
「まぁそうですけど」
「荷物どうしたら良いかしら。あなた全部持ってくれる? それとも送っちゃう?」
「台風の影響あると困るからお持ちしましょう」
「じゃ明日のうちに荷物作っておくわね」
「はい、俺も用意してから来ますね」
片付け終えて食卓へ。
今日は何かなぁ。
へぇ、先生方はエビしんじょのお吸い物か。
また面倒なものを。
俺には豚バラの炒めたのに大根おろしと薬味、ポン酢を添えたのをメインに。
先生が律君に色々といない間の家の事について言ってる。
「おばあちゃんは家にいるんだよね?」
「いるわよ。でもほら。おばあちゃんだってお出かけするかもしれないでしょ」
「そうなったら食事は出前取ったら良いからね」
「お父さんの分はご飯炊いて頂戴ね」
「何しに行くんだっけ」
「展覧会と資料館と博物館の予定してるのよ」
「やっぱり京都だと沢山あるの?」
「常設展が随分有るからね、あっちは」
「大西は行きたいわ」
「はい、ぜひ」
食べ終わって片付けて帰る段になり、先生が見送ってくれた。
「じゃ、あさって楽しみにしてるわね」
「楽しみですね。じゃあ失礼します」
「またね」
機嫌よく帰宅して、明日の仕事に備えて寝た。
翌日は連休前なのにそこまで忙しくない。台風の影響だろうか。
仕事を終えて食事をして帰宅。
昼からは旅行の荷物を作ることにした。
着物バッグにあれこれ詰め込み、更にボストンを。
下着や小物類、縄とペニバンだけだが。
なんせ何か足りなきゃ家から取れば良いわけで。
勝手知ったる京都では特にさしたる荷物も要らない。
すっかり作り終えればそろそろ夕刻。
小鯛を造っておいたのでそれをアテに少し飲んでから寝た。

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469

翌朝、雨の中出勤する。
お客さんも来ない上にキャンセルの電話ばかりで仕事にならない。
仕事が終わって帰ろうとすると道が川になっているところがあるらしい。
心配になって先生に電話するが、あちらはそれほどでも無いようでひと安心だ。
帰って心配をされたが俺は長靴だし合羽着てるし。
問題なく帰宅した。
けど昼から暇でしょうがない。
昼寝をしている間に台風は終わったようだ。
夜。テレビをつけるとあちこちで土砂崩れがあったなどニュースが凄い。
古い友人にメールをし、無事を確かめた。
幸い誰も被害にはあわなかったようだが…今年は酷いな。
外はといえば水が引いてるのでコンビニへ行き、飯を買って帰ると先生からメール。
何食べたの?と。
うーん、これは教えたら叱られるな。
仕方ない。
冷蔵庫の保存食、漬物を加算してメールを返した。
今度は塩分が多すぎる、とお叱りの電話が。
苦笑。
明日、先生がまた野菜責めにするんだろうからいいじゃないか。
そう答えると少しむっとした気配。
明日、嫌いな物尽くしにするわよ? と言われて降参した。
素直にごめんなさいと言うと野菜は多いけど好きなものにしてくれるという。
優しいよなぁ。
暫く喋って、眠くなったというと柔らかな声でもう寝なさいと。
お休みの挨拶を交わして電話を切った。
翌朝、仕事は暇で時間が過ぎない。
ふと見れば甘えびが売れずに残っている。
少し考えて買い取った。
先生と食べよう。
仕事を終えて先生のお宅に向かう。
台所に置いてからお稽古の準備を整え、茶室で待つ。
生徒さんが来て先生も支度が済み、お稽古が始まった。
サラサラと中置きの稽古。
いつもは壁際の風炉を中央に置いて水指を壁際へ。
少し戸惑いつつも皆さん何とかお稽古。
炭手前も先生の指名した生徒さんが行なった。
稽古が終って水屋を片付け、食卓へ。
「あら、えび? おいしそうね」
俺へは野菜尽くしと豚のしょうが焼き。
ん、うまい。
「甘~い♪」
「おいしいねぇ」
甘エビに手を汚しつつ、先生方はうれしそうだ。
買って来た甲斐もあった。
こちらの地域ではトウガラシなどとも言う。
唐揚もうまいエビだが、刺身で食うのが一番だ。
「おかわり」
先生は手が汚れてるので俺が受け、よそって孝弘さんに渡した。
俺は野菜責めで満腹。
食事が終って片付けてしばしの団欒。
順送りに風呂に入って寝間に引き上げた。
しっとりとした先生を懐に抱いていたら寝息が聞こえてきた。
やりそびれた。残念。
諦めて寝て起きていつもの水曜日が始まる。
家事を手伝い、お買物にも付き合った。
夕飯をいただいてからの帰宅。
最近すっかり安定してきた気がする。
良いことだ。
ベッドにもぐりこみ早めの就寝。

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468

夢を見ることもなく朝が来て仕事へ行く。
土曜日なのに思ったほどでもない。
台風来てるからだろう。
先生から焼鯛を頼まれたので焼いてもらって帰宅、先生のお宅へ向かった。
「こんにちは。具合どうです?」
「あ、いらっしゃい。律? 熱下がったわよ」
ひょいと先生の頤に手を掛けてこちらを向かせた。
「クマ、結構酷いですね」
「ほんと? わかっちゃう?」
「今日はお稽古終ったらすぐ飯食って寝たほうが良いと思いますよ」
「あ、でもそれじゃあなた…大丈夫?」
にっと笑って水屋の支度にかかった。
お稽古も機嫌よくされていて、後は開さんさえ帰ってきてくれればと思う。
お夕飯を食べると眠くなったようで早々にお布団へ。
八重子先生と俺は暫く団欒してから片付けて戸締りなどして各自部屋へと別れた。
部屋に戻ると先生はすっかり気持ち良さそうな寝息を立てている。
着替えて横に入ると寝返りを打って俺に絡まってきた。
可愛い。
俺も疲れていたこともあり、すぐに寝た。
夜半、先生が懐の中でもぞもぞと動く。
「どうしたの」
「ぁ…その…、夢、見ちゃって」
そっと俺の手を股間に誘導する。
なるほと、そういう夢ね。
前戯的なものをすっ飛ばして直接股間を弄る。
声が出ない程度に加減して逝かせたが物足りなさそうだ。
「今からあちら、行きましょう」
「…はい」
恥ずかしそうに浴衣の上からもう一枚重ねて着、物音を立てないように移動した。
夜更けとは言うものの1時すぎ。
まだ沢山楽しめる。
部屋に入って脱がせ、ベッドに潜り込む。
少し冷めた気分をキスで煽り、たっぷり泣かせる。
眠気が来たようだ。
少し迷ったが着替えさせて抱きかかえて戻り、布団に寝かせた。
八重子先生に言ってないから、いるはずのものがいない騒ぎは困る。
幸せそうな寝息が心地よく、俺もすぐまた眠りに引き込まれた。
翌朝、寝過ごした。
目が覚めたら日が昇っている。
時計を見れば7時過ぎ、慌てて台所に行くが八重子先生も起きてないようだ。
取敢えずご飯炊かねばなるまい。
米を研いで水につけてる暇がないのでそのまま炊く。
うーん、朝御飯何作ろう。
冷蔵庫を確認…。オムレツとベーコンとサラダで良いか。
ご飯がようやく炊けて配膳した頃、皆が起きてきた。
「おはよう…お母さんは?」
「お早う、律君。まだ寝てると思うから起こしてきてくれるかな。八重子先生も」
「二人とも? 珍しいね」
「私も寝過ごしちゃったよ。孝弘さんも出来たらよろしく」
「あ、はい」
台所に戻ってスープを出すと三々五々、起き出して来た。
「おはようー」
「おはようございます」
「おはよ、寝過ごしちゃったねぇ」
「おはようございます、そんな日もありますよね」
食卓に着いていただきます。
お櫃は先生。
「ん? あら? ちょっと硬いわね」
「すいません、私も寝過ごしました。吸水させてません」
「あらあら、そうなの? 仕方ないわねぇ」
テレビを見ると明日朝方台風が来るとのこと。
「あなた大丈夫?」
「出勤する頃はまだ近畿でしょう、大丈夫ですよ、きっとね」
「あんまりだったら休みなさい」
「そうですね」
「律、あんたも今日は用事あるなら早めに済ましなさいよ」
「あ、うん」
さっさとご馳走様をして食後のコーヒー。
律君が出かける用意をしている。
ブラックスーツ? 葬式か。
先生は今日はある程度疲れも取れ、律君が帰ったことで落ち着いた様子。
ということで茶道具の入れ替えに掛かった。
夏の道具を仕舞って、秋の道具立てに。
昼を過ぎて律君が戻った。
少し雨が強くなっている。
「あ、そうそう。旅行行くの?」
「ん?」
「ほら、今度の連休」
「どうしましょうか、そっちも台風来てますし」
「…うーん。来なかったら、でどう?」
「いいですよ」
「じゃ、そうしましょ」
「来ないと良いなぁ」
「そうねえ。それよりそろそろあんた帰んなさい。雨ひどくなってきたわよ」
「あ、はい」
暗雲立ち込めている。
「先生も危なそうだと思うなら避難してくださいね」
「大丈夫でしょ」
「裏山が怖いじゃないですか」
「うーん…考えとくわ」
誰もいないのを見て軽くキス。
「昨日、あなた可愛かったよ」
「やだ、ばか。早く帰んなさい」
背中を押されてしまった。
あはは、と笑って片付けて先生のお宅を出る。
帰宅すると本格的に降り始めたようだ。
カッパの用意だけして就寝した。

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467

翌朝仕事中に電話。
律君が帰ってこなかった?
まさかの外泊?
今日は様子を見るけどと心配そうだ。
仕事のあとお稽古に向かう。
お宅へ着き、先生方が食事をしているのを見れば食が進んでない。
二人ともじゃ流石に、ということだろう。
それでも先生は気丈にもお稽古のときだけは気を張ってにこやかにされる。
終った途端溜息だけど。
水屋を片付けていると俺の背に頭を寄せて、ごめんね、と言う。
「どうしたの?」
「溜息ばかりついちゃって。嫌でしょ…」
手を拭いて懐に入れた。
「身内が二人して、なんて溜息出るの当たり前でしょう。早く帰ってくると良いんだけど」
「うん…律、どこ行ってるのかしら…」
「ほら、まだ一日だけだから友達の家とか、女の子と一緒とか」
「だったらいいんだけど…」
「司ちゃん、聞いてみました? 彼女なら行動をともにしてませんかね」
「あ、そうよね、電話してみるわ」
ぐいっと胸を押して俺から離れ、電話しだす。
晶ちゃんにも。
今のところ心当たりは無いようでがっくりと肩を落として俺の膝に来た。
「調べるって言ってくれたけど」
「俺もちょっと探しはしますが接点が少ないからなあ」
八重子先生が食事と呼びに来て取敢えず食卓へ。
孝弘さんにも先生が相談。
表情からすると今回はかかわってなさそうな…気がする。
食事を終えて帰るとき、先生が寂しそうだ。
「明日、また来ます。明後日も来ても良いですよ」
「来てくれるの?」
「ええ。寂しいのなら」
「本当は帰したくないわ。でもあなたお仕事だものね…」
「こればっかりは勝手休み出来ませんからね」
引き寄せて撫でて。暫くして離れ、別れた。
帰宅して就寝。
木曜も暇で。早めに先生のお宅へ。
「こんにちは。先生…ちゃんと食べないといけませんよ」
「あ、いらっしゃい。胃にもたれちゃうのよね」
おもやつれして可哀想だ。
それでもお稽古となると背筋がぴんと伸びて気配も朗らかになる。
無理してるの知ってるだけにサポートをしっかりして差し上げ、遅滞なく終った。
「明日も来ますね、お手伝いさせてください」
「いいの? 疲れない?」
「大丈夫。俺が強いの知ってるでしょう」
軽くキスだけして帰宅した。
さてさて金曜、いつもなら仕事の後は昼寝をしているが今日は特別に。
ブリと小ヨコを持って先生のお宅へ着いた。
「ん? 山沢さん? どうしたの」
八重子先生に驚かれた。
「や、お疲れみたいですからお手伝いにと」
「ああ。ありがとうねえ」
「台所に魚置いてあるんで夕飯にでもどうぞ」
水屋を用意してお茶室をざっと雑巾がけし、生徒さんを待つ。
生徒さんが来ると食事と小用を済ませた先生が戻ってきてお稽古開始。
上の方の水屋の準備は結構大変だ。
間違えないように気をつけつつ、稽古を眺める。
難しい点前をあまり間違えずにされていて修練の差かな。
皆さん帰られた後、先生が俺にもたれてきた。
「疲れたわ…」
だろうなぁ。
「水屋、やっときますから居間でくつろいで来たらどうですか」
「邪魔かしら?」
「そうじゃなくて」
ちょっと慌てたら八重子先生が絹ー、と呼んでる。
はーい、と先生が居間へ行った。
水屋を仕舞いにかかり、片付けていく。
騒がしいがどうしたのだろう。
片付け終わって居間に顔出すと律君がぼろぼろになって帰ってきてた。
先生がしがみついてるが…。
「先生、律君風呂に入れたほうが良いかと。怪我の治療しませんと」
「あ、そうよね。そうよね、お風呂、一人で入れる?」
「うん、大丈夫」
「手伝ってあげるから、ほら」
「いいよ、一人で入るって」
「あ。いや私と入ろう。傷口かなり洗う必要あるから」
「えぇー」
嫌がりはしたものの強制的に一緒に入る。
傷を洗ってると声にならない悲鳴を上げているがこればっかりは仕方ない。
全身くまなく触れてみる。
先生が心配そうにしているが打撲と擦り傷だな。
一応破傷風が気になるから病院へ行くことに。
先生と律君を乗せて行き、付き添う。
注射は嫌そうだなぁ。
律君が消毒されるのにうめく声に先生は耳をふさぎたい様子。
俺の腕を握り締める、その手も汗ばんでる。
終って会計を済ませて帰宅。
「どうだった?」
「打撲と擦り傷だけだったわ、よかった」
「今日は熱が高くなるって言ってましたよ。布団敷いてください、律君寝かせます」
「はいはい」
既に発熱してぐったりしてる。
先生が横に着いて今日は様子をしっかり見るそうだ。
「じゃ、私はこれにて」
「今日はありがとねえ、助かったよ」
「いえ、無事に見つかってよかったですね。ではまた明日」
帰宅途中パンを買い食らいつつ移動して空腹をごまかした。
家に着いてすぐに布団に潜り込む。
疲れた。

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466

翌日仕事を終え先生のお宅へ向かう。
いつもよりはゆっくりでは有るが。
既に生徒さんも着てお稽古が進んでるようだ。
暫くして業者が来た。
応対し、簡単につくとのことであとは工事契約書にサインが必要。
どちらかお手すきかな?と水屋を伺う。
先生が手が空いたところで、説明してサインをいただいた。
工事は水曜10時からと決定して業者が帰る。
さて、そんじゃ俺も帰るとするか。
暇を告げて帰宅する。
晩飯はどうしようか…途中でうまそうな匂いに引き寄せられ、つい焼肉に手を出した。
先生と一緒じゃ滅多には食えないというのもある。
たまに脂っこいもの食べたいからね。
しっかり食って帰り、早めに寝た。
翌日、鯨が入荷し、皆がうまいと言うので先生のお宅へも持っていくことにした。
台所にいた八重子先生に渡すと微妙な顔。
「刺身でどうぞ」
水屋の用意も整い、生徒さんも来られたのでお稽古をする。
先生は心配事があるのに、それを毛ほども見せず、凄い。
見習いたいものだ。
俺へのお稽古も済ませ、夕飯。
鯨、と聞いてみんな恐る恐る手を出した。
「あ、意外とおいしいね」
「堅くないねぇ」
「給食のイメージしかなかったわ」
そんなこんなで全部なくなり、洗い物を終え居間に戻った。
先生は少し溜息をつきつつ俺にもたれてくる。
…色っぽい。
いや、つけこんではいかん。
孝弘さんは通常通りだがこの人は何があっても普段どおりの気がするからなぁ。
今日も先生はしたくなさそうで俺は諦めて寝かしつけた。
しょうがないよね。
朝、してないけど起きられないのはきっと寝付けなかったからだろう。
やはり朝飯を俺が作って先生を起こす。
「…要らない。もうちょっと寝かせて」
「はい。お腹空いたら言ってくださいね」
「うん」
二度寝する先生の頭を撫でて、食卓に着く。
律君もあちこち声を掛けて探しているそうだ。
早く見つかれば良いのに。
10時になり、工事の人が来た。
手早く作業されてガス漏れなども確認しての動作チェック。
OK。問題なし。
昼には先生が起きてきて、スパゲティを食べる。
カレースパゲティ。
俺が前に作ったのがおいしかったとかで。
冷凍庫に有ったカレーで作られた。
あー…ポークカレーだ。
お二方とも家事も何もする気が起きないらしいので出来る事はやってあげた。
台所をしていると背中にもたれてくる。
ドキッとしたが触りに来たわけではないようだ。
開さんが心配すぎて誰かにくっついていたい、そんなところだろう。
あ、そうだ。
台所を片付け終え、先生に乾燥機の使い方を教えた。
「台風来ますしそれまでに一度使ってみると良いですよ」
カレンダーを見て顔を曇らせた。
「あなたねえ、今日仏滅じゃないの。なんでこんな日に設置するの」
「ああ、今日は成ですから。良い日なんです」
見合いや婚礼、新規事業、開店。種まきから普請造作、引越に良い日で、更に結納大吉。
揉め事をするにはよくない日ではあるが。
「成?」
「ほら、ここにかいてあるでしょう」
日めくりカレンダーの小さく書いてある字を示す。
「次の日曜なんて友引に建ですからいい日ですよね。土いじりと蔵開き以外には」
「そうなの?」
「建は大吉です。あれ? 暦注って見ません? 神宮暦とか」
「年末に売ってるのよね? おばあちゃんがどこかに仕舞ってた様な気がするけど」
「気にする人はそれを見て予定立てたりしますよ」
「そんなの気にしてたら生活できないわよ」
「でしょうねえ」
あはは、と笑って明日か日曜に使ってみることを勧めた。
それから先生と買物に出て夕飯の買物を済ます。
「暑いわねえ」
「残暑ですね」
「衣更えしたのにまた単衣着てるのよ、襦袢」
あ、本当だ。
抱いてないから気づかなかったけど、振りから覗いてる。
色々買って帰って、先生と下拵えをする。
気づいてないようだけど、溜息多い。
ちょっと辛気だな。
先生を居間に帰して俺が作ることにした。
今日は律君遅いのかな。
そろそろ食事が出来そうなんだけど帰ってこない。
「先食べたらどうです?」
「ん、そうねぇ。どうしたのかしら」
「友達と騒いだりしてるんじゃないですか。携帯持ってないから連絡が遅れてるとか」
「あの子も携帯持ったら良いのにねぇ」
怖がりだからなー。
食事を終え、俺は帰宅して就寝。

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