朝、やっぱり先生は起きれず朝飯の支度を整えてると八重子先生が起きてきた。
「おはよ。今日はお昼食べたらいこうかねぇ」
「あ、おはようございます。展示会?」
「そうそう。夕飯は孝弘さんも律もでかけるそうだからどこかで食べて帰ろうかね」
「いいですねー、どこ行きます?」
「ほら、ええとなんだっけ、前にあんたが営業で行った所」
「ああ、あのホテル。じゃ予約しましょう」
朝食を作って先生以外で食べてから、ホテルに電話した。
「天麩羅ならあいてるそうです」
「うん、それで良いよ」
「じゃ三人、ハイ。6時で」
八重子先生と律君が後ろで喋ってる。
でかけるからちゃんと鍵を持って出るように、とか。
「遅くなるの?」
「お夕飯食べてから帰るからね、それなりにね」
「ふーん、お母さんも?」
「そうだよ」
電話を切ってそろそろ先生を起こそう、と思い席を立つ。
寝間に入ると気持ちよさげな寝息を立ててるので何か悪いな、と思ったものの。
「先生、そろそろ起きましょう? もう10時過ぎましたよ」
「んん…」
「起きないと抱いちゃいますよー」
耳元で囁くと目が覚めたようだ。
「はい、おはよう。起きれますか?」
「朝から変なこといわないで頂戴よ…おはよう」
「ふふ、俺はいつでもあなたを抱きたいんですけどね」
そう言うと赤面している。
「お昼食べたら展示会行きますからね、そろそろ支度した方が良いんじゃないですか?」
「あ、そ、そうね。支度、しないと」
「夕飯はホテルで天麩羅ですよ。そのつもりでどうぞ」
「はい」
にっと笑って居間へ戻る。
「絹は起きた?」
「はい、まだ眠そうでしたけど」
「そういや昨日お母さん、お稽古なかったんだよね? 山沢さんなんで来たの?」
「ん? ああ講習会の帰りに寄られてね。疲れたって仰るから車で連れて」
疲れさせたのはあんただろ、と言う目で八重子先生が見ている気がする。
小一時間して洗顔や着替えを済ませた先生が居間に出てきた。
「おはよう」
「あ、おはよう」
「もうすぐお昼だよ」
「遅かったですね」
「うん、出かける支度もしてたものだから」
「お昼何にしましょうね、何か軽いものの方が良いのかな」
「そうだねぇ」
お昼の支度をして食べて一服、律君達が先に出て行った。
「さてあたしたちもそろそろ出ようかね」
「そうですね」
用意をして鍵などかけて。
俺の車の後部座席に載せて会場へ行った。
ここか、とまずは先生方を下ろし駐車場へ入れ、入り口へ向かう。
「お待たせしました」
「こっちみたいよ」
付き従って入る。
入り口付近に良さそうな帯。うーん、いいね。
68万か。
先生がほしいというなら、と言うところだな。
いくつか見ているうちに先生が俺を呼ぶ。
「これどうかしら」
「良いですね。顔移りが」
「そうだね、それいいねぇ」
「もういくつかございますよ」
肩に当てていくがやはり最初のが一番良い。
それに合う帯も見繕っていくつか合わせてすぐに決まった。
八重子先生もあの大島にしようかこの結城にしようかと悩んでおられる。
俺のを見立ててくれる、と先生が仰ったが男物は女物より少ないからなぁ。
と、思ったら女物からチョイス。
女幅で確かに良いが。
御召にすることにした。
「お正月におろしたらいいわ」
「はい」
八重子先生も決まったようだ。
じゃ会計表をお持ちします、とのことで隅の椅子へ。
「先生の分、俺に払わせてください」
「いいのかい? じゃそうしてもらいなさいよ」
「えぇっ? 駄目よそんなの」
「まぁまぁ」
会計が出来て即金で八重子先生とあわせて支払った。
「なんだか悪いわ」
その後三人でホテルへ行き、天麩羅のコース。
うーん、うまい。幸せ。
先生は締めにお鮨を、俺は茶漬けを。
かき揚げおいしいなぁ。
ご馳走様をして支払ってホテルを出て帰宅。
車の中であくびを連発してた八重子先生はさっさと着替えて寝てしまわれた。
先生も少し眠たげだ。
「もう寝ちゃいますか?」
「だめ、お父さんのお夜食しないと…」
「俺、するから。寝たら良いよ」
「そう? じゃ悪いけど」
着物を脱いで吊るし、汚れチェックしている。
んー、綺麗だなぁ。
見とれそうになったが夜食の支度。
炊飯器…中身ないな。
ご飯炊いておこう。
あとおかずになるものを作り起きして。
前掛けを外し台所から戻ると先生は髪留めを外してくつろいでいる。
「はい、お茶」
「寝ないんですか」
「これ飲んだら寝るわ」
ふっと笑って軽くキス。
はにかむ先生は可愛いくて。
お茶を飲み終えた先生が部屋にひけて暫くするとご飯が炊けた。
混ぜて蒸らす。
「はらへった」
「あ、お帰りなさい。丁度炊けましたよ」
お茶碗で3杯とおかずを食い荒らして孝弘さんも離れへ戻ったようだ。
俺も台所を片付けて先生の寝る横にもぐりこんだ。
ぬくい。
おやすみなさい。