朝起きて、また仕事か、と思う。
でもまぁ今日は。先生に逢いにいけるし。
忙しい思いをしつつも何とかこなしてると先生からメール。
いつもの肉屋が休みだからすき焼き食べたければ肉を買って来いとな?
了解していつも買ってる肉の量を聞き、自分の分も足して買って先生のお宅へ。
先にお勝手から入り冷蔵庫に入れて、居間へ。
「こんにちは。冷蔵庫に入れときましたんで、肉」
「あらありがと。今日も花月だけど人が足りないから。私も入るわよ」
「で、私が指導するからね」
「豪華ですね。今日の生徒さんはラッキーだ」
「用意してきて頂戴ね」
「はい」
茶室に行くと台子が出ている。
「先生、台子でされるんですか?」
「あ、仕舞っといて頂戴~、片付けるの忘れてただけよ」
「はーい」
「あ、ねぇねぇ山沢さん、勉強会一緒に行かない? 東貴人仙遊なんですって、次回」
「…絶対無理です」
「あら楽しいのにどうして?」
「短歌とか突発で詠めませんって。その上東が貴人なんて絶対無理」
「あら見学でもいいのよ、行きましょ、ね?」
「絶対に混ぜないと仰るならですよ! 混ざるのは無理ですから」
「うふふ、じゃ予約しておくから」
「っていつですか?」
「今度の火曜日のお昼からよ」
「ここのお稽古は?」
「お母さんが見てくれるわ」
「そうですか。場所はどちらで?」
「ええと、新宿のどこだったかしら。とりあえず駅で待ち合わせなのよ」
「新宿駅で待ち合わせというと。アルタ前?」
「そう、そこ」
八重子先生が戻ってきた。
「ああ、山沢さん来てたのかい」
「こんにちは、お邪魔してます」
「いま山沢さんに勉強会一緒にって言ってたのよ」
「濃茶付で大変なのに大丈夫かねえ」
「や、見学で」
「じゃないと無理だろ」
「だからお母さんお稽古お願いね」
「はいはい」
トイレを借りて、それから水屋に待機していると生徒さんが来始めた。
今日は3人しか集まらない。
やっぱり3連休だからね。
「八重子先生、絹先生、こんにちは」
と皆さんご挨拶。
「今日は他の方お休みだけど花月しますよ」
花月と聞いてみんな微妙な顔をする。
お菓子を運んで食べる。
「あれ、先生も?」
「そう、他の方お休みだから私も入るわよ」
「山沢さんは?」
「入りますよ」
食べ終わったのを見計らって折据をまわす。
月!花!一!二!三!と先生が次客、俺が四客。
八重子先生にお稽古お願いします、とご挨拶。
そして正客からお先にと挨拶を送って座に着く。
今回の亭主は中井さん。
迎えつけの挨拶。すんだら客は袱紗をつけ四畳半へ移動。
「今日は繰り上げするよ」
うっ、ややこしいな。
折据が正客に座った下西さんの前へ。
亭主が仮座に入ったので折据が回りだした。
さぁ初花は誰だ。
一斉に札を開ければ三客の堀田さん。
繰り上げて俺が三客の場所へ、四客の場所へ亭主が来る。
あとは普通に花月だ。
幸い私は何度かで平花月では怒られなくなっていたが、
後の3人は足がわからなくなったり、見とれて動きが遅くなったり。
優しく指導が入る。
俺以外にはすごく優しいよね…。
3回繰り返し、お稽古が終ってご挨拶。
生徒さん達が帰られてご飯の支度を。
「今日はすき焼きだからね、下拵え要らないから楽でいいよねぇ」
「お水屋よろしくね用意してくるから」
「はいっ」
すき焼き♪
にんまりして水屋を片付ける。
仕舞い終わったので食卓を片付けて拭く。
「できたわよ、これコンセント挿して頂戴」
IHのクッキングヒーターか。
1000Wか…ブレーカー大丈夫なのかな。
500Wに設定した上にすき焼きの鍋が載る。
「先生、一応お聞きしますがこの家のブレーカーはどこですか」
「大丈夫よ、この部屋は他よりかなり大きくしてもらったの」
「そうそう、前に何回か落ちちゃってね、それで変えてもらったんだよ」
「ならいいですけどメシ食ってる最中に落ちると大変ですから」
「なんだかんだこの部屋は結構電化製品あるからねえ」
はい、ごはん。と先生がお茶碗を渡してくれた。
「食べましょ」
先生も笑顔だ。
おにくおいしー。麩もよく味をすっている。
しいたけに人参、玉葱も入ってる。しらたきかな、これは。
春菊がうまい。
八重子先生はやっぱり肉少なめに野菜沢山食べている。
お豆腐♪
おいしーーく頂いて綺麗さっぱり。
「〆になにかいる?」
「いや、満腹です」
「お父さんだとこの後うどん入れるのよ」
「ああ、定番ですよね」
ご馳走様をして後片付けを手伝う。
「ご飯に卵とこの汁をかけて食べるのは好きですよ」
と言うと塩分取りすぎ、と背中をつねられた。