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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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269

八重子先生が着物を選んでくれてそれを着た。
先生が着替えて出てくる。
あ、いいなぁ、美人さんだ。
どうせ司ちゃんを送るからと律君が駅まで車を出してくれた。
優しい息子さんだ。
そういうと先生はうふふ、と笑っている。
新宿まで出てタクシーに乗った。
電車だと乗換えが多くて面倒くさい。
20分ほどで着いた。
中に入ってざっと規模を確認し、受付に行って外で電話予約をする。
よし、予約確保。
中に入ると先生は掛け物を見てにこやかにしている。
綺麗だなぁ…。
先生のショールを預かり、バッグも邪魔そうなので預かる。
凄く嬉しそうに見ているのをみるともっと連れてこないとなぁと思う。
あ、お雛様。
時期は済んでるが会期の間出てるのか。
「ね、あなた飾った?」
「いや、うちはないんで…飾ってません」
「あらーじゃ来年はうちに来なさい」
「覚えてたらお邪魔します」
「お茶入れどこかしら」
「黒棗に濃茶じゃないですか? 棗が出てますし」
「あらほんとねぇ」
ゆっくりと展示を楽しんで、それから茶室を外から見て。
自分では気づかないようなところに先生は気づかれる。
茶人ならではの目の行き届き方だ。
その後、食事へ。
近くの懐石の店だ。
メニューはたった一つ。お酒は選べる。
すべて美味しくいただいた。
先生が嬉しそうで俺も嬉しい。
お店を出て、帰りましょ、といわれたが…。
ちょっと飲みに行きたいと誘ってみた。
タクシーを拾い恵比寿へ。
あのあたりならいくつか知ってる。
一応運ちゃんにお勧めを聞けばガーデンプレイスの店もいいとか。
前につけてもらって入った。
なるほどいいね。
ゆったりとお酒を頂き、楽しむ。
先生のは少し軽めのものを飲んでいる。
「ちょっと酔っちゃったわ。そろそろ帰りましょ」
俺が4杯目をあけた頃、そう仰った。
カードで会計を済ませてタクシーに乗り、帰宅する。
先生はタクシーの中で俺にずっともたれていてそういうところが可愛い、なんて。
家の中に入ると俺にしなだれかかってきた。
「脱がせて…」

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268

「あ、司ちゃん来てたんだ?」
「うん、これ晶ちゃんから律に渡しといてって頼まれてたんだけど」
「なんだろ」
ちら、と目をやる。
「……律君。それ円照寺向け案件だと思うな」
「…そうですね」
「司さんって本当、強いな」
「なんだい? それ。ただの箱だろ?」
「八重子先生、ご住職を呼んでいただけます?」
「持って歩かないほうがいいのかな」
「うん、司ちゃんか八重子先生なら大丈夫だと思うけど」
八重子先生が電話してくれて暫く。
住職が来た。
「うーむ、これは。また強烈な」
律君となにやら相談している。
今の内に先生の様子見てくるか。
寝間に入り、先生の寝顔を覗きこむ。
気持ち良さそうだな。
暫く見てたら目が覚めた。
「なぁにー?」
「んー、可愛いなって」
「ばかね。いま何時? お昼済んだ?」
「まだですよ、まだそんな時間経ってません」
「そう? ちょっとすっきりしたわ」
「あ、居間に行かれるんなら着替えて。円照寺さん来て貰ってるんで」
「あらどうして?」
「司ちゃん持込の物品がありまして、どうも律君に不向きみたいですよ」
ふーん、といって着替えだす。
「ちょっとここ押さえてて」
「はい」
帯を締めて鏡を見てちょいちょいっと整えて。
うん、綺麗だ。
後ろから抱きしめようとしたら叱られた。
折角きれいに着れたのにって。
じゃあ、とキスだけして一緒に居間へ行く。
「を、これはお邪魔しとります」
「律がお呼びしたようで…」
「いやいやこれはわしが持ち帰らねば律君にはちょっと」
「じゃお願いします」
「うむ。ではわしはこれで」
住職を見送って、さてお昼の支度をしようか。
下拵えはしてあるのでちょっと手を掛けてお昼ご飯になった。
孝弘さんを呼んできて皆で食べる。
流石に先生と司ちゃんは半分ほどだったけれど、その分は孝弘さんの胃袋におさまった。
いいよね、いつも何も残らないの。
洗い物を片付けて先生方とお茶をいただく。
なんてことのない日常。
日曜日の昼下がり。
「ああ、そうだ。明日のお稽古、山下さん以外お休みだから」
「えぇ?珍しいわねぇ」
「インフルエンザだってさ。だからあんた今から山沢さんと遊びに行ったらいいよ」
「あらそう? じゃどこ行こうかしら」
「うーん、根津は今は刀ですしねえ…畠山がまだ利休やってたような」
「三越は?」
タブレットを取ってきて検索。
「うーん…白金のほうでいいわ」
「ああ、じゃどこか山沢さんに食事つれてってもらって、山沢さんちに泊まっといで」
「それでいい?」
「あ、はい。んー食事、あの辺…懐石でいいですか?」
「うん、いいわよ。心当たりあるの?」
「一応ありますが現地行ってどれくらいかかるかで開始時間とか変わりますし…」
「断られたらどこでもいいわよ」
そんじゃまあ、着替えますか。

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267

「おなかすいた…」
八重子先生は呆れた顔をしてる。
お昼にはまだまだ時間が有るなぁ、かといってお櫃にご飯は残ってない。
「喫茶店、行きますか? それとも何か買ってきましょうか」
「着替えるの面倒よ…買ってきて」
「はいはい。何がいいですか?」
「ホットケーキ」
「…作ればいいんですね、わかりました」
冷蔵庫を見て卵と牛乳はあるか見る。
卵はあるけど牛乳がないな。
バターあったかな。
あるね。
じゃ買うものはホットケーキミックスと牛乳とシロップと。
外、寒いなあ。
と買物に行って、戻ってすぐに台所に入り、混ぜて混ぜて焼く。
「あ、いい匂いー。あれ、山沢さんが焼いてるの? おばさんは?」
「司さん。こんにちは。居間にいらっしゃいますよ」
「あ、そうなんだ。じゃぁ」
ん、焼けた。お皿に乗せて。バターとシロップ持って。
居間へ行こう。
「あれ、おばさん。珍しいですね、寝巻きのままって」
「あぁ司ちゃん…こんにちは」
先生の前にホットケーキを置いてシロップとバター、ナイフとフォークを置く。
「おいしそう」
先生が嬉しそうに食べている。
「おいしいわよー」
「山沢さん、まだあります?」
「ミックス? まだあるよ。卵もあったと思うけど」
「あんた作ってやってくれるかい?」
と八重子先生が言うので腰を上げて再度台所へ。
司ちゃんが着いてきた。
さっきと同じようにしてもう一度焼く。
出来たのを渡して洗い物。
台所から戻ると3枚焼いたのに先生は全部食べたようだ。
と思ったらお父さんに1枚食べられたという。
いつの間に。
「絹、あんたもうちょっと寝といで」
「うん、そうするわ」
「歯、磨いてからじゃないと虫歯なりますよ」
「あらそうね…昨日も磨いてないものね」
洗面所へ行って、それから寝間に行くのが見える。
「おばさん、具合でも悪いの?」
「二日酔いだよ」
「えぇー、珍しい。そんなになるまで飲むなんて」
「お茶だと思ったらお酒だったんでしたっけ?」
「あー、飲み会でウイスキーの水割りがウイスキーの焼酎割にされてたりするけど。
 そんな感じ?」
なにその濃いの。
「いやウーロン茶を頼んだらウーロンハイになってただけだよ。
 今の学生はそんなことしてるのかい? 危ないねえ」
うんうん、危険すぎる。

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266

片手で裁縫箱をしまい、繕い物を片付けた。
「律、あんた戸締り見てきてくれるかい、私ゃ火の始末見るから」
こっちを向いて、俺にはもう部屋に行って二人で寝とけと。
はいはい、と先生を担いで寝間に入る。
布団を敷いて寝かせた。
ったく気持ち良さそうに寝息を立てて。
吃驚したよ、本当に。
さて律君はあれで納得してくれたかなぁ。
トイレと歯磨きを済まし、寝巻きに着替えて布団にもぐりこむ。
先生がぬくくて気持ちいい。
もぞもぞと先生が動いた。
…俺の胸を触るの好きなのかな。寝てるとき割と触るよな。
ま、いいか。
おやすみなさい。
朝、起きてまだ先生は寝ている。
多分あれだけ酔ってたら起きてくるのは昼前かな?
台所に行って朝ごはんを作る。
八重子先生も起きてきて新聞を読んでいる。
お味噌汁が出来た頃律君も起きだしてきて孝弘さんを起こしに行った。
配膳をして、いただきます。
「お母さんは?」
「まだ寝てたよ。多分昼ごろには起きてくると思うけど」
「滅多に飲まないからねぇ」
「おかわり」
はいはい。
お櫃も空になってお片付け。
八重子先生も手伝ってくれて、手早く昼の下拵えもしておく。
居間に戻ってお茶をいただいた。
「頭いたーい…」
先生が起き出して来た。
「むかつきは?」
「それは大丈夫だけど…」
うー、と唸って私の横に座ってもたれてくる。
「あら?なんで山沢さん居るの? 泊まらないって言ってなかったかしら」
「昨日あの後律君のご帰宅が遅くなって、律君が帰ってきて30分くらいか、
 そのあたりで先生方が帰ってこられたんですよ。で、遅いからと」
「あー、そうだったのねー…」
「あんた山沢さんにキスしてそのまま寝ちゃったから大変だったんだよ。律の前で」
「ええっ?」
頭を押さえてうめきつつ。自分の声で頭が痛いとと言う奴だな。
「酔うとキスをするタイプと言うことにしておきましたけどね、焦りました」
「勢い良く抱きついたから山沢さんの手に針は刺さるし」
「ま、それはもうふさがりましたけどね」
「あらー…あいたたた、お母さん、痛み止め頂戴」
「はいはい、ちょっと待ってなさい」
暫くして戻ってきたが何も持ってない。
「切らしちゃってたよ」
「あ、じゃちょっと待っててください」
と先生の横から抜け出して部屋へ行き、鞄をあさって鎮痛剤を出す。
居間に戻ってハイ、と渡し飲ませた。
お白湯で薬を飲んだ後、お茶を飲んでいる。
意味ないよな、お白湯で飲む意味が。
「あんたなんでも持ってるんだねぇ…ペンチとか」
「胃腸薬・風邪薬・鎮痛剤・安定剤・ニトロ・気管支拡張剤くらいは持ち歩いてますよ」
「ニトロ?なんで?」
「むかし目の前で発作起こされて大変だったんでつい持ち歩くように…」
安定性の問題から定期的に更新してるけど。
まだなんか眠そうだな、先生。
いや薬が効いてきたのか?

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265

少し温まってから先日の着物を縫う作業をする。
夕飯をはさんで身頃を縫い終えた。
と言うことで片付けておやすみなさい。
明日は…お稽古だけか。さびしいな。
先生の泣き声聞きたいなぁ。
悲鳴とか。
八重子先生にはこんなこといえないぞ。いくらなんでも。
まさか相談とかしてないだろうな。先生。
などと思いつつ熟睡。
翌朝出勤して、仕事をして終えて先生のお宅へ。
生徒さんのお稽古が終り次第、さっと用意される。
「じゃ山沢さん、律が帰るまでお留守番お願いね」
「はい、お気をつけて。楽しんできてください」
水屋を片付けて居間でくつろぐ。
しばらくして電話。
取ると律君。
『あれ?山沢さん? 母は?』
「お芝居行かれたよ」
『あ、そうか、今日だった…遅くなりそうなんですけど父の食事、何か聞いてます?』
「いや律君にまかせてあるからと。なんだったらピザか何かとろうか?」
『あー…お願いします』
「孝弘さん、ピザ何枚くらい食べるかな」
『えーと、3枚、いや4枚かな』
「わかった、5枚頼んでおくよ。私も食べるしね」
『お手数かけます』
どうせだからいろんな奴頼もう。
孝弘さんの部屋に顔を出して一応どれがいいか聞いてみた。
やっぱりどれでもいいらしい。
ピザをおかずにご飯とか言い出しそうだったがそれは大丈夫なようだ。
5枚注文して暫く待つ。
を、きたきた。
食卓に広げると匂いに釣られたか、孝弘さんも来た。
全種類から1カットずつ抜いて好きなようにどうぞ、と食べさせる。
しかし沢山食べるなぁ。
綺麗に食べ切ったようなので手拭きを出した。
ちゃんと手を拭いてから部屋に戻っていったところを見るに先生の躾の成果か。
箱を片付け、食卓を拭いて台所へ。
布巾を洗った。
さて。この静かな家で先生を待つのか。
多分9時半くらいに帰りの電車だろうし。
その頃には律君帰ってくるのかな。
先日途中にした繕い物をすることにして時間を潰す。
時計の音だけが聞こえる。
丁度の時に鳴る音に時折手を止めて。
まだこんな時間かと。
カラカラと玄関の音がする。
「ただいま」
律君か。
「おかえりなさい」
「すみません、遅くなっちゃって」
繕い物があと少しだからそれが終ったら帰ることにしよう。
ちくちくと縫う。
「ただいまぁ~あぁこれ、絹!」
あ、帰ってきた。っておい。
ふらふら~っと俺の前に来たと思ったら抱きついてキスしてきた。
「お母さん!?」
ああ、律君に見られたよどうしよう。
つーか痛い、針刺さった。
唇を離して肩に顔を埋めた、と思えば寝息。
「律君、ごめん、鞄とってくれる?」
鞄の中から10徳ナイフを出す。
ペンチにセットした。
「悪いけどこれで抜いてくれるかな、針」
手の甲貫通しちゃってるよ…。
律君がプルプルしながら抜いてくれた。
はい、と八重子先生が絆創膏を貼ってくれる。
「それで、これどういう状況ですか、酒臭いんですが」
「お芝居の帰りに食事に行ってそこでお茶頼んだらねぇ。
 店の人が間違って絹のグラスがウーロンハイだったみたいでねえ。知らずにぐーっと」
あー、泥酔ね泥酔。
「相変わらず酔っ払うとキスしてきますね」
「だからあんまり飲まないようにしてるのにねえ」
「こないだ開さんにしようとしてましたよ。面白かった」
「…お母さんキスする癖あったんだ?」
「結構キス魔だよ。寝ぼけてるときとか」
「山沢さん、あんた抱きつく癖あるだろ」
「あー、年末でしたっけ、八重子先生を布団に連れ込もうとしたらしいですね」
「絹に聞いたの?」
「いつだったか聞きました、凄く笑われましたよ」
「…僕に山沢さんを起こしに行かせないの、それでだったの?」
「前に環さんも引き寄せたことが…」
「ほんとあんたら二人は…律はそういう癖はないとは思うけど」
「うーん、そこまで飲んだことないから」
そんな話をしつつ先生の帯を解いて紐をほどき肌襦袢の紐まで全部抜く。
パジャマに着替えた八重子先生が絹先生の寝巻きを取ってきてくれた。
一気にまとめて全部脱がせ、寝巻きを着せる。
前をあわせるには…どうしよう。
背中にマジックベルトをあてがい、仰向けに寝かせて前をあわせてとめた。
これなら苦しくもないだろうしほどけないしいいかな?
「それでなんであんたここにいるんだい?」
「僕がさっき帰ってきたから。僕が帰るまでってお母さんが言ったんだって」
「で、これ縫い終えたら帰ろうと思ってたんですよね」
「もう泊まって行ったらいいよ」
八重子先生が絹先生の着物を片付けながらそう仰る。
甘えることにした。

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