まぁいつもの暇な火曜日、と言ったところである。
仕事が終りそうなころ、先生からメール。
そろそろ終るから帰ると返事をする。
しかしピーマンを食べさせたがるのはなぜだろう。
別に苦手ではないんだが。偏食のイメージ=ピーマンなのか?
ゴーヤは遠慮するが。
帰宅すると先生が炒め煮をしていて、3色+ちくわだった。
待ちきれない、と言うとこれ食べる?とくれたのはピーマンのチーズ焼き。
「あ、冷蔵庫に佃煮もあるから明日食べるなら食べて」
「どんだけピーマンかったんですか」
「だって安くていいものだったからつい、買っちゃったの」
えへ、と笑ってるのはかわいいんだけどさ。
「明日半分持って帰るから、ね」
メインは生姜焼きだった。
飯がうまい。
お味噌汁は麩と人参少々。
佃煮に入りきらなかったようだ。
手は掛けてない、と言うがちゃんと美味しくて、その辺が長年の主婦と言うことか。
おいしくいただいてごちそうさまをする。
お茶を飲んでふうっと一息ついた。
「そろそろ着替えてお化粧直すわ。洗い物してくれる?」
「はい」
フライパンや鍋を洗い、味噌汁の残りは冷蔵庫へ。
夜うちで食べるのなら温めなおそう。
あ、佃煮。こんもりと鉢に入ってるな。
台所も食卓も片付いて、じゃ俺もそろそろ用意をしようか。
着替え終わったころ先生も化粧が終わり、トイレに行ったようだ。
一応袱紗なども用意しておく。
「さ、そろそろ行きましょうか」
「はい、そうしましょう。忘れ物ありませんか? 袱紗とか懐紙とか」
「あ、一応確認しなきゃね、うちなら予備有るけれど」
確認して二人連れ立つ。
まずは新宿アルタ前へ移動した。
暫くすると和服の奥さん二人が見える。あれがそうだろうか。
先生も気づかれて会釈を交わす。
それから近くまで寄ってご挨拶を。
弟子の山沢です、と挨拶し、男の方って珍しいわねーなどと話題にされる。
女の先生と男の弟子、と言うのが珍しいのである。
いや年寄りの女師匠に男弟子、というのは良くあるんだが。
その方々にご案内いただき連れて行ってもらった。
結構なお宅で、茶室もしっかりとしたものだ。
いらっしゃい、と迎えてくださったのは老齢の先生で、七事式がお好きな方だとか。
後お二方見えるから、と和室に通され、昆布茶をいただいた。
うーん、うまい、体が温まる。
ほどなくしてお二方が見えられた。少し先生より上くらいかな。
その方々も用意されて少しお茶を飲んで落ち着かれて茶室へ入る。
さぁ、見学だ。
大変にややこしい花月の一種をスムースにこなされるのを見るとやはり凄いと思う。
見とれているとあちらの先生からお茶を一服いただいた。
あ、濃茶。お一人でどうぞ、と仰っていただき一口。
お服加減は、と聞かれる。
大変に甘くて美味しい、と答えすべて飲み、どこのお茶か聞いた。
あぁ、お家元好みか。
器は黒楽。口当たりが良くて素敵だ。
お返ししてお礼を言えば、濃茶を美味しいといわれるのが嬉しいと仰る。
自分はまずい濃茶を練ってしまう確率は高いから…美味しいといわれるのは嬉しい。
だけどこの先生方だとそういうことじゃないのでは?
と思えば、最近の方は濃茶の美味しさを知らない、と仰った。
一番最初が安い薄茶だと、あれが濃くなったもの=苦そう、または本当に苦かった。
そうなっちゃうから仕方ない。それに…練るの下手なもの同士で飲むわけで。
先生方が練られたお茶を最初にいただければ、お茶の甘みがわかるのかもしれない。
お稽古は進み、〆に数茶、との事で先ほどの先生と私も席へ。
これは絵合わせの趣向で同じ絵柄を引いた人が飲める。
煙草もOK。
って煙草盆回ってきた。
スルーしようかと思ったら吸いなさい、と仰って一服いただく。
ちょっと辛いのは乾燥してるんだな。
ゆったりとしたお茶のお稽古が終わり、一旦和室へ。
そこで生姜湯が出されて、いただく。
「外は寒いから」
とのことだ。
亭主の気遣いとはこういうものか。
ではそろそろと皆さんで辞去し、各々別れた。