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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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134 -絹-

翌日、大掃除もほぼ終わり御節に入れるものなどをお買物に。
律に車を出させてあれやこれやと買い、ふと。
こういうの山沢さん好きかしら、なんて思ってしまう。
毎年なら買わないものも少し買うことにして。
「……お母さん、何でそんなの買うの?」
「んー、お正月山沢さん来るのよね。こういうのあの人好きだから」
「あ、山沢さん、くるんだ?」
「多分大晦日のお昼頃に来るんじゃないかしらね。
 来たらすぐに寝かさないと駄目でしょうけど」
「なんで?」
「4時間睡眠なんですってよ。月曜から30日まで」
「へー、大変なんだ?」
「あんたも就職考えないとねえ」
「ははは…」
薮蛇、そんな顔している息子に頼りなさを少し感じて、まだまだ頑張らなきゃと思う。
来年も生徒さんが増えるといいわねえ。
きっと山沢さんも手伝ってくれるでしょうし…。
別れなければ、の話だけど。
あの人だって他に好きな人が出来るかもしれないわよねえ…。
そうなったらどうしよう…。
「どうしたの、お母さん急に」
「なんでもないわよ。さ、帰りましょ」
律の運転する車に乗って、ぼんやりと考えてしまう。
今はいいけれどいつか、私が年を取ったらしてくれなくなるわよね。
若い子とするようになって私から離れていくかも。
やっぱり兄さんと結婚…山沢さんと兄さんがえっちなことするなんて…いや。
「お母さん?ついたよ?」
「あら?ごめんね、ぼーっとしてたわ」
「おばあちゃん、ただいま、これどこ置いたらいい?」
律と一緒に食材を降ろして片付けるものは片付けた。
下ごしらえをお母さんとする。
「じゃバイト行って来るから」
「はいはい、気をつけて行ってらっしゃい」
友達と旅行に行きたい。そう言ってたわね。
お母さんと二人で台所仕事をする。
「ねえお母さん…」
「なんだい?」
「あと10年もしたらきっと山沢さん、離れていくわよね…」
「うん?」
「だってもっと若くて綺麗な子沢山居るでしょうし…」
「あー…多分山沢さんは大丈夫だと思うけどねえ。絹が私の年になっても一緒だろ」
「そうかしら?」
「大晦日にでも聞けばいいじゃないか、きっとそう言うよ、あの子」
「うん…」
「なんなら養子にしたらいいじゃないか」
「え?」
「この間ね、ガーデニングの集まりでそんな話を聞いたんだよ。
 同性愛者は結婚できないから養子縁組をするんだそうだよ」
「うーん。同性愛者って言われると…なんかいやねえ」
「いざとなればの話だからね」
そんな話をしながら御節の準備をして、29,30日と日を過ごす。
黒豆もつやつやに出来たし、きんとんもいい感じね。
夫に食べられないようにして、夫が食べていいものを出しておく。
長く暮らす間にそれくらいはするようになった。
普段は食べられたら作ればいいわよ、と思っているけれど。

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133 -絹-

ご飯を食べた後、お掃除の続きをしていると子宮・乳がん検診のおしらせを見つけた。
そういえば行った事ないわねえ。
山沢さんはどうかしら、行ったことあるのかしら。
よく読んでみると乳がんは40歳から。
来たときに聞いてみようかしらね。
おかあさんがそれをみた。
「山沢さんは中央区だから無料にならないんじゃないかねえ?」
「あらそう?年明けに保健所に聞いてみましょうか。
 きっと一人じゃ行きにくいでしょうし」
「女装させないと駄目じゃないかい?」
「やだ、お母さんったら。女装って。多分凄く嫌がるわよ?」
「面白いじゃないの、それも」
「そういえば今年も環姉さんは帰ってこないのかしらね」
「仕事みたいだねえ、あの子は。いい加減結婚すればいいのに」
「あら、雪」
「寒いと思ったら降ってきたねえ」
「先週も雪だったわねえ」
ぼんやりと雪を眺めているとお母さんに毛布について聞かれた。
「あ、そうね、山沢さんのお部屋に要るわね」
「ん?お正月はしないのかい?」
「お母さん!皆居るんだからできるわけないでしょ」
「それもそうだけどちょっと可哀想だねえ、山沢さん」
お母さんは最近山沢さんとのことをからかったりする。
最初の頃は見られて叱られてたのに。
「開兄さんは知ってるからいいけど…律に見られたらどうするのよ」
「まあねえ」
「山沢さんが三が日は我慢するって言ってくれたの」
「それじゃ明けは山沢さんち泊まってきなさい。その方がいいよ」
「ん…そうね、そうするわ」
お母さんが私の携帯をちょっと触って、この状態でメールを打って送りなさいという。
ぽちぽちと本文を入れて送るといつもより少し時間がかかった。
なんだったのかしら。
「クリスマス、残念だったね」
「仕方ないわよ。お仕事だもの」
「ディナーショーの券が回ってきたら誘いたいって言ってたけどね」
「あらー、残念ねえ、それは」
文箱から古いものを纏めて、不要なものを除けて。
もう一度不要なものに目を通して、捨てて行く。
山沢さんからの去年の年賀状が出てきた。
印刷。両面ともにパソコンかしらね。
文面も今見ると苦労の跡が伺える。

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132 -絹-

「ただいまあ」
「あぁお帰り。山沢さんからお歳暮届いてるよ」
「中は何だったの?」
「お肉。今日はすき焼きにするから律に早く帰ってきなさいって電話しといたよ」
「あらいいわねえ」
お台所に行ってお肉を見ると沢山入っていて、
ステーキ用、しゃぶしゃぶ用、すき焼き用、焼肉用と分けられている。
「あらお母さん、松坂牛A5って高いんじゃないの?」
「多分すっごく高いお肉だよ。山沢さん、ほんとあんたのこと…。だねえ」
「お母さんたら。でも嬉しいわね」
「ただいまー。早く帰って来いってなんだったの?」
「おかえり。山沢さんが松坂牛送ってくれたのよ~。きっとおいしいわよ~」
「へー松坂牛って高いんじゃないの?」
「そうよ、そのお肉を色々送ってくれたのよ」
「…山沢さんって魚屋だよね。なんで肉?」
「あら?何でかしらね。手を洗ってらっしゃいよ。もう用意できてるわよ」
「ん、お父さん呼んでくるよ」
食卓にお鍋も出してすき焼きを皆でいただく。
「柔らかいねえ、これなら胃もたれもしないし美味しいねえ」
「山沢さんとステーキこの間食べたけど柔らかかったわよ」
「お母さん、いつもそういうところで山沢さんと食べてるの?」
「うーん、そうねえ、私は作るって言うのよ、だけどねえ」
「そりゃあんた、いつも作ってる人となら食べに連れて行く方が良いもんだよ」
「そうなの?」
「主婦が旅行好きなのは上げ膳据え膳だからだよ」
「律も結婚したらお嫁さんにそうしてあげなきゃ駄目よ?」
お父さんにご飯のおかわりを注ぎながらすき焼きを食べて。
「さすがにもうお腹一杯」
「でもおばあちゃんいつもより沢山食べてたね」
「そうだねえ」
お父さんもご馳走様をして、律もお箸を置いた。
台所で後始末をして、居間に戻るとお母さんが山沢さんち、どうだった?と聞いた。
「もう足の踏み場もないくらいだったわよ、結構疲れたわ」
「えぇ?うちだと後始末きちんとしているのにねえ。よっぽど仕事が大変なのかねえ」
「未開封の郵便物も沢山あったわよ。今日が期限のガスの払込書とか」
「それはどうしたんだい?」
「預かってるお金もまだあるし払ってきたわよ。止められたら可哀想じゃない?」
「まあねえ」
少し話して、お風呂に入って寝る。
翌朝、朝御飯を食べてから大掃除にかかる。
お母さんが窓を全開にしてレシートを飛ばしたり、
古いアルバムを見つけたり。
そんな日々を送り日曜日。
お昼をとっているとテレビで年末の築地が放送されているのをみる。
「あら?これ山沢さんじゃないかしら」
「え?あらほんとだねえ」
「どこ?」
「ほら、ここ」
「あーほんとだ。なんか投げつけてない?」
「他の人と投げ合いしてるわね。氷かしらね?」
「元気そうだね」
「良かったわ。あらもう切り替わっちゃったわね」
後でメールに見たこと書こうかしら。

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131 -絹-

翌朝、律を送り出してすぐに電車を乗り継いで山沢さんのおうちへ。
鍵を開けて中に入ると凄く乱雑に散らかっている。
足の踏み場もないわねぇ。と溜息をついてとりあえず洗濯物を拾って、
まずはシーツを洗って、これはすぐに乾くから脱ぎ散らかっているものを洗濯機へ。
シーツを干して、床に落ちている広告や新聞をかため、郵便物はまとめて。
開封はしてあげたほうがいいのかしら。
このガスのハガキは多分引き落とし出来なかったときのよね。
躊躇ってそれだけ開く。今日までの期限で5千円ちょっと。
これだけ払ってきてあげたほうがいいわよね。
きっと見る暇もなかったんでしょうけど…律も一人暮らしさせたらこうなるのかしら。
お買物のときに一緒に払い込みすることにして、まずはお掃除しましょう。
天井に近いところから。あら、はたきはあるのかしら?
あるとしたら掃除機のある納戸よね。
あったけどこの部屋…変なものも一杯あるのよねえ。
鞭、とか。蝋燭、とか。
いつか使われちゃったりするのかしら。
お尻も、っていつか言ってたわね。
ぞくっとして、少しドキドキとして。
慌ててお部屋から出てお掃除にかかる。
まずは窓や玄関を開け放して。
天井に近いところから叩きをかけて埃を落とす。
たんすの上やテレビなどのものの上の埃を落として行き、拭き掃除。
掃除機をかけていると洗濯機が鳴り響く。
表のシーツも乾いたので取り込んで、残りの洗濯物を干して。
寝室のお掃除もしているとエッチな本やビデオが。
こんなの見てるのねえ。
パラっとページが開いた。
やだわ、こんなこと……したいのかしら?
でも、こういう格好。私山沢さんに見せてるのよね…恥ずかしいわ。
Prrrrrrrr.... Prrrrrrrrr...
電話の音にはっとして慌てて仕舞って掃除を続ける。
やだわ、こんな。
欲情するなんて恥ずかしい。
掃除をしているうちにいつしか醒めたけれど。
納戸のお掃除はどうしようかしら…。
もうそろそろ夕方だから。ご飯の支度をしてから考えようかしら。
とりあえずお買物行かなきゃね。
ガスの払込書を持って、お買物に出る。
前に一緒にお買物に行ったから大体のお店はわかるんだけど。
何を作ろうかしら。
コンビニに入って払い込みするついでに山沢さんの好きな銘柄のコーヒーを買って。
椎茸のカナッペ作ろうかしら。
後はお野菜の肉巻きもいいわね。
おにぎりと。
ピラフのおにぎりも美味しいわよね
八百屋さんとお肉屋さんによってあれこれお買物をして。
おうちへ戻って調理するともうそろそろ帰らなきゃいけない時間になった。
洗濯物を取り込み畳んで仕舞って、ご飯が冷蔵庫にあると書置きをして。
缶コーヒーを文鎮にして帰ることに。

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130 -絹-

「山沢さん、お仕事頑張ってるかしらね」
お母さんになんとなく言うと、ふふっと笑われた。
「今週一杯、来ないからさびしいのかい?」
「そりゃそうよ…週の半分はきてくれてたんだもの」
「きっと山沢さんもそう思ってるよ」
「そうかしら?」
晩御飯の支度をして、お父さんを呼んで律は今日も遅くて。
そろそろ大掃除を手伝ってもらいたいのに。
買出しもしなきゃいけないわね。
「あなた、おかわりは?」
「くれ」
この人は、山沢さんとのこと気づいているのかしら。
わからない振りをしてくれているのかしら。
「ただいまぁ」
律が帰ってきたわ。
「お帰り、ご飯できてるわよ、手を洗ってらっしゃい」
律にもご飯の用意をしてお母さんにお茶を入れる。
「ごちそうさま」
ご飯を4杯。お父さんはいつもどおりに食べて部屋に帰って、
入れ違いに律が食卓についた。
「あれ、今日は山沢さんは?」
「あらあんたに言ってなかったかしらね。今週はお仕事忙しいんですってよ」
「へー寂しい?」
どきっとした。
「寂しいねえ、いつもいるからねぇ」
お母さんが代わりに言ってくれた。助かったわ。
「山沢さんって格好いいよね。開さんとは違う意味で。でも女の人なんだよね」
「そういえばあんた、前に山沢さんの胸見ちゃったろ?」
「あぁー有ったよね、そういうこと。あの人気にしてなくて吃驚したよ」
「開に見られても気にしてなかったからねえ」
そういえば兄さんも山沢さんの胸を見たのよね…。
兄さん、山沢さんに手を出したりしないかしら。
私のってわかってて取ったりする様な人じゃないけど…心配だわ。
「お母さん、山沢さんっていくつなの?」
律に聞かれて驚く。
「あら?そうねえ、確か35歳だったかしら?」
「えっ40代じゃなかったの?」
「あの人若く見えないよねえ、でも実は子供っぽいというか」
「そうよね、甘えん坊なところもあって面白いわよねぇ」
「ええっ?そんな風には見えないな」
そういえば若い時は10歳年上の人が凄く大人に見えたわねえ。
自分がその年になるとそうじゃないのがわかるんだけど。
「母さん、なんか食べるものない?」
「あら。開、どうしたの?」
「財布落とした…いま探してるけど。環姉ちゃん今日は帰れないって言うから」
「開さん開さん、山沢さんっていくつくらいだと思います?」
「20代かな?どうして?」
「今ねえ、律は40代って言ったのよー」
はい、とお茶碗にご飯をついで兄さんに渡す。
「で、いくつなの?」
「多分35歳だったと思うわ」
「えっ意外だなあ」
「いやもうてっきり、お母さんと同じくらいの年だから僕に見られても
 大丈夫なんだと思ってたんだよねー」
「ああ、それはそうだな、僕も見たけど普通だったしね」
「よく考えたら開とも年は釣り合うよねえ」
「母さん?」
「おばあちゃん、駄目よ。それは」
「ちょっと年開きすぎてない?一回り違うんじゃないの?」
「あら、昔は一回りなんて普通だったんだから大丈夫だよ。
 山沢さんが開のお嫁さんだったらお教室も続けれるじゃないの」
「それは山沢さんが嫌がるんじゃないかな」
「なんだい?開、あんた山沢さん苦手かい?」
「いやそうじゃないけど…見た目がホモ?」
律が大笑いしてお母さんが考え込んで一旦この話は流れてほっとしたわ。
夜、戸締りをして寝る支度をすませて居間に行くとお母さんが繕い物をしていた。
「明日山沢さんの家に行ってて何かつまめるものを用意してあげたらどうだい?」
「どうせだから洗濯とお掃除もしてあげたほうがいいかしら?」
「そうだねえ、手が回らないだろうから。してあげるといい」
「じゃ、律が出たらうちのことをして、それから」
「ああ、うちのことはあたしがするからいいよ、行っといで。洗濯があるだろ」
「いいの?」
「洗濯物を取り入れて畳むまでやってあげないと取り入れる気力もないとは思うけどね」
「あら、そうねえ。帰るの遅くなっちゃうわ」
「構わないからちゃんとやっといで」

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