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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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189

さて。ちょっと寝よう。
外出する気は失せ、2時間ほど寝てお昼を食べた。
ゆっくりしていると電話。
お茶しない?と言うことで外出することに。
ええと、先生の格好に合いそうな着物…これか。
いそいそと出て待ち合わせ場所に行く。
少し待つと先生方。
「この子、うちの弟子で山沢というのよ、よろしくしてやって」
「あ、山沢です、よろしくお願いします」
「こちら準教授の畠中さんと山下さん」
「よろしくねー」
「あなたはお初釜行かないの?」
「はい。まだ早いかと思いまして」
「あら早くないわよー、引次いただいてるっていうじゃないの」
「来年は応募しなさいよー」
「先日欠席者の身代わりにされそうになりましたけどお断りしました」
「あら勿体無い」
「流石に京都の二日目の朝のお席に加わるのは怖かったものですから」
「…それは確かに怖いわね、直門かベテランの先生方ばかりよね」
「あとは大企業の社長や奥様ですし」
「行きたくないわね、それ」
「むしろ何も心得がないほうがいけそうです」
「そうよね」
なんて話をしつつお茶をしてケーキを食べて散会、先生方と帰宅した。
着物を脱ぐとシャワー借りていいかしら?と言うので貸した。
先日置いて行かれた湯文字を出す。
八重子先生は普段着に着替えて絹先生の着物も片付けている。
「あー、気持ちよかった」
と湯文字だけつけて和室に先生が戻ってきた。
「これ、絹、あんたそんな格好で」
「いいじゃない、女ばかりなんだし」
と手渡した浴衣を羽織る。
「疲れちゃったわー」
「緊張するからねえ仕方ないけど」
「山沢さん、お水ー」
「はいはい。八重子先生は要りますか?」
「私はいいよ」
先生にお水を渡すと一気に飲んだ。
いい飲みっぷり。って酒じゃないな。
少し落ち着いた後、ササッと普段の着物に着替えられた。
「お母さん、そろそろ帰りましょうか」
「そうね、お邪魔したわね」
「じゃ、またね」
「はい、お気をつけてお帰りくださいね」
先生方を見送って、ふうっと一息。
さてさて、結構に俺も疲れたぞ。
女の人たちと喋るのって疲れるな、しかも弟子の立場では。
何か腹に入れて寝よう。
…やはりコンビニへ買いに行って食って寝た。

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188

むくり、と夜に起きる。
トイレへ行って気づいた。
なんだ、いらいらしたり落ち込む理由わかったぞ。
時計を見れば9時か、まだ電話していい時間だ。
携帯を拾い上げる。
あの後電話やメールはなかったようだ。
掛けると2コールで先生が出た。
「昨日はお疲れ様、あのね、明後日なんだけど…」
どうやら家元初釜はこちらの近くなのでうちで着替えてもいいかと言うことだ。
なるほど、うちから30分と言うところだが。
「八重子先生とお二人ですよね。もしかしたら俺、家にいないかもしれませんが。
 鍵、お持ちでしたよね?」
「持ってるわ」
「じゃ俺がいなければそれで開けて和室使ってください」
「ありがとう。そうそう、今日環姉さんが来てね、怒られちゃったわよ」
「何をですか?」
「お客様居るのに二人とも寝てるとかご飯作らせるとかどうなってるのって」
「環さんから見たらそうもなりますよね」
「山沢さんのことつい身内のように扱ってしまうのよねぇ」
「まぁ一緒に居る時間結構長いですしね」
「昨日はご飯作ってくれてありがとう、って言ってなかったわね。ごめんね」
「いつも作っていただいてるんだから構いませんよ」
「ねえ…土曜日泊まっていいかしら」
「抱かれたいんですか」
「すぐにそういうこと言わないの」
「俺はあなたを沢山抱きたいと思ってますよ」
「…ばか」
「じゃ、明後日。会えるといいな、あなたの綺麗な姿を見たい」
くすくすと笑い声がする。
「お部屋、お借りするわね。よろしく」
「はい、では」
「ええ、またね」
電話が終って、空腹に気づく。
あ、昼食ってない。
コンビニへ行って弁当を買って戻る。
食って、テレビを見て、暫くして寝直した。
翌日、翌々日とぐったりしつつ仕事をし、家に戻ればすでに先生方が着替えていた。
「あら、お帰りなさい。お邪魔してます」
「こんにちは、山沢さん、お邪魔してるよ」
「ああ、もう来られてたんですか、こんにちは」
手を洗って着替えて和室を覗くとほぼ着付けを終られている。
うん、綺麗だ。
「どう?」
「綺麗です」
「さて、そろそろ行こうかねえ」
「タクシー呼びましょうか?」
「あ、呼んでくれるかい?」
電話を掛けて呼ぶ、到着予定時間を告げ、必ず間に合わせるようにと。
5分と経たずに来た。
「じゃ、行ってきます」
「お気をつけて」

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187

暫くぼんやりしてると体が冷えてきた。
もうちょっとこうしていたいが仕方ない。
縁側に上がり雨戸を閉める。
うー、さぶい。
寝間に入ると先生に引き寄せられた。
「こんなに冷えて…」
「先に寝てたら良かったのに」
「お風呂、入りましょ」
「は?」
「さっきお湯張ったから一緒に、ね?」
手を引かれて風呂場へ。
「え、いや、なんで突然?」
「だって庭に出た気配がしたから。御風呂入らなきゃ風邪引いちゃうわよ?」
そこでそういう発想になるのが先生らしいというかなんと言うか。
脱衣所で寝巻きを脱いで風呂場に入る。温かい。
掛り湯をすると体が冷えていたことが実感できる。
先生が浴槽をまたいだときに白いものが見えた。
むっ、まだあったのか、白髪。今度切ってやろう…。
そう思いつつ、一緒に浴槽に入る。
ううーっ。気持ちいい。
思わずうなり声が漏れた。
先生がくすくす笑って、俺の頬をなでる。
されるがままに触れられていると私の肩に頭を乗せてきた。
胸を撫でられる。
渋い顔をしたのに気づいたようで、胸から私の腕へと撫でる場所を変えた。
暫くしてその手が止まり、首に生暖かい感触。
なんだ!と思えば寝ていた。
撫でる側が先に寝るとか、しかも風呂で。
体もそれなりに温まったので先生を起こして浴槽から出る。
先生の体を拭いて自分を拭いて、寝巻きを着せて自分も着る。
抱き上げて寝間に連れて行き布団に降ろした。
布団をかぶせれば5秒ももたずに寝息が聞こえる。
さて。
眺めていると落ち込んできた。
二階、確か布団あったな。
そっと部屋を出て二階に上がる。階下の温気でほのかに温かい。
布団を敷いて寝た。
朝の冷気で目が覚める。
時計を見ればそろそろ起きる時間だ。
寝間に戻る。まだ先生は寝ていた。
起こさぬよう着替えて台所へ。
とりあえず米だ。炊こう。
炊き始めた頃八重子先生が起きてきた。
シャケを焼いて味噌汁と納豆を出すことに決まって焼く。
すべて整い、皆を起こす。配膳して朝食をいただいた。
先生はまだおきてこられない。
少し迷ったが、用事が有ると言い、帰ることにした。
帰宅してすぐに布団に入る。
明日お稽古がなくて幸いだ。
来週までにはなんとか持ち直せるだろうけれど。
突撃が怖い…いや、まさか家元初釜の時期に突撃はないだろう、うん。
携帯が鳴る。取りたくない。暫く鳴って留守電に変わる。
やはり先生からだ。気がついたら電話して頂戴、と。
気がつかなかった。気がつかなかったよ。気がつくのはきっと日曜さ。
布団を引き被って寝る。
メール。先生から。
同じ文言。気がつかない。知らない。知らない。知らない。
携帯を寝室から投げ捨てて寝た。

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186

八重子先生が居間から出て行って、絹先生と二人。
「…戸締りしてきます」
「あ…」
「なんです?」
「ん。私、火の始末見てくるからお願いね」
「はい」
玄関の戸締りや庭側の雨戸のしまりを確かめ、勝手口へ。
先生が炭火が消えているか確かめている。
横にかがみこみ、唇を奪った。
「だめ…」
押し戻される。
むっとしていると、ここじゃだめと言われた。
「律が来たら困るから…ね、お願い。手を離して頂戴」
ふぅ、と息をつき手を離して戸締りを確かめ、
火の始末をした先生を寝間に連れて行く。
布団を敷いてもらう間に寝巻きに着替えた。
腕を取りぐいっと引き寄せる。
「えっ? ど、どうしたの?」
むさぼるようにキスをする。
荒々しく乳をつかみ、揉んだ。
押し返される。
構わず弄ると頬に濡れた感触。
泣いたのか。
唇を外すとどうして、と聞かれる。
「嫌がったから」
と答えて黙っていると呆れ顔になった。
「本っ当に子供ね」
そう言われてぶすくれていると先生が寝巻きを脱ぎ捨てた。
「こっち来なさい」
布団の中にいざなわれる。
「落ち着いて。優しくできるでしょ? 焦らなくてもここにいるんだから」
髪をなでられて先生に抱かれるように先生を抱く。
気持ち良さそうな、幸せそうな顔を見て癒され、自分も気持ちよくなる。
まだ少し機嫌が良くないのをわかって居るのか先生から私を触れるのは控えめだ。
優しくしているのにも焦れて、荒くしそうになると封じるかのように噛まれる。
じっと見つめれば震えて怖がる。
組み敷くのをやめて、先生が上になるように体を入れ替えた。
今日はもう抱きたくない、そういう気になったからだ。
「もう寝たらいい。俺も寝ます」
先生は恐々としつつ、もっとしたいんじゃないの?と聞いてくる。
泣きたいですか、と問えば首を振る。
「じゃ寝なさい」
俺が一緒だと落ち着かないようなので布団に残し、部屋を出る。
中庭に下りて裏木戸をくぐり雑木林の中へ。
ここは絶対この家の人は来ないから。

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185

「あ、先生。起きたんですか?」
「うん。ご飯作ってるの?」
「丁度良かった、味噌汁、味見ていただけます?」
おてしょうに取って渡すともう少しお味噌を落とすようにと言われた。
少し足してOKが出る。
炒め物をお皿に盛り付けている間に律君を先生が呼び、
そのまま先生は八重子先生、律君は孝弘さんを呼びに行った。
配膳をしていると律君、孝弘さんが食卓についたが先生はひとりで戻ってきた。
「おばあちゃんもうちょっと寝てたいって言うのよ」
「あー、はい」
八重子先生の分を別皿にして冷蔵庫に仕舞うことにした。
ごはんをよそっていただいて、いただきます。
うん、ま、俺がつくるにしては薄味だ。
恐る恐る先生の様子を伺えば、まずくはないような様子。
律君は首を捻っている。
味噌汁を飲んだときに変な顔をした。
おかしかったかな、と一口飲む。普通だよな。
「味噌汁が甘い…」
「あ。そうかっ」
「白味噌入れたでしょ、山沢さん」
「入れました、つい癖で」
「お味噌汁も白味噌なの!?」
「いや、ほんのちょっと入れると美味しいからうちでは大抵入れてるんだよね」
「おかわり」
「はい」
孝弘さんは気にすることなく食べている。
「もしかしてこの大根のタレも白味噌とか?」
「そう、こっちが赤味噌、これがゴマ味噌、その白いのは白味噌」
「あ、結構美味しい」
「あらほんと」
律君が食べ終わって、自分でお茶を入れて飲んでいると八重子先生が起き出して来た。
冷蔵庫に入れてた分を温めなおし、味噌汁も温めて出す。
「あれ?お味噌汁が甘いねえ」
「山沢さんが白味噌入れたんですって」
「へえ、結構美味しいもんだね」
大根を食べて、うちの味じゃないなど聞いて。
結局なんだかんだすべてはけて洗いに立つ。
フライパンから鍋から何もかも纏めて洗って片付けて居間に戻る。
先生にお茶を入れて貰って、落ち着く。
ぬるめのお茶。
猫舌だから。
「山沢さんにはもうちょっと料理は教えなきゃだめだねぇ」
「ははは、お願いします」
「結構美味しかったじゃないの」
「うちの味じゃないからね」
「そりゃそうよ、まだ半年も一緒に作ってないのに」
「何かずっと前からいた気がしてたよ、まだ半年もたたないんだねえ」
遠慮がないからかなぁ…。
「さて、先に横にならせて貰うよ」
「もう寝るの?さっき起きたところじゃない」
「年々疲れるね、初釜は」
「そう?おやみなさい」
「おやすみなさい、八重子先生」
「おやすみ。あんたらも早く寝なさいよ」

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