「あ、先生。起きたんですか?」
「うん。ご飯作ってるの?」
「丁度良かった、味噌汁、味見ていただけます?」
おてしょうに取って渡すともう少しお味噌を落とすようにと言われた。
少し足してOKが出る。
炒め物をお皿に盛り付けている間に律君を先生が呼び、
そのまま先生は八重子先生、律君は孝弘さんを呼びに行った。
配膳をしていると律君、孝弘さんが食卓についたが先生はひとりで戻ってきた。
「おばあちゃんもうちょっと寝てたいって言うのよ」
「あー、はい」
八重子先生の分を別皿にして冷蔵庫に仕舞うことにした。
ごはんをよそっていただいて、いただきます。
うん、ま、俺がつくるにしては薄味だ。
恐る恐る先生の様子を伺えば、まずくはないような様子。
律君は首を捻っている。
味噌汁を飲んだときに変な顔をした。
おかしかったかな、と一口飲む。普通だよな。
「味噌汁が甘い…」
「あ。そうかっ」
「白味噌入れたでしょ、山沢さん」
「入れました、つい癖で」
「お味噌汁も白味噌なの!?」
「いや、ほんのちょっと入れると美味しいからうちでは大抵入れてるんだよね」
「おかわり」
「はい」
孝弘さんは気にすることなく食べている。
「もしかしてこの大根のタレも白味噌とか?」
「そう、こっちが赤味噌、これがゴマ味噌、その白いのは白味噌」
「あ、結構美味しい」
「あらほんと」
律君が食べ終わって、自分でお茶を入れて飲んでいると八重子先生が起き出して来た。
冷蔵庫に入れてた分を温めなおし、味噌汁も温めて出す。
「あれ?お味噌汁が甘いねえ」
「山沢さんが白味噌入れたんですって」
「へえ、結構美味しいもんだね」
大根を食べて、うちの味じゃないなど聞いて。
結局なんだかんだすべてはけて洗いに立つ。
フライパンから鍋から何もかも纏めて洗って片付けて居間に戻る。
先生にお茶を入れて貰って、落ち着く。
ぬるめのお茶。
猫舌だから。
「山沢さんにはもうちょっと料理は教えなきゃだめだねぇ」
「ははは、お願いします」
「結構美味しかったじゃないの」
「うちの味じゃないからね」
「そりゃそうよ、まだ半年も一緒に作ってないのに」
「何かずっと前からいた気がしてたよ、まだ半年もたたないんだねえ」
遠慮がないからかなぁ…。
「さて、先に横にならせて貰うよ」
「もう寝るの?さっき起きたところじゃない」
「年々疲れるね、初釜は」
「そう?おやみなさい」
「おやすみなさい、八重子先生」
「おやすみ。あんたらも早く寝なさいよ」