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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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179

「じゃあそろそろ山沢さん、煮物、しましょうか」
「う………。はい」
アルバムを片付けて台所へ。
「まずお出汁だけど」
「朝に用意してあります。これ」
昆布を水につけておいたものだ。
「まずは山沢さんの思うように作ってみて頂戴」
「はい」
里芋をまずは洗い、軽く茹でて皮をむき、切る。
出汁を2杯、酒・みりんを1:1、塩を一つまみ入れた。
しばし炊けるのを待ち、風味付けに醤油を落とす。
出来たので味を見ていただく。
「あら?意外と美味しいわね。やればできるじゃないの」
「私、味見してなかったでしょう…それ、私が食べると味が薄くて」
「ええ?そうなの?」
「一つ食べてもいいかい?」
「あら、お母さん」
「どうぞ」
「あぁ美味しいねえこれも」
「私、普段煮物といえば酒・砂糖・みりん・醤油1:1:1:1で炊きますから」
「それは濃そうだねえ…」
「うちだと煮っ転がしとか佃煮かしら?」
「保存食向きだね」
「大体京都って保存食文化ですよ基本的に」
「京料理は?」
「今は新鮮な魚が随分入りますからいいですが、昔は魚は塩干物ですよ」
「そうなの?」
「材料がそういうものだからこそ、より美味しくより美しく発展したんでしょうね。
 今みたいに良い材料が使えれば野菜も刺身も美味しい塩でうまいじゃないですか」
「あら?そうかも」
「山沢さん、かつお出汁のとり方は知ってるのかい?」
「いや、とったことがないです」
「絹がとってるのは見てるだろ?」
「あー、なんとなく。でもちゃんとは」
「じゃ、やるから覚えなさい」
大体1リットル程度の湯に、これくらい、と鰹節を示される。
30gくらいあるかな?
沸騰したところに入れて弱火にして2分待ち、漉す。
それだけだそうだ。
もっと面倒くさいものだと思っていたのだが。
「で、この出汁で…」
同じように里芋を炊いてゆく。
ちょっとずつ分量が違うのでメモをしつつ。
出来たものをいただいて味に納得する。
「明日この分量で作ってごらん」
「はい、そうします」
「そろそろお昼の支度しなくちゃ。この里芋と後は何にしましょうね」
「あ、俺、大根葉食べたいです」
「そんなのでいいの?」
「卵とじにしたらどうかねぇ」
「それいいわね、そうしましょ」
おじゃこと炒めて卵で閉じられた。
配膳して、いただく。
んーうまい。
幸せ。

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178

明けて6時半。
昨日そんなに疲れさせてないのでお休みの日としては、
まぁまぁ良い時間に目が覚めたようだ。
「おはよう」
「おはようございます」
もう少しこうしていたいなぁと思うが二度寝しそうだ。
起きて身づくろいをして朝飯をつくりに台所に行く。
お味噌汁お味噌汁。
今日は何を作る?
茗荷と茄子か。
俺が魚を焼いてる間に先生は俺の分の肉野菜を炒めてくれている。
今日はカレー風味か。
この間はトマト風味だった。ちょっとアレは微妙だったな。
あったかいトマトは。
ご飯が炊けた頃、律君と司ちゃんが起きてきて、律君に孝弘さんを呼んでもらった。
司ちゃんと先生が配膳する。
「あれ…?」
「どうしたの司ちゃん」
「このお味噌汁、具が入ってないけど」
「それは山沢さんのなのよ」
「え、具なし?」
「そうなのよ。あ、その野菜炒めも」
「もしかして凄い偏食…」
「ああ、山沢さんって凄く好き嫌い多いよね」
「そうなのよ、子供みたいでしょ」
「はいはい、子供みたいなやつですよ、と。はい、お茶碗」
カレー風味の肉野菜炒めは美味しいんだが、しかしちょっと量が多い。
孝弘さんが欲しそうなので少し差し上げて完食。
律君たちはこれから遊びに行くそうである。
食器を洗って、台所を片付けた。
居間に戻ると八重子先生がお茶を入れてくれる。
うまいなぁ。
「あ、そうそう」
先生がどこかへ行った。
しばらくしてアルバムを持って戻ってきた。
「前に見せるって言ってたでしょ」
結婚してからのアルバムなら探さなくてもあるから、と。
おお若い。可愛い。綺麗。
「これが孝弘さんの若い頃」
「随分人相変わられましたねぇ…」
「ほら、ここにお父さんとお母さんが写ってる」
「仲良さげでいいですね」
「もうこの頃は随分悪かったのよね?」
「そうだねえ、お薬いただいてたねえ」
「一度お会いしたかったなぁ、生きておられる間に」
「気配はたまに感じるのよ…」
「そうだねえ、夢に出てきたりするね」
いくつか焼き増しして欲しい写真が出てきてお願いする。
ネガが出てきたら、と言ってもらえた。
会えないときには見たいからと。
「山沢さんはアルバムはないの?」
「独り身だと写真って撮らないものですよ。二十歳以降と言うと4,5枚かな」
「えぇ?そうなの?」
「はい。他だとここの初釜や茶会で撮ってる写真くらいじゃないですかね」
「じゃ、写真撮ってあげるわ、折々に」
「別にいいですよ…」
「もっと若い頃の写真ならあるの?今度見せて頂戴よ」
「あー京都の自宅にあったかな。卒アルとか…」
「私も見たいねぇ山沢さんの若い頃」
「ああ、今度京都いったら探しておきますよ」

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177

「あらもうこんな時間。お風呂入れてきましょ」
暫く話してお風呂に入って。戸締り火の用心を終えて各自部屋へ。
フツーに先生は私の部屋に来る。
「いいんですか?抱きますよ」
「えっ駄目よ、司ちゃんきてるから」
「わかってますよ、キスくらいはいいでしょう?」
顎を掴んで持ち上げキスをする。
暫くキスしていたがトンと胸を押され身を離した。
「お布団、敷かないと…」
「抱かれたくなりましたか?」
「外から影が見えちゃうから…」
ああ、なるほど見えるね。
布団を敷いて入る。先生も横に入ってきた。
先生を煽るかのように撫で回す。
「駄目よ、意地悪しないで…ねぇ」
そういいつつも太腿をもじもじさせている。
「一度、しないと辛いんじゃないですか」
「ばか、司ちゃんいるのに…んっ」
乳首を摘んで捏ねると甘い声。
こうなると最後までしたくなって、むしろ興奮する。
先生もいつもより我慢しようとして可愛い。
心なしかいつもより濡れていて羞恥に興奮するんだろうと思う。
かすかな喘ぎ声、俺を噛む。達して荒い息。
綺麗で可愛くて。潤む瞳に見つめられ、気持ちよくなる。
「ね、兄さんと結婚するの?」
「は?」
なんでこの場面でそれ?
「あなたが、久さんが兄さんとするの、私嫌だわ」
「そう思うなら八重子先生に言ってください」
「あなたはどうなの?」
「私は先生が望むならってとこです」
「男の人嫌いなのに?」
「私が男なら…あなたの子がほしい。それは前に言いましたね。
 あなたと同じ血の流れる開さんの子でもいいかと」
「そうなの?」
「まぁ妊娠出産とか凄く欝になりましょうけどね。あなたの男でありたいから」
「あら…そうね、今いつもの山沢さんの格好でお腹が大きいの想像しちゃったわ」
「何かおかしい光景でしょ?」
「でもほら、狸腹の男性多いからそういう感じに見えるんじゃないかしら?」
「そうなった時、欝のあまり八つ当たりのようにあなたを抱くかもしれませんよ?」
「怖いわねえ…」
「だからうまく八重子先生を説得してください」
そういって手にキス。
「頑張るわ」
「じゃ、寝ましょうか」
「ええ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」

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176

台所へ行ってお手伝い。
あ、電話。
絹先生が電話を取って何か話して戻って来た。
「お父さん帰ってくるみたいだから多めに炊かなきゃいけないわね」
7合でよかったかな。
お米をかして、セットする。
いつも思うが大量で、毎回これをやってるのは凄い。
野菜を洗う。俺が居るときは水を触るのは俺。
手あれしないし冷たい水には慣れてるから。
先生の手は以前に比べれば少し、手あれがマシになったという。
後は先生の指示に従えばうまいメシにありつける。
「ねえ山沢さん。煮物できるようになった?」
「う、チャレンジしてないです」
「明日お昼にしてみる?」
「遠慮したいです」
「だめよ、出来るようにならなきゃ」
「先に司さんに覚えてもらいましょうよ」
「そうねえ、律のお嫁さんになるならね。でも今は山沢さんに覚えて欲しいわ」
うーん。味覚が違うからなぁ。難しいんだよね。
味見。うん、俺ならもっと砂糖と醤油を入れてしまう。
基本的にみりん・醤油・酒・砂糖を同率で煮炊きすることが多い。
だから薄味に作る習慣がない。
「今なら懇切丁寧に教えてあげるわよ。それとも厳しいほうがいいかしら?」
「…わかりました、明日でいいです」
「厳しいほうが覚えられるんじゃないの?うふふ」
たしかに覚えられるけど敢えて厳しくされるのはなぁ。
「お茶だけでいいです、厳しいの」
くすくす笑ってる。
作り終えた頃、律君と孝弘さんが帰ってきた。
司ちゃんと先生が配膳している間に調理道具を洗う。
お夕飯をいただき、司ちゃんは律君の部屋へ。
孝弘さんは居間でごろ寝。
私は食器を洗う。
先生方は初釜の細かい打ち合わせ。
洗い終わって戻ると、今度は着物の話に。
女の人はこういう話題好きだなあ。
「去年はあなた訪問着着てたけど今年はどうするの?」
「袴じゃいけませんか」
「いいわよ、それで。でも華やかさが足りないわよねえ」
「司さんか晶さんがやっぱりいいのでは」
「…司ちゃんねぇ。律のお嫁さんになって欲しかったんだけど。彼がいるのよねぇ」
「ホッシーを婿にして司ちゃんにこの家に来てもらう手もありますよ」
「あら」
「そうすれば孫も沢山見られていいかもしれませんね。いや本来なら姪孫ですが」
「でもそれじゃ…」
「ん?どうしました?」
「司ちゃんの彼とあなたとの関係が難しくないかしら」
「…いや律君の嫁さんとでも同じですから、それ」
「あらそう?」
「まぁそのあたりはよく話し合われたほうがいいでしょうけど」
「あんたが開と結婚してもそれはそれでいいと思うけどね」
「えっ?八重子先生?」
「お母さん…またそんなこと言って。山沢さんだって困るわよ」
「ははは…」
「だってねえ、いまのままの環境でいいんだもの。私と絹が料理を教えるくらいで」
「まぁたしかにそうですがお華はどうするんですか。私じゃ無理ですよ」
「あぁそうだったねぇ。そこは司か晶か」
「やっぱり同居しないと駄目じゃないですか」
「あららら」
むくりと孝弘さんが起きて部屋に帰っていった。
ふぅと息をつけばやはり緊張するんだね、と八重子先生に言われる。
一応なぁ、旦那さんだし。口滑らせたらアレは気にしないだろうが先生方がなぁ。

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175

先生がこれは弟子でと断りを入れている。
二人になったところで、先生がこちらを伺うような目をする。
「あの…気にしないでね?」
「ん?どうしました?」
「ただの弟子って言っちゃったから…」
「あぁ、あれはそう言うしかないでしょう」
「ごめんね」
「それより八重子先生は気を使ってくれたんですね。あなたと二人になれるように」
「そう…かしら」
「きっとそうですよ、俺、あなたと買物してるの結構好きです」
「どうして?」
「あなたと何を買おうって会話がなにか楽しくて。あなたはどうですか?」
「私…も好きよ。あなたの食べたいものを買えるもの」
ゆっくりと帰ろう。
「どこかこのあたりに部屋借りようかなぁ…」
「ん?どうしたの、急に」
「ご兄姉や司ちゃん晶ちゃんが来たときにあなたを抱ける場所が欲しい」
「あ…」
先生は顔を赤くして、袖で顔を覆った。
「可愛いな…。そういう場所、あったらどうです?抱かれてくれますか?」
「……えぇ」
「嬉しいな。開さんに相談してみましょう」
「えっ兄さんに?それは嫌よ」
「嫌ですか?」
「その…するために部屋を借りるなんて。兄さんに知られるのは嫌よ」
「何をバカ正直に言う必要があるんですか。
 皆さんが居るときの俺のごろ寝と安眠場所として借りる、でいいんですよ」
「あっ、そ、そうね、そういえばいいのよね」
ああ、もう。いちいち可愛い。
なんだかんだ喋りつつ、家についてしまった。
台所に下ろす。
「絹ー?帰ったの?山沢さんちょっと手伝ってー」
「はいはい、なんでしょう」
茶室へ行くと、釜が上のほうにあっておろせないとのこと。
確かにあの釜を頭上からおろすのは女性の苦手とするところだろう。
下ろして中を確認。
これでよかったようだ。
「司さんも初釜のお手伝いなさいますか?」
「えっいや、私っ大学あるんで、それにお茶わからないしっ」
「司にはまだ無理だよ。それより絹は?」
「なぁに、おばあちゃん」
水屋にいたようだ。
「ああ、ちょっとおいで。この釜にしようと思うんだけど重さ、大丈夫かねえ?」
「初炭は中野さんに、後炭は平田さんにお願いしたから大丈夫と思うけど」
「ああ、あのお二人ならいけますよね」
「もし危なそうなら山沢さんが手伝えばいいわよね」
「はいはい」
初釜の準備や打ち合わせ。
女手が有ると凄く助かるんだなぁ。
「懐石は頼んだしお菓子もお願いしたし…」
「あれ、先生、煙草盆の中身がありませんがいいんですか?」
「あっそういえば蛇が出て困るからって使っちゃったんだわ。どうしよう」
「蛇は確かに煙草を嫌うといいますが…この辺に売ってる煙草屋ありましたっけ?」
「吸わないからわからないわ」
「とりあえず私の入れときましょうか。売ってるところ見つけたら買ってきます」
「そうしてくれる?」
「山沢さんって煙草吸われるんですね」
「この家だと司さんのお父さんは吸われるんでしたっけ?」
「そうそう、覚は吸うよ」
「そろそろお夕飯の支度しないといけないわねえ。山沢さん手伝ってくれる?」
「はい。八重子先生、重いのあったら呼んで下さい」

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