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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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369

朝起きると空気がひんやりしている。
天気予報は昼から雨。
と言うことは客は買物控えめかな。
長袖を着て出勤する。
荷物は少なめだ。
やや暇ではあるものの、それなりに売れた。
ヨコワを一尾売り損ねたから持って帰る。
先生に食べてもらえば良い。
着替えて先生のお宅へ。
「こんにちは」
居間に顔を出すと先生が驚いてる。
「あら? 営業は良いの?」
「月替わりましたから。八重子先生、台所にヨコワあるんで今晩どうぞ」
「あ、ありがとう」
「今日はお稽古何されます?」
「ええとねぇ、そうね。荘物したいの」
「わかりました。支度しておきます」
「吃驚しちゃったわ。来ないと思ってたから」
「おや何か後ろ暗いことでも?」
「ばかなこと言ってないで支度して頂戴」
突き放されて水屋に入る。
雨音。
ついに落ちてきたか。
用意が終ったころ、生徒さんが来られた。
「こんにちは、降って来ちゃったわねえ」
「ええ、もう入梅ですね」
「辛気で嫌よね」
先生が入ってきた。
「先生、こんにちは。今日もよろしくお願いします」
「はいこんにちは」
生徒さんが支度を整え、先生も座られた。
お稽古開始。
湿度で空気が重い中、生徒さんが入れ替わり立ち代りのお稽古。
先生が少し倦んだ気配を見せた。
もう一人だから我慢して欲しいなあ。
目が合うと気配を払拭された。
ん、そうじゃないとね。
生徒さんが他のお稽古を終えて送り出す。
茶室に戻ると先生がもたれてきた。
「疲れましたか?」
「うん、ちょっとね。でもあなたのお稽古はするから」
「しんどいなら土曜でも構いませんが」
「良いわ、出来るときにしないと。だから用意してらっしゃい」
「はい」
ささっと用意をしてお稽古をつけてもらう。
「んん、まぁいいでしょ」
納得はされてない。
だがもう一度見てもらうのは今日は無理そうだ。
「そろそろ片付けるわよ」
そう仰ったがてきぱきとはされなくて。
ふと思い立ち額と額をあわせてみた。
「なぁに?」
「ん、熱はないですね」
ただの疲れか。
「まぁ、でも俺やりますからそこで座っててください」
「そう?悪いわね」
あれやこれや片付けていると先生が転寝しだした。
気を許してる感じが可愛くてたまらん。
すべて片付け終えて茶室と水屋の電気を消す。
そっと先生を抱えるようにする。
あ、いかん、ここでしたくなってきた。
だめだめ、と自分をいさめて抱え上げて居間へ。
座布団枕にタオルケットを掛けてあげておく。
「ん? 寝てるのかい?」
「何か疲れるようなこと朝ありました?」
「ああ、ちょっと町内会のことで色々あったからね」
台所を手伝って律君が帰ってきたので食事を取る。
先生が寝てるからごはんは八重子先生がよそってくれる。
「あんたのはレモンステーキとかいうのにしたからね」
雑誌で読んだらしい。
横では孝弘さんがおかわりをしている。
先生の分あるのかなあ。
なければまた味噌漬けにしちゃう?
「ちゃんと取ってあるよ」
八重子先生が察して教えてくれた。
ならいいか。
食事を終えて後片付け。
まだ先生は寝てる。
八重子先生は半襟をつけ始めた。
雨の日の手仕事、俺は入り込めない。そろそろ帰るか。
八重子先生にご挨拶して雨の中帰った。
雨の夜は好きじゃない。
おやすみなさい。

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368

翌朝起きて先生が熟睡しているのを置いて行こうとしたがしがみつかれた
脱皮のごとく先生の腕に浴衣を残し着替えて台所に立つ。
さすがに昨日の今日で寝過ごすと八重子先生に叱られるからな。
納豆に焼き魚、お漬物、味噌汁、おひたし。
ご飯が炊ける良い匂い。
先生が起き出して来て食卓を片付けている。
八重子先生が起きだしてくるより早く起きてくれて助かった。
先生が律君を起こしに行ってる間に八重子先生も起きてきて配膳をすます。
孝弘さんも起きてきた。
普段どおりの和やかな朝食。
律君が大学へ行けば静かな日常。
「今日も草引きお願いね」
先生は俺に野良着と麦わらを渡して洗濯や掃除を始めた。
八重子先生は茶室の掃除に行ってしまった。
塩砂糖水を作りコップに入れておき、着替えて庭へ。
黙々と作業する。
喉が渇けばその水を一口飲む程度だが。
今日は曇ってどんよりとして…別に塩水にしなくても良かったかもしれない。
お昼になってご飯に呼ばれ、手を洗っておにぎりをいただく。
小さめのおにぎりだが中が全部違う。
俺のためだけに作ってくれるおにぎりもまた美味しい。
お昼からもそのまま草むしり続行だ。
先生は八重子先生と二人で掃除に余念がない。
これまではどうしても庭は後回しになってたらしい。
ま、俺が出来る間はしてあげても良い。
謝礼は美味しいご飯と先生の体ってことで。
あ、来客。
先生が部屋にお通ししてなにやら歓談されている。
暫くして喉が渇いた。
「先生、すいません。お茶下さい」
「はいはい、これで良い?」
先生の飲みさしのお茶を俺の湯飲みに移動して渡してくれた。
丁度ぬるくて飲みやすい。
ふぅ、と人心地ついてよく見たら安藤さんだ。
「こんにちは、安藤さん」
「あら? 誰かと思ったら山沢さん? そんな格好してるから驚いちゃったわ」
「今やんないと盛夏じゃ出たくもないですからねえ」
「絹先生ったら飲みかけたお茶渡されたからどうして?って思ったんだけど。納得だわ」
「猫舌ですから新しいの入れてもらったら悲しいですねー」
先生がクスクス笑いながら新しいお茶を入れている。
「じゃ続きしてきますね」
「ん、お願いね」
黙々と抜いてたら帰られた気配と、先生が茶室に行く気配。
後は夕方まで。
「ごはんできたよ、手を洗っといで」
八重子先生に呼ばれて野良着を脱ぎ、手を洗って着物に着替えた。
ごはんごはん。
お二人の作るご飯はやっぱり美味しくて。
塩気が足りないのは後で補えば良いだけのことだ。
夕飯を頂いてしばし団欒を楽しみ、一人さびしく帰宅する。
先生も少しさびしそうなのが救いだ。
だが帰り道思い出した。
6月だ。ホテル営業行かなくて良いんだった。
明日も会えるじゃないか。
にやり、とにやけたが幸い車だから見てる人もいない。
さびしい気分も吹っ飛んだまま帰宅して、寝る。

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367

さて夜も明けてお仕事。
やっぱり火曜日はダメだね、暇で。
あくびも一つ。
おかずに良いものはないかな。
社長と雑談してると在庫整理で味噌漬けが余ってきてるのが判明した。
今晩は味噌漬けだな。
先生にメールを打ったら来るときに洗濯の洗剤を買ってくるように頼まれた。
あー。重いもんな。
律君が帰ってくるまでに第二段を干して畳む必要があるらしい。
仕事を終え、帰り道に買い込んだ。
風呂に入って着替えて車に乗り込む。
流石にこの格好で洗剤を手荷物に電車はちょっとね。
電車を乗り継ぐのと変わらない時間、車を走らせて先生のお宅へ着いた。
裏から上がって先生に声を掛ける。
すぐに先生が来て洗濯機を回し始めた。
「あとはお母さんが干してくれるわ」
「先生はお稽古優先なんですね」
「二人でいるときはそうね」
ぱたぱたと先生が食事をとりに行ってる間に冷凍庫に味噌漬けを収納する。
そのまま水屋の支度。
生徒さんと先生がそろえばすぐにでも出来るように。
順々に生徒さんが来て穏やかに、やわらかい雰囲気で進む。
いつものように生徒さん達が帰られた後は厳しく俺へのお稽古…のはずだが。
今日はいつもの種目以外をとのことであまり怒られず緩やかに終った。
水屋を片付ける前に洗濯物を取り入れる。
先生と二人で日が落ちる前に。
下着は先生が畳む。
俺のは勝手に洗ったり干したりするのに自分のはいやなのだそうだ。
畳んだ洗濯物を先生が各々の部屋に分配する。
孝弘さんの分は先生が箪笥にしまっているそうだ。
ま、できなさそうではある。
律君の分は昔は仕舞ってあげてたが今は自分でさせている模様。
俺の冬物の服も有った。
「あ、それ持って帰ってね」
「はい。こっちの箪笥もしたんですか」
「そうよ、だから今度夏物持ってらっしゃい」
「りょーかいです」
それから水屋を片付けて、八重子先生の作るご飯をいただく。
今回持ってきた味噌漬けはすべて俺が食えるもの。
だから八重子先生もつくるのは菜物のおかずだけだ。
ホタテの味噌漬けがうまい。
「八重子先生、これよく崩さず焼けますね」
キスの味噌漬けだ。
ストーブで焼いてばらばらにしたことがある。
良い感じで味噌漬けがはけて行く。
そればかり食ってたら菜っ葉のおかずをお皿にとって先生が渡してきた。
「ちゃんと野菜も食べなさい」
「お母さん、山沢さんを子供扱いしてない?」
律君が笑ってる。
「言わないと食べないのよね」
はい、おかわり、と先生が孝弘さんのご飯を渡している。
俺は取ってもらったおかずを食べつくしてまた味噌漬けへ手を伸ばす。
別のおかずを先生に渡された。
「これも食べなきゃダメよ」
「はい」
もくもくと食べて最後に味噌漬けを取る。
ごちそうさまでした。
食器を洗って片付けて居間に戻る。
律君はレポート書きに部屋へ、孝弘さんはもう寝に戻ったとか。
まったりと先生方と団欒。
「ああ、あんたら最近暑いしこれくらいの時間からあっち行ってさ、
 夜お風呂入って寝たらどうだい?」
「朝から汗臭くなっちゃいますかね?」
「多分ね」
先生が赤面してる。
「今から行ってきたら?」
「そんなの…」
「先生可愛いー、照れちゃって」
ごちん、と拳が落ちてきた。
「からかわないでよ、もうっ」
あはは、と笑って立つ。
「じゃそうさせていただきます」
ひょいっと先生を起こして抱えあげた。
「ちょ、ちょっと」
「はいはい、行ってらっしゃい」
そのまま玄関を出てあちらの家に入る。
下ろすなり叩かれたけどクーラーをつけてベッドの布団を剥がした。
「さぁさぁ脱いで脱いで♪ ああ、いや、待った、そのままで抱き締めたいな」
先生は俺に翻弄される。
先生が恥ずかしいって言うようなことを沢山させて、気持ち良いって言うことも沢山。
だけど時間が時間だから、早めに切り上げて戻る。
先生の体力を奪ったのもそうだけど先生は草履履かせずにこっちへ来てしまったから、
やっぱり抱き上げて夜道を歩くことになった。
恥ずかしがってるのが良いなあ。
「もうちょっと散歩しましょうか」
「だ、だめよこんなとこ見られたら」
「出先で草履の鼻緒がって言えば良い」
「ダメ、やめなさい」
「はいはい、しょうがないな」
連れ帰ってお風呂へ。
二人で入って、先生を隅から隅まで洗ってあげた。
お湯に浸かってそろそろ出ようかと思えば先生は転寝してる。
気持ち良いもんな。
起こしてお湯から出して拭いてあげて。
俺もざっと水気を落として先生に寝巻きを着せる。
立ってるのがやっと、と言う風情だ。
抱き上げて寝間へ連れて行く。
座らせて布団を敷いたらすぐにもぐってしまった。
俺は寝巻きを着て一度居間へ戻る。
八重子先生と火の元の始末や戸締りの確認をして先生の元へ。
おやすみなさい。

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366

朝、起きて仕事をするが、みな何かぼんやりとしているのは寝苦しかったんだろう。
はかどらない仕事をこなして帰るとご飯の匂い。
「ただいま、で、お稽古は?」
「お帰りなさい。生徒さん夏ばてみたいで二人だけだからお母さんが見てくれるって」
ピッとクーラーをつける。
「良くこんな暑い部屋にいますね」
「うん、そろそろ扇風機、と思ったんだけど」
「扇風機はありませんよ」
服を脱ぎ手を洗って先生を脱がす。
「ちょ、ちょっとまって、なんで脱がすの」
「抱きたいから」
「お昼ご飯、食べてから。ねぇ、だめよ」
抵抗されつつもそのまま全部脱がせてベッドかここか、と聞く。
諦めたようだ。
ベッドに連れて行ってたっぷりと楽しむ。
クーラーを効かせているからどんなに激しくても軽く汗をかく程度。
終った後、布団をかけてやる。
じゃないと風邪引いちゃうよね。
「おなかすいた…」
ぽそっと文句の上に呟かれてなんだか笑ってしまった。
クーラーを緩めて先生を起こす。
浴衣を背中に掛けて台所からお盆に載せて食事を持っていく。
お箸とスプーンで手ずから食べさせてあげると恥ずかしがっている。
「あなたのために作ったのに…」
「ちゃんといただきますよ。まぁでも先に食べてくださいよ」
全部食べてご馳走様、と言う。
おかわりいりませんか?と聞いたがもう良いらしい。
台所に食器を返し、自分の分を平らげた。
それから先生の横に戻る。
「お腹、こなれたらもう一度しましょうね」
「ええっ、まだしたいの?」
「したいんですよねぇ」
「旅行中ずっとしてたのに?」
「一昨日すぐ寝ちゃったじゃないですか」
「そうだけど…」
「しかし八重子先生、俺に先生を甘やかしすぎるって言うけど。
 ご自身も十分先生を甘やかしてますよね」
ぷっと先生が笑う。
「そういえばそうね、そうよね」
「で、実際何しに来たんですか?」
「衣替え」
「しないって言ってるでしょう」
「するわよ」
「出来ないようにしちゃおうかな。こうやって」
キス。
コツン、と額にこぶしを当てられた。
「ばか…、普段着じゃなくて、お稽古とか、お出かけの着物あるでしょ」
「あぁなんだ、そういうのですか」
ぶるっと先生が震えた。
クーラーきつかったかな。
「お手水連れてってくれない?」
そっちか。
抱えあげてトイレに連れてって裾をまくって座らせる。
そのまま見てたら嫌がられた。
「どうせ一人じゃ出れないんだし。子育ての時と同じと思えばどうです」
それでも恥ずかしそうで可愛い。
思わず肩を抱いてしまう。
先生は我慢が切れたようで…した。
「ヘンタイなんだから…」
あ、なじられた。
拭くのもやっちゃったぜ。
流して担ぎ上げてベッドに戻る。
で、舐めたら踵で肩を蹴られた。
流石に腹が立ったようだ。
ベッドから降りて部屋を出る。台所片付けよう、うん。
洗い物を終えて先生のそばへ行く。
「ごめんなさい…蹴っちゃって」
あ、当たり前じゃないんだ。
蹴られて当然だと思ってたからなー。
「そろそろ起きれますか?」
そろり、と先生がベッドから身を起こす。
手を添えてゆっくり立たせてリビングへ連れ出した。
「はい、お茶」
「ありがと。ねぇ…ああいうの、私、無理だわよ」
「やっぱり無理?」
「うん」
「ふぅん…またいでかけるプレイとか」
「無理よ、そんなの」
「かけるほうがSなんですけどね、普通」
「出るところ見られるのなんて恥ずかしくてダメよ」
「そういうとこが可愛くて、そういうことをさせてみたくなる」
「蹴るわよ」
「蹴ろうと思っては蹴れないでしょ?」
げしげしと座ったまま足先で蹴ってきた。
「お行儀悪いですよ、先生」
更に強く蹴られた。
「可愛いなー」
顎に手を当て持ち上げてキスする。
そのまま押し倒した。
「ダメよ、箪笥、整理するんだから」
「ま、そういわず…うっ」
先生に乳首捻り上げられた。
地味に痛い。
「退きなさい」
「はーい…」
上から退くと先生はぺしっと俺の頭を叩いた。
「さっさと整理、するわよ。明日もお稽古なんだから」
身を起こして浴衣の乱れを直し、手を洗って和室へはいる。
樟脳の匂いにまみれつつ、たとう紙を開けて中を見ては夏物、相物と入れ替えた。
なんだかんだ夕方近くまで掛かったので先生を誘ってホテルディナーとする。
ちょっと久しぶり。
「暑ーい…」
「暑いですね…梅雨前だってのに」
先生は日傘をさした上で日陰を通って、俺も日傘の下に入れようとする。
「そんなことしてるとあなたが焼けますから、俺は良いですよ」
「早めに対策した方が良いわよ」
「ちょっとくらい焼けたほうが男らしいじゃないですか」
「男じゃないでしょ」
「ま、今度、今度」
扇子を日よけにホテルへ入る。
先生の遠慮で一番高い奴の一つ下のコース。
「おいしいわ~」
昼に怒ってたのとはまったく違って幸せそうだ。
最後のデザートも美味しく頂いて、先生はその足で帰ると言い出した。
「え? どうしてですか」
「だってあなたの部屋戻ったら帰るの嫌になるもの」
胸に響くなぁ。嬉しい。
「明日お昼に一緒に帰るほうが楽じゃない。電車乗らなくて良いんだから」
「そっちですか」
がっくりしつつ会計を済ませて駅まで送る。
まだ日が高いから送らなくて良いようだ。
「じゃ、また明日いらっしゃい」
「はい、ではまた明日」
別れの挨拶を交わし、電車を見送って帰宅した。
後は寝るばかり。おやすみなさい。

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365

翌朝、先生の寝顔を見つつぼんやりしてたら八重子先生が部屋に来た。
「ご飯できてるよ。いつまで寝てんだい」
「ありゃ? 寝過ごしました?」
「もう7時半すんでるよ、早く起きなさい」
凄く寝過ごしてた。
先生を揺り起こして着替えさせる。
食卓につくと律君が食べ終わってて笑ってた。
「二人ともって珍しいね」
「旅行いって調子狂っちゃったみたいでね」
「山沢さんなんて夕べ早いうちから寝てたのに…おかしいわねぇ」
「ま、たまのことだからね。早く食べなさい」
「はーい」
「そうね、いただきます」
遅めの朝御飯をいただいたら後は衣替えのお手伝い。
昼前には汗だくになって何とか終了した。
「ね、山沢さんはしたの?衣替え」
「しませんよ、いつも適当に着てますし」
「…火曜日お稽古終ったらあなたの家行くわね」
「ダメですって、おうちのこと大事にしてくださいよ」
「でも…」
「毎年適当に暑ければTシャツ着るとかしてますから気にしないでください」
お昼はなんだろう。
「今日は早いけど素麺にしたよ。暑いしね」
あ、うれしい。
見るからに涼しくて、食べるとすっきりした。
だけど時間が進むに従い気温急上昇である。
「八重子先生、水気とってます?」
「とってるけど追いつかないねぇ、暑いね」
「ほんと暑いわね、雨でも降らないかしらね」
室温も29度になってしまった。
「行水したい…」
「あ、いいわね、たらいあるわよ」
庭にたらいを出して水を張る。
すぐにぬるま湯になった。
縁側で脱いでたらいにはいる。
「うー丁度良いや」
ぱしゃぱしゃと先生が顔に水を掛けてくる。
「先生も入る?」
「いやよ」
ほぼ、と笑って湯にならない程度に水を足してくれた。
さっぱりしたので手拭を貰って拭いて出る。
「うわっ!」
「あら、律。あんた出かけたんじゃなかったの?」
「何してんの!?」
「行水よ、あんたも小さい頃したでしょ」
「覚えてないよ、そんなの…」
あはは、と笑いながら浴衣に着替えてたらいの水を日陰の植木に撒く。
さっとたらいを濯いで立てかけて終わり。
「やぁさっぱりしました。でも帰りの電車が思いやられますが」
くすくす、と先生も笑ってる。
やっぱり可愛いな。
部屋に戻ると八重子先生も流石に麦茶を飲んでいた。
それでも都心よりは涼しいので夕暮れまで先生のお宅でごろごろして帰宅した。
むっとする室温にクーラーをつけてしばし。
26度まで下げて止め、寝た。

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